へき地医療とは?地域医療との違いや課題、オンライン診療の特例について解説|医師の現場と働き方

へき地医療とは?地域医療との違いや課題、オンライン診療の特例について解説

へき地医療とは、一定要件を満たした過疎化の進んだ地域に医療を提供することを指します。へき地医療には当然ながら医師の存在が欠かせません。しかし、大都市や地方都市で働くのとは異なる側面もあるため、医師としてへき地医療に従事することを検討しているなら、その違いを理解しておくことも大切です。

そこで本記事ではへき地医療の概要や地域医療との違い、へき地医療に携わるメリット・デメリット、キャリア設計などについて解説します。へき地医療にはまだまだ課題も多く、デメリットもありますが、医師としてのやりがいを感じやすく、高待遇で働ける可能性も高いです。へき地医療に従事することを検討されている医師の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

〈この記事のまとめ〉

  • へき地医療とは、交通状況や社会的条件などに恵まれず、医療確保が困難な無医地区や準無医地区で医療を提供することを指す。
  • 勤務体制のハードさや生活の利便性の悪さなどが理由で、へき地医療では医師の人材不足が課題の一つとなっている。
  • 医師としてへき地医療に従事すると、都市部よりも高待遇で働ける可能性がある他、やりがいを感じやすい、プライマリ・ケアのスキルが学べるなどのメリットがある。

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1.へき地医療とは?

へき地医療とは、医療の確保が難しい過疎地域などにおける医療を意味します。

元々へき地は「都会から遠い場所」「へんぴな場所」といった意味です。ただし、医療においては『交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち医療の確保が困難であって、「無医地区」及び「無医地区に準じる地区」の要件に該当するもの』がへき地と定義されています。

無医地区とは原則として医療機関がなく、その地域の中心部を起点として約4km区域内に50人以上が生活している場所、かつ容易に医療機関を利用できない地域のことです。

容易に医療機関を利用できない地域とは、夏期の交通事情として定期交通機関が1日3往復以下、もしくは4往復以上あるものの、それらを利用しても医療機関に行くまでにかかる時間が1時間以上の地域を指します。ただし、タクシーや自家用車、自家用船が普及していたり、医師の往診が行われていたりする地域で、医療機関の受診が容易にできると見なされる場合は、簡単に医療機関を利用できない地域には該当しません。

また準無医地区は、無医地区には該当しないものの、都道府県知事が医療の確保が必要だと判断し、かつ厚生労働大臣が適当と判断した地域のことです。

無医地区や準無医地区は、千葉県・東京都・神奈川県・大阪府を除いた43道府県に存在しています。

出典:第9次へき地保健医療計画の取り組み等|厚生労働省
出典:へき地の医療について|厚生労働省

1-1.地域医療との違い

地域医療には明確な定義はありませんが、地域医療構想を基にして、自治体ごとに取り組んでいる医療体制を指すことが一般的です。地域医療構想とは、地域全体に良質で適切な医療を提供することを目的とした厚生労働省による取り組みのことを指します。

地域医療では、医師や医療従事者を中心に地域全体で住民の健康をサポートします。病気やけがの治療だけでなく、病気の予防や健康維持、高齢者や障害者、妊婦、子育て世代の支援なども地域医療の一環です。つまり、その地域に住む全ての人が地域医療の対象となります。

へき地医療も、地域医療と同じようにその地域に住む全ての人の健康をサポートすることになりますが「地域医療=へき地医療」ではありません。

2.へき地医療の体制

へき地医療の体制を大きく分けると3つの体制があります。

2-1.へき地医療支援機構

へき地医療支援機構とは、行政機関などが行うへき地医療の支援体制のことです。

へき地医療支援機構は都道府県ごとに設置されています。国や他の県との意見交換や調整を行いながら、下記のような役割を果たします。

●へき地医療全体の調整や企画
●へき地への代診医派遣要請
●へき地勤務医のキャリア形成支援
●高校生や医学生への啓発

へき地医療支援機構の専任担当官となるのは、へき地医療での経験を持つ医師です。

2-2.へき地医療拠点病院

へき地医療拠点病院とは、へき地への診療を支援する医療機関のことです。

各都道府県の知事が指定した総合的な診療能力を持つ医療機関で、へき地医療支援機構と連携を取りながら、へき地医療を支えています。

へき地医療拠点病院の役割は、以下の通りです。

●へき地で医療に従事する医師や医療従事者の育成
●へき地への代診医の派遣
●無医地区などへの巡回診療の実施
●遠隔医療によるへき地の医療支援や
●へき地に住む患者さんの受け入れ

