長年、医師の長時間労働が常態化していましたが、「働き方改革」が叫ばれるようになった昨今、徐々に労働時間などの勤務環境が改善されつつあります。また勤務先や働き方を選択するうえでワークライフバランスを意識するようになった医師も増えているのではないでしょうか。今回は、「令和元年 医師の勤務実態調査」の結果をもとに医師の労働時間の実態について詳しく解説します。
※「令和元年 医師の勤務実態調査」:令和元年度厚生労働科学研究「医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究」として、性別・年齢・診療科・主たる勤務先種別ごとの医師の1週間の労働時間(診療、診療外の別を含む)、タスク・シフト/シェアの取り組み状況等の調査を行ったもの(調査期間=2019年9月、回答数=3967施設、2万382人)。
- 1週間あたり60時間以上勤務している男性医師が41%、女性医師が28%。80時間以上勤務している男性医師は9%、女性医師は6%で、4年前の調査と比較して労働時間は短縮傾向にある。
- 外科、脳神経外科、産婦人科、救急科など緊急の手術等を要する診療科ほど労働時間が長い。
- 都市部と地方部での労働時間に大きな差はみられない。ただし60代以上の医師の場合は、地方部のほうが労働時間が短い。
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1.医師の1週間あたりの労働時間
医師は1週間あたりにどのくらいの時間働いているのでしょうか。また労働時間は性別や年代によって差があるのでしょうか。
1-1.男女別・医師の労働時間
「令和元年 医師の勤務実態調査」によると、1週間で60時間以上勤務している男性医師が41%、女性医師が28%という結果が出ています。ここでいう医師とは、病院勤務の常勤医師であり、「勤務時間」には、診療時間のほかに「指示に基づく診療外時間」や「宿直・日直中の待機時間」を加えた時間が算出されています。また、男性医師の9%、女性医師の6%が週80時間以上勤務していることも明らかになりました。
■【男女別】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
平成28年度に行われた同種の調査(厚生労働科学特別研究「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査研究」)と比べると、週60時間以上勤務する医師の割合については男性・女性ともに目立った変化はみられなかった一方、週80時間以上勤務する医師の割合は、平成28年度に行われた調査では男性医師が11%、女性医師が7%で、ともにわずかながら減少しています。
なお、同居の子どもがいる場合は、いない場合と比べて、既婚女性は勤務時間が短くなる傾向がある一方、既婚男性は勤務時間が長くなる傾向があることも分かりました。医師として働いている女性であっても、母親となれば育児負担のかなりの部分を引き受けているという家庭事情がうかがえます。
1-2.年代別・医師の労働時間
病院・常勤勤務医の勤務時間(診療時間+指示に基づく診療外時間+宿直・日直中の待機時間)を年代別にみると、男性は年代が上がるにつれて短くなっていく一方、女性は50代でいったん増加して二峰性の分布となっています。
以下の表のカッコ内の数値は平成28年度に行われた同種の調査(厚生労働科学特別研究「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査研究」)と比較した際の増減時間を示しています。1週間あたりの全年代平均勤務時間は男性医師が減少している一方、女性医師は増加しています。また、世代別にみると男女ともに20代・30代・40代で減少し、50代・60代以上で増加しています。
■【年代別】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
※上記データは「令和元年 医師の勤務実態調査」において「宿日直許可を取得していることがわかっている医療機関に勤務する医師の宿日直中の待機時間を勤務時間から除外した上で、診療科別の性、年齢調整、診療科ごとの勤務医療機関調整を行っている」とされている。
男性医師の場合、20代~50代のいずれの年代でも1週間あたりの勤務時間は「50~60時間」が最多でした。60代以上の男性医師の場合は、「40~50時間」が最も多くなっています。女性医師の場合は、いずれの年代も「40~50時間」がボリュームゾーンですが、20代の女性医師は「60~70時間」の割合も高くなっています。
