医師が働く診療科にはさまざまな種類があり、診療科ごとに特徴や求められるスキル・適性などが変わってきます。一度診療科を決めるとなかなか転科が難しいので、診療科選びをする際は慎重に行うことが大切です。本記事では、診療科別の医師の適性や診療科を決める際のポイントについてお伝えします。
- 各診療科の違いを把握し、自分の適性を見極めたい方。
- 自己分析を行い、理想の働き方を追求したい方。
- 労働条件を比較し、自分に合った職場を見つけたい方。
目次
【診療科別】医師の適性

さっそく診療科別の特徴や求められるスキル・適性を見ていきましょう。診療科ごとの違いを知って、診療科選びにお役立てください。
1-1.内科
内科は内臓や血管、神経などを主に扱う診療科です。消化器内科・呼吸器内科・循環器内科など専門分野は分かれていますが、さまざまな症状や疾患に対応しなくてはならないため、幅広い知識が求められます。基本的な治療方法は投薬です。
初診の患者さんを診察する機会も多く、症状や患者さんの話から判断して、診断を下さなくてはなりません。身につけた知識を活かして柔軟に物事を考え、症状から適切な診断を下す判断力が求められます。患者さんとは長い付き合いになるケースも多いので、話にしっかり耳を傾ける傾聴力に加え、信頼関係を築けるコミュニケーション力も必要不可欠です。また一人ひとりのライフスタイルや健康状態を踏まえ、適切な治療計画を立てる力も必要となるでしょう。
1-2.外科

外科は手術によって病気や怪我の治療を行う診療科です。内科と同じように脳神経外科・呼吸器外科・心臓血管外科・消化器外科などさまざまな専門分野に分かれており、担当する領域に関する深い知識が求められます。
外科には器用さが必要不可欠ですが、それ以上に繊細で正確な技術を身につける練習や研鑽を重ね続ける熱心さや根気強さも必要です。また一度の手術が長時間に渡ることも珍しくないため、高い集中力も欠かせません。
外科医は緊急性が高い治療や重篤な疾患の治療を行うことも多くあります。手術が命に直結することも多いため、プレッシャーのある環境に耐えられる精神力や、どのような状況でも常に冷静に判断を下せる力も求められるでしょう。
1-3.整形外科
整形外科は骨や筋肉、関節など運動器官に関する治療を行う診療科です。投薬・手術・器具を使った治療やリハビリテーションなどを行います。外傷・関節疾患・リウマチ・スポーツ障害などを扱いますが、脊椎外科・手外科・関節外科・外傷整形外科医・スポーツドクターなど専門分野が分かれているので、専門性を極めたい方にも向いているでしょう。
老若男女の患者さんと接することになるので、幅広い世代に対応できるコミュニケーション力が必要です。また長期に渡って治療を行うことも多いため、患者さんの気持ちに寄り添う共感する力も求められます。
リハビリテーションや手術では体力が求められますが、場合によっては手術用双眼顕微鏡を用いたマイクロサージャリーを行うこともあるので、器用さや繊細さも必要です。
1-4.眼科

