精神科スーパー救急病棟とは?目的や治療方法を紹介|医師の現場と働き方

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精神科スーパー救急病棟とは?目的や治療方法を紹介

精神科スーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟)は 、緊急性が高い精神疾患の治療を担う高規格の医療機関です。医師や看護師の設置人数や受け入れ可能な患者数に厳格な基準が設けられています。

近年、精神科を受診する人が増加傾向にあり、高齢化社会による認知症へのケアも必要性を増す中 で、精神科を希望する医師は少なくないでしょう。

本記事では精神科スーパー救急病棟の定義や治療内容、精神科への転科を成功させる方法を紹介します。設備基準から精神科に転科しやすい科目まで幅広い情報を伝えるので、キャリアの方向性に悩んでいる医師はぜひご覧ください。

〈本記事のまとめ〉

  • 精神科スーパー救急病棟は病気にかかりはじめや急性期の患者さんに集中的な治療を施し、原則3カ月以内の退院を目指す高規格の医療機関
  • 病床の半数以上が個室、患者数16人に1人 の割合で医師を設置するなど人員・設備に厳格な基準がある
  • 精神科の医師はニーズが高く、転職しやすい環境だといえる。とくに内科や外科からの転科がおすすめ

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1.精神科スーパー救急病棟とは?

精神科スーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟)は、緊急性が高い精神疾患を抱える方を受け入れる専門病院です。精神科スーパー救急病棟の特徴や利用者層について詳しく解説します。

1-1.精神科急性期治療病棟との違いは?

精神科スーパー救急病棟が設立される以前から、精神科の専門施設として精神科急性期治療病棟があります。

精神科急性期治療病棟は1996年に創設された精神科専門病院で、日本の精神科救急医療の草分けとして位置づけられている医療機関です。医師や看護師の人員基準や精神科救急医療体制整備事業への参加などの条件を満たすことで、医療費の定額給付を受けられます。精神科急性期治療病棟の認可を受けた病院は、精神科救急医療の中心的な役割を担っています。

精神科スーパー救急病棟は、精神科急性期治療病棟をしのぐ施設として2002年に新設されました。人員配置・設備・医療水準などの面でさらに厳格な基準が設けられている施設という位置づけです。

参考:精神科急性期治療病棟 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

1-2.精神科スーパー救急病棟はどのような患者さんが利用する?

精神科スーパー救急病棟では、病気になりはじめの段階や、急に症状が現れる急性期に集中的に治療すべき患者さんが主な対象です。他にも慢性期の急性増悪、身体合併症、認知症など精神科のケアが必要な患者さんも広く受け入れるケースもあります。救急というと緊急性が高いイメージですが、集中的な治療を必要とする方に対して適切な医療を提供します。

日本の精神科診療は長年にわたり、入院から在宅への移行が課題に位置づけられていました。精神科の入院患者数の半分以上が1年を超える長期入院で、いわゆる「社会的入院」と呼ばれるケースが多数を占める状況です。一方で政府は医療費削減の観点から、病床数を削減する方針を打ち立てていて、実態と政策が相反する状態が生じています。

この問題点の改善に資する存在がスーパー救急病棟であり、入院患者は原則、3カ月以内の退院を目指します。集中して治療を施し、一定の状態まで回復した後は在宅医療に転換するのです。精神科スーパー救急病棟は診療報酬が最上位の区分に該当し、精神科病棟の経営にあたり重要な施設になっています。

参考:東京足立病院のスーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟)

1-3.精神科においての急性期・慢性期とは

精神科急性期治療病棟の利用者層を理解するには、精神病の進行状況を表す「急性期」「慢性期」に関する正しい知識が必要です。精神科において上記の区分は主に統合失調症の状態を示す際に用いられます。急性期と慢性期の特徴や違いを詳しく解説します。

1-3-1.急性期

統合失調症では数日から数年程度の前駆期を経験した後、急性期に移行するのが一般的です。前駆期では抑うつ症状や倦怠感、頭痛、不眠症状が出現し、時には離人症や脅迫症状などを訴える場合もあります。続く急性期では妄想や幻覚、思路や自我意識の障害などが診られ、ひとりでは日常生活の遂行が困難になる場合も珍しくありません。

参考:急性期と慢性期|加古川の心療内科・精神科とよだクリニック

統合失調症をはじめ、精神疾患の完治を目指すには急性期における医療機関の介入が重要です。急性期治療病棟は精神的な不調で日常生活もままならず、深刻な状態の方に向けて医療行為を施す医療機関です。

