医師がクリニックに転職するデメリットは?病院との働き方の違い・働くメリットを解説|医師の現場と働き方

医師がクリニックに転職するデメリットは?病院との働き方の違い・働くメリットを解説

クリニック勤務は、「夜間対応やオンコールが少なく、比較的楽なのではないか」という印象を持たれがちです。しかし、クリニックならではの大変さもあります。クリニックへの転職を考えるなら、病院との働き方の違いを知っておくことが大切です。本記事では、クリニックと病院での働き方の違いや、メリット・デメリットなどについて解説します。

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  • 病院勤務からクリニック勤務への転職を検討している
  • クリニックと病院の働き方の違いを詳しく知りたい
  • 転職によるメリット・デメリットを整理して判断材料にしたい

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目次

  1. クリニックと病院、それぞれの機能の違い
  2. クリニックと病院を比較した働き方の違い
  3. クリニック勤務のメリット・デメリット
  4. クリニック勤務が向いている医師の特徴
  5. メリット・デメリットを理解して、納得のいく転職を

クリニックと病院、それぞれの機能の違い

働き方の違いを解説する前に、クリニックと病院の違いを簡単にまとめました。前提となる勤務環境の違いを理解しておきましょう。

クリニック(診療所) 病院
病床数 0床〜19床 20床以上
医師数 配置基準なし(医師1名~) 病床数を問わず最低3名の医師の配置が必要
機能 外来診療が中心。有床診療所の場合は入院診療がある 外来診療に加え、入院診療がある
類型 ●無床診療所:0床
●有床診療所:1〜19床
●一般病院
●特定機能病院
●地域医療支援病院
●精神病院
●結核病院
医療従事者数 有床診療所は、病床数によって基準がある 職種ごとに基準がある

なお、厚生労働省の「医療施設動態調査(令和7年1月末概数)」によると、医療施設数は下記の通りです。

クリニック(診療所) 病院
105,122
(有床5,321、無床99,801)
8,052

参考:医療施設動態調査(令和7年1月末概数)|厚生労働省

病院よりもクリニック数が多く、クリニックのなかでも無床診療所の数が多いことがわかります。主な診療対象は、病院ではより高度な医療を必要とする患者、地域のクリニックでは軽症〜中症の患者となり、働き方も異なります。

クリニックと病院を比較した働き方の違い

では、クリニックと病院では、医師の働き方にどのような違いがあるのでしょうか。

比較として表にまとめました。4つの項目について、それぞれの特徴を解説します。

クリニック(診療所) 病院
①勤務時間 診療日・診療時間が決まっている。
休診日はそのまま休みとなるケースが多い。
※有床クリニックであれば病院と似た勤務時間となる。
平日休み、夜間・土日勤務、当直、オンコール対応などがある。
院内の各種委員会や、医局会への参加等、診療外の業務も多い。
②診療体制 軽症や慢性疾患のケースが多く、自身の専門分野の範囲で治療する。 緊急対応、重篤患者の診療、高い医療知識・技術が求められる。
③教育体制・
研修制度
病院に比べて、研修制度や教育体制は充実していない。
勤務医数も少なく、働くうえではある程度の経験や実績が求められる。
クリニックと比べて、独自の研修制度が充実している。
困ったときに、上級医や同僚に相談できる環境がある。
④給与水準 平均年収:11,193,164円
病院に比べて諸々の手当がなく、病院勤務より水準が低い傾向にある。
平均年収:14,610,739円
夜勤、当直、緊急対応などの手当がつく。

勤務時間

病院や有床クリニックでは、入院患者への医療提供があるため、基本的にはシフト勤務で、平日休み、夜間・土日勤務もあります。大型病院では、当直やオンコール対応に加えて、院内の各種委員会や医局会などへの参加もあり、診療以外の業務も多岐にわたります。