2-3.へき地診療所

へき地診療所は、無医地区や準無医地区に設置されている診療所のことです。

自治体や日赤、済生会、医療法人、学校法人などによって運営されており、へき地医療拠点病院と連携を取り、支援を受けながらへき地での診療を行います。へき地診療所があることによって、へき地に住む住民は生活圏での基礎的な医療を受けることが可能です。

3.へき地医療の課題

へき地医療が抱える代表的な課題は「人手不足」です。

へき地医療を必要とする無医地区には人口50人以上の要件があるため、人口減少に伴い無医地区の数は減少傾向にあります。へき地診療所の設置も、無医地区数の減少を後押ししている要因です。その反面、無医地区に該当しなくなった地域が準無医地区として認められるケースが増えています。準無医地区は増加傾向にあるため、へき地医療への需要は依然として高いままです。

しかし、少人数体制による勤務体制のハードさや、生活の不便さなどにより、へき地医療に携わる医師は慢性的な人手不足に陥っています。医師を確保できているへき地診療所でも、継続していくためには医師の精神的・身体的負担をどのように解決していくかを考えなければなりません。

へき地医療の抱える課題を解決するために、国や自治体はさまざまな対策を検討・実施しています。

出典:へき地の医療について|厚生労働省

4.へき地におけるオンライン診療の特例

へき地医療の人手不足を解決するために、整備されたのが「へき地におけるオンライン診療の特例」です。

パソコンやスマートフォンなどを使い、遠隔で診療を行うオンライン診療は、コロナ禍以降急速に普及しました。しかし、対面診療と組み合わせた実施が基本となっており、オンライン診療を実施する医療機関は、原則として対面診療を提供できる体制を有することなどの条件があります。

しかし、2023年5月18日に厚生労働省が「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」を通知し、へき地でのオンライン診療を実施する目的で、医師が常駐しない診療所の設置が特例的に認められました。

この特例によって、病院や診療所のサテライトとして、へき地の公民館などにオンライン診療を実施するための医務室を設置できます。医務室に医師は常駐していませんが、オンライン診療が行える環境を整え、公民館のスタッフなどの援助によって、へき地の患者さんがオンライン診療を受けられる仕組みです。

医師が常駐しないオンライン診療のための診療所を設置することにより、医師の確保が難しいへき地でも、遠隔で基本的な医療を提供できるようになります。医師の人手不足を補うだけでなく、患者さんが医療機関を受診する際の負担軽減にもつながるでしょう。オンライン診療で提供できるのは、あくまで基本的な医療になりますが、厚生労働省や地方自治体、関連医療機関などとの連携を強化することで、へき地における医療の質の向上が期待されています。

出典:へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について|内閣府

5.へき地医療に従事するメリット・デメリット

医師としてへき地医療に従事するメリット・デメリットを見ていきましょう。

5-1.メリット

へき地医療に従事するメリットの一つは、都市部で医師として働くよりも、高待遇で働ける可能性があることです。国や地方自治体では、へき地での医療人材を確保するために、さまざまな補助を行っているため、都市部よりも待遇が優遇されるケースも少なくありません。へき地で働くことで、現在よりも収入がアップする可能性は十分に考えられるでしょう。

またやりがいを感じやすいことも、へき地医療に従事するメリットです。へき地に住む住民は、身近な場所に家族がいない高齢の独居世帯や老齢世帯が多い傾向にあります。医師を頼りにしている患者さんも多く、都市部で働くよりも密接に関わることになるので、患者さんに医療を提供し、健康をサポートすることにやりがいを感じやすいでしょう。

加えて、プライマリ・ケアの経験とスキルを学べることも、へき地医療のメリットです。身近な存在として、基礎的な医療から急性期、慢性期、終末期まで総合的に患者さんに適切な医療を提供することで、医師としてのさらなる成長を目指せるでしょう。

