院長の年収は、医療機関の種類や働き方によって異なります。とはいえ、医師のなかでも高待遇のポジションであり、一般の勤務医と比べて収入も高い傾向にあります。本記事では、病院・クリニックそれぞれの院長の平均年収をお伝えするとともに、仕事内容や院長になるメリット・デメリットについて解説します。
こんな方におすすめの記事です!
- 将来は院長職に就くことを検討している医師の方
- 開業と雇われ院長、それぞれの働き方の違いを知りたい
- 院長として働くメリット・デメリットを事前に把握しておきたい
目次
院長の平均年収は?

「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、医師全体の平均年収は約1,338万円(平均年齢44.1歳)でした(※)。
では、院長の役職を得るとどのように変化するのでしょうか。「院長」といっても、病院と診療所とでは条件が異なります。まずは、病院、診療所それぞれの院長の平均年収について、「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告」をもとに紹介します。
※平均年収=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額
参考:賃金構造基本統計調査/令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
病院の院長の年収
中央社会保険医療協議会が、令和5年11月に発表した「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」において、令和4年度における、運営母体別の院長の年収は下記のように報告されています。
| 平均給料年額 | 賞与額 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 国立 | 13,986,613円 | 5,096,495円 | 19,083,108円 |
| 公立 | 17,133,822円 | 3,750,551円 | 20,884,372円 |
| 公的 | 18,009,306円 | 4,414,918円 | 22,424,223円 |
| 社会保険関係法人 | 13,756,896円 | 6,840,306円 | 20,597,202円 |
| 医療法人 | 29,897,498円 | 315,171円 | 30,212,670円 |
| その他 | 22,609,356円 | 1,075,340円 | 23,684,696円 |
| 全体の平均 | 24,769,432円 | 1,565,230円 | 26,334,663円 |
参考:(24) 職種別常勤職員1人平均給料年(度)額等|一般病院 開設者別(集計1)前年(度)|第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
病院長全体の平均年収は約2,633万円であり、医師全体の平均年収と比べると、約1,300万円も高い結果です。ただし、施設別に見ると、大きな差が見られます。
平均年収が最も高かったのは、医療法人(私立・民間病院)の約3,021万円でした。最も低かった国立病院の約1,908万円と比べて、約1,000万円の差があります。ただし、あくまで全体の平均であり中央値ではありません。施設や働き方によって、実際の年収は異なると考えられます。
クリニック(診療所)の院長の年収
続いて、クリニック(診療所)の院長の平均年収を見てみましょう。
「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」では、「入院診療収益の有無」で区分けし、それぞれの平均給与額が報告されています。
| 平均給料年額 | 賞与額 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 入院診療収益あり (医療法人) | 34,127,773円 | 250,048円 | 34,377,821円 |
| 入院診療収益なし (医療法人) | 25,606,554円 | 176,079円 | 25,782,632円 |
参考:(24) 職種別常勤職員1人平均給料年(度)額等|一般診療所 開設者別(集計2)前年(度)|第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
入院診療の収益あり(有床)の診療所は、先に紹介した医療法人の病院長の平均年収を上回っています。また、入院診療収益なし(無床)の診療所であっても、国立病院の院長の平均年収を約1,500万円上回る結果となりました。
入院機能の有無で差があるものの、病院長の平均年収と比べて高い傾向にあることがわかります。
前述した病院長の平均年収を含めて、年収が高い順にまとめると下記のようになります。
<院長の平均年収上位ランキング>
1.クリニック(入院診療収益あり・医療法人):約3,438万円
2.病院(医療法人):約3,021万円
3.クリニック(入院診療収益なし・医療法人):約2,578万円
クリニック(入院診療収益あり・医療法人)の院長の平均年収は、医療法人の病院長より約400万円も高い結果です。次いで、クリニック(入院診療収益なし・医療法人)となるため、平均すると、病院よりもクリニック院長の方が年収額は高い傾向にあるといえます。
ただし、この情報は平均値であり、中央値ではありません。あくまで目安として押さえておきましょう。
院長の仕事内容

