医師として老健で働くメリットは?仕事内容や向いている人、年収事情について解説|医師の現場と働き方

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医師として老健で働くメリットは?仕事内容や向いている人、年収事情について解説

超高齢社会を迎えた日本において、高齢者施設での医師の需要は高まっています。高齢者を対象とする施設の中でも、今回は、「介護老人保健施設」のことを指す「老健」で働く医師の仕事内容やメリットなどについて紹介します。また、これから老健で働きたいと考えている医師に向けて、向いている人の特徴や年収事情についても詳しく紹介します。

〈本記事のまとめ〉

  • 老健(ろうけん)とは、「介護老人保健施設」のことをいい、介護を必要とする高齢者の生活支援を行いながら、家庭への復帰を目指したケアが提供される施設。
  • 入所者への健康維持を目的とした診断や処方・治療を行うのが医師の主な仕事。
  • 他の介護保険施設と比べて、多様な職種が勤務し、リハビリ専門職の配置が充実していることが特徴。
  • 基本的に、直接的な医療処置は行わないなど、一般的な医療施設とは異なる点も多いため、仕事内容や役割を理解しておくことが重要。

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1.老健とは

そもそも、老健とはどのような施設なのでしょうか。まずは、施設の概要について確認しておきましょう。

1-1.老健の定義

老健(ろうけん)は、略称であり、正式には「介護老人保健施設」といいます。介護を必要とする高齢者の生活支援を行いながら、家庭への復帰を目指したケアが提供される施設です。介護サービスだけでなく、医師による医学的管理下のもと、看護サービスやリハビリなども提供されるのが特徴です。

老健の目的については、「介護保険法」において以下のように定義されています。

介護保険法 第8条第28項

介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。

参考:介護保険法 | e-Gov法令検索

上記の定義から、老健は、「要介護者の在宅復帰や在宅療養を支援する地域の拠点施設」であり、「病院と居宅の中間施設」といえます。また、「リハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設」として、他の介護保険施設と比べて、多様な職種が勤務し、特にリハビリ専門職の配置が充実しているのが特徴です。

2.老健で働く医師の仕事内容

老健には、高血圧といった慢性的な病態を抱えるものの、比較的、体調維持ができている利用者が多い傾向にあります。そうしたなかで、医師はどのような業務を担うのでしょうか。具体的な仕事内容と仕事の流れについて詳しく紹介します。

2-1.主な業務内容

老健で働く常勤医師は、主に、入所者の診断や処方・治療を行うのが仕事です。とはいえ、基本的には、健康維持が目的で、手術や大掛かりな治療が必要な疾患への対応は行いません。入院が必要なケースにおいては、病院を紹介することになるでしょう。

老健内では、入所者の状態に応じて、介護スタッフやリハビリ専門職、看護師をはじめとする医療専門職へ介入方法の指示などを行い、施設においてコーディネーターのような役割を担います。また、ショートステイや通所リハビリなどを併設する施設では、通所者の健康管理を担ったり、場合によっては入所者を看取ったりすることもあります。加えて、老健に勤務する医師は、施設長を兼務している場合も多く、その場合は医業の他に施設の管理職としての業務を担う場合もあります。

2-2.老健で働く医師の仕事の流れ

老健で勤務する際の、仕事の流れを大まかに見てみましょう。

施設ごとに勤務時間が異なるものの、おおよそ8時30分から9時までの間に始業し、17時から18時の間に終業となるケースが多いようです。(マイナビDOCTOR介護福祉施設(老健特養)の常勤医師求人・転職 掲載内容より[情報収集日:2023年9月20日])

日中は、入居者を対象として、週に1回(月に4回)程度の回診を、午前か午後のどちらかに行うことが多いでしょう。回診後、入所者の状態に合わせて、リハビリや看護、介護などの専門職に必要な指示を出します。それ以外の勤務時間は、自室で書類作成などを行ったり、カンファレンスとして施設スタッフを集めた情報共有の時間を設けたりします。また、施設長を兼務している場合には、関連する業務も対応します。

ただし、2012年に行われた介護報酬改定により、「所定疾患施設療養費」が創設されたことにより、対象となる入所者には、診療を行うこともあるでしょう。「所定疾患施設療養費」とは、所定条件を満たした場合に肺炎・尿路感染症・帯状疱疹の施設対応について算定できる加算です(1回に連続する7日を限度とし、月1回に限り)。

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3.老健の医師として勤務するメリット

続いて、医師が老健で働くメリットについて見てみましょう。

3-1.心身の負担が少ない環境で働ける

老健では、基本的に、直接、医療処置を施すことはありません。先にもお伝えしたとおり、医療処置を求められた場合には、適切な医療機関で処置を受けられるように紹介などの手続きを行います。ただし、「所定疾患施設療養費」の算定として、肺炎等により治療を必要とする状態となった入所者に対し、治療管理として投薬、検査、注射、処置等を行うこともあります。

介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成30年度調査)」のなかで示されている「老健で発生する疾患の発生状況」をみると、「肺炎」「膀胱炎」「誤嚥性肺炎」の割合が高いことが報告されています。「所定疾患施設療養費」の算定状況は、「肺炎」では630件中479件、「尿路感染症」で964件中887件、「帯状疱疹」で31件中15件となっています。 このように高齢者が罹患しやすい疾患に対する対応が必要な場合、施設で対応が可能な状況であれば、老健の医師が応じる可能性があります。

