転職活動において、書類選考で審査される経験やスキル面は申し分なくとも「面接はどうしても苦手……」という医師が少なくありません。一般企業に勤める会社員とは異なり医師は社会人になる際に就職試験を経験しないため、転職活動における面接が「人生で初めて」となるケースも多いでしょう。そこで、面接の基本的な流れと必ずおさえるべきマナーを紹介します。
- 売り手市場でも謙虚さを忘れず、社会人として成長したい方。
- 面接で自信を持って話し、好印象を与えたい方。
- 面接後のマナーを守り、良い印象を維持したい方。
目次
【面接前】のマナー

1-1.時間には余裕をもって
医師の求人数は年間を通じて潤沢であり、ほぼ常に「売り手市場」といえますが、転職先を「選ぶ側」であるというある種の「おごり」は捨てましょう。社会人として必須のビジネスマナーを心がけることはもちろん、遅刻をするなどもってのほかです。重要な面接時間に遅れることは、「責任感がない」「ルーズな人間性」と印象づけられ、とても不利に働きます。
遅くとも面接時間の10分前には面接会場に到着しているようにしましょう。「スマートフォンのGPS機能があるから安心」と考えるかもしれませんが、実際に行ってみると予想外に時間がかかってしまうこともあります。できれば、30分ほど前に会場周辺に到着し、周囲の喫茶店などで心を落ち着かせておくことが理想的です。
万が一遅刻してしまいそうな場合は、遅刻の可能性が少しでも出てきた時点で面接先に連絡をしましょう。事前連絡もなく遅刻をする応募者は「社会人としての自覚がない」とみなされ最悪な印象をもたれるため、くれぐれも避けたいものです。
なお、面接会場に到着したら、面接中に電話が鳴らないようスマートフォンの電源を切りましょう。
1-2.身だしなみは整えること
人の外見は第一印象を大きく左右します。面接という審査の場であればなおさらです。人と会う時に清潔感のある服装・髪型にすることは礼儀ですから、面接当日の朝はいつもより早めに起床して身だしなみを整えましょう。
寝ぐせがついているのは論外ですが、髪の毛が長くボサボサになっているのもネガティブな印象につながります。「髪が伸びてきたな」と思う場合は面接の前日までに散髪を済ませておきましょう。髪の長さが肩より長い女性はヘアゴムで結ぶなどしてまとめましょう。
・顔周り
男性はひげの剃り残しがないように入念にチェックします。女性は派手なメイクを避け、ナチュラルメイクを基本とします。
【面接時】のマナー

2-1.ノックの回数は3回がベター
面接会場に到着した後は、人事担当者などに面接部屋に通されます。ところが、面接会場のドアの前にいざ立つと、何回ノックをすれば良いのか分からなくなり戸惑った経験はありませんか? 2回のノックだと「空室確認」の意味があるため、3回ノックをするのがベターと言われています。ここまで細かいことを評価基準にする病院はまずないでしょうが、事前に把握しておくことでとっさの時にあせらずにすみます。
2-2.声は大きくはっきりと
面接では、伝えたいことをしっかりと伝えられればおおむね成功と言えます。一方、ほとんど伝えられなかった場合、あなた自身の本来の魅力や実力が面接官に伝わりにくくなるという、もったいない事態につながりかねません。声の大小は個人差がありますが、日常生活では声の小さな人も面接の場ではできるだけ大きくはっきりとした声で話しましょう。
入室して最初に行う自己紹介も非常に重要です。はきはきと「〇〇と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます」などとあいさつをしましょう。
2-3.しっかりと相手の目を見て話す
面接は顔と顔を合わせて話すコミュニケーションの場です。伏し目がちに話す医師に対して、面接官は「ネガティブな感情を持っているのかな」と不安に感じるかもしれません。ある程度緊張してしまうのは仕方ありませんが、なるべく柔和な表情を心がけ、しっかりと相手の目を見て話すことが重要です。
2-4.自信をもって話す
学生であれば、経験したことのない業務に自信がないのは仕方のないことですが、医師として経験を積み転職をしたいと考えているならば、自分の行ってきた業務や経験について自信をもって話せるようにしましょう。語尾は「~です」「~ます」と断定するように話し、「~だと思う」といったあいまいな表現を避けるようにすると印象が変わります。
【面接後】のマナー

面接が終了したら、着席した状態で「ありがとうございました」とお礼を述べつつ一礼します。その後、起立して椅子の横に立った状態で再度一礼し、ドアの前まで進んで振り返り、面接官に向かって「失礼いたします」とさらに一礼してから部屋を退出します。
退出後は病院内にとどまらず、すぐに駅に向かいましょう。どこで誰が見ているか分からないのでスマートフォンなどを取り出すのも病院を出てからにするほうが無難です。病院近くの飲食店で食事をしていると、面接担当者と鉢合わせするケースが稀にあります。採否には影響しないとは思いますが、双方少々気まずい思いをするため避けたほうが良いでしょう。
面接は数をこなすうちにだんだんと上達していくものですが、慣れないうちは転職エージェントにアドバイスをもらうというのもひとつの手です。転職エージェントでは、医療機関ごとに面接の雰囲気や質問傾向などを事前に教えてもらえるので、面接に苦手意識がある医師にはおすすめです。
文:太田卓志(麻酔科医)