一方で、無床クリニックでは、外来が中心で、決まった診療時間に合わせた働き方ができます。休診日はそのまま休みとなるケースが多く、比較的、プライベートな時間を確保しやすいでしょう。土日診療を行う場合や、地域によって輪番制となる休日救急に対応する場合を除き、カレンダー通りの休みが取りやすく、自身のライフスタイルに合わせて働ける傾向にあります。

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診療体制

病院はクリニックと比べて、緊急対応や重篤患者に関わる機会が多く、夜間対応やオンコール待機、緊急対応が発生します。予測が難しく突発的な業務が発生しやすく、入院診療を含めた重症なケースの患者を診るための、高い医療知識や技術も求められます。

また、複数の合併症を抱えた患者など、自身の専門科だけでは処置が難しいケースでは、院内の他診療科へコンサルテーションを行います。看護師や薬剤師をはじめとした多職種との連携も、医師の役割として重視されます。

一方、クリニックでは、比較的軽症や慢性疾患の患者が多い傾向にあります。一部の例外(形成外科での緊急対応等)を除いては、救急に対応する機会は少ないでしょう。仮に高度な医療技術や施設が必要な重篤患者が受診した場合でも、地域の病院に紹介するのが基本です。専門分野の範囲で治療を行いますが、症状が悪化し、より高度な医療設備や多数の診療科にまたがる治療が必要となった場合には、地域の病院へ紹介することになります。そのため、医療機関との連携が重要であり、患者支援の一環として、保健所や地域包括支援センターなどとの連携が必要なケースもあります。

ただし、勤務医師数やスタッフ数は病院に比べて少なく、万が一の対応で医師への負担がかかりやすい場合もあります。

教育体制・研修制度

病院は、独自の研修制度を設けているケースがほとんどです。施設によって異なるものの、ベテランから若手まで医師数が多く、診療やその他の業務で困ったときに、上級医や同僚に相談できる環境が整っています。

一方で、クリニックは、医師を含めてスタッフ数が少ないため、教育体制が十分でないケースも見られます。教育や指導に関わる人員が十分でないことから、病院と比べて研修制度を充実させることは難しく、働く際には即戦力となる、ある程度の経験や実績が求められます。

給与水準

厚生労働省の「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」によると、一般病院、一般診療所のそれぞれに「勤務する医師」の平均年収額は以下のように報告されています。

クリニック(診療所) 病院
平均年収 11,193,164円
(年間給与10,853,589円+
賞与339,575円)
14,610,739円
(年間給与13,067,985円+
賞与1,542,754円)

参照:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|中央社会保険医療協議会(厚生労働省)

上記における「病院」とは、国立、公立を含めた総合的な平均値であり、「一般診療所(クリニック)」は、有床・無床を問わず総合的な平均値です。

令和5年の調査において、クリニック勤務と比べて、病院勤務は平均給与が300万円ほど高い結果となりました。収入に大きな差が出る理由として、クリニックには夜勤や当直、緊急対応などによる手当がつきにくく、残業も少ないといったの勤務条件が影響していると考えられます。

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クリニック勤務のメリット・デメリット

クリニックでの働き方が、今後のキャリアに影響することも考えられます。クリニック勤務のメリット、デメリットを紹介します。

クリニック勤務のメリット

代表的なメリットとして、以下のような点が挙げられます。

●ワークライフ・バランスを実現しやすい
無床クリニックでは、診療日以外は休日になるケースが多く、比較的安定した休日が確保できます。有床クリニックでも、対応する患者数が限られており、重症例も少ない傾向にあるため、病院勤務と比べてワークライフ・バランスを取りやすい環境です。

●地域医療に携われる
地域密着型のクリニックでは、患者一人ひとりと丁寧に向き合えます。かかりつけ医として、日常的な健康管理や相談に対応し、地域に根ざした医療を実践できるため、地域性に特化した医療提供を実施したい方は大きなやりがいを感じられるでしょう。

