【医師の働き方改革】36協定の基礎知識|医師の現場と働き方

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【医師の働き方改革】36協定の基礎知識

厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」は、医師の時間外労働(いわゆる残業)の取り扱いをめぐって1年半以上の議論を重ね、2019年3月28日に最終報告書を発表しました。「働き方改革」の波が、いよいよ医師の世界にも及ぶことになります。医師の時間外労働を考える上で欠かせない「36(サブロク)協定」に関する基礎知識を押さえ、「働き方改革」を理解する準備を始めましょう。

<この記事のまとめ>
・労働現場の実態をふまえ「1日8時間、週40時間以内」の法定労働時間の規制を緩和するための存在が36協定
・36協定は、使用者と労働者の労使協定締結と労働基準監督署への届出をもって免罰的効力が発生する
・「特別条項付き」36協定にはこれまで時間外労働の上限規制がなかった
・時間外労働に対しては割増賃金が支払われる

1.36協定とは

1-1.法定労働時間

労働基準法によれば、労働時間は1日8時間以内、週40時間以内とすることが原則です。この原則にもとづく労働時間を「法定労働時間」と呼びます。とはいえ、現場の実態として、法定労働時間におさめることは難しいことも多く、とりわけ勤務医の場合はほとんど不可能だといえるでしょう。そこで、時間外労働規制を緩和するために存在するのが36協定です。

法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合は、労働者との間で労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、使用者は労働基準法違反に問われることがなくなります(免罰的効力)。労使協定は必ず労働基準監督署に届け出る必要があり、単に締結しただけでは免罰的効力は発生しません。このような内容が労働基準法第36条1項に規定されていることから、前述の労使協定が「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

1-2.時間外労働の上限

ただし、時間外労働規制の縛りを緩めるといっても、野放図に緩めては労働者を働かせ放題になってしまいます。そこで厚生労働大臣は、36協定に定められた一定の期間(1カ月、1年など)についての時間外労働延長の限度を、労働者の福祉などを考慮しつつ定めることができるとされています。具体的には、1カ月なら45時間、1年なら360時間が時間外労働延長の限度です。

2.「特別条項付き」の36協定

2-1.特別条項付き協定

ところが、この「時間外労働延長の限度」は、真の限度ではありません。労使間で特別な36協定(「特別条項付き協定」)を締結していれば、前述の厚生労働大臣による限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る)が生じたときに限り、限度時間を超えて労働時間を延長することができるからです(年6回まで)。しかも、特別条項付き協定に基づく労働時間の延長については、上限時間を縛る法規制がありませんでした

■36協定概念図

出典:平成29年医師の働き方改革に関する検討会第1回・資料2「働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制等について」

まさにこの「特別条項付き協定」の存在が、合法的な超長時間労働を可能にしてきたといえるでしょう。実際、医師の働き方改革に関する検討会の資料では、3つの病院における36協定の運用例が紹介されていますが、1カ月当たりの時間外労働の限度は150~200時間、1年当たりの時間外労働の限度は990~1470時間にまで拡大されています。もちろん、医療現場という環境、医師という責任ある立場を考えると、前述した「厚生労働大臣による限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情」も少なくないのかもしれませんが、それでも36協定が少し安易に運用されてはいないかという疑念もぬぐい去れません。

■36協定の運用例

出典:平成29年医師の働き方改革に関する検討会第1回・資料2「働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制等について」

2-2.過労死ライン

なお、厚生労働省「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く)の認定基準について」では、(1)発症前1カ月間におおむね100時間を超える時間外労働、あるいは(2)発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働があれば、業務と発症との関連性が強いとされています(いわゆる過労死ライン)。健康の専門家である医師の少なからずが、過労死ラインの間際、あるいはそれを踏み越えたところで働いており、日常的に健康障害と隣り合わせの状態にあるという現状は、ちょっと皮肉なことにも思われます。

3.残業代は出る?

労働の対価である賃金についても気になるところです。たとえば36協定を締結したことによって残業代に何らかの影響はあるのでしょうか。結論から言えば、時間外労働に対する割増賃金(割増率2割5分以上)は、労働基準法の原則通りに支払われます。月60時間を超える時間外労働については、さらに高い割増賃金(割増率5割以上)の対象となります(ただし、中小事業主は適用猶予中)。

また、仮に36協定の上限を超えて労働した場合、それは違法なのだから一切の残業代が支払われないのではないかと心配になるかもしれません。しかし、その場合でも、労働者は実際の労働時間に応じた賃金の支払いを受ける権利があります。守るべきルールを守れなかったのは使用者側でありながら、それによる不利益を労働者が受けることは不合理だからです。

ここまで、知っているようで意外と知らない36協定の基本について紹介しました。ワークライフバランスを重視して働きたい医師の方は下記の求人情報もチェックしてみましょう。

PROFILE

執筆/成田 亜希子(なりた・あきこ) 
 
医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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