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インフェクションコントロールドクター(ICD)とは?役割や認定条件を詳しく解説

ポストコロナの医療現場において、感染対策の重要性は一時的なものではなくなりました。こうしたなかで、注目されているのが「インフェクションコントロールドクター(ICD)」です。感染対策に特化した専門資格ですが、認定された医師はどのような役割を担うことになるのでしょうか。今回は、近年、需要が高まっているICDについて詳しく解説します。

こんな方におすすめの記事です!

  • インフェクションコントロールドクター(ICD:Infection Control Doctor)とは何かを知りたい
  •  インフェクションコントロールドクター(ICD)が担う役割と義務、業務内容を理解したい
  • インフェクションコントロールドクター(ICD)を取得するメリットを知りたい

目次

インフェクションコントロールドクター(ICD: Infection Control Doctor)とは

インフェクションコントロールドクター(ICD: Infection Control Doctor、以下ICD)とは、ICD制度協議会が認定する感染制御の資格で、医療機関における院内感染対策を横断的に統括・指導する役割を担います。

ICDは、感染対策を“組織全体で機能させる”ための資格です。診療を主目的とする感染症専門医とは異なり、診療科を横断して感染対策体制の構築や運用に関与する立場であり、関連する他職種と連携しながら幅広い業務に対応します。

なお、資格認定の条件として、「医師であること、または感染症関連分野の博士号(PhD)を有すること」とされていますが、職種は限定されていません。ただし、実際の取得者は、医師や歯科医師、薬剤師、臨床検査技師などの医療系専門職が中心です。

この記事では、医師が資格を取得することを前提としてまとめています。

インフェクションコントロールドクター(ICD)の活躍の場

ICDは、急性期、慢性期を問わず、多くの医療機関で重要性が高まっている資格です。認定された医師は、医療現場全体の安全を守るリーダーとなることが期待されます。横断的で実効性のある対策を実施するために、「院内感染を防ぐ仕組みづくり」や「医療従事者への指導・助言」「感染発生時の対応方針の決定」などに携わります。臨床と並行して感染対策に関わりたい医師や、将来のキャリアの幅を広げたいと考える医師にとって、ICDの取得は今後の活躍の場を広げるきっかけとなります。

なお、ICD制度協議会によると、2019年時点で9,362名がICDに認定されています。

参考:インフェクションコントロールドクター(ICD)制度の発足に向けて|ICD制度協議会

インフェクションコントロールドクター(ICD)が担う役割と義務

ICDには、院内の感染リスクを減らし、患者と医療従事者を守る役割があります。単なる「感染対策担当」ではなく、医療施設全体において、院内感染の予防・管理・教育に関わることになり、医療施設全体の安全向上に尽力しなければいけません。

なお、ICD制度協議会は、学会や研修会などで最新の知識を継続的に学び、専門性の維持と向上に努める義務があることを明記しており、ICDの役割として以下の6つを掲げています。

<ICDが担う6つの役割>
 a)病院感染の実態調査(サーベイランス)
 b)病院感染対策の立案と実施
 c)対策の評価および対策の見直し
 d)職員の教育・啓発
 e)病院感染多発(アウトブレイク)時の対応
 f)伝染性感染症発症時の対応

参考:インフェクションコントロールドクター(ICD)制度の発足に向けて|ICD制度協議会

ICDの業務内容

では、実際にはどのような業務を担当するのでしょうか。院内での具体的な業務内容は、主に以下の4つが挙げられます。

  1. 院内感染の監視と予防
    院内において、結核や麻疹などをはじめとする感染症の発生状況を監視し、早期発見に努める。感染拡大のリスクがある場合には、対応策(隔離、衛生管理、感染対策マニュアルの適用)を指導・実施する。
  2. 感染対策の指導と教育
    医師、看護師、薬剤師、その他医療従事者に対し、感染防止の知識や手技の教育を行います。手洗いや個人防護具(マスク・ガウンなど)の適切な使用、抗菌薬の適正使用などの指導・啓発も合わせて実施します。
  3. 感染症発生時の対応・コンサルテーション
    集団感染(アウトブレイク)が発生した場合、原因調査や対策指導のほか、関連機関への報告も担当します。感染症発生のリスク評価や、医療施設の管理者への助言もICDの重要な役割です。
  4. 抗菌薬・治療戦略のサポート
    日本では抗菌薬を使用される機会が比較的多く、その影響で薬剤耐性菌が増加していることが国際的な課題となっています。こうした状況を受け、国は2016年に薬剤耐性対策の行動計画を策定し、抗菌薬を適切に使うことを重視する方針を示しました。
    ICDは、こうした耐性菌の動向や抗菌薬の使用状況を把握し、必要に応じて医師に適正な抗菌薬使用(抗菌薬スチュワードシップ)や感染症治療の方針について、他の医師や薬剤師と連携して助言する役割を担います。

参考:
インフェクションコントロールドクター(ICD)制度の発足に向けて|ICD制度協議会
Ⅳ 医療施設等における感染対策 ガイドライン|厚生労働省

ICD、ICN、感染症専門医との違い

ICDと同様に、医療従事者が取得・認定される感染症関連の資格がいくつかあります。ICDのほか、ICN(感染管理認定看護師)や感染症専門医などが代表的です。

それぞれの大まかな違いをまとめると、ICDは「全体を設計・統括する」、ICNは看護師が取得する資格で「現場で実践・教育する」、感染症専門医は、医師のみが取得できる専門医資格で「感染症の患者を治療する」立場にあり、それぞれに役割やキャリアの方向性が異なります。

