形成外科医の年収は?仕事内容や向いている人についても解説|医師の現場と働き方

形成外科医の年収は?仕事内容や向いている人についても解説

火傷や皮膚の腫瘍など、体の表面に生じた疾患やケガの治療を行う形成外科医。腫瘍外科や美容外科などいくつかの種類がありますが、形成外科医全体の平均年収はどれくらいなのでしょうか。今回は、形成外科医の年収事情とともに、形成外科医に向いている人や転科による転職のポイントについて解説します。

〈この記事のまとめ〉

  • 形成外科医の年収は900万円~2400万円が目安(マイナビDOCTORに掲載の常勤求人情報より)。
  • 形成外科では、体表先天異常、外傷、皮膚・軟部組織腫瘍といった患者さんの身体表面の形態や機能の異常などを修復する治療を幅広く行う。
  • 形成外科に向いている人として、自己研鑽に日々励める人、コミュニケーション能力が高い人、集中力があり細かな作業が苦手ではない人などが挙げられる。
  • 形成外科医として活躍したいのであれば、専門医取得を含めたキャリアパスを考えよう。

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1. 形成外科医の年収相場

まず、形成外科医の平均年収はどれくらいなのか、見てみましょう。形成外科といえば、同じ領域である美容外科のイメージを持つ人が少なくありません。今回は、マイナビDOCTORに掲載されている求人内容を参考に、形成外科全般と、美容外科それぞれの年収の相場をまとめました。(情報収集日:2023年11月15日)

1-1.常勤の場合

形成外科医の常勤求人情報を見ると、形成外科医の年収は、「900万円~2400万円」が目安です。年収に大きな幅がありますが、これは施設ごとに「週の勤務日数」が異なり、また「医師経験年数」などの条件によって待遇も変わってくるためです。週の勤務日数が多く、また医師経験年数が長いほど、年収も高く提示される傾向にあります。

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一方で、美容外科の常勤求人情報から算出すると、年収の相場は「1,000万円~3,000万円」でした。こちらも医師経験年数やオペ経験などによって条件が異なるため、幅があります。

施設によっては、「入職初年度」の給与目安として1,500万円~1,600万円が提示されています。

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また、美容外科が未経験である医師の育成に注力する施設もあります。美容外科未経験者の年収相場は1,000万円~2,000万円ほどで、「未経験者は週に5日勤務」を条件とするケースが見られます。

[美容外科の年収事情についてこちらの記事もお読みください]
美容外科は高収入で働きやすいって本当?

1-2.非常勤の場合

形成外科医の非常勤求人情報によると、非常勤の収入相場は、「外来診療1コマ」などの単価支払いのケースで、「46,000円~60,000円」、日給の場合は、「70,000円~100,000円」に設定しているところが多く見られます。

なお、日勤とする時間帯は、「09:00〜17:00 (休憩時間: 60分)」が一般的なようです。ただし、業務内容は、手術からカウンセリング、処方、施術対応、訪問診療など、施設によって異なります。業務内容が多岐にわたるほど、単価が上がる傾向にあります。

また、時給の募集もあります。多くは、時給10,000円程度で、業務内容も施設によって異なります。一般外来診療での問診、処方、カウンセリングから機器による治療、施術対応、褥瘡管理などさまざまです。

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美容外科での非常勤の場合、時給は「10,000円~17,000円」、日給では「80,000円~150,000円」の範囲が多く見られます。また、単価支払いのケースでは「20,000円~170,000円」と大きな差が見られました。業務内容や当直の有無、インセンティブ制などによって、条件が異なるため、差が出ていると考えられます。

いずれにしても、一般の形成外科医と比べて、美容外科は、時給、日給、単価ともに高額に設定されている傾向にあります。

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2. 形成外科医の年収は高い?

厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は、約1,430万円(※)でした(平均年齢44.1歳)。前述の通り、形成外科医の年収目安は「900万円~2400万円」、美容外科で「1,000万円~3,000万円」が相場の範囲と考えられます。

ただし、あくまで目安であり、働き方や対応する業務内容、インセンティブの有無などによって、さらに年収が高くなることも予想されます。加えて、施設ごとの勤務日数や臨床経験年数などによって年収は大きく変動するでしょう。

※きまって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額で算出

参照:職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|令和4年賃金構造基本統計調査

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3.形成外科医の仕事内容

ここまで形成外科医の年収相場を見てきましたが、実際にどのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、形成外科医の代表的な診療内容について紹介します。

3-1.患者さんの身体表面に生じた疾患の治療

形成外科では、おもに患者さんの身体表面の形態や機能の異常などを修復する治療を行います。対象疾患は幅広く、以下のようなものがあります。

▶体表先天異常……手・足、体幹、頭蓋・顔面などに生じた先天異常
▶外傷……熱傷、切創、擦過創、切断肢・指、顔面骨骨折など
▶皮膚・軟部組織腫瘍……良性腫瘍、母斑、血管腫、悪性腫瘍など
▶腫瘍切除後の再建……四肢、乳房、顔面・頭頸部など
▶瘢痕・ケロイド、褥瘡・難治性潰瘍……潰瘍、手術後の創感染・創傷治癒遷延など
▶美容医療……見た目の改善をはかる顔や体の整形など

それぞれ専門領域として診療科が分かれることもあり、専門的な知識や技術を駆使し、特殊な材料や機材を用いて患者さんの治療をし、術前・術後の管理も行います。治療においては、外科手術やレーザー治療のほか、血管奇形に対する硬化療法、しみ・しわに対する外用治療なども行います。

また、近年では、眼瞼下垂症や顔面神経麻痺、リンパ浮腫などにおいても形成外科での手術テクニックの有用性が認められ、症例数が急激に増加しています。

3-2.治療以外の業務

形成外科医として、診療や治療に関わる書類の作成業務のほか、施設によっては委員会などを担当することもあるでしょう。そのほか、学会活動や論文執筆などの研究や、研修医や医学生、医療スタッフの教育など、状況によって業務は多岐にわたります。

また、形成外科医は「皮膚・軟部組織腫瘍や顔面骨骨折」「皮膚・軟部組織感染症」のエキスパートとして、他科の医師から診断を含むコンサルテーションを受けるなど、他領域との関わりでアドバイスを求められることもあるでしょう。

4.形成外科医になるには

形成外科医になるには、専門医資格の取得が欠かせません。その後、興味や目標に合わせてサブスペシャルティ領域に進むことが可能です。形成外科医のキャリアパスについて解説します。

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4-1.「形成外科専門医」の取得

形成外科専門医の資格は、形成外科医として一般診療を行うための必要条件といえます。2年間の初期臨床研修終了後、新専門医制度の基本領域である形成外科を選択して専攻医となり、定められた研修プログラムを受講後、資格試験に合格すると専門医として認定されます。

専門医試験では、さまざま疾患に対する知識や技術の修得状況の確認として、症例の提出が必要ですが、1つの施設で全てを網羅するのは難しいかもしれません。一般的に2~3施設での研修が必要となることが多いようです。

4-2.サブスペシャルティ領域を目指す

資格取得後は、サブスペシャルティとして、さらに専門的な領域に進むことができます。

形成外科には、現在おもに以下の15のサブスペシャルティがあります。サブスペシャルティの選択は必須ではありませんが、選択する場合は形成外科専門医を取得する時期に決定することが多いようです。

1.外傷
2.熱傷
3.頭蓋顎顔面外科
4.唇裂・口蓋裂
5.手・足
6.その他の先天異常
7.母斑・血管腫・血管奇形
8.頭頸部再建
9.乳房再建
10.熱傷
11.褥瘡・難治性潰瘍
12.顔面神経麻痺
13.リンパ浮腫
14.レーザー
15.美容外科など