とはいえ、基本的に、夜勤や当直、緊急対応などはほとんどなく、定時で退勤となります。一般的な医療施設と比べて、拘束時間が短いことや、オンコール対応がないため、心身への負担が少ない環境で働けるのが大きなメリットといえるでしょう。

3-2.これまでの経験を活かして働くことができる

老健では、豊富な臨床経験やコミュニケーションスキルが重視されるため、定年後にセカンドキャリアとして働くことが可能です。他の介護施設と比べて、医療サービスが中心の施設という点で、これまでの経験を活かして働けることも大きなメリットです。

3-3. 多様な職種と関わることができる

老健では、リハビリや介護の専門家などと関わる機会が多くあります。一般的な医療施設と比べて、高齢者医療に関する多様な知見を身につけることができるでしょう。また、プライマリ・ケアの専門性を高めたり、施設管理者としての学びがあったりすることも、老健で働くメリットといえるでしょう。

4.老健の医師として勤務するデメリット

一方で、老健に勤務するデメリットもあります。

4-1. 医療技術のスキルアップができる環境ではない

老健に勤務する医師は、直接入所者や通所者に対して専門的な検査や処置を行ったり、手術したりする機会はありません。そのため、医療機関のように特定の専門性を高める教育を受けたり、症例数を伸ばしたりすることはできない点はデメリットといえます。

4-2.人間関係を円滑に保つことが難しい場合もある

老健では、さまざまな職種が共働し、それぞれに介護や看護に関する思いを抱いています。施設の方針にそって働くとしても、日々の業務に対する考え方が異なる場合もあり、スタッフ間で対立することがあるかもしれません。医師は、そうした他職種のリーダー的存在であり、周囲の人間関係を円満に築くよう意識する必要があります。自身と他職種の対立だけでなく、周囲の仲を取り持つといった対応が求められることもあるでしょう。そうした場合には、人間関係に関してストレスを抱くことが多くなるかもしれません。

4-3.医業とは異なるスキルが必要な場合もある

施設長を兼任する場合は、経営者やマネージャーとしてのスキルも求められます。対応する業務内容は施設によって異なるものの、施設長の仕事としては「利用者管理」や「スタッフ管理」、「運営管理」、「行政管理」、「収支管理」なども担います。施設を安定して運営するためにも、経営者の視点やマネジメント能力が必要です。実際の業務量も増えるため、施設長への就任が負担に感じることがあるでしょう。

5.老健で働く医師の年収事情

続いて、老健で働く医師の平均年収について見てみましょう。マイナビDOCTORに掲載されている介護福祉施設(老健特養)の常勤医師求人・転職(情報収集日:2023年9月20日)を参考に、算出しました。

平均年収は、勤務形態によっても異なります。ここでは、8時30分から9時までの間に始業し、17時から18時頃に終業し、原則「早番・遅番」「オンコール」「当直」の対応がないという条件を前提に解説します。

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5-1.週の勤務日数によっても年収が異なる

老健では、施設によって求められる医師の勤務日数が異なります。おおむね、「週4日勤務」「週5日勤務」とするケースが多いようです。求人情報から算出した結果によると、平均で「週4日勤務」では、年収960万円から1200万円程度、「週5日勤務」では、年収1200万円から1500万円程度が目安といえます。

5-2.施設長の兼務の有無や臨床経験、地域によっても年収に差がある

なかには、「※経験により応相談」「※施設長の場合、給与条件に緩和あり」などと補足されている求人もあります。年収は施設長の兼務の有無や臨床経験によっても変動し、勤務地域によっても差がある可能性があります。

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6.老健での勤務が向いている医師の特徴

老健は、一般の医療機関とは働き方が大きく異なります。これから老健で働くことを検討する場合、まずは自分に向いている職場かどうかを確認しておきましょう。続いて、老健に向いている医師の特徴を紹介します。

6-1.コミュニケーション力が高い

老健では、利用者としっかりと向き合って信頼関係を構築するだけでなく、さまざまな背景をもつ専門職やスタッフとともに円滑に業務を進める必要があります。そのため、コミュニケーション能力が高い人の方が向いているでしょう。

6-2.周囲への細やかな気配りができる

老健では他職種と連携しながら利用者の健康管理を行います。立場や専門が異なるスタッフとともに、円滑に対応できる環境を整えるには、周囲への気遣いも必要です。

6-3.プライマリ・ケアの豊富な経験がある

老健では、診察したり、治療したりすることはほとんどありませんが、予防医療の観点で健康管理を行う視点が求められます。さまざまな臨床経験や、問診や触診、視診といったフィジカルアセスメントのスキルなど、特定の診療科目だけでなく、利用者が抱えるさまざまな問題に幅広く対処する「プライマリ・ケア」の経験が豊富であると役立てることができるでしょう。

7.老健での活躍を希望するなら医師専門のエージェントに相談してみよう

老健での勤務は、心身の負担を軽減しながら、高齢者医療に貢献できます。セカンドキャリアとして、将来的に老健で活躍することを希望する医師も多いかもしれません。しかし、一般的な医療施設とは環境が異なるため、仕事内容や役割を理解しておくことが大切です。事前にキャリアパスをしっかり立てて、必要なスキルを効率的に修得していくとよいでしょう。キャリアパスに迷ったら、医師専門のエージェントに相談してみるのもおすすめです。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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