週5日勤務の常勤として働いている医師の方や、非常勤として働いている方の中には、週3〜4日勤務の常勤医師を目指そうかと考えている方もいるかもしれません。週3~4日勤務の常勤医師として働くと、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
本記事では、医師の常勤の時間の規定や「常勤医師の32時間ルール」、常勤医師と非常勤医師の働き方の違い、週3~4日勤務の常勤医師として勤務するメリット・デメリットなどを解説します。2024年4月から医師の働き方改革が施行され、医師の働き方もますます多様化しています。ご自身に合った働き方を考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
- ワークライフバランスを重視する常勤医師の方
- 週3~4勤務でキャリアアップなどに悩んでいる方
- 医師の求人で勤務時間以外に確認すべきポイントとは?
目次
医師における常勤は週何時間から?

常勤の医師と聞いて「週32時間以上働く必要がある」と認識している方も多いかもしれません。確かに医師の求人票では、常勤の医師の勤務時間として「32時間以上」と表記されているケースが多々あります。
しかし常勤医師の勤務時間を「32時間を区切りにしなければならない」という法的な規定はありません。常勤医師に関しても非常勤医師に関しても、勤務時間の規定は各医療機関の就業規則にのっとっています。週3〜4日勤務の常勤医師の求人があるのは、医療機関によって常勤医師の定義が異なるためです。
常勤医師の32時間ルールとは?
「常勤=32時間以上の勤務」と誤解している方が少なくないのは、「常勤医師の32時間ルール」といわれる通説があるからです。
常勤医師の32時間ルールとは、厚生労働省が発布した「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」という通達によって認識されたものです。「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」では、常勤医師について以下のような定義がなされています。
3.常勤医師の定義と長期休暇者等の取扱い
(1) 常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう。
ア 病院で定めた医師の勤務時間は、就業規則などで確認すること。
イ 通常の休暇、出張、外勤などがあっても、全てを勤務する医師に該当するのは当然である。
(2) 病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。
これは、都道府県が医療機関を立ち入り調査する際に、各医療機関で配置すべき医師の数をカウントするための基準です。厚生労働省が示した情報に基づいているため、「常勤医師=32時間以上」と認識している方も多いですが、前述した通り、常勤医師に法的な規定はないので、「32時間以上だから常勤」「32時間未満だから非常勤」ということではありません。ただし「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」の基準にのっとり、32時間以上勤務する医師を常勤医師と定めている医療機関も多いです。
医師の32時間ルールや、週3日での常勤勤務に関しては、こちらのページで詳しく解説しています。働き方にお悩みの方は、ぜひこちらも参考にしてみてください。
常勤医師と非常勤医師の働き方の違い

常勤医師は、各医療機関が定める常勤医師の勤務時間・日数を満たして勤務する医師のことで、いわゆる正職員を指すケースも多いです。
一方、非常勤医師とは、各医療機関が定める常勤医師とは異なる時間・日数で働く医師を指します。非常勤医師の働き方は、勤務時間・曜日などが決まっている「定期非常勤」と、不定期で働く「スポット」が一般的です。
定義による違いは上記の通りですが、常勤医師と非常勤医師では働く上でもさまざまな違いがあります。どのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
求められるスキルレベル
常勤医師と非常勤医師では、求められるスキルレベルが異なります。
もちろん医療機関やポジションなどによっても求められるスキルが違うので、一概にはいえませんが、一般的に非常勤医師は常勤医師よりも即戦力として活躍できるスキルが求められることが多いです。そのため、非常勤医師の求人は、募集されている診療科目で一定以上の臨床経験が求められるケースが多い傾向にあります。未経験歓迎の非常勤医師の求人がないわけではありませんが、常勤医師と比較すると少ないです。
仕事における役割
常勤医師と非常勤医師には、仕事における役割にも違いがあります。
一般的に非常勤医師は、常勤医師のサポートを行うことが多いです。また常勤医師が幅広い業務に対応することが求められる一方で、非常勤医師は対応範囲が限定的な傾向にあります。
常勤医師であればさまざまな症例に携わり、その診療科目のエキスパートを目指すことができますが、非常勤医師として働く場合は専門性を高める機会が少なくなるでしょう。
医療機関との関係
医療機関との関係も、常勤医師と非常勤医師で変わってきます。
その医療機関で固定かつ一定以上の時間を働く常勤医師は、医療機関との関係が深くなりがちです。その他の医師やコメディカルとの人間関係も構築しやすいため、協力しながら業務を進めやすいでしょう。ただしその分、対人関係のわずらわしさを感じることも多く、突然の時間外労働やシフト交代などの依頼が断りにくいと感じてしまう方も少なくありません。
一方非常勤医師は、医療機関との関係が浅くなりがちで、人間関係のしがらみも少ないといえます。ビジネスライクな関係性なので、常勤医師とは一線を画した立場で働けるでしょう。同じ非常勤医師でも、不定期で働くスポット勤務の方が、決まった時間・曜日で働く定期非常勤よりも医療機関との関係は浅くなりやすいです。
週3~4日勤務の常勤医師として勤務するメリット