■【家族構成・男女別】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
※上記データは「令和元年 医師の勤務実態調査」において「宿日直許可を取得していることがわかっている医療機関に勤務する医師の宿日直中の待機時間を勤務時間から除外した上で、診療科別の性、年齢調整、診療科ごとの勤務医療機関調整を行っている」とされている。
2.診療科別にみる医師の労働時間
病院・常勤勤務医の勤務時間(診療時間+指示に基づく診療外時間+宿直・日直中の待機時間)を診療科別にみると、1週間あたりの平均勤務時間が最も長いのは外科(61時間54分)であり、僅差で脳神経外科(61時間52分)、そして救急科(60時間57分)が続いています。一方、平均勤務時間が最も短かったのは臨床検査科(46時間10分)で、精神科(47時間50分)、リハビリテーション科(50時間24分)、眼科(50時間28分)が続きました。
■【診療科別】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
診療科別の勤務時間の長短については、おおむねイメージ通りの結果になっているといえそうです。外科、脳神経外科、救急科、産婦人科を筆頭に緊急の手術が発生する可能性のある診療科ほど勤務時間が長い傾向があり、精神科や眼科、リハビリテーション科など宿直やオンコール対応の必要性が少ない診療科ほど勤務時間が少ない傾向にあるといえます。
なお、勤務時間のうち大半を占める「診療時間」の長さは診療科によって差があり、外科のみ週50時間以上の診療時間があります。また、待機時間の長さは、産婦人科、精神科、脳神経外科の順で多くなっている一方、病理診断科の待機時間は週にわずか10分という結果になっています。
■【診療科別】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
3.医師の労働時間は都市部と地方部で変わる?
「令和元年 医師の勤務実態調査」にて、病院・常勤勤務医の勤務時間(診療時間+指示に基づく診療外時間+宿直・日直中の待機時間)を都市部と地方部で比較した調査結果が下記です。東京23区、政令指定都市、県庁所在地を「都市部」、それ以外の地域を「地方部」としています。
20代~50代では、地方部のほうが1時間程度短くはあるものの大きな差はみられません。ただし、60代においては地方部のほうが5時間26分短くなっています。
■【都市部と地方部】病院常勤医の1週間あたりの労働時間
また同調査では、「平成28年調査と比較すると、60代を除いて、都市部と地方部の勤務時間の差が小さくなっている」ともされています。
4.医師が労働時間を減らすには?
医師の労働時間の実態について、性別、年代別、地域などさまざまな角度から見てきました。いずれのデータにおいても、平成28年度の勤務状況と比較すると労働時間の減少がみられ、少しずつ医師の勤務環境は改善に向かっていることが読み取れます。
今回紹介したのは病院に勤務する常勤医のデータなのであくまで医師全体の一部ではありますが、労働時間の少ない職場で働きたい医師は下記の傾向を参考にキャリアプランを計画するのも一案かもしれません。
・緊急対応の少ない職場のほうが、労働時間が短い
・都市部よりも地方部のほうが、やや労働時間が短い
ご存じの通り、2024年4月からは時間外労働の上限規制が導入され、医師にも「働き方改革」による変化が訪れます。厚生労働省の発表によると、原則として「年960時間/月100時間」、一部例外として「年1860時間/月100時間」の上限が設けられるとされていますが、労働を制限されることについて当の医師の側から反発する声も少なからず聞かれるようです。第一線で患者さんと向き合い現場をよく知る医師だからこそ、働き方改革が本当に実現可能なのか、疑問をもつこともあるのかもしれません。
2024年4月をターニングポイントとして、医師の時間外労働をめぐっては今後も様々な変化が予測されます。医師自身が心身ともに健康で患者さんに向き合える環境となるよう、動向を見守りたいものです。
時間外労働の上限規制に先駆けて「ワークライフバランスを重視した働き方に切り替えたい」という医師は、転職エージェントに聞いてみると、時間外労働の少ない医療機関や働き方改革に注力している医療機関を紹介してもらえるのでおすすめです。
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