地域包括医療にどう関わる?医師の求められる役割や活躍の場を紹介|医師の現場と働き方

地域包括医療にどう関わる?医師の求められる役割や活躍の場を紹介

少子高齢化社会が進むなか、地域全体の医療や介護をサポートする「地域包括ケアシステム」の構築が推進されています。地域医療の担い手となる医師として、地域包括ケアシステムの仕組みを理解しておくことが大切です。地域医療への介入はキャリアの選択肢になるものであり、今後、活躍の場が広がる可能性があります。今回は、地域包括ケアシステムの概要とともに、医師に求められる役割について解説します。

こんな方におすすめの記事です!
  • 地域包括ケアシステムの定義や5つの要素を知りたい
  • 地域包括医療における医師の役割を確認したい
  • 活躍できる具体的な環境の知識を取り入れたい

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目次

  1. 地域包括ケアシステムとは
  2. 地域包括ケアシステムを構成する5つの要素
  3. 地域包括医療において医師に求められる役割とは
  4. 地域包括医療において医師が活躍できる職場とは
  5. 地域包括医療の現場で活躍するという選択肢を考えてみよう

地域包括ケアシステムとは

地域医療を深掘りするうえで理解しておきたいのが「地域包括ケアシステム」の仕組みです。地域包括ケアシステムとは、地域住民が住み慣れた地域で医療や介護のサービスを受けて、自立した生活を営むことができる体制を整える取り組みのことをいいます。

日本では、団塊の世代が75歳以上となる2025年問題、総人口に占める高齢者の割合がピークを迎えることが予想される2040年問題などから考察すると、医療・介護サービスの需要は今後さらに増加すると見込まれています。そのようななかでは、限りある地域の社会資源を活用し、地域特性を活かした支え合いのネットワークの構築が重要であり、国も地域包括ケアシステムの構築推進をしています。

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少子高齢化が深刻さを増す中、新たな医療の形として地域医療が注目を集めています。転職先として地方の病院やクリニックを検討する医師も出始め、社会的にニーズが大きい在宅診療や高齢者医療への人材の移動が現実的になりました。今回は地域医療の役割や魅力について解説します。

地域包括ケアシステムの定義

地域包括ケアシステムという言葉の定義は、2013年12月に成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」の第4条第4項にて、下記のように規定されています。

●地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制

参照:地域包括ケアシステム|厚生労働省

地域ごとに高齢者の割合や医療機関の数、住環境などが異なるため、市町村・都道府県が地域の自主性や主体性をもとに、それぞれの特性に合わせた地域包括ケアシステムの構築を進めています。

地域包括ケアシステムを構成する5つの要素

地域包括ケアシステムは、地域での暮らし全般をサポートする仕組みです。軸となる5つの要素について理解しておきましょう。

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地域医療構想とは?「医師の働き方改革」や「地域包括ケアシステム」との関係性も解説

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医療

病院やクリニックをはじめ、在宅医療や訪問看護、調剤薬局などの専門機関・専門職から受けられるサービスがあげられます。特に、高齢者は複数の疾患にかかるリスクも高く、医療機関の連携が欠かせません。医師を中心とした医療サービスの十分な提供と、他機関・多職種との連携が求められます。

介護

医療と同様に、誰もが不自由のない生活を営むためには、地域密着型の介護サービスが必要不可欠です。医師の常駐が義務付けられている介護施設もあり、介護と医療は並行することも多いため、医師は介護福祉士やリハビリ職、ケアマネジャーなどの専門職との連携が求められます。

介護予防

介護保険サービスは、原則65歳以上の高齢者で、要支援・要介護のいずれかの等級に認定された場合に受けられます。どちらの等級にも該当しない高齢者に向けては、地域の取り組みとして、体操やレクリエーションなどの機会を提供し、介護予防に取り組むことが推進されています。

「認知症予防教室」なども、介護予防の一環として活用されており、医師による予防医療も介護予防につながります。

住まい

自宅で受けられる各種サービスや、入所施設などを指します。例えば、介護保険サービスを活用して、自宅に手すり、スロープなどの福祉用具を利用(設置)する、特別養護老人ホームなどの入所施設を利用する、障がい者の支援施設を拡大するなどがあげられます。高齢者のプライバシーや尊厳が尊重される環境を整えるための取り組みが求められます。

自立した日常生活

地域住民が自立した日常生活を送るためには、地域のボランティア活動、憩いの場として提供する高齢者サロン、配食サービス、家事援助なども地域包括ケアの一環です。地域が一体となって高齢者をサポートする体制を構築することが、地域包括ケアシステムの根本といえます。

地域包括医療において医師に求められる役割とは

地域包括ケアシステムの構築にあたり、「医療」の担い手である医師にはどのような役割が求められているのでしょうか。ポイントをまとめました。

かかりつけ医として患者に寄り添う

「かかりつけ医」とは、患者自身の健康状態について、なんでも相談できる関係にある医師のことを指します。2013年8月8日に示された日本医師会・四病院団体協議会合同提言「医療提供体制のあり方」では、かかりつけ医を下記のように定義しています。

●健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師

参照:医療提供体制のあり方|日本医師会・四病院団体協議会(厚生労働省)