代表例として、ICD、ICN、感染症専門医それぞれの違いをまとめました。

項目ICD
(インフェクションコントロールドクター)
ICN
(感染管理認定
看護師)
感染症
専門医
職種医師、または認定要件を満たすもの看護師医師
主な役割院内・地域の感染対策の統括・助言現場での感染対策実践・教育感染症の診断・治療
主要な活躍の場組織・体制づくり病棟・現場外来・病棟(臨床)
視点マネジメント・予防実践・継続的改善治療・医学的判断
資格の性質横断的資格
(診療科不問。医師以外も取得可能)
専門看護資格内科専門医のサブスペシャルリティとして取得できる専門医資格

参考:
インフェクションコントロールドクター(ICD)制度の発足に向けて|ICD制度協議会
感染管理|東京女子医科大学附属足立医療センター看護部
ICT | 独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪ろうさい病院

インフェクションコントロールドクター(ICD)資格認定の流れ

続いて、ICDの資格認定までの流れと認定機関について解説します。

資格認定と更新の条件

ICD認定を受けるには「医師であること、または、感染症関連分野の博士号(PhD)を有していること」が前提条件とされています。加えて、以下の3つの条件をすべて満たすことでICDに応募できます。

  1. 協議会に加盟しているいずれかの学会の会員であること(会員歴の長さは問わない)。
  2. 医師歴が5年以上の医師、または、博士号を取得後5年以上のPhDで、病院感染対策に係わる活動実績(感染対策委員歴、講習会出席、論文発表)があり、所属施設長の推薦があること。
  3. 所属学会からの推薦があること。

応募後、ICD認定委員会で上記の条件を満たしていることを確認し、協議会がICDとして認定します。加盟各学会は被推薦者の資質に対して責任があり、認定ICDには“ICD(◯◯学会推薦)”といった推薦学会が明示されます。ただし、申請時期によって、医師歴が5年未満の場合や、各学会・研究会への会費が未納である場合は推薦を受けられない可能性があります。学会によって申請期限や提出方法などが異なるため、事前に詳細を確認しておきましょう。

なお、推薦を行う認定機関には、日本感染症学会をはじめとする病院感染制御に関連の深い30の加盟学会や研究会があります。

参考: 加盟学会・委員会|ICD制度協議会

資格認定の具体的な流れ

ICDの申請に必要な業績と取得点数、論文発表数などについて表にまとめました。(2026年1月時点)

手順準備・評価内容必要取得点数・費用
1.感染制御に関する取り組みの整理・平常時の感染対策は1項目につき5点(例:院内感染の定期的なサーベイランス等)
・臨時的な感染対策は1項目につき2点(例:感染症発生時の対応)として評価される。
合計5点以上
2.学会または論文発表・論文は筆頭著者として1編、または共同著者として2編が必要。(学会誌または査読制度のある学術誌に掲載されたものに限る)
・学会・研究発表は筆頭演者1件、または共同演者2件とし、会期終了後の発表が対象。
規定数を満たすこと
3.指定講習会への参加
(ハイブリッド型講習会も開催あり)
・指定された講習会に3回以上参加し、合計45点以上を取得する。
・ICD制度協議会主催ICD講習会(1回15点)
・厚生労働省委託の院内感染対策講習会(1回15点)などが対象。
合計45点以上
4.申請料の振込み・書類提出所定の申請料を納付し、必要書類をそろえて提出する。申請料11,000円(税込)
5.認定料の振込み認定決定後、定められた認定料を支払う。認定料22,000円(税込)

参考:
申請手続きについて|ICD制度協議会
申請手順|ICD制度協議会
講習会概要|ICD制度協議会

最新の情報は、ICD制度協議会ホームページ (申請について)を参照し、必要な実績や書類などを確認してください。また、推薦してもらう学会の情報もあわせて確認しておきましょう。

また、資格取得後は、5年ごとの更新手続きが必要です。更新条件は、実績をはじめ、ICD認定協議会が実施する講習会、学会への参加などを点数化し、積極的に資質向上のための努力することとされています。

参考:
教育施設認定制度 | 一般社団法人 日本環境感染学会
申請手続きについて|ICD制度協議会

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」を取得するメリット

ICDの資格取得、更新にあたり、感染対策活動への実績や講習の受講などが求められます。「感染対策を体系的に学び、実務を行える医師」として、専門的で深い知識を得られるのが大きなメリットです。

加えて、ICD認定は、医療施設の経営面にもメリットがあります。感染症への適切な対応を実施し、感染対策委員会の設置により、診療報酬算定につながります。また、病院機能評価や行政対応の面で有利になるため、施設側にとってICD認定医師は重宝されます。こうした背景から、ICD認定後は院内での役割が明確になり、施設内での評価やキャリアアップにつながる可能性もあります。

さらに、感染対策体制の整備を重視する医療機関では、ICD資格が転職時のアピールポイントになるでしょう。診療科を問わず、すべての医療機関・施設で必要とされる存在であり、将来の選択肢が広がることもICD認定の利点といえます。

ポストコロナの時代に、ニーズが高まるICDを目指そう

近年、ますます感染症対策が重要視されています。ICDの認定を受けた感染症対策の専門家として、医療機関だけでなく、社会においても重要な役割を担うことができるでしょう。診療科を問わずチャレンジできるため、現在の専門領域を活かしながら、感染対策という横断的な分野に関わることが可能です。医師としてのキャリアの幅を広げることを目的に、キャリアパスの一環としてICDの取得を目指すのも一案です。ただし、ICD認定には、さまざまな条件を満たす必要があります。推薦学会への登録手続きも踏まえて、事前に情報を収集し、計画を立てて準備を進めてみてはいかがでしょうか。

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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)

小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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