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医師学会とは? 自己研鑽としての参加意義と活動内容、制度の事情

医師にとって学会とは、専門知識を磨いたり人脈を築いたりするために、重要な意味を持つものです。しかし、それが自己研鑽なのか、あるいは労働時間に含まれるのかが分からないという方もいるのではないでしょうか。

本記事では学会の基本情報や参加する意義、学会における自己研鑽と労働の線引き、医師の働き方改革により想定される影響などを分かりやすく解説します。医師にとって自己研鑽は欠かせないものですが、勤務先の方針や職場環境、さらには働き方改革の導入によって、自己研鑽の機会が制限されたり、意欲が低下してしまったりすることもあるでしょう。

本記事を通して、学会参加を含む自己研鑽が労働と見なされるかどうかを正しく理解し、今後の働き方やキャリア形成の参考にしてみてください。

こんな方におすすめの記事です!

  • 医師の学会がどのようなものか知りたい方
  • 学会への参加が労働時間に該当するのかを知りたい方
  • 学会の参加などの自己研鑽に課題を抱えている方

目次

医師の学会とは?

そもそも学会とは、特定の専門性を持つ研究者が集まり、その分野に関する発表や議論、情報交換などを行う場を指します。「医師の学会」とは、医師が集まって、専門分野における研究成果や臨床経験を共有し、お互いの知識や技術向上に生かすためのものです。

国内外にはさまざまな医師系の学会があり、一般的に一人の医師が複数の学会に所属します。国内最大規模の医師の学会として知られているのが、12万人以上の会員を擁する「日本内科学会」です。

学会には医師だけではなく、看護師や薬剤師などの医療従事者、企業の関係者なども参加します。また学会によっては、患者さんも参加が可能です。医療従事者同士が交流を持つだけではなく、同じ病気を抱える患者さん同士が情報交換を行う場ともなっています。

参考:日本医学会「No.17 日本内科学会」

学会の主な種類

学会の種類は、大きく「学会総会」「地方会」に分けられます。

学会総会は、経験を積んだ中堅からベテランの医師が全国から集まり、発表を行う場です。「若手の医師にとって先輩医師の発表を聞くことにより、自らの知識を高める機会になります。

一方、「地方会」は、初期研修医をはじめとした若手医師が中心となって発表を行う場です。学会総会と異なり、地方会は県単位やエリア単位で行われます。学会総会よりも規模は小さくなりますが、若手医師の学会発表に挑戦するための第一歩として位置づけられている「登竜門」のような存在です。

また学会ではありませんが、将来的に学会として認定されることを目指して立ち上げられた「研究会」という形の集まりもあります。

学会の活動内容や役割

学会の活動内容や役割には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的な活動内容や役割について見ていきましょう。

学術集会

学術集会とは、学会が開催する集会です。2〜3日程度の期間で行われ、国内だけではなく海外からも医療従事者や研究者が集まります。医師の「学会参加のため休診」とは、学会出席のために診療を休むという意味です。学術集会は「年次総会」とも呼ばれます。

学術集会での発表形式は、発表者が壇上に上がり、多くの人の前で発表する講演方式や、研究内容をポスターで掲示する方式などさまざまです。特定のテーマに対して、複数の発表者がそれぞれ発表を行った後、議論を交わすシンポジウム方式で行われることもあります。

学術集会は、専門性を磨いたり、先端技術を学んだりするためだけのものではなく、医療従事者や研究者の交流の場としても欠かせません。また前述した通り、患者さん同士が交流するための場でもあり、患者さん自身が自分の病気に関して正しい知識を得るためにも重要な側面を持っています。

診療ガイドラインの作成

学会では、診療ガイドラインの作成も行われます。

診療ガイドラインとは、さまざまな病気に対して、科学的根拠に基づき最適だと考えられる検査方法や治療法などを示すものです。医療従事者だけではなく、患者さんを支援する目的もあり、治療方針などの意思決定の際に役立てられます。同じ病気でも個々の症状や状況は異なるため、最終判断は医師と患者さんとの話し合いによって行われますが、診療ガイドラインは重要な判断材料のひとつとして欠かせません。

