STEP.2 履歴書・職務経歴書
医師の転職で通過率を上げる志望動機の書き方【例文付き】
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履歴書を書くとき、意外と悩むのが「志望動機」の項目ではないでしょうか。何となく埋めるのではなく、転職の理由や熱意を伝えるチャンスとして上手に活用したいところです。ここでは、履歴書を初めて作成する医師や久しぶりに作成する医師を対象に、例文を交えながら志望動機を書くときのポイントをご紹介します。
この記事のまとめ
- 履歴書の「志望動機」は自由度が高いからこそひと手間かけることで通過率が上がる。
- 応募先の魅力と、自身の経歴・スキル・キャリアプランとの接点をヒントに自分だけの「志望動機」ができると他の応募者との差がつく。
- 待遇面や労働環境の希望を記載するのは避けるのが無難。面接時に口頭で確認するか転職エージェントに仲介してもらうのがおすすめ。
この記事の目次
1.履歴書の「志望動機」はなぜ重要?
志望先へ仕事に対する思いを伝えたり、熱意を表現したりできるのが履歴書の志望動機欄です。転職にあたって職歴や資格が大切なのは当然のことですが、とくに人気の高い求人の場合、志望動機も重視するという医療機関もあります。複数の応募者がいる場合は、より強い気持ちを持つ医師を採用したいと考えるものです。また、志望動機として記載したことが、面接時に話題とされるケースも多いでしょう。
だからこそ避けたいのが、どんな医療機関にも当てはまるような「あたりさわりのない志望動機」になってしまうことです。複数の医療機関へ応募する場合に同じ文章を使い回すなどしていると、強いインパクトを残すことが難しくなってしまいます。また記載されている内容が志望先医療機関の取り組みや方針とかけ離れたようなものであれば、選考に悪影響を及ぼす可能性もあります。志望動機は、面接時に掘り下げられても困らない、むしろ「もっと詳しく語れる」内容にすることが大切です。
2.志望動機を書く際の4つのポイント
ポイントを押さえつつオリジナリティのある志望動機を書くためには、どんなことを意識すればいいのでしょうか。基本となる4点をご紹介します。
ポイント①応募先の魅力をしっかりと調べる
最も大切なことは、志望動機を通して「その職場を選んだ理由」が伝わることです。理由が具体的であればあるほど、その職場に本心から興味があることの証明になるでしょう。医療機関の公式ウェブサイトなどで経営方針、重点的な取り組み、設備、症例数などを確認するとともに、必要に応じて知り合いや転職エージェントからの情報なども活用して、他の応募者とは違う自分の視点で見た「その職場ならではの魅力」を見出してください。
ポイント②応募先独自の特徴を捉えてまとめる
採用担当者に「この人を採用したい」と思ってもらうためには、他の医療機関にはない独自の取り組みや特徴を把握し、志望動機に反映させることが大切です。応募先企業が特に力を入れている分野において、自身の力を発揮したいという熱意を表現するようにしましょう。逆に、どの医療機関にも当てはまるような内容は控えましょう。「なぜこの医療機関でなければならないのか」という点で、他の応募者と差がつくような内容を加えることがポイントです。
ポイント③自身の興味や経歴と関連することを書く
応募先のことを調べた後、その特徴をパンフレットのように書き連ねればいいというわけではありません。肝心なのは、「自分が特に魅かれた点」をピックアップして伝えることです。特に、自身の興味・関心や培ってきたスキルなどとの接点を見つけて記述することが効果的。相手のニーズに寄り添いながら、自身をアピールすることにつながります。
ポイント④応募先でどう活躍したいか伝える
転職後に医療機関でどんな役割を果たしたいかを具体的に説明することで、活躍する姿をイメージしてもらいやすくなります。基本的に、医療機関は長く安定的に勤めてくれる医師を求めているので、長期的な目標やキャリアパス、将来的にそこで挑戦してみたいことなどを書いてみるのもおすすめです。
大学病院をはじめ、研究も力を入れている医療機関では、「これまで取り組んだ研究テーマや関心のある分野」「研究に対するモチベーション」などについて面接で質問されることがあります。
そのため、将来的に取り組んでいきたい研究分野やキャリアアップしたいものがある場合は、そのモチベーションとともに明確に記載すると他の応募者と差をつけることのできる自己アピールの1つにもなるでしょう。
また、自分のキャリアパスを進めるために必要な経験を応募先の医療機関で積みたいと考える場合もあるでしょう。その場合は、地方病院や大学病院など規模や担う役割が異なるそれぞれの医療機関に適した将来のビジョンを加えるのがおすすめです。
3.志望動機の例文
