脳神経外科医の平均年収は1,500万円程度だともいわれ、条件が良い待遇を期待できる職業のひとつです。一方で高度な技術力や精神的なタフさが求められ、向き・不向きが顕著に出やすいのが特徴です。
脳神経外科医に向いている人の特性には責任感や冷静さ、オンとオフの切り替えの上手さなどがあります。
本記事では脳神経外科医の適性ややりがい、年収やキャリアパスについて解説します。これからのキャリアに悩んでいる若手の医師や、脳神経外科に興味・関心がある人はぜひご覧ください。
- 脳神経外科の現状や課題に興味がある方。
- 脳神経外科に必要な考え方が知りたい方。
- 高収入かつ患者さんを救うやりがいのある仕事を望む方。
目次
脳神経外科とは?

脳神経外科は脳や脊髄、神経の病気を診断・治療する診療科で、具体的な疾患には以下が挙げられます。
- 脳腫瘍
- 脳血管障害
- 脳梗塞
- 脳卒中
- くも膜下出血
- 脳動脈瘤
- パーキンソン病
- てんかん
- 認知症
脳神経外科が扱う疾患には術後に後遺症が伴う場合も多く、リハビリテーションも含めた長期的な経過観察が必要です。
看護師のほか、理学療法士や言語聴覚士、作業療法士などの専門職とも適宜連携をとりながら、チームによる医療の推進が求められます。手術を必要としない比較的軽度な病状の場合、脳神経内科と連携して治療にあたる場合があります。
脳神経外科医の主な仕事内容
問診後、血液検査や脳のCTスキャンを実施して、必要があると判断した場合に手術を行うのが基本的な流れです。手術をせずに、投薬や放射線治療のみで治療する場合もあります。
脳神経外科の手術は、頭蓋骨にメスを入れる「開頭術」と血管内にチューブを通す「カテーテル治療」の二つです。
脳を切り開いて患部に直接触れる開頭術は、一般的に効果が高いといわれており、腫瘍の切除が必要なケースに適しています。脳や血管は非常に細かく、視認が難しい領域のため、手術では何十倍ものズームが可能な特殊な顕微鏡が使われます。
脳神経外科医の仕事のやりがいとは?

脳神経外科に対して、携わる領域の高度さや責任感から怖いのではないかと感じる人もいるかもしれません。実際に命に関わる大変な仕事ではありますが、見方を変えれば、やりがいに溢れた魅力的な領域とも捉えられます。
ここでは、脳神経外科医で働くやりがいについて記載します。
3-1.脳神経外科は基本診療科である
脳神経外科は内科や外科と並ぶ基本診療科の一種で、日本の医療を根幹から支える主要な診療項目です。脳神経外科の講座は全国の大学病院で展開されており、地域の基幹病院から小規模なクリニックに至るまで広く診療科があります。
外科手術や非外科的な治療、画像診断、救急対応、術前・術後対応と活躍できる領域は多々あり、国民にとって欠かすことのできない診療科です。
脳神経外科では、脳や脊髄に由来する疾患の予防から、症状が顕在化した時の急性期治療、術後の経過観察も含む慢性期の治療まで網羅的に行っています。
卓越した手業を活かして外科手術で力を発揮する職人のような働き方を想像するかもしれませんが、そのイメージは誤っています。脳神経外科医は一部の領域に特化した役割だけではなく、予防からリハビリテーションまで包括的に患者さんを診る存在です。
3-2.脳神経外科医は不足しており必要性が増している
厚生労働省が発表した診療科ごとの必要な医師数の見通しに関する資料によると、2036年には2,500人以上の脳神経外科医が不足するとみられています。
人手が足りなくなる理由は、手術に特化した役割を担う欧米と比べて、日本の場合は広範な役割を担うことにあります。必然的に少ない人数でさまざまな業務をカバーする必要に迫られ、結果的に現場は医師不足に陥っているのです。
コロナの影響を受けにくい脳神経外科は社会的なニーズが高いため、若い世代の活躍が一層期待される領域だといえます。
参考:一般社団法人 日本脳神経外科学会「君の未来はここにある」
3-3.地域医療では患者さんの安心や喜びに接することができる

内科や外科のかかりつけ医では解決できない病気を診断・治療できる脳神経外科医は、地域医療で真価を発揮します。症状が起きる根本の原因は脳の機能に存在する場合も珍しくありません。
脳神経外科では「内科で処方された薬を飲んでも頭痛が良くならない」「最近物忘れがひどくて困っている」などの患者さんが抱える不安に向き合い、根本の原因を特定できる可能性があります。
脳神経外科医になれば、長年悩み続けてきた1人ひとりの悩みの解消に役立ち、地域の人々からはとても感謝されるでしょう。診断や手術にとどまらず、治療方針や中長期の経過観察まで意識した踏み込んだ提案が可能です。
第一線で働く医師からは病状が良くなった患者さんの安心した表情や笑顔を目の当たりにした時、やりがいを感じるとの声もあります。
脳神経外科医に向いている性格は?