各学会では、それぞれの領域の診療ガイドラインを作成・改訂しています。治療において重要な指標となる診療ガイドラインは、特定の立場や意図によって、内容をゆがめられることがあってはなりません。そのため、診療ガイドラインの作成には厳格なルールと手順が設けられています。学会では、定められたルールや手順に沿って、診療ガイドラインを作成し、医療従事者や患者さんに科学的根拠に基づいて推奨される正しい情報を提供しています。

情報発信・PR活動

情報発信やPR活動も、学会が行う重要な活動です。

「多くの人に学会の存在や活動を知ってもらうため」「学会のイメージアップを図り、会員数を増やすため」には、情報発信やPR活動が欠かせません。また情報発信を行うことは、患者さんや関係者との信頼関係の構築にもつながります。

主な情報発信やPR活動の方法は、政治家に働きかけて行うロビー活動や、マスコミ対応、病院内のテレビなどの活用による情報提供、市民・県民を対象とした講演会、ポスターやリーフレットなどの作成などです。また近年はSNSで公式アカウントを作成・運用し、情報発信を積極的に行う学会も増えています。

専門医の育成や認定

学会が行う重要な活動として、専門医の育成や認定も挙げられます。

専門医とは、特定の領域において適切な教育を受け、高度な知識や技術、臨床経験を持つ医師を認定する制度のことです。専門医の認定を受けた医師は、その領域で「患者さんからの信頼に値する質の高い医療を提供できる存在」として見なされます。

2018年4月から新専門医制度が始まり、専門医になるためには、各学会の連携によって設定された研修を修了し、学会が実施する認定試験と一次審査の受験が必要になりました。認定試験と一次審査に合格した医師は、日本専門医機構による二次審査を受け、これに合格すると、専門医の認定を受けられます。

現在、多くの専門分野で、医師の不足が深刻な課題となっています。前述した情報発信やPR活動を通して、若手の医師に各学会の魅力を伝えることも、専門医を育成するために欠かせない学会の重要な活動です。また専門医を希望する若手医師に対して、質の高い学びの機会を提供し、活躍できる土壌を整備することも、学会の重要な役割となっています。

参考:厚生労働省「新たな専門医制度の背景と現状(改)」

医師が学会に参加する意義

医師が学会に参加する意義のひとつとして、「新たな知識を習得できること」が挙げられます。

医学は目まぐるしく進化しているので、患者さんに正しい情報や適切な治療を提供するためには、情報のアップデートが欠かせません。かつては最適とされていた治療が、現在では推奨されていないケースも多いです。独学で最新の医療知識を学び続けるのは大変ですが、学会に参加することで、定期的に最新の医療知識へとアップデートできます。

また他の医師と交流できることも、医師が学会に参加する大きな意義のひとつです。医師のキャリア構築において、人脈作りは欠かせません。学会に参加すれば、その領域で活躍する医師や研究者と交流を持つ機会を得られます。

学術集会への参加と聞くと、「旅費がかかる」「時間を確保しなければならない」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、コロナ禍以降オンラインでの開催を行う学会も増え、現在では現地参加とオンライン参加から選べる「ハイブリッド開催」の学会も増え、参加へのハードルも下がってきています。

学会参加は労働時間? 自己研鑽との線引き

「学会への参加が労働時間に該当するのか?」と疑問を持っている方もいるでしょう。学会への参加が労働時間に該当するかどうかは、学会に参加する際の状況によって異なります。

ここからは、自己研鑽との線引きについて見ていきましょう。

労働時間に該当する自己研鑽

以下のような状況での学会への参加を含めた自己研鑽は、労働時間として見なされることが多いでしょう。

・日常の臨床業務と直接関係する内容の学会について
・上司の指示によって参加が義務付けられるケース
・参加しないことで、病院やクリニックが不利益を被る

業務に直接関係する内容の学会については労働時間に該当することが多いです。ただし施設間によりその線引きは異なりますので、事前の確認は必須です。

労働時間に該当しない自己研鑽

以下のような状況での学会への参加を含めた自己研鑽は、労働時間としては見なされないことが多いでしょう。

・医師本人の意思によって行うものの、自らのスキルアップを主たる目的とする。
・上司からの指示とは関連せずに参加するケース
・施設や診療科において関連学会と認められていないケース

業務上推奨されている学会への参加であっても、上司からの指示がない場合は、医師本人の意思による参加となり、労働時間には該当しないことが多いです。施設や診療科によって取り決めがあるでしょうから、事前の確認は必須です。