なお、法律上は、形成外科専門医でなくても美容外科診療が可能ですが、美容外科の多くの手技は「形成外科で学ぶべき手技」の基に成り立っています。そのため、取り組みたい診療がある場合は、サブスペシャルティを選択する方がメリットを得られるでしょう。

4-3.プライマリケア・ドクターを目指す

形成外科は、診療科の特性の1つに対象疾患が多い点が挙げられます。そのため、あえてサブスペシャルティを決めずに臨床経験を積み、外科系のプライマリケア・ドクターとして活躍する方法もあります。

5.形成外科医に向いている人

多岐にわたる領域で活躍する形成外科医ですが、それではどのような人が形成外科医に向いているのでしょうか。

5-1.自己研鑽に日々励める人

形成外科医として日進月歩で進化する手術技術や、治療法などを日々学ぶ姿勢が求められます。細やかな外科処置を正確に行うためには、自分の手技を過信することなく、常に研鑽を積む姿勢が必要です。前向きに自身のスキルアップに励める人は形成外科医に向いています。

5-2.コミュニケーション能力が高い人

形成外科の患者さんは、小児から高齢者まで幅広く、さまざまな治療法があります。なかでも先天性奇形などの治療を担う場合、小児が対象になることが多く、患者本人だけでなく家族も大きな不安を感じていることがあります。また、火傷などで見た目に悩みを持ち、コンプレックスを感じている患者さんの治療を担当することもあるでしょう。

そうした状況において、患者さんやその家族に安心感を与えながら、スムーズに対応できるコミュニケーション力が必要です。

5-3.集中力がある、細かな作業が苦手ではない人

形成外科は、人の外見に関わる手術手技が多く、体の広範囲にわたる再建を行うこともあります。なるべく傷や見た目の違和感をなくすように手術し、ときには顕微鏡なども用いて皮膚や血管を縫い合わせる繊細な手技も必要となります。

そのため、集中力があり細かな作業が苦手ではない人は、形成外科医に向いているといえるでしょう。

6.形成外科医へ転科・転職できる?

他診療科から、形成外科に転科したいと考える場合、転職を検討するケースが多いのではないでしょうか。実際に、形成外科医への転科と同時に転職することは可能です。ただし、専攻医として形成外科分野を学ぶことが前提となるでしょう。

形成外科は、他の診療科と比較すると定型的な手術が少なく、形成外科領域で必要な手技や知識を修得することに時間がかかる傾向にあります。そのため、転科となれば経験をしっかり積む必要があります。

一方で、他診療科での診療や臨床経験、専門知識は、形成外科の診療や治療に活かすことができるでしょう。たとえば耳鼻科からの転科であれば、内視鏡の操作に慣れているため、各種骨折の整復固定や乳房再建形成などの手術に役立ち、形成外科での活躍につながる可能性があります。形成外科医への転科は、一人前となるまでに時間はかかるものの、幅広い視点で診療できるという強みもあります。

美容皮膚科や美容外科への転職を検討したい方は、こちらもご覧ください。
美容皮膚科と美容外科、転職するならどっち?【働き方を徹底比較】

7.キャリアプランに合った領域を考えながら、形成外科を目指そう!

形成外科医の年収は、経験年数や働き方によって異なるものの、全診療科の平均年収よりも高収入を目指せます。特に自由診療である美容外科では、各医療機関の裁量で治療費を設定できるため、より高い収入が得られる可能性があります。高収入を目指す場合には、美容外科を目指すのも良いでしょう。

ただし、形成外科医としての活躍を目指すなら、専門医取得は欠かせません。転科する場合も、形成外科医としての経験を積む期間が必要であり、転科後スムーズに技術を修得できるようなキャリアパスを考えることが大切です。キャリアパスの立て方が分からない場合は、医師専門のエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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