患者さんと医療機関の最初の接点となる急性期治療病棟では適性診断を行い、経験豊富な医師の知見や医学的なエビデンスに基づく医療を提供します。統合失調症以外にも、感情障害(うつ病や躁うつ病)、認知症などの精神疾患の患者さんも対象です。

1-3-2.慢性期

急性期の後には回復して発症前の状態に戻る、再発する、一部の症状が残るなど、さまざまなケースが考えられます。症状が残存した慢性期の患者さんは感情鈍麻や思考力の低下が原因で、現実への適応が難しくなる場合があります。

参考:急性期と慢性期|加古川の心療内科・精神科とよだクリニック

医療機関の介助を受ければ、家庭や社会生活が滞りなく行える状況も珍しくありません。慢性期病棟では各種の生活支援やリハビリテーションをサポートします。長期入院患者への日常的な支援が中心なので、治療内容に変化が少ないのが特徴です。

基本的には薬物療法や理学療法、作業療法などを組み合わせて、個人や状況に応じた医療行為を提供します。早期に家庭や地域で自立して生活を歩めるよう、集団での生活技能訓練(SST)を積極的に行うことが急性期病棟との違いです。

2.精神科スーパー救急病棟の条件

精神科スーパー救急病棟は入院科のうち人員配置・医療水準ともに厳しい認定基準があります。

●精神保健指定医を病棟ごとに1名以上、病院全体で4名以上設置すること
●入院患者16名に対して1名以上の比率で医師を設置すること
●入院患者10名に対して1名以上の比率で看護師を設置すること
●病床ごとに2名以上の精神保健福祉士を常置すること
●病床の半分以上が個室であること
●60%以上の入院患者が入院日起算で3ヵ月以内に在宅へ移行すること
●入院患者の40%以上が新規患者であること
●1病棟につき、時間外や休日、深夜の精神疾患にかかる入院件数が年間30件以上
●1病棟につき、時間外や休日、深夜の精神疾患にかかる入院件のうち、市町村・警察・保健所・消防等からの依頼が年間8件以上あること
●当該医療圏内で措置・緊急措置・応急入院の入院患者を25%以上、または20件以上受け入れていること
●精神科救急医療体制整備事業に参加していること

参考:精神科スーパー救急病棟とは?条件・特徴について | 三重県四日市市の精神科病院 総合心療センターひなが

精神科急性期治療病棟では「看護師は入院患者の13人に1人 以上の割合」「精神保健指定医は病院全体で2名以上」 となっています(e-ヘルスネット[厚生労働省]より)。比較するとわかるように、より厳しい認定基準が課されていることが分かります。

3.精神科スーパー救急病棟の目的

精神科スーパー救急病棟の目的は、早期に多職種の専門スタッフによる質の高い集中的な医療を行い、患者さんの早期退院や社会復帰を目指すことです。

社会的入院が問題となっていますが、長期入院をできるだけさせない医療、早めの入院、早めの治療が本来です。精神科スーパー救急病棟はこの方針に沿った施設といえます。

一方で、早期退院をしても患者や家族が不安を抱かない体制づくりも課題となります。長期入院の解消という目的を実現するためには、退院後のフォロー体制や地域との連携がポイントです。

4.精神科スーパー救急病棟の治療内容と流れ

精神科スーパー救急病棟は、一般的な精神科病院と治療内容にどのような違いがあるのか、疑問をもつ人もいるでしょう。一言でいうと、幅広い治療内容とチーム医療の推進が特色です。具体的な特徴をみてみましょう。

4-1.精神科急性期治療の内容

精神科スーパー救急病棟での精神科急性期治療では、患者さんの状態に応じて薬物治療や心理教育、作業療法、栄養食事指導などを行います。チーム医療を敷き、入院早期から退院まで多職種のスタッフがかかわる環境があります。

急な病状の悪化や施設内での転倒事故のような不測の事態にも、対処しやすい盤石なサポート体制が特色です。精神科急性期治療では、少子高齢化の影響で需要が増しつつある認知症患者の受け入れが重要なテーマになっています。

症状が重度になると、本来の記憶障害に加えて、BPSDと呼ばれる行動面・心理面での症状によって日常生活が難しくなる場合があります。たとえば暴力や暴言、徘徊など問題行動が進行し、家族では面倒をみられなくなり、医療機関に救いの手を求めるケースも少なくありません。

入院期間に制限を設けて、早期の日常生活への復帰を目指すスーパー救急病棟では、退院支援も重要です。退院後も安全・安心の環境で療養できるよう、受け入れ先の選定や退院日の調整を実施します。患者さんを引き渡した後も、リハビリテーションのスタッフを中心に継続して支援を行います。