眼科は目に関する疾患を扱う診療科です。疾患の治療に加え、メガネやコンタクトレンズの処方、保険適用外のレーシック手術などを行うこともあります。
人体の中でも特に精密な目を扱うため、器用さや繊細な技術力が必要です。基本的に手術はマイクロサージャリーになるので、高い集中力も欠かせません。また合併症の場合はその他の診療科と連携を取る必要もあるため、患者さんの話を聞く力はもちろん、他の診療科と円滑なやり取りができるコミュニケーション力も求められます。
目や目の周辺構造に関する深い専門知識が求められる診療科なので、専門性を極めたい方に向いています。生活の質に直結する器官を扱うため、身につけた知識を元に、症状や患者さんの話から正確な判断を下せる分析力も求められるでしょう。
多くの患者さんに対応する必要があるのでテキパキと作業をこなす力は求められますが、比較的ワークライフバランスが取りやすい診療科といえます。
1-5.耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科は耳・鼻・喉などの疾患を中心に扱う診療科です。耳・鼻・咽頭・神経など専門分野が分かれるため、担当する領域に関する高い専門性が求められます。ただし内科領域と外科領域の双方が重なる部分もあるので、同時に幅広い医学知識も求められるでしょう。
生活の質に大きな影響を与える領域を扱うため、患者さんに寄り添いながら症状から正確な疾患を見極め、改善のために綿密な治療計画を立てる必要があります。また患者さんの世代が幅広いので、年齢問わず対応できる高いコミュニケーション力も必要です。体の中でも小さな器官を扱う診療科なので、手先の器用さや繊細な技術力も求められます。
世代を問わず多くの患者さんに対応しなければなりませんが、外来が中心で手術を行う場合でも日帰り手術がほとんどです。ワークライフバランスを重視した働き方を求める方にも向いている診療科といえるでしょう。
1-6.皮膚科
皮膚科は皮膚や爪などの疾患を扱う診療科です。肌荒れや水虫など軽度の症状・疾患から、皮膚腫瘍や慢性関節リウマチなどの重度の症状・疾患まで幅広く対応します。美容診療との関係性も深く、美容皮膚科医として働く医師も多いです。
軽度の場合は基本的に外用薬・内服薬で治療を行います。症状や疾患によっては手術にも対応しなければなりませんが、大規模な手術になることはまれです。
皮膚科を受診する患者さんの症状は、内臓系疾患などによって引き起こされているものも少なくありません。さまざまな疾患に関する広い知識を学ぶ姿勢や、症状との関連性を見極める洞察力も求められます。
眼科・耳鼻咽喉科同様、多くの患者さんに対応する必要がありますが、夜間対応や緊急対応が少ない傾向にあります。プライベートとの両立がしやすいこともあり、女性比率が高い診療科です。
1-7.精神科

精神科はうつ病や依存症、認知症などの精神疾患を専門に扱う診療科です。近年は心の病を患う方が増えているため、精神科医の需要も年々高まっています。
精神科医には患者さんの話にしっかり耳を傾ける傾聴力が必要不可欠です。ただし、患者さん自身がうまく話せないこともあるので、話を引き出す力や観察力も求められるでしょう。また基本的に心の病を扱う診療科ですが、心の病から体にさまざまな不調が出てしまう患者さんも少なくありません。その他の診療科に及ぶ幅広い医学知識を学ぶことも大切です。
患者さんに寄り添った対応をしなければなりませんが、向き合い続けることで医師自身がメンタルに影響を受けることもあります。冷静な対応ができる力や、オンオフを切り替える力も必要になるでしょう。
1-8.小児科
小児科は一般的に乳幼児から中学生程度の子どもの疾患を扱います。子どものさまざまな症状・疾患に対応しなければならない上、子どもの発育サポートにも対応することがあるため、幅広い医学知識が求められる診療科です。
小児科医は病院での診察はもちろんですが、学校での健診や地域のイベントなど、さまざまなところで子どもと触れ合うことになります。子どもが好きなことは小児科医に欠かせない適性のひとつでしょう。
また診察する子どもの中には、まだ言葉でうまく症状の説明ができない子どもも多いです。子どもに寄り添って気持ちを汲み取る力や、状態や症状から見極める観察力なども求められます。コミュニケーション力はどの診療科でも求められる能力のひとつですが、子どもとも保護者とも接することになる小児科では、より高いコミュニケーション力が必要です。
1-9.産婦人科