●専門分野に特化しやすい
クリニックでは、特定の診療科に特化して診療を行う場合がほとんどです。標榜する診療科に該当する患者が中心で(皮膚科なら皮膚疾患、精神科なら精神疾患など)、専門性を高められるというメリットがあります。自身の専門領域での経験を積みやすく、スキルを深めやすいことも利点です。

●開業準備を兼ねられる
将来的に開業を考えている場合、クリニックでの勤務は、経営やマネジメントを学ぶ良い機会になります。開業医として求められる経営手法や、マネジメントスキルを、院長の側で学べます。

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クリニック勤務のデメリット

クリニック勤務におけるデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

●人員が限られるため、かえって忙しい場合もある
施設によってはスタッフが少なく、かえってハードになることもあります。有床で在宅を行っている、介護施設を並行して運営しているなど、労働条件は多岐にわたるため、事前にしっかりと確認しましょう。

●少人数体制のため、院長の方針や意思決定が職場文化に強く影響する
院内スタッフの人数が少なく、アットホームな職場である一方で、院長の方針や裁量が職場環境に大きく影響します。院長や院内スタッフとの相性が悪い場合、職場に居づらくなってしまう恐れもあります。

●今よりも給与が減る可能性がある
前項の通り、クリニックと病院では平均年収に差があります。多くのクリニックでは夜勤や当直がないため、手当もつきにくく、日給制の場合、稼働日が少ない月は、さらに年収が下がる可能性もあります。

●難しい症例や最新の治療法に触れる機会が少ない
クリニックの対象となる患者の多くは、軽症~中等度であり、難しい症例で急性期の診療に携わることはほとんどありません。また、難病治療に触れる機会もないため、IT技術・ロボット技術を活用した医療機器や、専門的な新薬などを扱う機会が少ないでしょう。

クリニック勤務が向いている医師の特徴

転職前に、自身がクリニック勤務に向いているかどうかを確認しておきましょう。クリニック勤務に向いている医師の特徴を解説します。

患者一人ひとりに向き合う診療をしたい

患者数が多い病院と比べて、外来でも患者一人あたりの時間が取りやすい傾向にあります。予約制や定期通院中心の診療体制により、患者一人あたりに割ける時間が比較的確保しやすいのが特徴です。そのため、じっくりと話を聞きながら治療を進めたい人にクリニック勤務は向いています。特に、かかりつけ医として、生活背景を含めた包括的な診療に興味がある場合は、多くの経験を積むことができるでしょう。

ワークライフ・バランスを重視したい

プライベートな時間をしっかり確保したい人は、残業が少なく、固定された勤務時間や休日が設定されやすい無床クリニックでの勤務も選択肢の一つとなります。家事や育児のほか、家庭の事情を加味して働きたいと考える人に向いているでしょう。ただし、在宅や土日診療を行うクリニックもあるため、希望する働き方ができるかどうか、条件をしっかり確認する必要があります。

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地域医療に携わりたい

地域医療に携わりたいと考える医師にとっては、クリニック勤務が向いています。クリニックのなかには、地域密着型の介護施設を併設しているところもあり、行政や関係機関などの地域関係者との連携を図りながら、地域医療に貢献できます。地域の健康を支える医師として活躍したいなら、クリニック勤務を検討してみましょう。

将来的にクリニックを開業したい

クリニック開業を検討中の場合や、すでに開業を予定している場合には、実際にクリニックで勤務して経験を積むのがおすすめです。勤務医のほか、院長職の求人も見られるため、経験したい立場で応募してみましょう。経営やマネジメントを学べる絶好の機会であり、地域の患者と接触することで、求められる接遇やニーズのある診療科を探ることも可能です。

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メリット・デメリットを理解して、納得のいく転職を

クリニックと病院での働き方には、さまざまな違いがあります。これまで病院でしか働いたことがない場合、クリニックの勤務体制や環境に戸惑うかもしれません。メリットやデメリットを踏まえ、自分に合った職場を探してみましょう。ただし、クリニックによって勤務時間や給与、業務内容が異なります。自身が働くうえでの優先事項を明確にしておくことが大切です。

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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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