医師は比較的転職回数が多い職業です。他の職業に比べて転職回数によって不利になりにくいため、転職をすることに抵抗がないのだと推察されますが、いったい医師はどのような理由で転職をしているのでしょうか。また転職を成功させるためにどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。
- 医師の代表的な転職理由に興味がある方。
- 転職先の内情を知りたい方。
- 満足度の高い転職を目指す方。
医師に多い転職理由とは?

医師は医師人生の中で複数回、転職を経験します。転職する理由には、年代や専門とする科目や診療内容、勤務環境などさまざまな要素が影響しています。ここでは代表的な医師の転職理由と理由ごとに合った転職先候補を紹介しますので、キャリアプランを考える際の参考にしてみてはいかがでしょうか?
①妊娠、出産、育児
働く女性にとって、妊娠や育児はキャリアプランの変更を考えるきっかけになりやすい大切なイベントです。それが体力的にも精神的にもハードな勤務環境に置かれている女性医師であればなおさらでしょう。出産後は、時短勤務が可能な医療機関や、残業や当直がない施設への転職を希望する傾向があります。このような場合は転職先の病院に求める条件が明確なので、転職後もミスマッチが起きにくいのも特徴です。
近年では託児所が併設された医療機関も増えています。出産後の転職を検討している方は、医療機関に託児所が併設されているかどうかを調べておきましょう。多忙な方は、あらかじめ転職エージェントなどを通じて希望を伝えておくと、希望に合った転職先候補を探してもらえるのでおすすめです。
時短勤務が可能な医療機関や保育園併設の病院などが見つからず職場復帰がうまくいかない場合、一時的にフリーランス医として働くのもおすすめです。ほぼすべての診療科にフリーランス医の需要はありますし、肉体的・時間的に負担の少ないコンタクト診療や皮膚科診療は、未経験でも受けて入れてくれる求人があります(※)。
②年収アップ
労働時間や勤務内容には不満はないけれど、年収に不満がある――これも比較的よく聞かれる転職理由です。金融機関のローンなどの審査は年収によって変わるため、住宅の購入を検討する際に年収について改めて考える人が多い印象です。年収アップを希望する場合、より給与水準の高い病院に移ればいいだけだと考えられる傾向がありますが、病院によって内情が異なるため給与以外の部分でミスマッチが起こるケースがあり、注意が必要です。ミスマッチを防ぎ、満足度の高い転職をするには、内情をよく把握するための情報収集が欠かせません。
年収アップを希望するなら、勤務する地域を変更するという方法も有効です。一般的に医師の給与は医師の充足度が低い地域ほど高くなるため、給与水準は都市部ほど低く、郊外ほど高くなります。引っ越しまでを考える必要はありませんが、電車で1時間から1時間半ほどかけて通勤ができる範囲の求人まで探してみると、より高額のオファーのある病院を見つけることができるでしょう。
また基本的には大学病院や国公立の病院よりも、市中病院のほうが給与が高い傾向があります。市中病院では、スキルをもつ医師なら役職付きのポジションも見つかるため、求人を探してみるとよいでしょう。
③キャリアアップ、転科
「専門医資格の取得」「より高度な症例を学びたい」「著名な医師の指導を受けたい」「違う診療科に行きたい」といったキャリアアップを目的に転職を希望する医師もいます。
この場合、専門医資格取得の環境が整っていたり、指導医が在籍していたりする病院へと転職するのが一般的です。大学病院や国公立の病院など、その地域の基幹病院に転職するのが基本となります。様々な症例が経験できる環境が整えられているうえ、指導医もまず確実に在籍しています。また海外留学なども行える可能性があるため、若いうちにキャリアアップしたいという医師におすすめです。
④人間関係
看護師や理事長とのトラブルや医局での人間関係などが原因で転職を考える医師も少なくありません。こうしたトラブルを防ぐためにも、転職先の情報収集が重要です。
どんな病院であっても人間関係は存在します。どのような病院が人間関係のトラブルが少ないと断言することはできません。あくまで個々の病院の内情を知ることが重要です。自分の力だけでは病院の内情を調べることは難しいと思いますので、医師のコネクションを頼りにして実際に働いている人に話を聞いたり転職エージェントに内情を聞いたりすることをおすすめします。
⑤セカンドキャリア
医師には定年が基本的に存在しません。働こうと思えば、体が元気なうちはいつまでも働くことができます。ただし、それぞれの病院に定年規定というものはあります。65歳を過ぎると常勤医ではなく非常勤の勤務形態で働くということもあり得ます。65歳を超えると徐々に体力的につらくなり、それまでと同じような勤務では疲労が強く感じられるかもしれません。
そのため、定年を超えて働く医師に人気なのが介護老人保健施設です。介護老人保健施設は患者さんの容体が安定していることが多いためハードな業務になることはほとんどなく、定時までの勤務で帰宅することができます。ゆったりと働くことができるうえに現役期間を延ばすことができるので、老後資金を貯えたい医師にもおすすめできます。
医師が転職する際のポイント

代表的な転職理由は前項の通りですが、その他にもさまざまな理由で医師は転職を検討します。医師は慢性的に不足しており売り手市場のため、転職をしようと思ってできないということはほとんどないでしょう。ですが選択肢が多いからこそミスマッチをなくし、満足度の高い転職をすることが重要です。
そのためにも、転職によって何を得たいのかをはっきりさせましょう。自身の中で絶対に譲れないポイントを1つ(収入、勤務時間、キャリアアップなど)決め、その他に希望する条件を3つほど考えましょう。そうすることで自分がどんな病院での勤務を希望しているかが客観的に分かってきます。
例えば、「今は市区町村の中堅の病院に勤務しているけれども、もっとキャリアアップをして専門的な医療に携わりたい」という場合は、「専門性の高められる医療機関」が譲れないポイントとなり、大学病院や総合病院が第一候補になります。それを踏まえたうえで、勤務地や就業時間、職場の雰囲気などの「できれば」の条件を加味して転職先を絞り込んでいきます。
もう一例挙げると、「市中病院や医師数の少ない大学病院・総合病院の常勤医として働き残業、当直、オンコールなどで疲弊したので、もう少しワークライフバランスを考えて働きたい」という場合は、「勤務時の負担が少ない」ことが譲れないポイントとなり、医師人数が充足していてオンコールなどがない大きな病院などが候補になります。業務負担を減らしたい一方で給与水準を落としたくないのであれば、フリーランス医への転向も選択肢のひとつとなります。
このように、転職で何を得たいのかを明確にし、転職先を具体的に絞り込んでいくと納得度の高い転職を叶えられます。なんとなく転職を考えてはいるものの、なぜ転職をしたいのかよくわからないという方は転職の目的を考えることから始めてみてはいかがでしょうか?