5-2.デメリット

へき地医療に従事するデメリットの一つは、へき地での生活に順応する必要があることです。無医地区や準無医地区は、医療機関だけでなく、公共交通機関や商業施設も整備されていないため、都市部の暮らしと比較して生活に不便さを感じる可能性が高いです。地域特有の文化や価値観、田舎特有の住民との距離の近さに戸惑ってしまう可能性もあるでしょう。

医師が対応しなければならない業務が多く、プレッシャーが大きくなりがちなことも、へき地医療に従事するデメリットです。幅広い診療科目の知識が求められる上、他の医療機関との連携なども医師が行う必要が出てくるため、精神的・身体的に負担を感じてしまう医師も少なくありません。

さらに、最新医療を学ぶ機会が少なくなってしまうことも、へき地医療に従事するデメリットといえるでしょう。都市部に住んでいればすぐに参加できる学会や講習会でも、へき地に住んでいると参加が難しくなります。

6.へき地医療で求められるスキル

へき地医療に従事する医師には、どのようなスキルが求められるのでしょうか。代表的な3つのスキルをご紹介します。

6-1.現場での対応力

へき地医療で医師に求められるスキルの一つは、現場での対応力です。

へき地医療では、さまざまな疾患に対応しなければなりません。どのような医療機関で働くかによっても異なりますが、急性期の患者さんに臨機応変な対応を求められるケースも多いです。そのため専門に縛られず、状況に応じた適切な対応が取れる力が求められます。

6-2.予防医療への知見

予防医療への知見も、へき地医療に従事する医師に求められます。

へき地医療は地域医療の一部として含まれるため、その地域に住む全ての人の健康を支援する必要があります。具体的に疾患を抱える患者さんだけでなく、予防医療や健康増進の取り組みを積極的に行うことで、地域住民の健康寿命を伸ばし、生き生きと暮らせるようにサポートすることもへき地で働く医師の大切な仕事です。

予防医療や健康増進への取り組みを実施することで、病気の早期発見にもつながります。ひいては、重症化や合併症、二次障害といったさまざまなリスクの軽減を目指すこともできるでしょう。

6-3.他の医療機関との連携力

へき地医療に従事する医師には、他の医療機関との連携力も求められます。

へき地医療では、他の医療機関とも連携を取りながら、患者さんに適切な医療を提供する必要があります。そのため、さまざまな場面で他の医療機関と密にコミュニケーションを取らなければなりません。医療機関だけでなく、行政や介護施設、ソーシャルワーカーなど他業種との連携が求められることもあります。

日頃からアンテナを張って情報収集を行い、患者さんの状態に応じて最適な機関と連携を取れる力は、へき地医療に従事する医師にとって必要不可欠といえるでしょう。

7.へき地医療に従事する医師のキャリア設計

へき地医療に従事する医師のキャリアデザインは、以下の3本柱で成り立っています。

●大学・大学院
●地域の中核的病院を含むへき地医療拠点病院
●へき地の診療所や小規模病院

へき地医療に従事する場合、医師はこの3つを行き来しつつ、キャリアを構築していくのが一般的です。基本的には3本柱の中であれば、どのようなプロセスで経験を積んでも構わないとされていますが、基本的には最初の10年でプライマリ・ケア専門医など、地域医療に関連する専門医資格の取得を目指します。

さらに、次の10年で大学院における学位の取得を目指したり、臓器別の専門医資格をサブスペシャリティとして取得したりすることで、自らの専門性を高めていきましょう。

また10年ごとに1年間の自由期間が設けられています。その期間は3本柱を離れて、自らの希望するキャリア構築のために、専門研修や基礎研究、留学などを行うことも可能です。

出典:へき地に勤務する医師のキャリアデザインとへき地勤務の評価について|厚生労働省

8.へき地医療への従事をお考えの方へ

全国のさまざまな医療機関と密接な関係を構築しているマイナビDOCTORは、へき地医療を提供している医療機関の求人情報も扱っています。医師専任のキャリアパートナーが入職までしっかりサポートしますので、へき地医療への従事を検討している医師の方はお気軽にご相談ください。

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