多忙を極める日々に、「もう少しゆっくりしたい」と考える医師もいることでしょう。中には、できるだけプライベートの時間が確保できるような、忙しくない科で働きたいと考えることもあるかもしれません。では、実際に、医者が忙しくないと感じられる診療科はあるのでしょうか? 今回は、さまざまな調査結果をもとに「忙しくない科」について考えます。
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目次
1.診療科ごとの勤務時間の長さから見る「忙しさ」
1-1.勤務時間が長い傾向にある診療科
1-2.勤務時間が短い傾向にある診療科
2.年次有給休暇取得日数から見る「忙しさ」
2-1.年次有給休暇の取得日数が少ない診療科
2-2.年次有給休暇の取得日数が多い診療科
3.オンコールの回数から見る「忙しさ」
3-1.オンコールの回数が多い傾向にある診療科
3-2.オンコール回数が少ない傾向にある診療科
4.医師がワークライフバランスを確保するには?
4-1.できるだけ労働環境が整った施設に勤務する
4-2.非常勤やフリーランスとしての働き方を検討する
4-3.転科する
5.プライベートの時間を確保したいなら、転職エージェントに相談しよう
- 勤務時間の長い傾向にある診療科は、外科、脳神経外科、救急科など。一方勤務時間が短い傾向にある診療科として、臨床検査科、精神科、リハビリテーション科などが挙げられる。これはあくまで傾向であり、業務内容や勤務体制など、勤務先の状況によって大きく変わる。
- 医師がワークライフバランスを確保するために、「職場で働き方の見直しを提案・交渉する」「労働環境が整った施設に転職する」「非常勤で勤務する」「転科する」などの方法が考えられる。
1.診療科ごとの勤務時間の長さから見る「忙しさ」
忙しいか、忙しくないかを判断する基準に明確なものはなく、人によっても考え方が異なります。そのため、ここでは「プライベート時間を確保しやすいかどうか」という点から、診療科ごとの特徴を見てみましょう。
最初にチェックしたのが「勤務時間の長さ」です。勤務時間が長い傾向にあるほど、プライベート時間は確保しにくくなるはずです。そこで、厚生労働省が公開している「医師の勤務実態について(第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 参考資料3)2020年9月30日付」を参考に、病院に常勤する医師の週当たり勤務時間を比較しました。
1-1.勤務時間が長い傾向にある診療科
週当たり勤務時間(診療時間+診療外時間 ※指示なしを除く)+宿直・日直中の待機時間において、平均の勤務時間が相対的に長い診療科は、以下の3つでした。なお、全診療科では週当たりの平均勤務時間は、56時間22分となっています。
外科系の診療科は、長時間の手術に対応したり、術後管理で待機時間が長くなったりするために、勤務時間が長くなる傾向があると考えられます。ただし、病棟業務がない外科や、チーム制で交代しながら勤務できる環境にある場合、外来のみに対応する場合には、比較的自分の時間が取りやすい傾向にあります。
上記の勤務時間はあくまで目安であり、実際には働く環境に左右されるといえるでしょう。
1-2.勤務時間が短い傾向にある診療科
一方で、病院・常勤勤務医の週当たり勤務時間が短い傾向にある診療科は以下のとおりでした。
こちらもあくまで目安であり、病棟業務を担当する場合や重症者や急患が多い医療機関では、病院にいる時間が長くなる傾向にあるでしょう。働く環境にも左右されますが、平均的に精神科の勤務時間が短いという結果が出ています。病棟を持たない科であれば、外来のみの対応となるため、比較的、勤務時間が短くなるでしょう。
勤務時間の長さだけで忙しさをはかることは難しいものの、比較的勤務時間が短い臨床検査科や精神科、リハビリテーション科などは、プライベートの時間を確保しやすく、心身の負担が比較的少ないのではないかと考えられます。
2.年次有給休暇取得日数から見る「忙しさ」
続いて、有給の取りやすさという点から見てみましょう。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」 によると、2011年の調査時点で、実際に取得した年次有給休暇の取得日数は「4~6日」とする回答が25.8%で最も多いことがわかりました。年次有給休暇の取得日数を診療科別に比較してみましょう。
2-1.年次有給休暇の取得日数が少ない診療科
上述の調査では、年次有給休暇取得日数の平均を「3日以下」、「7日以上」に分けて調査しています。
その結果によると、取得日数が「3日以下」と回答した割合が最も多かったのは、脳神経外科で55.2%でした。
次いで、呼吸器科・消化器科・循環器科(52.8%)、救急科(50.0%)となっています。
なお、脳神経外科については、年次有給休暇の取得日数が「0日」とする回答が全体の27.6%であり、こちらも他の診療科と比較して最も高い割合となっています。
2-2.年次有給休暇の取得日数が多い診療科
