将来開業を検討している医師もいることでしょう。開業には多くの資金が必要であり、融資を受けるケースも多く見られます。開業後は、返済を考慮しながら、自身の年収を確保しなければいけません。では、実際に、開業医はどの程度の年収を得られるのでしょうか。今回は、開業医の平均年収や勤務医との違い、開業後の年収を安定させるために考えたいことなどについて解説します。
- 開業医の収益や収入事情について詳しく知りたい方。
- 病院の規模や地域による収入の違いに興味がある方。
- 地域ニーズをふまえた経営計画で安定収益を目指したい方。
目次
開業医の平均年収

厚生労働省が2019年に発表した「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると開業医が得られる収益を年収と見なす場合、全体の平均年収は、2,725万1,000円(一般診療所(個人(青色申告者を含む))の集計より、全体の損益差額)でした。
ただし、上記の調査は新型コロナウイルス感染症流行前に行われたものであり、現在とは状況が異なります。一時は、通院を控える人が増加したこともあり、開業医の年収にも影響があると考えられます。あくまで目安として考えておくと良いでしょう。
開業医と勤務医の年収の違い

開業医の年収は、勤務医と比較するとどの程度差があるのでしょうか。同調査で報告された病院勤務医の平均年収(国公立・医療法人等、すべての経営母体を含む)は、1,490万8542円(平均給料年額1,322万9,342円+賞与167万9,201円)でした。前述の開業医の平均年収と比較すると、約半分の額であり、大きな差があります。
調査による数値だけを単純に比較すると、一見、開業医の年収が高いように見えます。しかし、実態を理解するには、調査の背景をおさえていく必要があります。同資料には、「個人立の一般診療所の損益差額からは、開設者の報酬となる部分以外に、建物、設備について現存物の価値以上の改善を行うための内部資金に充てられることが考えられる」と記載されており、得られる収入すべてを給与として受け取れるわけではないことがわかります。
収益の一部を、開業時に負った融資の返済や設備投資にあてることを考えると、勤務医との年収差は小さくなるでしょう。
また、上記の平均額は、病院の規模を問わずに算出された数値です。有床の大規模病院もあれば、小さなクリニックも含まれるため、金額はあくまで目安といえます。
開業医の診療科別年収事情

厚生労働省「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」から、診療科別の年収を見てみましょう。一般診療所(入院施設の有無を問わず個人(青色申告者を含む)の全体)において、「医業・介護の収益計」から「人件費や医薬品費等の経費」を引いた損益差額を年収として仮定すると、診療科別の年収は以下の記載でした。
<診療科別・開業医の年収>
産婦人科 | 4,551.9万円 |
眼科 | 3,377.9万円 |
整形外科 | 2,998.4万円 |
小児科 | 2,827.3万円 |
皮膚科 | 2,792.6万円 |
耳鼻咽喉科 | 2,597.2万円 |
内科 | 2,582.4万円 |
精神科 | 2,455.8万円 |
外科 | 2,020.8万円 |
その他 | 1,998.4万円 |
※上記金額は、開業医の報酬以外に設備投資等に充てられると考えられる内部資金も含みます。
とくに年収額の高かった診療科にはどのような特徴があるのでしょうか。
産婦人科は、同資料によると、他科と比べて入院診療収益が大きく、前年度との比較において収益の伸び率が1.5%と、利益が高い傾向にあります。ハードワークなうえに訴訟のリスクが高いこともあり、競合が増えにくいことも影響しているかもしれません。
眼科は、入院診療収益、外来診療収益ともに、他科と比べて飛びぬけて多いわけではありません。しかし、他科と比べて手術に必要な時間が短時間で済む傾向にあり、医師一人で担う手術数が多くなることが年収に影響していると考えられます。
整形外科は、他科と比べて外来診療収益が大きいという特徴が見られます。
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開業医の手取りはどれくらい?

勤務医の場合、年収から所得税や住民税などの税金や、社会保険料が控除された後の金額を手取りとして受け取ります。一方、開業医は、病院の収益から人件費や医薬品費、設備費用などの経費を出し、さらに、税金等を支払った後の金額から自身の収入を設定することになります。利益から自身の年収を自由に設定できるとはいえ、その後に備えて運転資金を確保したり、借入金の返済をしたりすることを考えると、開業医は毎月決まった手取りを設定するのは難しいでしょう。
また、ひとくちに開業医といっても、個人クリニックから大手のチェーン展開まで、その規模はさまざまで、診療科によって必要経費にも大きな差があります。また、毎月同じ収益が得られるとは限りません。こうした背景から、開業医の手取りは人によって大きく異なります。開業前に、大まかな収益の目安を立て、どのくらいの経費がかかるのかを考えたうえで、どれくらいの手取りを得られるのか事前に計算しておくと良いでしょう。
開業後の年収を安定させるために考えたいこと

勤務医と比べて、開業医は日々の経費が発生するだけでなく、来院者数によって収益が増減するといった不安定な要素があります。開業後の収入を安定させたいのであれば、入念な準備が重要です。以下の点を考慮しながら、資金計画を立ててみましょう。
5-1.余裕を持った開業資金を準備する
開業の初期費用には、設備や内装の準備だけでなく、医療経費のほか、人件費や広告費などがかかります。さらに、その後の運転資金を考慮したうえで、十分な開業資金を用意する必要があります。その上で、開業医として診療所を運営していくためには経営力も問われることになります。資金の準備とともに、経営についても学んでおきましょう。
5-2.先を見越して備える
政府によって医療費抑制政策が推進されている昨今では、想定した収益を確保できない可能性も考えられます。保険診療だけにこだわらず、自費診療を取り入れたり、近隣の診療所と差別化できるアピールポイントを考えたりするなど、経営者としての視点でしっかり計画しておくことが大切です。とくに新設する場合には、事前に開業する立地や地域のニーズなどを検討し、条件に合った強みや特徴を打ち出しながら、患者さんが集まりやすい病院にする必要があります。
5-3.医院継承を検討する
新規開業としてゼロからスタートするのではなく、医院継承による開業を検討するのも一案です。すでに設備等が整っている施設を継承するため、初期コストを抑えられるというメリットがあります。融資額が少なくなれば、収入も上げやすくなるでしょう。また、医院継承では、患者さんを引き継げる可能性が高く、経営が軌道に乗りやすい傾向にあります。こうした理由から、収益を安定させやすい開業方法といえます。
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開業医として成功するための基盤を作ろう

開業医として安定した年収を確保するには、事前の準備が欠かせません。その前に、開業するためには、まず実績と経験を積む必要があるでしょう。また、近隣の同業者や医師会、大学病院、公的病院を含む大手病院との連携を想定した情報ネットワークや人脈を作っておくことも大切です。これから開業を考えるのであれば、キャリアプランをしっかりと見直し、将来を見据えた職場環境を整えると良いでしょう。将来の目標に合わせたキャリアパスとして転職を検討している人は、医師専門のエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。