産婦人科は女性特有の疾患や周産期を扱う診療科です。婦人科と産科で扱う領域は異なりますが、どちらの場合もデリケートな疾患や状況に対応する必要があるため、患者さんの心身に寄り添える思いやりが求められます。
また産科の場合は勤務時間が不規則になりやすく、夜間対応や緊急対応が必要なケースも多いため、体力は必要不可欠です。生命の誕生に携われるという魅力がある一方で、中絶や死産といったハードな状況に立ち会う機会も多いので、ストレス耐性やメンタルの強さも必要になるでしょう。
女性だけが受診する診療科ということもあり、女性医師が比較的多い診療科ですが、男性でも活躍している医師はいます。どちらの場合でも女性からの信頼を得るには、きめ細かな気配りが欠かせません。
1-10.救急科
救急科は緊急性が高い患者さんに幅広く対応する診療科です。院内で救急外来に対応するケースもあれば、災害現場や事故現場に派遣されて働くケースもあります。
さまざまな診療科の症状や疾患に対応する必要がある救急科では、専門領域を超えた幅広い知識と常に予測できない状況に対応する臨機応変さが求められます。状況によっては限られた情報だけで即座に判断を下さなくてはならないこともあり、ある程度は割り切った考え方ができることも重要です。
ハードな環境に身を置くことも多いため、体力に加えて精神力も欠かせません。他の診療科と連携しなければならない機会も多いので、コミュニケーション力も必要となるでしょう。
1-11.病理科

病理科は各診療科で適切な治療が行えるよう、診断を専門的に行う診療科です。
組織・細胞などから疾患を確定し、治療法の提案などを行います。臨床医ではありますが、研究医としての要素も強く、コツコツと地道な作業ができる集中力が求められます。
またほとんど全ての診療科と連携して仕事を進めていく必要があるので、身につけなくてはならない医学知識は膨大です。勉強が好きで知識欲が高い方は、病理科に向いているでしょう。常にアンテナを張り、日々アップデートされる医学に関する情報を取り入れられる感度の高さと探究心も欠かせません。
また診断内容を正確に言語化・文章化する力も必要です。患者さんと直接向き合うことはありませんが、病理科の医師は縁の下の力持ちとして患者さんの治療に携わります。チームの一員として貢献することに喜びを感じられることも、病理科の医師に欠かせない適性です。
1-12.人工透析科
人工透析科は血液透析や腹膜透析を中心に行う診療科です。透析に関する高度な知識はもちろんのこと、透析が必要な患者さんに起こり得る合併症や偶発症に関する知識も求められます。また感染対策や災害対策に関する知識、社会復帰をサポートするための知識も必要です。
一度の透析は長時間に渡り、患者さんとコミュニケーションを取る機会も多いため、話好きの方に向いているでしょう。患者さんとの付き合いも長くなる傾向にあるので、人と関わることが好きな方、相手の気持ちに寄り添える思いやりがある方にも向いています。
診療科を決める際のポイント

診療科を決める上で押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
2-1.自己分析をする
まず自己分析を行い、自分が医師として働く上で何を目指したいのか、何を求めるのかを洗い出しましょう。どの分野に興味があるか、働く上で外せない条件は何かなどを突き詰めると、自分に合った診療科が見極めやすくなります。一度診療科選びをすると転科が簡単ではないからこそ、じっくりと自分と向き合い、自分なりの理想の医師像をイメージすることが大切です。
2-2.求める働き方を考える
どのような働き方を求めているのかも欠かせないポイントです。診療科の中には、勤務時間をコントロールしやすい診療科もあれば、不規則になりやすい診療科もあります。キャリアとプライベートの両立を重視したいなら、ワークライフバランスが取りやすい診療科を選びましょう。また将来開業を考えているのなら、開業しやすい診療科を選ぶのもひとつの方法です。
2-3.給与・福利厚生をチェックする
給与や福利厚生をチェックすることも大切です。平均的な給与額は診療科によっても異なります。緊急対応や夜間対応が必要な診療科だからといって、必ずしも給与が高いわけではありません。自己分析や求める働き方を考えた上で、それに見合った給与や福利厚生があるかどうかを見極めると良いでしょう。
自分に合った職場を見つけるにはエージェントに相談しよう
同じ診療科でも、勤務先によって勤務時間や給与・福利厚生は変わってきます。自分に合った働き方にお悩みの方は、医療専門のエージェントに相談してみましょう。
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