高齢患者は、複数の疾患が併発しているケースも多く、診療科ごとに複数の医療機関を利用し、情報が共有されにくい状況にあります。かかりつけ医が日常的に関わることで、総合的な視点で患者の変化を見抜き、病気の早期発見・治療につなげやすくなります。

また、障がい児を抱える家庭では、在宅診療のニーズが高く、医療・介護のサポートにおいても専門的な知識が必要です。

地域として患者をサポートする体制を構築するには、かかりつけ医の存在がより重要なものといえます。

専門医療機関との連携

自分の患者が重篤な病気にかかった場合には、専門医療機関との迅速な連携が求められます。かかりつけ医として、地域の医療機関に関する情報は把握することが必要であるほか、高い専門性を持つことが、さまざまな病気の早期発見にもつながります。

多職種との連携

かかりつけ医として患者を支援するには、多職種との連携が欠かせません。例えば、訪問看護の看護師や、地域包括支援センターの保健師、社会福祉士などとの連携は、患者を支援するうえで必要不可欠です。

受診時だけでは把握できないような、日頃の生活の様子や困りごとなどの情報共有、さらには患者家族との関係性の構築などは、地域包括ケアシステムにおける医師の役割として必要です。

医療と介護の連携

高齢患者では、加齢とともに医療サービス・介護サービスの両方が必要になるケースが多くあります。また、障がいを抱える人の生活には、介護が欠かせません。

元来、医療は医療専門機関、介護は介護専門機関と分かれていましたが、地域包括ケアシステムを構築するうえでは、両者の連携は必須といえるでしょう。

介護保険サービスを提供している事業所や、介護専門職との連携を図ることで、患者の日常的な様子や困りごとなどを早期にサポートする体制が構築可能となります。

地域包括医療において医師が活躍できる職場とは

地域包括医療の推進には、医師の役割が欠かせません。地域の特性や住民のニーズに応じて、医師が力を発揮できる場も多様化しています。医師が活躍できる職場例を紹介します。

地域包括ケア病棟

地域包括ケア病棟とは、急性期治療を終えた患者さんや、退院後すぐに在宅や施設への復帰に不安がある患者さんなどに対して、在宅復帰に向けた支援を主な目的とする病棟です。

医師をはじめとしたチーム医療で患者さんのケアにあたり、在宅復帰支援計画を策定して、入院期限内にて在宅環境の調整を完了しての退院を目指します。

退院支援では、患者さんの家族や地域包括支援センター、介護サービスを提供する事業所などとの連携が求められます。地域にある社会資源のなかから、患者さん一人ひとりに最適な支援を検討・導入するのはもちろん、予後を見据えた医師ならではの判断や提案力により、さらに大きな活躍の場が広がります。

地域包括医療病棟

地域包括医療病棟とは、救急患者などを受け入れる体制を整えたうえで、リハビリテーションや栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に担う役割を持つ病棟です。

高齢者の人口増加に伴い、高齢者の救急搬送において軽症・中等症のケースが増加傾向にあることが問題視されています。また、従来の急性期病棟に入院しても、回復が遅い高齢患者さんは、回復期病院への転院などによって社会復帰が遅れてしまうことが懸念されていました。そうした背景のなかで、2024年度から、病棟区分の1つとして新設されました。

地域包括医療病棟では、高齢患者に対して、救急対応後の早期離脱を支援し、退院に向けての栄養管理やリハビリ、ADL(日常生活動作)の改善などを行います。さらに、在宅環境の整備や調整、家族や介護サービス事業所などの地域関係者と連携しながら、患者さんの社会復帰を支援することになります。こうしたプロセスのなかで、医師は中心的な役割を担います。

地域密着型の診療所やクリニックを開業する

地域密着型の医療施設を開業し、地域の患者さんを支援する体制を整えるという選択肢もあります。大規模な病院と比べて、一人ひとりの患者と向き合える時間を確保しやすく、自身が考える理念に基づいて、実施したい医療サービスを提供できるのが特徴です。

外来だけではなく、在宅医療にも携われば、さまざまなケースで地域の医療課題に向き合えるため、地域包括ケアシステムの中核的存在として貢献できるでしょう。

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保健所・保健センターなどでの勤務

都道府県庁や各自治体、保健所・保健センターなどに勤務することも、地域医療に大きく貢献できることです。公衆衛生医師として、これまでの診療経験を活かし、地域住民の健康や生活衛生の保持、介護・福祉系機関といった地域の関係機関との連携などが求められます。

地域医療の課題解決や、地域包括ケアシステムの推進などの役割もあり、地域関係者と接する機会の多い立場のなかで、住民の生活しやすい地域づくりに貢献できる職場といえます。

地域包括医療の現場で活躍するという選択肢を考えてみよう

地域包括ケアシステムの構築が求められるなか、地域関係者や多職種と連携し、患者一人ひとりと向き合う医師の役割は大きいといえます。「都市部では専門外来で多忙になりやすい」、「地方では包括ケアに人材不足」といった背景のなかで、自身のキャリアと地域の未来を結ぶ選択肢になりえます。今後ますます地域医療のニーズが高まるなかで、包括的に活躍できる医師としてのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。

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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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