現在週5日勤務をしている常勤医師の方の中には、週3〜4日勤務の常勤医師として働きたいと考えている方も多いかもしれません。
週3~4日勤務の常勤医師として働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットをご紹介します。
ワークライフバランスが整う
週3~4日勤務の常勤医師として勤務するメリットは、ワークライフバランスが整うことです。
当然ですが、週5日勤務の医師と週3~4日勤務の医師では、労働時間が変わってきます。週3~4日勤務になると、自由に使える時間が増えるため、家族との時間や趣味に費やす時間が確保できるようになり、プライベートが充実しやすいです。
身体的な負担を軽減できる
身体的な負担を軽減できることも、週3~4日勤務の常勤医師として勤務するメリットのひとつです。
週3~4日勤務になれば、しっかりと身体を休める時間が確保できます。週5日勤務では休んだ実感が得られずにいる方も、心身ともに休息が取りやすくなるでしょう。身体的な負担が軽減されれば、仕事にもさらに意欲的に取り組めるようになるので、質の高い医療の提供につながります。
キャリアを多様化させやすい
多様なキャリアを築きやすいことも、週3~4日勤務の常勤医師として勤務するメリットのひとつです。
ご自身が描くキャリアに向けての準備や勉強の時間を取りたくても、週5日勤務の勤務では「忙しくて思うように時間が割けない」という方も多いのではないでしょうか。週3~4日勤務なら自由な時間が持ちやすくなるので、開業準備や専門性を高めるための学習時間を確保しやすくなります。
また週3・4日常勤医師として働きながら、週1・2日他の診療科目で非常勤医師として働くことで、新たなキャリアの可能性を広げることもできるでしょう。
週3~4日勤務の常勤医師として勤務するデメリット

週3~4日勤務の常勤医師として勤務することには、メリットだけでなくデメリットもあります。ここからは、どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
給与や待遇に差が出る場合がある
週3~4日勤務の常勤医師として勤務するデメリットは、週5日勤務の常勤医師との給与や待遇に差が出てしまう場合があることです。
給与に関しては、週3〜4日勤務と週5日勤務では労働時間が変わってくるため、収入が下がってしまうケースが多いでしょう。収入をできるだけ落とさずに勤務日数を減らすには、より良い条件の医療機関へ転職するのがひとつの方法です。
また医療機関の規定にもよりますが、週3~4日勤務と週5日勤務で福利厚生の充実度が下がってしまうケースもあります。
触れられる症例数が減る
経験できる症例数が減ってしまうことも、週3~4日勤務の常勤医師として勤務するデメリットです。
週5日勤務と比べて労働時間が減る週3~4日勤務の医師は、同じ常勤でも診療できる患者さんの数や携わる手術の件数が少なくなりやすい傾向にあります。経験できる症例数が減ってしまうことで、専門性を高めにくくなってしまうかもしれません。高度な専門性を身に付けたい方にとっては、デメリットになってしまう可能性があるでしょう。
キャリアアップしにくい場合がある
キャリアアップしにくい場合があることも、週3~4日勤務の常勤医師として勤務するデメリットのひとつです。
医療機関にもよりますが、昇進・昇格を目指す場合、週5日勤務の常勤医師よりも週3〜4日勤務の医師の方が不利になってしまう可能性があります。これは、勤務日数が少ない医師より、勤務日数が多い医師の方が、責任のある立場を任せやすい傾向にあるからです。
現在働いている医療機関での昇進・昇格を目指している場合は、キャリアに影響が出ないか慎重に検討した方が良いでしょう。
医師の求人で勤務時間以外に確認すべきポイント

