整形外科は、骨や筋肉、関節などの疾患・外傷を主に扱う診療科です。診療の対象範囲は広く、早急に手術を要する外傷もあれば、注射や投薬で長期にわたり経過観察を行う慢性腰痛もあり、重症度や緊急性はさまざまです。そのため、診療する分野によって労働時間や年収に差が生じやすい診療科だといえます。今回は整形外科医の働き方と年収事情について解説します。
- 整形外科医の年収水準は高いが、金額に対する満足度は低い。
- 整形外科医は多忙な勤務環境に置かれるケースが多く、時間外勤務や日当直により給与が高額になっている。
- 入院施設のないクリニックなどでは比較的穏やかな働き方ができるが、そのぶん給与水準も下がる。
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1.整形外科医の年収事情
整形外科は乳幼児から高齢者まで、あらゆる年代の患者さんが受診する診療科です。そのため患者さんの数が多く、総合病院では診療を待って行列ができることもあります。超高齢化社会を迎えた日本では、腰痛や膝痛、骨粗鬆症などで整形外科への定期通院を要する患者さんがますます増えていくことが予想されます。
こうした状況のため整形外科医は極めて多忙であり、外傷を診る医療機関は昼夜を問わずオンコールに対応していることも珍しくありません。ということは、整形外科医の給与水準は高くなるはずですが、実際はどうなのでしょうか。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によると、整形外科医の平均年収は1289.9万円であり、調査対象となった12の診療科の中で5番目に高い水準となっています。
■診療科別・医師の平均年収
順位 | 診療科目 | 平均年収(万円) | (計n=2,876) |
---|---|---|---|
1 | 脳神経外科 | 1,480.3 | (n=103) |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 | (n=130) |
3 | 外科 | 1,374.2 | (n=340) |
4 | 麻酔科 | 1,335.2 | (n=128) |
5 | 整形外科 | 1,289.9 | (n=236) |
6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | (n=304) |
7 | 内科 | 1,247.4 | (n=705) |
8 | 精神科 | 1,230.2 | (n=218) |
9 | 小児科 | 1,220.5 | (n=169) |
10 | 救急科 | 1,215.3 | (n=32) |
11 | その他 | 1,171.5 | (n=103) |
12 | 放射線科 | 1,103.3 | (n=95) |
13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | (n=313) |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
また、年齢層、専門医資格の有無、働き方などを問わず年収1,000万円以上を得ている医師が76.7%と高い割合を占めています。最も多い年収帯は1,000~1,500万円未満(34.7%)で、年収1,500~2,000万円未満の層が33.1%と他科よりも高い割合を占めています。ただし、2,000万円以上の層は8.9%と低いのが特徴的です。整形外科では平均的に他科よりも高い給与水準である一方、破格の待遇で迎えられるケースは多くないことが分かります。
■内科医の年収階層別の分布
主たる勤務先の年収 | 割合(%) |
---|---|
300万円未満 | 4.2 |
300万円~500万円未満 | 3.8 |
500万円~700万円未満 | 2.5 |
700万円~1,000万円未満 | 12.7 |
1,000万円~1,500万円未満 | 34.7 |
1,500万円~2,000万円未満 | 33.1 |
2,000万円~ | 8.9 |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
また、同調査で自身の給与額に対する満足度についての質問に対し、「満足」「まあ満足」と回答した医師は38.1%で全診療科の平均である40.3%よりやや低く数値です。また「少し不満」「不満」と回答した医師は41.6%と高い割合を占めています(全診療科の平均は37.7%)。他の診療科よりも恵まれた給与を得ている一方で、給与額に対する満足度が低いのは、時間外勤務やオンコール、当直などによる負担が重く、給与額と釣り合いが取れていないと感じる医師が多いためと考えられます。
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2.整形外科医の働き方と給与の特徴
整形外科の扱う疾患は幅広く、何を専門とするかにより働き方や給与水準も当然変わってきます。整形外科医の働き方を大きく分けると、総合病院などで緊急の手術などをこなしながら外来・入院双方の患者さんを診療する働き方と、クリニックなどで比較的病状が安定した外来患者さんを定期的に診療する働き方の2パターンがあります。それぞれの働き方や給与の特徴は次の通りです。
①有床病院での勤務
一般的なクリニックでは対応できない重症患者さんから軽症患者さんまでを診察し、必要に応じて手術を行う総合病院や整形外科専門病院などでは、整形外科医は極めて多忙な勤務に置かれます。時間外勤務や日当直も多いですが、そのぶん給与水準は高くなる傾向にあります。
整形外科医が不足している地方部では、フルタイム勤務や緊急手術に対応できる医師を破格の待遇で迎え入れる医療機関もあります。また、都市部の整形外科専門病院では、人工関節置換術やマイクロサージャリーなど難易度が高く、熟練した技術を要する治療に長けた医師に対して高水準の給与を保証する場合もあります。
②無床クリニックでの勤務
入院施設のない整形外科では、外来診療のほか、手根管症候群などの日帰り手術が行われます。無床のため日当直やオンコールはなく、時間外勤務も少ない傾向にあります。したがって、有床病院で働く医師に比べれば給与水準は低くなるでしょう。しかし、日帰り手術の経験が豊富な医師には実施数に応じてインセンティブが付与されるなど、働き方次第で高水準の給与を得ることは可能です。まれに、クリニックの後継者候補として破格の待遇が保証されるケースもあります。
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3.整形外科医の満足度は低め
整形外科の給与水準が比較的恵まれている一方で、高所得の医師が少ないことは特徴の一つだといえます。また前述したように、労働負荷と給与が見合わないと感じているためか、自身の給与に対する満足度は高くありません。ただし、難易度の高い技術を習得した医師が破格の待遇で迎えられるケースや、手術の実施数に応じてインセンティブが付与されるケースがあることから、経験・スキル次第で自身の働きやすいバランスに調整することもできるのではないでしょうか。
給与重視かQOL重視かなど、転職を検討する際には自身がどのような勤務環境を大切にするかを考え、希望に合った勤務先を慎重に選んでください。
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