「患者さんの生死に直面し、激務で寝る暇もないほどである」というイメージが強い救急科。テレビドラマなどの題材になることが多いのもドラマチックな一面があるからでしょう。医師としてやりがいのある分野であることは間違いなく、ワークライフバランスを重視する風潮がある昨今でも志望度の高い若手医師が集まる診療科です。そんな救急医の年収事情と働き方事情を紹介します。
- 救急医の平均年収は他科よりも低く、年収水準に対する満足度も低い。
- 年収水準が低い背景として、激務によりベテラン医師が定着しづらいことや地方では大学病院や公立病院での勤務が主であることが挙げられる。
- 今後、働き方改革によって救急医の勤務環境は改善される見込みである。
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1.救急医の年収事情
「医師・歯科医師・薬剤師統計」(厚生労働省、2018年)によれば、医療施設に従事する全医師数31万1,963人の中で、救急医は3,590人です。その割合はわずか1.2%であり、社会にとって欠かせない存在でありながら、その充足数は極めて心もとない現状だといえるでしょう。
「必要医師数実態調査」(厚生労働省、2010年)によれば、救急医の現員医師数は2,610.1人であり、全国で常勤・非常勤を合わせて725.9人の増員が必要とされています。求人倍率は1.28倍にもなり(全科の平均は1.12倍)、調査対象となった全診療科の中でリハビリテーション科(1.29倍)に次いで高い水準です。救急医の需要は全国的に高く、地域偏在もあってほしくないところですが、絶対数も地域ごとの充足率も明らかに不足しているといえるでしょう。生命を救うために過酷な勤務環境下で尽力する救急医の給与水準は高くあってほしいものですが、実際はどうなのでしょうか。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、救急医の平均年収は1,215.3万円となっています。調査対象となった全診療科の医師の平均年収は1,261.1万円なので、他科の医師よりも給与水準は低いことが分かります。
■診療科別・医師の平均年収
順位 | 診療科目 | 平均年収(万円) | (計n=2,876) |
---|---|---|---|
1 | 脳神経外科 | 1,480.3 | (n=103) |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 | (n=130) |
3 | 外科 | 1,374.2 | (n=340) |
4 | 麻酔科 | 1,335.2 | (n=128) |
5 | 整形外科 | 1,289.9 | (n=236) |
6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 | (n=304) |
7 | 内科 | 1,247.4 | (n=705) |
8 | 精神科 | 1,230.2 | (n=218) |
9 | 小児科 | 1,220.5 | (n=169) |
10 | 救急科 | 1,215.3 | (n=32) |
11 | その他 | 1,171.5 | (n=103) |
12 | 放射線科 | 1,103.3 | (n=95) |
13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 | (n=313) |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
しかし、救急科において最も多い年収帯は1,500~2,000万円未満(25.0%)であり、2,000万円以上を得ている医師も15.6%にのぼります。年収2,000万円以上の割合は、調査対象となった全診療科の中で「産科・婦人科」(20.8%)、「脳神経外科」(19.4%)に次いで3番目に高くなっています。一方で、年収が1,000万円に満たない医師も37.6%を占め、中でも500万円に満たない医師は6.3%です。
■救急医の年収階層別の分布
主たる勤務先の年収 | 割合(%) |
---|---|
300万円未満 | 0 |
300万円~500万円未満 | 6.3 |
500万円~700万円未満 | 12.5 |
700万円~1,000万円未満 | 18.8 |
1,000万円~1,500万円未満 | 21.9 |
1,500万円~2,000万円未満 | 25 |
2,000万円~ | 15.6 |
(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」2012年をもとに作成)
すなわち、救急医の給与水準は二極化していることが示唆されます。その原因として、都市部では高額な報酬で経験豊富な救急医を募集する私立病院などが多いものの、地方の多くは給与水準が低い大学病院や公立病院の救命救急センターなどで勤務する医師が大半を占めることが挙げられます。
また、「医師・歯科医師・薬剤師統計」(厚生労働省、2018年)によれば、救急医の平均年齢は41.7歳であり、全医師の平均年齢49.9歳に比べると若手医師が多い傾向にあります。それどころか、調査対象となった全診療科の中で最も平均年齢が低いことは特筆すべきでしょう。背景として、一度は救急医になったものの多忙な勤務に気力・体力が追い付かず転科を選択する医師が一定数いることが考えられます。その結果、高給与を得るベテラン医師はなかなか増えず、平均年収が上昇しないといった状況となっているのでしょう。
2.救急医の働き方と給与の特徴
救急科は、ひっきりなしにやって来る急患や救急車の対応にあたり、日当直や時間外労働も多い診療科です。救急の患者さんを診るためには様々な診療科の知識が必要で、しかも一刻を争う状況の中で冷静に適切な判断を下し続けることが求められます。プライベートを犠牲にするような働き方になることもあるばかりか、常に厳しい自己鍛錬が必要なのです。
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(労働政策研究・研修機構、2012年)によれば、自身の給与額について「満足」「まあ満足」と回答した救急医は36.1%であった一方、「少し不満」「不満」と回答した医師は55.5%にものぼることが分かりました。55.5%という数字は調査対象となった全診療科の中で突出して高く、多くの救急医が自身の働きに対して給与面で報われていないと感じていることになります。
このような調査結果を見ると、救急医になることや救急医を続けることに不安を感じてしまうかもしれませんが、今後の勤務環境に希望の兆しが見えます。例えば、近年では救急医の「働き方改革」に本格的に着手する医療機関も増えてきています。業務上のミスを防ぐためにも、救急医のワークライフバランスを尊重するためにも、休むときにはしっかり休んでリフレッシュする、オンとオフを明確にした働き方が推奨されるようになっているのです。
こうした時代の流れは、救急医療の現場を着実に変えていくものと思われます。救急医の給与水準が直ちに大幅向上することは期待しにくいのですが、働き方改革が進むことにより、業務負荷と給与水準のバランスは改善されていくでしょう。
3.救急医の勤務先の選び方
救急医は医師としてやりがいがある仕事に関わることができ、多くの患者さんに必要とされている存在です。ハードな勤務環境であることが一般的ですが、具体的な勤務体系や給与体系、さら前項で述べた「働き方改革」への取り組みの度合いは医療機関によって大きく異なります。現在救急科で転職を希望する方や他科から救急科への転科を考えている医師の方は、どのようなことに重きを置いて働きたいかをじっくり考え、それにマッチする職場を吟味することをおすすめします。
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