では、具体的にどのような文章を書けば印象が良くなるのでしょうか。志望動機の内容は転職の目的によって大きく変わります。ここでは、転職の目的がキャリアアップの場合とワークライフバランス重視の場合の2つのパターンに分け、それぞれ外科系・内科系の志望動機例文を紹介します。履歴書を作成する際の参考にしてみてください。
例文①キャリアアップしたい場合
キャリアアップを希望する場合の志望動機では、自身のスキルや保有資格、症例数等に触れて転職後も活躍できる能力があることをアピールすることをおすすめします。また自身の追求する医療のあり方や数年後のキャリアビジョンに言及することでもモチベーションの高さが伝わります。
地方病院の場合では「私は将来、離島や農村地区など、へき地での地域医療に携わりたいと思っています。そのため、私一人でもどのような状態の患者さんにも対応できるようになりたいと考えています。小規模な病院にて、地域医療に携わる医師になるために必要な経験をしっかりと積みたいと思い、貴院を志望しました」などと加えるとよいでしょう。
著名な教授がいたり、特別な研究などに取り組んだりしている大学病院では「私は学生の頃から胃癌の最新の治療法に関心を持っており、この分野のスペシャリストである〇〇医師がいる貴院にて、ぜひその技術を学びたいと考えて志望しました」などと表現し、応募先と自分の将来のビジョンが適合している旨を伝えると強いインパクトを与えられるはずです。
■外科系の志望動機例
消化器外科医として6年間勤めてきましたが、30歳代前半のうちに専門医・指導医資格を取得し、この分野を深めていきたいと考えております。貴院は、地域の患者さんを幅広く受け入れる市中病院である一方、専門医・指導医資格取得をめざす医師へのサポート体制が充実していると伺いました。学びを通して消化器外科医として成長しながら、特に貴院でも症例数の多い胃癌手術で大きな貢献ができるよう、研鑽を積んでまいる決意です。
■内科系の志望動機例
より心身の負担が少ない効果的な不妊治療を実践されてきた尊敬する▲▲先生のクリニックで分院長を募集していると知り、真っ先に応募させていただきました。これまで産婦人科医として病院勤務を続けてきましたが、ここ数年、より大きな裁量を持って働くことやマネジメントについても興味を持つようになりました。ぜひ、この機会に、▲▲先生のご指導を賜りながら分院長として経営・診療に携わり、患者さんに選ばれるクリニックを作り上げていきたいと考えております。
例文②ワークライフバランス重視の場合
時間外労働や休日出勤を抑えたい場合でも、直接的な表現は避けましょう。「長期的なキャリア形成」に重きを置いた表現にしたり、転職後に自身が成し遂げたいことにフォーカスしたりした志望動機を作成しましょう。
■外科系の志望動機例
勉強会で知り合った貴院の○○先生が、プライベートも充実させながらいきいきと働き、学会にも積極的に参加されている姿から刺激を頂きました。健全な病院経営と働き方改革で業界内でも注目を集める貴院にて、私自身も長期的なキャリアを築いていきたいと願っています。本業である一般外科での業務はもちろんのこと、より良い職場作りに関する委員会・プロジェクトなどの活動にも積極的に参加できればと考えております。
■内科系の志望動機例
出産・育児をきっかけに、地元である○○市へ戻ってまいりました。自身が生まれ育った思い出深いこの地で、呼吸器内科医として貢献していきたいと考えております。中でも、慢性呼吸器疾患の患者さんを正しく診療・支援し、在宅医療へつなげることに興味があります。長年、地域のクリニックや訪問看護事業所などと連携を深めてきた貴院においてこそできる、本当の地域包括ケアに挑戦させていただきたいです。
例文③転職を機に転科や異なる分野に挑戦する場合
転職を機に、転科やこれまでとは違う分野に挑戦する場合もあるでしょう。新たな働き方を目指す転職では、未経験な分野への挑戦を決意したエピソードを交えて記載することが大切です。いくつか例文をご紹介します。
■外科から訪問診療科へ転科する場合の志望動機例
貴院では、訪問診療医の育成や地域での訪問診療の展開に注力されているため志望いたしました。心臓血管外科医として医療に携わってきましたが、以前から、手術後の患者さんのケアの重要性を感じており、生活の場での医療提供として訪問診療に関心がありました。これまでとは全く異なる働き方になりますが、これまで多くの患者さんを対象に全身管理を行った経験は、訪問診療の分野でも活かすことができるのではないかと考えております。新たな分野への挑戦として、転科を決意しました。
■内科から皮膚科へ転科する場合の志望動機例
内科医として10年ほど診療してきた中で、皮膚科領域の知識が必要になることも多くあり、内科と皮膚科の密接な関連性を強く感じていきました。そのため、内科医としての経験を活かしながら、皮膚科の専門的な知識と経験を積んでいきたいと考えています。達成できれば、医師としてのスキルアップだけでなく、多くの患者さんに適切な治療を提供できると思い、転科を決意しました。貴院の皮膚科は、内科的な視点からも診療されているとお見受けしたため、志望をさせていただきました。