一方で、「7日以上」と回答した割合が最も多かったのは、精神科、産科・婦人科で、ともに35.4%でした。次いで、麻酔科(33.4%)、放射線科(29.9%)、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科(28.8%)となっています。
こちらもあくまで目安です。年次有給休暇の取得については、勤務先となる病院の環境や、日直やオンコールなどの担当回数といった勤務状況によって大きく左右されることが考えられるため、診療科のみが影響した傾向とはいえません。
とはいえ、上述した「勤務時間」の結果と照らし合わせると、脳神経外科は比較的忙しく、休みが取りにくい傾向にあることがわかります。一方で、精神科はプライベート時間を確保しやすい傾向にあるでしょう。
なお、こちらの資料は2011年の調査とやや古いため、その後の働き方改革の推進により変化が起きていることも考えられます。
3.オンコールの回数から見る「忙しさ」
実質的な勤務時間だけでなく、オンコールで呼び出される機会が多いと、忙しいイメージがあるかもしれません。では、診療科によってオンコール対応の違いはあるのでしょうか。
引き続き、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を参考に、診療科別にオンコールの回数を比較してみましょう。
3-1.オンコールの回数が多い傾向にある診療科
月当たりのオンコール出勤回数が「10回以上」とする回答が最も多かったのが、脳神経外科で10.0%でした。次いで、産科・婦人科(9.7%)、小児科(6.1%)となっています。
3-2.オンコール回数が少ない傾向にある診療科
一方で、オンコール出勤回数が「0回」とする回答が最も多かったのは、放射線科で55.2%でした。次いで、精神科(55.0%)となっています。また、そもそも「オンコールはない」とする割合は、精神科が最も高く27.3%となっています。
オンコールの回数については、先にもお伝えしたとおり、勤務先の環境に左右されることが考えられます。しかし、ここまでの結果をまとめると、「脳神経外科」は勤務時間が長めになりやすく、また、オンコール出勤回数が多い傾向にあり、プライベート時間が確保しづらいという点で、忙しい科と言えるかもしれません。
一方で「精神科」は、傾向として勤務時間、オンコール出勤回数ともに少なく、休みが取りやすい傾向にあり、自分の時間を確保しやすいと言えるでしょう。
4.医師がワークライフバランスを確保するには?
ここまで紹介した調査結果により診療科によって大まかな傾向が見られますが、同じ診療科であっても勤務先や勤務形態、医療機関の環境などによって状況が異なります。とはいえ、多忙な環境にいる医師は、心身の負担を軽くしたりプライベートの時間を確保したりするためにワークライフバランスを維持できる環境で働きたいと考えることもあるでしょう。医師が無理なく働き続けるためのポイントを見てみましょう。
4-1.できるだけ労働環境が整った施設に勤務する
病院の経営方針や経営状況によって、医師の労働環境が大きく変わります。利益を重視する施設では、限られた常勤医で現場を回し、医師ひとり当たりの負担が大きくなることもあるでしょう。また、人手不足が解消されない、タスクシェア・タスクシフトなどが取り入れられないといった理由から、多忙な状況が改善されにくいこともあります。
できるだけ自身の負担を軽減するには、施設の状況を把握したうえで、働き方の見直しを提案したり、場合によっては転職を検討したりすることが、ワークライフバランスの確保につながるといえます。
4-2.非常勤やフリーランスとしての働き方を検討する
非常勤医師は、常勤医師よりも勤務時間が短くなります。また、フリーランスとして、自分自身で働き方を管理できれば、勤務時間を減らすことができるでしょう。ワークライフバランスにおいて、プライベートの時間を重視したい場合には、常勤ではない働き方を検討するのもひとつの方法です。
4-3.転科する
勤務時間が比較的短い傾向にある診療科に転科する方法もあります。ただし、何度もお伝えしているとおり、転科しても勤務先の状況次第ではプライベートの時間が確保しにくいケースもあります。
また、転科には、実績が必要だったり、今までの知識や経験が生かせなかったりするケースも多く、時間がかかる可能性も考えられます。また、場合によっては転科後に一時的に年収が下がることもあるでしょう。転科を考える場合には、できるだけ早い時期にキャリアパスを決めることが大切です。
5.プライベートの時間を確保したいなら、転職エージェントに相談しよう
勤務時間やオンコール出勤回数などは、診療科ごとの傾向はあるものの、勤務先の状況によって異なります。ワークライフバランスを考慮した働き方を目指すなら、転職を考えるのも一案です。その際には、転職先候補となる施設の状況について、しっかり情報収集を行うことが大切です。多忙な業務と並行してリサーチすることが難しい場合には、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
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