睡眠科とは?診療科名に追加検討された背景や役割を解説|医師の現場と働き方

睡眠科とは? 診療科名に追加検討された背景や役割を解説

睡眠科は、厚生労働省が標榜診療科名への追加を検討していることでも注目を集めている診療科です。なぜ今、睡眠科の重要性が高まっているのでしょうか。

本記事では睡眠科の概要や睡眠医療の重要性が高まっている理由、新たな標榜診療科名への追加が検討されている背景、睡眠科で行う治療、睡眠専門医になる方法をご紹介します。まだ睡眠科を設置している医療機関はそれほど多くありませんが、今後需要が増えていくと考えられています。本記事を参考にして、睡眠科への理解を深めましょう。

〈この記事のまとめ〉

  • 睡眠科とは睡眠時無呼吸やナルコレプシー、不眠症といった睡眠障害全般を専門に扱う診療科。
  • 睡眠不足の人の増加や、睡眠障害による合併症のリスク、睡眠に関する関心の高まりなどにより、睡眠科への注目が集まっている。
  • 医療法に基づいて厚生労働省が定める「標榜診療科名」への追加が検討されている。

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1.睡眠科とは?

睡眠科とは文字通り、睡眠に関する疾患全般を専門とする診療科のことです。

一部の医療機関には睡眠外来や睡眠センターがありますが、睡眠に関する何らかの疾患や悩みを抱えている場合、睡眠障害の種類によって内科や耳鼻咽喉科、脳神経内科、精神科、心療内科などを受診するのが一般的です。しかし現代において、睡眠障害を抱える方は珍しくなく、専門的な治療へのニーズが高まっています。

こであらゆる睡眠障害を専門的に診察するために生まれたのが睡眠科です。日本では2008年、愛知医科大学病院に初めて「睡眠科」が誕生しました。

※参考:愛知医科大学病院「睡眠科」

1-1.対象となる疾患

睡眠科の対象となる疾患には以下のようなものがあります。
 

睡眠時無呼吸症候群 睡眠中に何度も呼吸が止まる疾患。発症すると、睡眠中に呼吸が止まり体が酸素不足になって睡眠が一時中断する。再び眠ると再度呼吸が止まり起きてしまうので、まとまった睡眠を取れない。ひどいいびきが特徴で、これに伴い慢性的な睡眠不足になり日中に強い眠気が現れることがある。眠気による居眠り事故を誘発する他、睡眠時に酸欠状態が続くことにより、生活習慣病も引き起こされやすい。
ナルコレプシー 脳の睡眠を司る機構が正常に働かず、日中に突然強い眠気に襲われてしまう疾患。短い仮眠を取れば眠気は解消されるが、数時間たつと再度眠気に襲われる症状が繰り返されることが多い。笑ったときや驚いたときに体の力が抜ける、入眠時に幻覚を見る、金縛りが起きるといった症状もある。
周期性四肢運動障害 睡眠中、周期的に脚のびくつきが発生し、目が覚めたり眠りが浅くなったりする疾患。慢性的な睡眠不足による疲労感や日中の眠気などによって、日常生活に支障が出ることがある。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群) 夕方から深夜にかけて、脚を中心にかゆみやムズムズなどを感じる疾患。じっとしていると症状を感じやすいが、動いていると症状が軽減される。ベッドに入ってじっとしていると症状が強くなりやすいので入眠できず、入眠したとしても眠りが浅くなることが多い。
レム睡眠行動障害 睡眠中に夢の中と同じ行動を取る疾患。暴力的な夢や恐怖を感じる夢を見ることが多く、夢と連動して叫び声や大声の寝言、殴る蹴るなどの激しい動きが見られる。
睡眠・覚醒概日リズム障害 睡眠・覚醒のリズムが昼夜のサイクルと一致せず、日常生活に支障をきたす疾患。時差ぼけや不規則な交代勤務などが原因のこともあるが、脳の損傷や昼夜のサイクルに対する感受性の低下などが原因のこともある。
不眠症 一定期間不眠が改善せず、日常生活に支障が出てしまう疾患。主に4つの症状に分類される。
●入眠障害:寝つきが悪く、入眠までに30〜60分程度かかる
●中途覚醒:眠りが浅く、睡眠中に何度も目覚めてしまい、再び入眠するのに時間がかかる
●早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまい、再度眠ることができない
●熟眠障害:しっかりと睡眠を取っても、熟睡感が得られない
いずれかの症状が週3回以上、3カ月以上続く場合は慢性不眠症、3カ月未満の場合は短期不眠症と診断される。

