転職時の条件として、給料や勤務体系などを重視することは多いでしょう。一方で、重要な要素ながら、うっかり見逃してしまいがちなのが福利厚生の内容です。福利厚生の内容は病院やクリニックなど施設によって異なります。今回は、福利厚生が充実した医師の職場について、その特徴を詳しく解説します。
- 福利厚生とは、労働者が安定して勤務できるように、事業者が労働者に提供するさまざまな取り組みを指す。社会保険（健康保険、介護保険、雇用保険など）のほか、事業所が独自で設定するサービスや制度がある。
- 医師に多い福利厚生の例として、職員とその家族の医療費補助、学会・研修会参加時の交通費補助、時短勤務制度、職員寮、託児・保育施設の利用制度などがある。
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1.そもそも「福利厚生」とは？
求人情報に記載されている「福利厚生」ですが、具体的にどんな内容を指すのかわかりにくいところもあるでしょう。まずは、福利厚生とは何かについて解説します。
1-1.福利厚生の定義
福利厚生は、一般的には、労働者に対し給料のような労働条件とは別に、心身の安定や経済生活の維持につなげるための利益や便宜を提供するさまざまな取り組みを指します。しかし、労働関連の法律では、具体的に定義されていないのが現状です。
福利厚生は、一般的には事業所が労務管理の一部として、労働者が安定して勤務できるように支援するものとして扱われています。その内容は事業所によって異なりますが、各種手当の支給や休業制度などを取り入れている施設が多く見られます。
「労働基準法に関する件（昭22.9.13発基17）」によると「恩恵的給付は原則として賃金とみなさない」と明記されており、福利厚生は賃金とは別のものとして扱われます。労働関連の法律では明確に定義されていないものの、法定福利費、法定外福利費などとして設定されています。
1-2.「法定福利費」と「法定外福利費」の違い
厚生労働省の就労条件総合調査において「法定福利費」は「法律で義務づけられている社会保障制度の費用（企業負担分）をいい、『健康保険料』、『介護保険料』、『厚生年金保険料』、『労働保険料』等をいう。」と明記されています。
このことから、法定福利費は基本的に社会保険に該当するもので、健康保険や介護保険、雇用保険、労災保険、厚生年金保険、児童手当・児童手当拠出金など法律によって企業が負担することが義務付けられている社会保障制度の費用が該当します。これらは法律で企業による負担が義務付けられているため、どの施設でも福利厚生の基本として含まれます。
一方の「法定外福利費」は「法律で義務づけられていない福利厚生関係の費用で、『住居に関する費用』、『医療保健に関する費用』、『食事に関する費用』、『慶弔見舞い等の費用』等をいう。」と明記されています。こちらは、事業所が独自で設定することができるもので、ここに挙げられた例以外にもさまざまなサービスが該当します。
具体的には、住宅手当や家賃、家族手当、医療提供や健康維持に関わるヘルスケアサービス、ライフサポート、慶弔関係、体育・文化・レクリエーション、共済会などが挙げられます。自社で提供するところもあれば、外部に委託して制度を整えている場合もあります。
「法定外福利費」は事業所の自由裁量で設定されるため、施設や企業の経営状況や環境、方針によって大きな違いが出ます。事業所によっては、高級車を支給したり院内ネイルサロンを設置したりするなど、ユニークな福利厚生も見られます。
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2.転職の際も福利厚生を確認すべき理由
複数の転職先候補があるとき、業務内容と収入をもとに比較検討することが多いと思います。しかし、福利厚生は入職後の働きやすさを決める要素のひとつであり、勤務環境を左右します。転職時に福利厚生を確認すべき理由を3つお伝えしましょう。
2-1.経済的負担を軽減できる
福利厚生として提供される手当は見逃せないものです。施設の中には、低価格で宿舎を提供したり、住宅補助やローンの補助を受けられたりする制度を取り入れているところがあります。住居費は、生活に欠かせないものであり、福利厚生で補助が受けられたら、家計の負担軽減になるでしょう。また、学会や研修会参加時の交通費等を補助する施設もあり、参加の機会が多い医師にとっては、経済的サポートにつながります。
2-2健康管理がしやすくなる
福利厚生として、定期的な健康診断の機会を提供したり、その費用を補助したりする施設は多くあります。なかには、病院職員だけでなく、その家族の医療費を補助するケースもあり、健康管理をサポートしてくれます。ただし、健診内容や頻度、補助率などは施設によって異なるため、詳細が気になる方は事前に確認しておきましょう。
2-3.ワークライフバランスの安定につながる
時短勤務制度、託児・保育施設の設置などを採用する施設があります。育児休暇や介護休暇に加えて休暇を取得できたり、ライフスタイルやライフステージ、家族の都合などに応じて時短勤務制度を利用したりできるため、ワークライフバランスの安定につながります。
3.福利厚生の充実した医師の職場の特徴とチェックポイント
福利厚生には多くの種類があり、施設によって内容が異なります。ただし、先に述べた通り、「法定福利費」は義務付けられた内容であり、比較対象にはなりません。注目すべきは、「法定外福利費」です。福利厚生が充実しているといえる施設の特徴として代表的なものをご紹介しましょう。また、転職活動時にチェックしたいポイントもまとめました。
3-1.収入に直結する手当が豊富
住宅手当や通勤手当、資格手当慶弔費制度など、収入に直結する支給が多いほど、福利厚生が充実した施設といえます。ただし、家族手当や扶養手当のように、条件によって受け取れないものもあるため、自身が受け取れるかどうかを事前に確認しておくと良いでしょう。また、施設によって、手当額の上限が異なります。上限の記載についても確認し、記載がなければ、見学時や面接時に確認することをおすすめします。
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3-2.産業医や公務員、製薬企業
福利厚生が充実した職場で働きたい場合、臨床以外の勤務を選ぶ方法もあります。一般的に民間企業と専属契約して勤務する産業医や製薬企業での勤務、公務員としての勤務は福利厚生が充実しているといわれています。
具体的には、産業医の場合、日当直や時間外勤務、オンコール業務がないことに加えて、福利厚生が充実しているため有給休暇などを取得しやすい環境です。また、製薬企業では企業ごとに労働環境が異なるものの、フレックスタイムや在宅勤務、臨床との兼任が許可されることもあります。公務員の場合は、臨床で働く場合よりも収入が抑えられますが、時間外勤務もわずかであり緊急の呼び出しも病院勤務ほど頻繁ではなく、福利厚生も充実しているため有給休暇も取得しやすい環境です。
4.転職時の情報収集は「福利厚生」もしっかりチェックを
福利厚生は、医師としてしての働きやすさを左右する要素のひとつです。転職先を選ぶ際には、福利厚生の内容も十分に確認することが大切です。とはいえ、求人情報には福利厚生の詳細までは記載されていないこともあります。詳しく知りたい場合は、医師専門の転職エージェントに問い合わせて、福利厚生の詳細や勤務環境の特徴について聞いてみるのもおすすめです。
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