好待遇となる院長ですが、実際にはどのような業務を担うのでしょうか。
院長といっても、雇用形態によって条件が異なります。本記事では、便宜上、自身で医療機関を開業して院長に就く場合を「開業医(院長)」とし、医療法人などに勤務し、開設者ではない立場で院長職に就く医師を「雇われ院長」と表現したうえで、それぞれの院長における仕事内容について解説します。
開業医(院長)の仕事内容
自身が開業している院長は、日々の診療業務に加えて、医療機関の経営、人事、マネジメント、会計など、さまざまな業務に携わります。また、患者とのトラブルや医療ミスなど、院内トラブルの最終的な責任も問われます。
入院施設があれば主治医になることも多く、担当患者一人ひとりの症状の変化、地域医療の実情や最新の医療情報なども把握しておく必要があります。特に、1人開業医として他の医師を雇用しない場合、医療業務の負担も大きくなるため、日々多忙を極める場合があります。
雇われ院長の仕事内容
日々の主な業務は、開業医の院長と大きく変わりはありません。院内でトラブルが発生すれば、施設管理者として責任を負うこともあります。必要に応じて、法人の経営会議や、地域の医師会の行事などへの参加も求められます。ただし、病院規模によって異なるものの、開業医と比べて、外来の受け持ちや主治医となる機会は少ない傾向にあります。
また、法人の方針によっては、経営権や人事権までは与えられないケースもあります。そのような職場では、開業医の院長よりも医療業務に専念しやすいでしょう。
開業医(院長)になるメリット・デメリット

続いて、院長を目指すにあたり、開業医(院長)と雇われ院長では、どちらが望むキャリアに近いのかを考えてみましょう。ここからは、院長になるメリット・デメリットについて解説します。まずは、開業医のケースを紹介します。
開業医(院長)のメリット
開業医(院長)になるメリットとして、主に以下の3つがあげられます。
・経営方針・診療方針を自身で決められる
・高い年収を得られる可能性がある
・定年がない
それぞれポイントを解説します。
●経営方針・診療方針を自身で決められる
開業医の院長は、医療機関の最高責任者であり、経営方針から診療方針などを自身の裁量で決められるのが大きなメリットです。雇用された院長とは異なり、より自由度が高いのが魅力です。コストがかかるものの、導入する設備を自身で決定でき、理想の診療環境を目指せます。働き方においても、診療時間を自身で設定できるため、「◯曜日は休診にしたい」「昼過ぎから夜遅くまで診療したい」などといった意向が叶います。
●高い年収を得られる可能性がある
診療所の院長は、病院長と比べて平均年収が高い傾向にあります。とはいえ、医療機関の立地や規模、地域特性、診療科など、さまざまな要因に左右されるため、一概にはいえません。加えて、自身の経営の手腕が、収入に大きく影響します。しかし、自身の裁量次第、努力次第で成果につながり、高い年収を目指せる可能性があります。
●定年がない
医師免許は生涯有効であり、年齢による失効はありません。勤務医や雇われ院長は60歳〜65歳で定年を迎えますが、自身が開業した施設であれば、自身が働きたい(働ける)年齢まで現役で活躍できます。
経営が安定していれば、年齢を重ねても、自身の収入が下がることは考えにくいでしょう。そのため、勤務医・雇われ院長よりも、高い生涯年収を目指すことが可能です。
合わせて読みたい

