初期研修後の医師3年目は、専門医取得に向けてスキルアップに励むなかで、将来のキャリアについて悩む時期でもあります。多忙な業務に追われるなかで、労働に見合った年収を得られていないと感じることがあるかもしれません。本記事では、3年目の医師の平均年収をお伝えするとともに、年収をアップする方法やキャリア形成について重視したいポイントについて解説します。
<この記事のまとめ>
- 年数を重ねるごとに年収は増加傾向にあるが、勤務形態や地域などによって異なる。
- 年収は基本給、賞与、各種手当から構成される。
- 3年目の医師の年収アップの方法として、アルバイト、将来を見越した転科や転職が挙げられる。
- 専門医取得に向けて業務に集中し、将来の年収アップを期待して、焦らずにスキルアップに注力することも大切。
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1.3年目の医師の平均年収
初期研修を終えた3年目の医師は、多くの症例を通じて、医師としての役割を深く実感する時期です。この段階ではキャリアの具体的な道筋を考えると同時に、年収への関心も高まることでしょう。まずは、経験年数別や年齢別など、多角的な視点から3年目の医師の年収について解説します。
1-1.【経験年数別】医師の平均年収
医師の平均年収として、3年目だけを抜き取った公的資料はありませんが、経験年数別の資料が参考になります。
厚生労働省が公表する「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、3年目の医師が該当する経験年数1~4年の平均年収は、約764万円でした。なお、医師全体の平均年収は約1,267万円で、500万円ほどの差があります。
経験年数別で見た年収は、以下のとおりです。
経験年数 | 平均年収(※) |
---|---|
全体平均 | 1,267万6,300円 |
1~4年 | 764万4,400円 |
5~9年 | 988万7,400円 |
10~14年 | 1,260万2,500円 |
15年以上 | 1,631万5,200円 |
※所定内給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額で算出(所定内給与額とは、その年の6月分として支給された現金給与額のうち、時間外勤務手当等の超過労働給与額を差し引いた額)
参考: 令和5年賃金構造基本統計調査(職種)第10表|e-Stat
経験年数別に見ると、年数を重ねるごとに年収は増加傾向にあることがわかります。ただし、あくまで目安であり、勤務形態や地域などによって異なります。
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1-2.【年代別】医師の平均年収の変化
続いて、年齢別の資料をもとに3年目の医師の平均年収を見てみましょう。
最短で医師免許を取得した場合、医学部卒業・医師1年目が24歳です。その後、順調に医師3年目を迎えれば、27歳になります。同資料によると、25~29歳の医師の平均年収は約558万円で、経験年数別の金額よりもやや少ない結果となりました。ただし、こちらもあくまで目安であり、必ずしも医師3年目の時に25~29歳とは限りません。自身が医師免許を取得した年齢から、参考となる金額を確認してみましょう。
以下は、年齢別に見た医師の平均年収です。
年齢 | 平均年収(※) |
---|---|
20 ~ 24歳 | 457万3,800円 |
25 ~ 29歳 | 558万100円 |
30 ~ 34歳 | 794万9,000円 |
35 ~ 39歳 | 1,018万4,700円 |
40 ~ 44歳 | 1,340万7,600円 |
45 ~ 49歳 | 1,481万1,800円 |
50 ~ 54歳 | 1,712万2,400円 |
55 ~ 59歳 | 1,663万1,200円 |
60 ~ 64歳 | 1,698万9,100円 |
65 ~ 69歳 | 1,847万1,900円 |
70歳~ | 1,621万1,200円 |
※所定内給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額で算出(所定内給与額とは、その年の6月分として支給された現金給与額のうち、時間外勤務手当等の超過労働給与額を差し引いた額)
参考:令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第5表|e-Stat
