医療の質の向上や医師の新たなキャリア形成を目的に、2018年4月からスタートが予定される「新専門医制度」。地方の中小病院などが異論を申し立て、導入まで1年を切っているにもかかわらず、延期となるなど、さまざまな波紋を呼んでいる。
ここでは、医師のキャリアに大きく影響を与える「新専門医制度」の仕組みや概要について考察する。
「新専門医制度」の仕組み
厚生労働省は2011年10月より「専門医の在り方に関する検討会」を開催し、専門医に関して幅広く検討を重ね、報告書を取りまとめている。ここでは2016年2月に公表された「第44回社会保障審議会医療部会資料」をもとに、新専門医制度の現状の仕組みを再確認する。
新専門医制度導入後のフロー一例


※1国家試験に合格した者は、医籍への登録により免許を受ける。
※2 臨床研修を修了していない者が診療に従事した場合、行政指導等の対象になり得る。修了した旨の医籍登録を受けていない者は、診療所を開設しようとするときに都道府県知事等の許可を受けなければならず、また、病院又は診療所の管理者になることができない。
「新専門医制度」の概要
2018年10月から「専攻医の仮登録」が実施される。ここでは、2011年10月から行われていた「専門医の在り方に関する検討会」などで議論してきた専門医のあり方や、領域、基本設計の概念などをあらためて確認する。
- 国民の視点に立った上で、育成される側のキャリア形成支援の視点も重視して構築。
- プロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)を基盤として設計。
- 中立的な第三者機関を設立し、専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行う。
- 専門医の認定は、経験症例数等の活動実績を要件とする。
- 「総合診療専門医」を基本領域の専門医の一つとして加える。
- 専門医の養成は、第三者機関に認定された養成プログラムに基づき、大学病院等の基幹病院と地域の協力病院等(診療所を含む)が病院群を構成して実施。
- 新たな専門医の養成は、平成29年度を目安に開始。研修期間は、例えば3年間を基本とし、各領域の実情に応じ設定。
専門医の領域、認定・更新――「新たな専門医制度の基本設計」の概要
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