泌尿器科は、尿路感染症や前立腺肥大症など日常的によくみられる疾患のほか、膀胱がん、前立腺がん、腎臓がん、慢性腎不全、性感染症、EDなど幅広い疾患を扱う診療科です。手術などを多くこなす急性期病院に勤務する場合は多忙になるケースが多い一方、それ以外の医療機関では比較的ゆとりのある勤務も可能となります。今回は、泌尿器科医の働き方と年収事情について解説します。
- 泌尿器科医の平均年収は他の診療科と同水準だが、診療内容によって差が大きい。
- 人工透析を主に扱う医療機関や美容系クリニックでは、高度なスキルや豊富な経験を有する医師は破格の待遇で迎えられることもある。
- 無床クリニックでは給与水準は下がるが、時間外労働や日当直がなくワークライフバランスを確保できる。
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1.泌尿器科医の年収事情
「医師・歯科医師・薬剤師統計」(厚生労働省、2018年)によれば、医療施設に従事する全医師数は31万1,963人であり、そのうち泌尿器科医は7,422人(2.4%)です。また、扱う疾患の性質上、泌尿器科医は男性のほうが圧倒的に多いという特徴があります。しかし、泌尿器科の患者数は多く、前立腺疾患を除いては男女ともに発症する可能性のある疾患を扱うため、女性の泌尿器科医の需要も決して低いわけではありません。
「必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)によれば、泌尿器科医の求人倍率は1.13倍であり、調査対象となった全診療科の中で平均的な需要の高さだといえます。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の平均年収は1,078.7万円となっています(4科をまとめて集計)。これは調査対象となった全診療科の中で最も低い水準です(全診療科における平均年収は1,261.1万円)。ただし、育児などの理由で時短勤務をする女性医師の割合が高い眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科を含んだ数字であることに注意が必要です。泌尿器科医の場合は、他の診療科の医師とほぼ同等の給与水準と考えられ、働き方次第では高収入を得ることも十分に可能だといえるでしょう。
■診療科別・医師の平均年収
順位 | 診療科目 | 平均年収(万円) | (計n=2,876) |
---|---|---|---|
1 | 脳神経外科 | 1,480.3 | (n=103) |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 | (n=130) |
3 | 外科 | 1,374.2 | (n=340) |
4 | 麻酔科 | 1,335.2 | (n=128) |
5 | 整形外科 | 1,289.9 | (n=236) |
6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | (n=304) |
7 | 内科 | 1,247.4 | (n=705) |
8 | 精神科 | 1,230.2 | (n=218) |
9 | 小児科 | 1,220.5 | (n=169) |
10 | 救急科 | 1,215.3 | (n=32) |
11 | その他 | 1,171.5 | (n=103) |
12 | 放射線科 | 1,103.3 | (n=95) |
13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | (n=313) |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
年収帯別にみると、最も割合が高いのは1,000~1,500万円未満(33.2%)であり、1,500~2,000万円未満は22.0%、2,000万円以上は4.2%となっています。一方で、年収500万円未満も10.9%いますが、ここには時短勤務などをしている医師が多く含まれる可能性が高いと考えられます。
■眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科の年収階層別の分布
主たる勤務先の年収 | 割合(%) |
---|---|
300万円未満 | 2.6 |
300万円~500万円未満 | 8.3 |
500万円~700万円未満 | 12.5 |
700万円~1,000万円未満 | 17.3 |
1,000万円~1,500万円未満 | 33.2 |
1,500万円~2,000万円未満 | 22.0 |
2,000万円~ | 4.2 |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
2.泌尿器科医の働き方と給与の特徴
前出の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の自身の給与に対する満足度については、「満足している」「まあ満足」との回答は34.8%であり、満足寄りの回答割合が他の診療科と比べてかなり少なめでした。「どちらとも言えない」が24.0%と多めであることも特徴的です。
「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の1週間あたりの労働時間は44.3時間となっており、調査対象となった全診療科の平均(46.6時間)に比べるとやや低い水準です。最も多くを占めるのは40~50時間未満(32.1%)ですが、60時間以上も20.5%にのぼり、4診療科の中でも泌尿器科では長時間労働を余儀なくされるケースもあると考えられます。ただし、泌尿器科医の働き方は勤務先で扱う疾患や行う治療により大きく異なります。以下に詳しくみていきましょう。
2-1.総合病院(主に急性疾患)
敗血症に移行するような重症尿路感染症、がんなど緊急性の高い疾患の診療をメインとする総合病院の医師は、時間外労働、日当直、オンコール対応などを課されることが一般的です。特に、さまざまな診療科を標榜している医療機関では、他科入院中の尿路感染症患者などの治療を依頼されるケースも多く、忙しく働くことになるでしょう。
2-2.無床クリニック(主に慢性疾患)
前立腺肥大症などの慢性疾患や軽症尿路感染症などの診療をメインとするクリニックは、基本的に時間外労働や日当直などの業務がないため、ワークライフバランスを確保した働き方が可能です。一方で、労働時間が短いため給与水準は低めになります。また、手術手技などを習得したい医師は他の職場を選択するほうがよさそうです。
2-3.透析医療機関
泌尿器科医が扱う疾患のひとつである慢性腎不全は、進行すると人工透析を余儀なくされることがあります。そして、人工透析は泌尿器科医が担う治療です。透析を導入する患者さんは年々増えているので、透析治療をメインとする医療機関では泌尿器科医の需要が高まっています。透析医療機関では基本的に時間外労働などはありませんが、祝祭日や年末年始などにかかわらず治療しなければならないため、休暇を取得しにくいことが難点。ただし、給与水準が高いというメリットがあり、中には年収2,000万円以上を提示して医師を募集する医療機関もあります。
2-4.美容系クリニック
泌尿器科医の職場として意外と認知度が高まっているのが、包茎手術やED治療などを行う美容系クリニックです。こうした自由診療を行うクリニックの給与水準は極めて高い傾向にあり、経験豊富で集患力のある医師を年収3,000万円以上の破格の待遇で募集するケースもあります。また、常勤医としてではなく日給8~15万円ほどでアルバイト勤務する医師もいます。
ただし、美容系クリニックで行う手術手技は一般病院で習得できるものではないため、入職後に新たな技術を身に付ける必要があります。場合によっては二重手術など泌尿器科では扱わない症例への対応を求められるケースもあるので、事前にしっかりと業務内容を確認しておきましょう。
3.泌尿器科医が年収を上げるには?
泌尿器科医が高水準の年収を得たいなら、高度な技術を有し経験も豊富な集患力のある医師になることが重要です。人工透析をメインとする医療機関や自由診療を行う美容系クリニックで、集患力のある医師は重宝される傾向があります。泌尿器科の年収は、平均した年収金額でみると他の診療科と同様の水準ですが、勤務医であってもこのように破格の待遇が受けられる働き方ができる、めずらしい診療科です。
希望するキャリアの方向性やプライベートとのバランスを考慮に入れながら、ご自身の納得度の高いキャリアプランを検討してみてください。
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