開業医(院長)のデメリット
メリットがある一方で、以下のようなデメリットも考えられます。
・経営・マネジメントスキルが求められる
・開業・運転資金が必要
・経営が安定しないケースがある
●経営・マネジメントスキルが求められる
医療機関の最高責任者として、経営やマネジメントなど、医療や診療以外の業務もこなさなければいけません。会計や人事などの業務は、勤務医時代には経験しづらいスキルです。開業前から学ぶ必要があるでしょう。
また、地域の条件を考慮した物件選びや専門性に合った設備投資など、経営の基盤となる方針をしっかり考えるだけでなく、集患などにも尽力しなければいけません。加えて、医師は院長1人であっても、その他の医療スタッフは施設運営に欠かせない存在です。院長として、人材教育やマネジメントなどにも関わる必要があり、高いコミュニケーション力も求められます。
●開業・運転資金が必要
開業時には、まとまった資金が必要です。開業後すぐに経営が安定しない可能性も考慮して、運転資金もある程度用意しておく必要があるでしょう。閉院を検討している医療機関から、設備や施設を継承して開業すれば、ゼロからの開業と比べて、初期費用を軽減できるものの、引き継いだスタッフの給与など、運転資金に余裕を持たせる必要があるかもしれません。いずれにしても、開業して院長を目指す場合には、事前にしっかりと資金を用意しておくことが大切です。
[医師のキャリアにはどんな選択肢がある?]
「開業医」にまつわる記事一覧はこちら
●経営が安定しないケースがある
開業したからといって、誰もが成功するとは限りません。経営状況によっては、雇われ院長や勤務医よりも年収が下回ることもあります。常に閉院のリスクを背負いながら、日々の診療や経営を行うことになるため、心理的な不安を抱えることがあるでしょう。
雇われ院長になるメリット・デメリット

続いて、医療機関に雇用される形で院長となる場合でのメリット・デメリットを解説します。
雇われ院長のメリット
雇われ院長となるメリットとして、主に以下の3つがあげられます。
・経営ノウハウを学べる
・安定した給与収入を得られる
・開業資金が不要で、開業と比べてリスクが少ない
●経営ノウハウを学べる
経営に携わる機会が増えるため、経営ノウハウなどを学ぶことが可能です。将来的に独立開業を目指している場合には、金銭的なリスクを抱えずに経営を学べるという大きなメリットがあります。
●安定した給与収入を得られる
運営母体から雇用されているため、ある程度安定した収入が得られるのもメリットです。施設によっては、経営状態で左右される可能性があるものの、役職手当等により、勤務医と比べて高い年収が期待できます。
●開業資金が不要で、リスクが少ない
開業資金を準備する必要がなく、開業医と比べても、金銭的なリスクゼロで院長を目指せます。開業した場合と比べて、すでに雇用された他の医師やスタッフもいるため、診療体制に対する不安も少ないでしょう。長く勤務してきた施設でのキャリアアップで院長になった場合、慣れた職場で働き続けられるのも利点です。
雇われ院長のデメリット
雇われ院長のデメリットを解説します。
・トラブルの責任を問われることがある
・全ての経営権限があるわけではない
・定年がある
●トラブルの責任を問われることがある
医療機関内でトラブルが発生した際には、管理者である院長が責任を問われるケースがあります。「重大な医療ミス」など、トラブルの程度によっては、最悪の場合、解雇となる可能性も考えられます。
●全ての経営権限があるわけではない
立場上、雇われ院長の上には、経営の決定権を持つ開設者がいます。「雇われ院長には、単に院長業務を任せているに過ぎない」という意向を持つ開設者の場合には、医療機関の人事権や、物品購入の権限などが、雇われ院長には与えられないケースがあります。
院長という立場にいながら、「なかなか思うような経営ができない」と、もどかしさを感じることもあるでしょう。
●定年がある
雇用された立場として、定年が存在します。体力が続く限り仕事をしたいと思っても、定年として、院長を続けることができないかもしれません。再雇用となった場合でも、現役時よりも収入面、待遇面ともに下がる可能性が考えられます。
求めるキャリアや年収に合った選択を
医療機関の規模や有する診療科、経営状況などによって、院長の年収額は異なります。同じ院長というポジションでも、開業医か雇われ院長かによっても、年収や仕事内容が異なるうえ、メリット・デメリットにも違いがあります。自身の求める働き方や、希望の年収額などに合わせて、納得のいくキャリアを目指してはいかがでしょうか。
合わせて読みたい

記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)
医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。