上記の金額は、時間外勤務手当や宿日直手当などが含まれません。そのため、働き方によって、個人差が大きくなることが考えられます。
1-3.勤務先によって異なる医師の年収
ここまで経験年数と年齢別の平均年収を見てきましたが、同じ経験年数・年齢でも勤務先や働き方によって差が出ると考えられます。
厚生労働省が行った「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年度実施)」によると、勤務先の運営元によって年収に差があることがわかりました。
以下は、一般病院の開設者別に見た医師の平均年収額です。
一般病院開設者別 | 平均年収(※) |
---|---|
国立 | 1,410万1,329円 |
公立 | 1,455万7,416円 |
公的 | 1,451万7,758円 |
社会保険関係法人 | 1,282万4,307円 |
医療法人 | 1,498万4,967円 |
その他 | 1,463万834円 |
個人 | 1,702万9,091円 |
※扶養手当、時間外勤務手当、通勤手当など労働の対価として支給されたものすべてを含む。
参考:第24回医療経済実態調査の報告(令和5年度実施)296頁|厚生労働省
参考資料が異なるため、上記は手当等が含まれた金額です。運営元によって年収額に違いがあり、最も多かったのが個人病院勤務でした。上記の傾向を踏まえると、同じ医師3年目であっても、勤務先による年収の差が生じる可能性があります。
1-4.医学研究者の年収
3年目の医師が医学研究者だった場合の年収目安を見てみましょう。
医師免許を活かして、大学や公的研究機関、企業などで専門的な研究を行う医学研究者の平均年収は740.2万円(厚生労働省職業情報提供サイトより)とされており、病院で働く医師の平均年収と大きな違いがあります。なお、この年収額は全体の平均であり、3年目の医師が受け取れる金額は、これよりも少ないと考えられます。
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2.年収を構成する要素
3年目を迎え、負担が大きくなっているにもかかわらず、思うような年収が得られないと考える医師もいることでしょう。経験を重ねることで年収は増える傾向にありますが、そもそも医師の年収はどのようにして決まるのでしょうか。自身の年収を決める構成要素を確認しておきましょう。
2-1.基本給
年収のベースとなるのが、毎月の基本給額です。労働の対価として支払われる基本的な報酬で、施設によって独自に設定されています。土台となる基本給が高ければ、その分、年収も高くなります。さらに役職や経験年数、専門分野、病院やクリニックの規模、勤務形態によって異なります。
なお、基本給に手当が加算された金額から、社会保険料などの税金が差し引かれます。所得税や住民税は、前年度の所得に応じて決まるため、前年と比べて年収が増加しやすい3年目の医師は、差し引かれる税金も増える傾向にあります。
2-2.賞与(ボーナス)
賞与(ボーナス)には、「基本給連動型」と、「業績連動型」の2つがあります。
一般的に、基本給連動型の賞与制度を採用するところが多く、基本給の2~3ヶ月分が支払われます。基本給が土台となるため、基本給が高いほど、賞与の基準額も高くなります。
一方、業績連動型は、成果が賞与額に反映される仕組みです。例えば、国立病院機構では、業績連動型の賞与制度が導入されており、個人の医師が達成した目標や成果によって賞与額が決まります。医長以上の医師に適用されているため、3年目の医師には該当しませんが、こうした賞与形態があることを覚えておくとよいでしょう。
2-3.各種手当
医師の年収に大きく影響を与えるのが各種手当です。手当の種類は病院によって多種多様で、医師の労働環境や勤務内容、資格の有無に応じて支給されます。
一般的な通勤手当、住居手当、家族手当などの他に、医師が支給される主な手当には、以下のようなものがあります。
●当直手当
●特殊勤務手当(手術、麻酔、処置など)
●資格手当
●オンコール手当
3年目の医師は、当直の頻度が増えることが多く、当直手当は重要な収入源になるでしょう。また、診療科によっては独自の手当がつくこともあります。手術や麻酔、特定の処置を実施する際に特殊勤務手当が支給されるなど、業務によって手当が追加される傾向にあります。年収アップを考えるのであれば、現在の勤務先でどのような手当が支給されているのか確認しておくことも大切です。
3.3年目の医師が年収をアップする方法