※参考:愛知医科大学病院「睡眠科」
※参考:e-ヘルスネット「不眠症」

2.睡眠医療の重要性が高まっている理由

近年睡眠医療の重要性が高まってきている3つの理由をご紹介します。

2-1.睡眠不足の人が増えているから

睡眠医療の重要性が高まっている理由の一つは、睡眠不足の人が増えていることです。

国は健康づくりのための睡眠指針を掲げていますが、厚生労働省の発表によると、十分な睡眠を取れていない人の割合は、2009年で18.4%だったものの、2018年は21.7%に増加しました。ほとんど全ての年代で男女ともにしっかりと睡眠を取れていないと感じている人が増加傾向にあります。

睡眠不足の原因は人それぞれですが、慢性的な睡眠不足は日常生活にも影響を及ぼします。自力で解消が難しいケースもあるため、睡眠医療への注目が集まるようになったと考えられるでしょう。

※参考:厚生労働省「睡眠に関するこれまでの取組について」

2-2.睡眠障害がさまざまな合併症を引き起こすから

睡眠障害がさまざまな合併症を引き起こす恐れがあることも、睡眠医療の重要性が高まっている理由の一つです。

例えば睡眠時無呼吸の場合、前述した通り、長時間の酸欠状態が続くことで、生活習慣病を引き起こす恐れがあります。睡眠時無呼吸で引き起こされるリスクのある生活習慣病は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などです。また慢性的な睡眠不足によって日中に強い眠気に襲われてしまうと、取り返しのつかない大事故を起こしてしまう恐れもあります。

不眠症になった場合は、肥満に関係した合併症が起こりやすいです。それに加え、長期間しっかりと睡眠を取れないことで、うつ病を発症してしまうこともあります。また慢性的な不眠になると免疫力が低下して細菌感染のリスクが上がり、口腔内で細菌が増殖しやすくなるため、歯周病を発症してしまう可能性も高くなりやすいです。

その他の睡眠障害でも、慢性的な睡眠不足になると同様の合併症が起こるリスクがあります。これらのリスクを軽減するためには、適切な治療を受けて睡眠障害を改善する必要があります。

2-3.国民の睡眠への関心が高まっているから

国民の睡眠への関心が高まっていることも、睡眠医療の重要性が高まっている理由です。

国が健康づくりのための睡眠指針を掲げていることに加え、健康経営や働き方改革が推進されていることなどにより、従業員の健康を考えた対策を講じる企業が増えてきました。健康維持の取り組みとして、シエスタ制度を導入する企業や睡眠用ポッドを社内に設置している企業も出てきています。

またコロナ禍で免疫力の重要性が再認識されて以降、自身の睡眠を見直すようになった方も多いです。ウェアラブル端末など、睡眠関連のデバイスを使用する人も増えています。

睡眠に関心を持つ方が増えていることで、睡眠医療にも目が向けられるようになっていると考えられるでしょう。

3.新たな診療科名への追加が検討

一部報道では、医療機関が掲げる標榜診療科名に「睡眠科」を追加することを、厚生労働省が検討していると報じられました。

標榜診療科名とは、医療機関が看板やホームページに掲げられる診療科目のことで、医療法に準じて厚生労働省が定めているものです。内科・外科のように単独で広告可能な診療科目もあれば、神経科や呼吸器科のように単独では広告できないものもあります。

睡眠科の標榜診療科名への追加が検討されている背景には、患者さんが睡眠障害の治療を希望しても、睡眠障害を専門的に扱う医療機関が少ない現状があります。また、どの診療科を受診すべきか分からず、医療にたどり着けないことも課題です。日本睡眠学会が睡眠障害の診療を行っている医療機関を対象とした調査では、回答した医療機関のうち72%が「標榜を希望する」と回答しました。

