和座 一弘先生(わざクリニック)01|DOCTORY(ドクトリー)

DOCTORY INTERVIEW

わざクリニック 院長
松戸市医師会 代表理事会長

和座 一弘先生

黎明期の試行錯誤がもたらした、豊かな実り。
和座一弘なるプライマリケア医のこと。

2004年に初期臨床研修が必修化され、総合的な臨床力の大切さが改めて見直された。この前後にプライマリケア医や総合診療医への人気が一気に高まったのも時代の趨勢といえるだろう。では、2004年以前に卒後研修を受けた医師は、その世代全員がプライマリケアの臨床力に劣るのだろうか。そんなことはあるはずがないと、証明してみせるのが和座一弘氏。制度が整う以前の混沌の時代に、試行錯誤を厭わず学んだ世代が、いかに力強い能力を身につけたのかを教えてくれる人物だ。

「都会でこそ生きるプライマリケア」を証明するために

千葉県松戸市、JR常磐線馬橋駅から徒歩1分のビルにある「わざクリニック」は、小児科、内科、胃腸科を専門とするクリニック。クリニックのホームページには、5つのモットーとして「近接性」「責任性」「協調性」「継続性」「総合性」が謳われており、同じページには「外来診療以外に往診、訪問診療(在宅での治療)をご希望の場合も遠慮なくご相談ください」と、別のページには「いつでも留守電にメッセージを残してください」とも記されている。どうやら、地域に寄り添い、間口の広い医療を展開しているようだ。

実際に足を運んでみると、1月下旬の平日午後6時過ぎの同院待合室は、多数の患者がソファーを埋めていた。地域から信頼され、頼られていることが一目でわかる風景だった。
2001年開設。院長は、プライマリ・ケア学会認定指導医の和座一弘氏。プライマリケアの世界では、かなり名の知れた人物である。そんな和座氏が、この地に開業した動機はいかに。

「プライマリケア医や総合診療医を『へき地でこそ生きる医師』と考える向きがありますが、私の中には『いや、違う』との思いがあった。その考えを証明してみたい気持ちが松戸市での開業を後押ししたのかもしれません。開業に至った原動力の大部分は、実はただの『勢い』なのですが(笑)、『都会でこそ生きるプライマリケア』を証明したい気持ちは強くありました」
独自の考えを証明することはできたのだろうか。
「開設半年で経営が軌道に乗ったことで、証明できたのではないでしょうか」
勝因は?
「子供から老人までトータルに診られる医師へのニーズは、都会にもへき地にも同様にあるのです。私は以前、専門医のひしめく都会では、プライマリケア医や総合診療医が出る幕はないという意味の指摘を受けたことがあります。でも、それは絶対に違うと思いました。

たとえば、私のところに病を得たお子さんが受診した際、お子さんへのケアで疲れ過ぎ、体調を崩しかけているお母さんのことも気遣ってあげられますし、診断、治療をして差し上げられます。
そういった、私たちの強みである総合力は、都会の医療においてもしっかりと生きると信じていました」
都会でのプライマリケアで、心がけるべきことは?
「へき地で活動するならすべてをひとりで完遂する覚悟を持つが、都会では腕のある専門医とはネットワークを組み、適宜紹介できるような柔軟な思考を持っているべきでしょう。都会では、コーディネータとしての役割も意識して活動すれば、患者さんによりよい医療が提供できると思います」

開業しなければ得られなかった学び。地区医師会の存在意義。

開業して14年目の2015年には、任期4年の松戸市医師会会長も任された。
「大変光栄に思っていますし、仕事に熱中してもいます。開業して以降、私がもっとも大きく学んだことが地区医師会の重要性のような気がします。

たとえば前述したプライマリケア医のコーディネータとしての機能ですが、紹介先である専門医の質に不安があっては患者利益につながりません。それを担保するのは、医師会以外にないでしょう。
また、松戸市には夜間小児急病センターという独自の診療体制が稼働しています。これは松戸市の小児開業医が発案したものですが、場所の提供と人材のサポートを市立病院から引き出し、12年にもわたって維持できているのは、間に立って必要な調整を果たした松戸市医師会の功績です。

昨今、巷間で語られることが増えた『都会での地域医療はどうあるべきか』は、松戸市ではひとつの形として実現しています。そして、その地域医療の成否は、地区の医師会の働きがかなりの役割を担っているのだと実感しているところです」

私たちはつい、国を動かそうとする。その前にすべきことがある。

地区医師会について「学んだこと」とは、いったい何だろう。
「私も勤務医時代には、他聞に漏れず、医師会を『ただの利益誘導団体だろう』と色眼鏡でみるところがありました。しかし、開業して会員になってみると、考えが改まりました。会員のみなさんが手弁当で会議に足を運んでいらっしゃいます。また、開業医同士のよりよいネットワーク作りに努力し、最終的にはそれを患者利益につなげようと真摯に取り組まれていたのです」
それだけではない。

2016年度
医師会理事旅行・兼六園にて

「政策提言についてもそうです。私たちはつい、改めるべきだと感じたことを実現するために国を動かそうと考えがちです。しかし、国会などは、そうたやすく耳を傾けてくれるものではありません。
それに比べ、地方自治体は、医療制度に関しては地区医師会から発せられる声をないがしろにはしません。『地方自治体が大事な補助金交付先と認識しているのは、消防署と地区医師会だけだ』という言葉があるのをご存じですか? そういった存在を具有する地区医師会からの医療政策に関する提言には、当然ですが担当者はしっかりと耳を傾けてくれます。とくに松戸市の医師会は、的を射た政策案を次々に送り出す俊英ぞろい。もちろん行政担当者は、一つひとつしっかりと内容を吟味して判断をくだしている。自治体と医師会の関係はきわめて良好といえるでしょう。

そういった中で、医師会会員約400名の代表、あるいは総意として提出した医療政策が着々と実現していくようすを見れば、誰もがやりがいを感じると思うのです。
全国の医師会が総力を挙げれば、地域医療の問題はかなり改善されていくこととおもいます」

わざクリニック 院長
松戸市医師会 代表理事会長

和座 一弘先生

1985年新潟大学医学部卒業
1987年自治医科大学地域医療学教室入局
1996年ケース・ウエスタン・リザーブ大学(米国)に留学
2000年ケース・ウエスタン・リザーブ大学家庭医療学臨床助教授
2001年4月 わざクリニック開院
2005年4月 東京医科歯科大学臨床教授
2014年5月 松戸市医師会長

(2017年01月取材)

「Doctor=医師」+「Story=物語」+「Victory=成功、喜び」から成る造語です。第一線で活躍される先生方のキャリアや生き方に関するお話をうかがい、
若き医師たちの指針となるようなメッセージをお届けします。

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