医師による自己研鑽の実情

自己研鑽は本来、スキルアップのために、本人が主体的に行うものです。医師が活躍し続けるためには、自己研鑽は欠かせませんが、「医師は自己研鑽を行うべき」という風潮があるのも事実で、自分の意思ではなく、周囲から無言の圧力を感じて自己研鑽をしている医師は少なくありません。

また多くの医療機関では、自己研鑽と労働の区別が曖昧になっているのが実情です。明確なルールの整備が進んでいない中で、自己研鑽を行うことに不満を感じている医師も少なくありません。例えば、本来なら労働時間として認められるべき上司の指示による学会への参加が労働時間には認められず、勤務先や上司に対して不信感を抱く医師もいます。

医師の働き方改革が推進

2024年4月より、医師の働き方改革が施行されました。

医師の働き方改革が施行されたのは、医師が健全に働ける環境を整備することにより、患者さんに安全かつ質の高い医療を提供することが目的です。多くの医療現場で課題となっている医師の長時間労働を是正するために、時間外労働の上限規制が設けられた他、労働時間の正確な把握や、タスクシフトやタスクシェアによる医師の業務負担の軽減などが主な取り組みとして挙げられています。

医師の働き方改革は、医師の労働時間に関するものなので、医師の自己研鑽にも大きく影響すると考えられています。

参考:厚生労働省「医師の働き方改革」

医師の働き方改革により想定される影響

では、医師の働き方改革の施行により、医師の自己研鑽にはどのような影響があるのでしょうか。良い影響と悪い影響をそれぞれ解説します。

良い影響

医師の働き方改革によって自己研鑽にもたらされる良い影響は、意欲の向上です。

医師の働き方改革によって、医師の時間外労働および休日労働の年間上限は、960時間と定められました。労務管理が適切に行われることで、医師は十分な休息を取れるようになり、勤務時間とプライベートをしっかり分けられるようになります。

生活にメリハリが付きやすくなることで、自己研鑽への意欲が高まれば、さらなるスキルアップや専門性向上につながるでしょう。

参考:医師の働き方改革 C2審査・申請ナビ「医師の働き方改革の制度について」

悪い影響

医師の働き方改革には、自己研鑽に対して悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。代表的なものは、実質的な労働時間の増加や年収の減少の可能性です。

勤務先が十分に人材を確保できなかった場合、本来労働時間とされるべき業務が、自己研鑽扱いになる恐れがあります。その結果、表面上は労働時間が制限されていても、実際の勤務負担が増加するかもしれません。また労働と見なされない時間が増えることで、収入の減少につながる可能性もあります。

こういった状況が続いて、一部の医師の自己研鑽へのモチベーションが低下すれば、患者さんに提供できる医療の質にも影響が出てしまうでしょう。

医師の自己研鑽を積極的にサポートする医療機関も多い

もし現在働いている医療機関で、働き方改革の施行によって前述したような待遇へのマイナスな影響が出ているのだとしたら、転職によって待遇改善を図るのも方法のひとつです。

医療機関の中には、適正な労務管理による自己研鑽の促進に加え、学会参加や資格取得にかかる費用の補助などのサポートを行っているところも少なくありません。こういった医療機関に転職することで、今抱えている不満を解消し、より良い環境でスキルアップや専門性の向上に取り組めるでしょう。

医師として転職をお考えの方へ

自己研鑽をサポートする取り組みを積極的に行っている医療機関への転職を検討しているのなら、医師専門の転職支援サービス「マイナビDOCTOR」をご活用ください。医師専任のキャリアパートナーが徹底したサポートを行い、お一人おひとりのご希望や条件に合った転職先をご提案します。

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記事の監修者

吉川 博昭(よしかわ ひろあき)

吉川 博昭(よしかわ ひろあき)

医師免許/日本ペインクリニック学会認定専門医/大阪府内複数医療機関 勤務医
医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、複数の医療機関で臨床業務に携わってまいりました。健康で穏やかな日々を送ることを大切にしています。

【監修者コメント】

学会参加は医師として貴重な機会ですし、自己研鑽として非常に有意義だと思います。ただ業務かどうかの扱いや費用負担については、未だ医療機関や診療科ごとにさまざまであることが多く、気になる場合は事前に確認しておくべきだと思います。

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