スーパー救急病棟では、基本的に60%の患者さんは3カ月で退院となります。3カ月というのは精神科では比較的短期間なので、入院中に満足な水準の医療サービスを提供できない場合もあるでしょう。高齢者施設や介護施設をはじめ、地域の医療機関と連携して、中長期で見守る体制を整えることが大切です。

地域との強固な関係性を築くことで、心理的な抵抗から精神科への受診を避けている人たちの利用も促進されるでしょう。管轄内の精神科病院や精神科クリニックと連携して、対応が難しい患者さんの受け皿として機能する施設もあります。他にも、一般的な病棟と密な連絡体制を整え、情報共有に積極的な病院も存在します。

内科や外科を受診する方の中には、精神疾患が症状の原因となっている場合も少なくありません。足の痛みが主訴として病院を訪れた方が、骨格や歩き方に問題はなく、実はうつ病の症状だったという症例もあるのです。

精神疾患の状態には個人差があり、精神科単体では根本的な解決を測ることが難しいケースも多数です。精神科急性期治療では各医療機関と連携して、科目を超えた幅広い医療の推進が求められます。

4-2.精神科急性期治療の流れ

精神科急性期治療の基本的な流れは、「入院治療(薬物療法/精神療法)」「退院」「在宅治療」の順です。入院中は、医師や看護師以外にも、作業療法士・臨床心理士・管理栄養士などが一丸となって、チーム体制で医療に励みます。

精神科急性期病棟の医療は退院後も続くことが特色です。定期的な通院やデイケア施設への通所、訪問介護を通じて、経過観察を行います。また、患者さんごとに専門の精神保健福祉士がつくのが基本です。退院後の生活へ円滑に移行するため、入院後の早期からご家族との連携体制を構築し、気軽に相談できる体制を整えます。

5.精神科へ転科する方法

医師が転科を希望する背景には、年収やワークライフバランスの充実、別の科目への興味、体力の衰えなどがあります。数ある診療科のうち精神科を選ぶメリットは、いずれの科目からでも転科しやすい点です。

精神疾患の患者さんは心身に合併症状がある場合が多く、元の病気の治療が可能な他科目の知見を有する医師は歓迎されます。過去には内科や外科をはじめ、皮膚科や小児科、整形外科などから、転科が成功したケースも見受けられます。

医師が転科をする理由と失敗しないコツ、メリット・デメリットを解説!

超高齢化社会を迎えて、高齢者の認知症リスクが高まる中、社会的にも精神科の医師へのニーズは高い状況です。病棟数に限りがある中、医療現場では地域医療への転換が重要なキーワードになっています。

訪問診療は今までの内科主体の形から、精神疾患の治療にも幅が広がり、精神科専門の訪問診療を担うクリニックも登場しました。

精神科に転科する方法は、ご自身で病院やクリニックの求人を探すか、転職エージェント経由で紹介を受けるのが一般的です。

精神科の医師はニーズの高まりから、精神単科病院や外来メインのクリニック以外にも、勤務先が広がっています。たとえば総合病院やケアミックス病棟における緩和ケア、訪問診療、企業での産業医、矯正施設における矯正医官などがあります。

まずはご自身の興味や関心やワークライフバランスなど実現したいことを整理して、どの方向を目指すか軸を定めることが必要です。精神科医へのキャリアを歩むには勤務先選びは非常に重要な項目のひとつでしょう。

6.精神科で求められている科目

貴重な複数の科目をもつ医師の中でも、とくに歓迎される業務領域は身体面の症状をは幅広く診られる内科や外科の領域です。

精神科の医師は、身体面を診れないケースも少なくありません。精神病院は精神科単体の科目のみのため、総合病院のような充実した環境はないのが一般的です。身体面の診察も限定的になることが多いでしょう。
身体面の症状を診られる医師がいれば治療の幅が広がり、急性期治療の目的である早期退院を実現しやすくなります。精神科への転科を希望していて、現在内科や外科で勤務しているならば有利に働く可能性が高いでしょう。

もう一つ、近年精神病院で需要が高まりつつあるのが、麻酔科の医師です。重いうつ病などの治療法として行われることのある「電気痙攣療法」の実施に不可欠な存在となるためです。

参考:ECTの疑問にお答えします|長崎県精神医療センター

7. 精神科に転科を検討している場合はエージェントに相談しよう

急性期の患者さんに向けて集中治療を行うスーパー救急病棟は、社会的な要請もあり医師の需要が高くなっています。マイナビドクターは非公開案件をはじめ、精神科の求人を多数取り扱っています。年収やワークライフバランスも実現する好条件の案件を探している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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