■産婦人科から精神科へ転科する場合の志望動機例
これまでは産婦人科医として勤務してきましたが、精神科領域と深く関わる疾患や症状もあり、両科からの専門的なアプローチが必要なケースを多く経験してきました。そのため、精神科の専門的な知識や技術を積みながら、産婦人科医としての経験を活かし、多くの患者さんに寄り添った治療を行っていきたいと強く思い、転科を決意しました。
私は、精神科への転科を希望しているため、研修体制が充実している貴院はとても魅力的で医師としても成長していけると考え、志望しました。少しでも早く精神科医として活躍できるように必要な経験や知識を身につけていきたいと考えております。
4.志望動機を書く際の3つのNG
自由度が高い志望動機欄だからこそ、つい記載してしまいがちなNGポイントがあります。印象を悪くしてしまう「地雷」を踏まないよう、次のNG項目には注意しましょう。
NG①待遇面へ直接的に言及する
希望する年収や残業時間、休暇などに関することを、直接的に志望動機に盛り込むのはおすすめできません。転職するうえで重要な要素であることは間違いありませんが、書類審査の段階で「並はずれて権利意識が強い医師」といったイメージを抱かれるのは得策といえないためです。履歴書上の志望動機は医師としての本業に関する内容にとどめ、待遇面については面接時などに口頭で確認しましょう。面接の場で話しづらいときは、転職エージェントを頼って交渉を代わりに行ってもらう方法もあります。
NG②前職・現職の悪い点ばかり書く
退職理由を記載するときは、ネガティブな面ばかり書かないように気を付けましょう。とくに退職した医療機関の悪口などはもってのほかです。たとえ事実であったとしても、マイナス点ばかりが強調されると、採用担当者は「当院に来ても同じように感じて辞めてしまうのでは?」という懸念を抱くおそれがあります。退職のきっかけとなった出来事はできるだけシンプルにまとめ、「転職後に何を実現したいか」というポジティブな内容に焦点を合わせましょう。
NG③読みづらさや余白の多さが目立つ
志望動機などの自由記述欄は、スペース全体の8割程度を埋めることが理想的です。細かすぎる字でびっしりと書き込んだり、逆に書く量が少なく余白が目立ったりすると、悪印象につながる可能性があります。メーカーごとに履歴書の書式はさまざまですから、あらかじめ自分が書きやすいレイアウトの履歴書を使用するのもおすすめです。
5.履歴書を提出する前に確認したいポイント
ここでは、採用側に好印象を与え、通過率を高める履歴書の記載方法についてご紹介します。
5-1.基本情報は漏れなく記入できているか
履歴書のフォーマットによって記載すべき情報は異なりますが、「氏名・連絡先などの個人情報」「現在の職務の要約」「職歴(異動も含む)」「免許・資格専門分野」「研究内容」「所属学会」「志望動機」「自己PR」などについて、漏れがないように記入しましょう。
5-2.職歴はより「簡潔・具体的」に記入しているか
職歴には、「何を学び、これまでどのような仕事をしてきたか」をより簡潔にわかりやすくまとめて伝えることが大切です。内容は簡潔であるとともに、具体的に記入することが求められます。
5-3.免許・資格は「医籍登録番号」の記載漏れがないか
医師免許の取得年月・医籍登録番号は、必ず正確に記入しましょう。認定医・専門医・指導医などを取得している場合では、自己アピールにもつながるため、必ず記入することが大切です。
5-4.特技・趣味欄までしっかり埋めているか
「特技・趣味欄」は、記載しなくてもよい項目です。しかし、何か記載できるものがあるのであれば、記載しておくと自分の人柄を知ってもらうチャンスにもなり得ます。また、面接の際、「特技・趣味欄」にある内容で面接官に興味を持ってもらえることや人柄を知ってもらえる機会になることがあります。自己アピールの一環と考えて、「特技・趣味欄」も記載しておくとよいでしょう。
6.志望動機の書き方がわからないときは医師専門の転職エージェントに相談しよう
転職活動において、履歴書は自身の「顔」ともいえる重要な書類です。その中で最も注目される志望動機だからこそ、ひと手間かけて丁寧に仕上げましょう。好印象を与える志望動機は、高倍率な求人でも内定を得る確率を上げる重要なポイントになるはずです。「そうは言っても忙しくて履歴書を作る時間がない」「何を書いたらいいのかさっぱりわからない」という方は、転職エージェントを活用してみることをおすすめします。応募先の医療機関の情報にも精通しているので、志望動機を書く際のヒントをもらえたり履歴書の添削をしてもらえたりします。