医師という職業は、他の職種に比べて、転職回数が比較的多いと言われています。転職回数が多いことで何か不利益はあるのでしょうか？本記事では医師の転職回数が多い理由とリスクについて考察します。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」（令和3年）によると、調査対象となった医師の平均年齢は39.9歳、平均勤続年数は6.4年となっています。労働者全体の平均年齢が43.4歳、平均勤続年数が12.3年という結果に比べると、勤続年数の短さが目立ちます。勤続年数が短いことから、医師はひとつの病院や事業所で長く働くのではなく、比較的活発に転職をしていることが読み取れます。

医師の転職が多い理由のひとつとして、「転職が容易」であることが挙げられます。近年、医師は慢性的に不足している傾向にあり、多くの医療機関で常に医師を必要としています。そのうえ医師偏在も課題となっており、都市部では比較的充足傾向にある一方、深刻な医師不足に陥っている地域も中にはあります。医師を獲得しようと、高給与・好待遇の条件を提示したり、医師の働き方の希望に柔軟に応じたりする医療機関もあるほどです。

全国的に医師は必要とされる存在のため、人間関係や勤務条件で勤務先と合わないと感じた場合に、すぐに次の勤務先候補が見つかる傾向があります。またもしも希望に合った転職先がなかなか見つからない場合でも、スポット勤務や定期非常勤などをしながらゆっくりと転職先を探すことができるのも医師ならではの特徴です。

医師の平均転職回数は4回とも5回ともいわれています。大学病院や国立の病院などに勤務している医師はあまり転職しない傾向にありますが、市中病院などに勤めている医師はたいていの場合転職の経験があるでしょう。

一般的な会社員の場合、転職回数があまりにも多いと不利になる傾向があると言われています。近年は転職活動が活発になっていますが、それでも平均すると生涯で2～3回の転職という方が大半ではないでしょうか。転職回数が多い場合、相応の理由がなければ転職活動で苦戦してしまうこともよくあります。

しかし医師の場合、転職回数が多くても基本的にあまり不利になりません。まず売り手市場であり、全国的に常に必要とされていることが理由として挙げられます。ある程度の経験を持つ医師は即戦力として、どんな病院でも必要とされる存在です。また、自由診療の美容クリニックや産業医、在宅医療など、時代のニーズの変化とともに活躍の場が増えていることも医師のニーズが低下しない要因です。

また医師はある程度、症例数を経験する必要がある職業です。専門医取得のために症例数を経験できる医療機関へ転職するケースもあるでしょう。医師はどんな症例を経験してきたかというスキル面や、専門医を取得しているかといった面が重視されるため、転職回数の多さ自体が問題になることはほとんどありません。

まれに転職回数を重視する病院もありますが、「なぜ転職をしたのか」ということが明確ならば問題ないと言えるでしょう。なお、面接で聞かれやすい質問と回答の仕方は事前にポイントをおさえておくことをおすすめします。

転職回数の多さによって、医師が転職をする際に不利になることはほとんどありません。しかし、デメリットとして退職金は念頭に置いておいたほうがよいでしょう。退職金の金額は、一般的に常勤医として医療機関に在籍した年数によって決まります。短い期間で転職を繰り返すと、退職金の額面が少なくなりやすいことには注意が必要です。

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そのため、勤務を始めたらまず退職金の規定を確認するようにするとよいでしょう。何年働いたら退職金が発生して、定年まで勤務した場合の金額を確認しておくと将来の資産形成を考える際に役に立ちます。

以上見てきたように、医師は転職回数が多いという理由で転職において不利になることはほとんどないと考えられます。転職をするかどうかを迷っている場合は、転職によって自分が希望している経験・スキルを積めるかどうかや、希望する勤務環境・待遇を得られるかどうかを重視して決断することをおすすめします。医師専門の転職エージェントに相談すると、転職をするべきかどうかや希望に合った転職先について客観的なアドバイスをもらえるので、迷っている方は一度相談してみてはいかがでしょうか。

参考URL
令和3年賃金構造基本統計調査｜厚生労働省
令和3年賃金構造基本統計調査の概況｜厚生労働省