これを踏まえ、厚生労働省は「睡眠科」としての単独ではなく「睡眠内科」や「睡眠精神科」といった組み合わせで広告できる標榜診療科名としての追加を検討しています。睡眠科が標榜診療科名として追加されれば、患者さんからのニーズはさらに高まると考えられるでしょう。

4.睡眠科で行う主な治療

睡眠科で行う主な治療法は大きく分けて3つです。どのような治療が行われるのかを見ていきましょう。

4-1.生活指導

睡眠科で行う治療法の一つは生活指導です。

睡眠障害を根本から治療するには、生活習慣の改善が欠かせません。睡眠科では科学的根拠に基づいて、患者さんの生活習慣や睡眠の状態を確かめます。その上で生活習慣の具体的な改善策を提案して、一緒に改善を目指します。

4-2.薬物治療

睡眠科では薬物治療を行うこともあります。

例えば不眠の場合、睡眠科で処方される薬は以下の3種類です。

●脳の神経活動を抑制するリラクゼーション効果と催眠効果を持つ薬
●睡眠に関わるホルモンにアプローチし、睡眠と覚醒の切り替えを手助けする薬
●体内時計を調節し、入眠を促進する作用がある薬

どのような薬を処方するかは症状や睡眠の状態によっても異なり、場合によっては漢方薬が処方されることもあります。薬の服用による副作用が現れることもあるので、通院を続けながら経過を見て、適切な治療を実施します。

4-3.認知行動療法

睡眠科では認知行動療法も行われます。

認知行動療法とは、医師や認知行動療法士がカウンセリングを行い、感情や行動に影響する「認知」を修正することで、症状やストレスを緩和させるものです。

不眠に悩んでいる方の場合「寝つきを良くするために寝酒をする」「眠ろうとしてベッドに横になり続ける」といった誤った思考や行動によって、不眠が悪化している可能性があります。認知行動療法では、こういった不眠につながる思考パターンや行動パターンを変えることで、不眠の改善を目指します。

5.睡眠専門医になるには

睡眠医療の普及や質の向上を目的とした専門医制度として、日本睡眠学会認定の「日本睡眠学会総合専門医」があります。以前は「日本睡眠学会専門医」という名称でした。

日本睡眠学会総合専門医を目指すには、以下の取得条件を満たさなくてはなりません。

1.臨床医として医師免許取得後6年間以上の医療に関する実地経験を有すること。

2.日本睡眠学会専門医の指導のもとで、睡眠医療に関する2年間以上の臨床経験を有すること、又は、それと同程度以上の睡眠医療に関する臨床経験を有すること(アメリカ、ヨーロッパ等の睡眠障害医療センターでの勤務歴を含む)。

3.日本睡眠学会の3年間以上の会員歴を有し、日本睡眠学会又は関連する国際睡眠学会(アジア睡眠学会 ASRS、世界睡眠学会 WSS、アメリカ睡眠学会 APSS、ヨーロッパ睡眠学会 ESRS 等)の定期学術集会に3回以上は参加していること。ただし、日本睡眠学会が行う1回の研修会(日本睡眠学会が後援する研修会を含む)を修了している場合には、そのことを1回の定期学術集会に参加したことと見なす。

4.睡眠医療についての幅広い知識及び診療能力を有するとともに、睡眠ポリグラフ検査等の睡眠医療に必要な検査を実施し、睡眠ポリグラフ記録を判読する能力を有すること。

5.学会専門医認定委員会は、日本睡眠学会専門医になることを申請した者につき、上記の諸事項に関する審査(筆記試験、実地試験、及び、異なる種類の睡眠障害5症例についての症例報告書の審査を含む)を行い、日本睡眠学会専門医を認定する。

日本睡眠学会総合専門医の有効期限は5年間です。日本睡眠学会総合専門医を1回以上更新し、指導医講習会などの受講歴があれば、日本睡眠学会指導医を目指すこともできます。

日本睡眠学会総合専門医取得に向けて、診療科の制限は特にありません。まだまだ日本睡眠学会総合専門医の数は多くありませんが、取得を目指すなら、日本睡眠学会総合専門医が在籍している医療機関に見学を申し込むのも一つの方法です。

※参考:一般社団法人 日本睡眠学会「日本睡眠学会の学会認定に関する規約」

6.睡眠科への転職を検討している方へ

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