どのような働き方をする場合でも、医師が転職を考える際は、勤務時間や勤務日数以外に確認しておきたいポイントがいくつかあります。転職を検討している方は、これからご紹介する4つのポイントを押さえて、求人内容を確認するようにしましょう。
オンコールや残業の有無
医師の求人で勤務時間以外に確認すべきポイントのひとつは、オンコールや残業などの有無です。
転職する上で、ワークライフバランスを整えたいと考える方は多いはずです。その場合、オンコールや残業、当直、休日出勤などが多い職場に転職してしまうと、理想の働き方の実現が難しくなってしまう恐れがあります。ご自身がどのような働き方をしたいのか考えた上で、理想の働き方が実現できる勤務条件かどうかを確認しましょう。
ただしご自身がオンコールや残業を行う必要がなくても、自分以外の医師がオンコールや残業に対応していると「気まずい」「立場がない」と感じてしまう方や、「頼まれた時に断りづらい」と感じてしまう方も少なくありません。他の医師の勤務実態も把握しておくことで、こういった状況を避けやすくなります。
給与・福利厚生
給与や福利厚生も、医師の求人で勤務時間以外に確認すべきポイントです。
いくら希望の勤務時間で働けたとしても、給与や福利厚生が満足できるものでなければ、思い描いていたご自身の在り方とは変わってしまう可能性があります。週5日勤務から勤務日数を減らしつつ給与を維持できるケースもありますが、以前よりハードな労働になったり通勤しづらくなったり、福利厚生が大きく削られてしまったりと、給与面以外でマイナスな条件が出てくることもあるため、総合的に判断することが大切です。
また基本的に常勤医師であれば社会保険が完備されている求人が多いですが、中には雇用保険が含まれていないケースもあるので、必ず詳細を確認しましょう。
組織体制
組織体制も、医師の求人で勤務時間以外に確認すべきポイントの一つです。
同じような労働条件でも、組織体制によって働きやすさは大きく変わってきます。例えば規模が大きな学閥がある組織に転職すると、ご自身の理想とする医療の実現が難しくなってしまうかもしれません。役職付きで入職するケースでも、組織内に多くの権限を持つ医師が入れば、思っているような権限は与えられない可能性が高いです。また職員数が少ない組織や医局との関係性が希薄な診療科の場合、対応しなければならない業務が多岐にわたり、仕事に追われる生活になってしまう恐れもあります。
加えて、症例数も確認しておきたいポイントです。ホームページや公開されている資料に掲載されている症例数はデータが古いケースも多いですが、医療機関と密接な関係を構築している医師専門の人材紹介サービスなどに相談すれば、最新のデータをもらえる可能性もあります。医師専門の人材紹介サービスの中には、組織体制や組織内の人間関係に関する情報を把握しているところも多いので、一度相談してみると良いでしょう。
将来のキャリアパス
将来のキャリアパスも、医師の求人で勤務時間以外に押さえておきたいポイントです。
転職後の医療機関の方針などによっては、ご自身が描くキャリアパスの実現が難しくなることもあります。その医療機関に在籍している医師がどのようなキャリアを構築しているのか、今後体制変更の予定はないか、育児に対するサポートや理解があるかなど、ご自身の描くキャリアパスに影響しそうな点はないかを、しっかり確認しましょう。
これらの情報も、医師専門の人材紹介サービスに相談することで、正しい情報が得やすくなります。
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