3年目の医師が年収を増やしたい場合、アルバイトを行うのが定番です。単価が高いアルバイトばかりを選ぶのではなく、将来を見越した年収アップ方法を検討するとよいでしょう。主な年収アップ方法を紹介します。
3-1.アルバイトを行う
専攻医となる3年目の医師は、アルバイトをすることが可能です。自分の専門分野に関連したアルバイト先で働くと、より知識や技術を深めることができ、実践的な経験を積む機会が増えます。今後の診療に役立つスキルが身につき、人脈を広げるチャンスにもつながります。
ただし、アルバイトを禁止している病院もあるため、勤務先に確認が必要です。また、アルバイトを増やして多忙になると、本業に支障をきたすことがあります。体調管理ができる範囲で、アルバイトを選んでみましょう。
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3-2.将来の年収アップを目指して、転科を検討する
専門医取得を目指している段階での転科は、専門的な教育や症例の再取得が必要となり、容易ではありません。専門医制度のプログラムでは、年度途中の転科は認められていないため、医師3年目での転科を選ぶケースは少ないでしょう。
その一方で、まだ専門医取得の過程として、将来の年収アップややりがいを考えた転科を検討しやすい時期でもあります。医師の年収は、診療科によって異なる傾向にあり、手術件数が多い外科系や麻酔科などは収入が増える可能性があります。将来を見越して、収入の高い診療科に転科することを考えるのも一つの手です。ただし、医師3年目の転科にはリスクもあります。安定した収入を確保したい、開業をしたいなど、将来設計を明確にしたうえでの決断が望ましいでしょう。
3-3.転職する
給与体系は病院によって大きく異なるため、収益性が高く、条件の良い病院やクリニックに転職すると年収アップにつながる可能性があります。病院の財務状況が良好な場合は、報酬が手厚くなりますが、収益がなければ減額される場合もあり、十分な情報収集が必要です。
しかし、3年目の医師が転職するのは、ハードルが高いと予想されます。多くの場合、専門医取得に向けてプログラムを履修している段階であり、転職するとキャリアの一時中断を余儀なくされてしまうからです。フリーランスになる方法もありますが、専門医資格がなく、臨床経験の少ない3年目の医師が独立するのは難しいかもしれません。あくまで参考として検討してみてください。
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4.年収アップを考える前に重視したいポイント
医師として3年目を迎えると、主治医として患者さんに寄り添ったり、後輩のサポートをしたりするといった業務もあり、仕事量も増えていきます。メンタル面での負担も大きくなり、労働に見合った年収が得られていないと感じることもあるでしょう。なかには、奨学金の返済のため、収入を増やしたいと考える人もいるはずです。
しかし、先にもお伝えしたとおり、医師は経験年数が増えるごとに、年収も増加傾向にあります。まずは、専門医取得に向けて業務に集中し、将来の年収アップを期待して、焦らずにスキルアップに注力することが大切です。サブスペシャルティ領域に踏み出して、より専門性の高い学びを深めるなど、目標に向かって邁進することで、結果的に年収アップにつながります。
とはいえ、日々の生活を支えるために、今、収入を増やしたいと考えることもあるでしょう。アルバイトを増やすのが定番ですが、その分、体力的な負担が大きくなります。結果、体調を崩すようでは本末転倒です。病気療養で収入減となれば、かえってマイナスになってしまいます。将来の高収入を目指すためにも、健康で働き続けられる体調管理を意識しましょう。
5.医師3年目は、将来に向けてスキルアップに取り組む時期
3年目の医師は、多忙な業務やストレスの増大を抱え、労働に見合った年収が得られていないと感じることがあるかもしれません。年収アップには、アルバイトをする、転職をするなども一案です。しかし、単純に報酬金額だけで判断せず、自分にとって価値がある働き方かどうかを検討する必要があります。年収について正しい知識を持ったうえで、キャリアプランを明確にし、最適な選択をすることが大切です。
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令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第5表|e-Stat
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