複数の診療項目を検討するにあたり、自分は脳神経外科医に向いているのかわからないと悩みを持つ場合があります。脳神経外科で働くために、重要だと思われる性格上の特徴を5つピックアップしました。
4-1.脳や神経に興味がある
専門分野として技術や知識を突き詰めていくと考えると、脳や神経に興味を持てることが大切です。元から関心がある分野であれば、誰に強制されずとも苦なく学べ、やりがいを持って働ける可能性が高くなります。
脳外科医の専門医試験では神経系や脳に関する多くの知識が求められ、難関と呼んでも差し支えないほどの難しさです。診療の責任者になれるか問うための試験であり、通過すれば、中小規模の病院で部をまとめるほどの実力があるとみなされます。
晴れて脳神経外科医になった後も最新の知識にキャッチアップするため、絶え間ない知識の習得が不可欠です。
4-2.責任感があり真面目
命に密接に関わる診療項目としての性質上、責任感は重要な要素です。脳神経外科医は、一刻の猶予もない状況での治療を迫られるケースが少なくありません。人の命を救うことに心から価値を見出している誠実な医師であれば、患者さんも安心して身を任せられるでしょう。
また脳神経外科に限った話ではありませんが、常に学び続けられる真面目な人が向いています。医学では脳神経の中でも脳神経外科が占める領域が大きく、直接的にも間接的にもさまざまなアプローチがあります。常に新しい技術や治療法を取り入れ、日々の治療をアップデートするには、学び続けるベースとなる強い気持ちが必要です。
4-3.冷静で集中力がある
患者さんの脳にメスを入れる脳神経外科医は基本的にひとつのミスも許されません。命が危ない緊急性が高い状況での施術を担当する場合もあります。時間的な制約がある中で、針の穴に意図を通すような繊細な作業を正確に行うには、冷静さや集中力が必要です。
高度な手術をミスなく終わらせるには、瞬時の判断力や深淵な洞察力が求められます。重責を担いながらも常に高いレベルのパフォーマンスを発揮するため、何事にも動じない精神力が重要となるのです。
4-4.精神的にタフ
執刀時の冷静さや集中力とも関係しますが、全体的にタフな精神力を備えている必要があります。脳や神経の医療を担う専門家だと考えると、相当なプレッシャーやストレスを感じる精神的に辛い仕事だと分かるでしょう。
病院に運ばれた際の容態によっては、手術をしても助かる見込みがないケースもあります。最善を尽くした結果、命を取り留めることには成功しても、寝たきりの状態になってしまう場合もなくはありません。
時には全力で治療に取り組んでも患者さんの家族から厳しく責任の追及を受けることもあり、精神的に多大な負担が伴う職業です。脳神経外科医として第一線で活躍し続けるには、ハードな事例を経験しても、メンタルが崩れない強固な精神力が求められます。
4-5.オンオフの切り替えが上手
休むべき時にはしっかりと休息をとれるオン・オフの切り替えの上手さも必要な素養です。
担当する業務が多い脳神経外科医は、基本的にハードワークを強いられます。少ない休暇を有効活用し、上手にリフレッシュを図るには、気持ちのメリハリを瞬時に切り替えることが重要です。
手術中は難しい顔をしていたのに術後はうって変わって温和な表情に変わる医師も珍しくありません。
「不器用」「体力に自信なし」では脳神経外科医には向いていない?

手術に伴う繊細さや高ストレスの労働環境を考えると、不器用で体力に自信がないと脳神経外科医には不向きではと考えるかもしれません。手先が器用で長時間労働を苦にしない頑健さを持っているほうが有利な一面もありますが、なくても脳神経外科で働くことは可能です。
手術は練習と実践を通じて、少しずつ上達します。不器用な先生でも鍛錬を積んで、現場で修行の機会を繰り返すうちに、器用な先生に負けない技術力を習得できるでしょう。
体力の問題では、現在ではAIやロボットの技術が高度に発展した関係もあり、手術に伴う時間が短くなってきました。脳神経外科医に体育会系のような経験が必要なわけではなく、持久力に自信がなくても活躍できる環境です。
研修や実務経験を通じて執刀で不可欠な集中力は身につくため「体力不足で通用しないのでは?」と過度な心配を抱く必要はありません。重要なのはやる気やモチベーションです。素直に知識を吸収して、努力を積み重ねることができれば活躍できるでしょう。
脳神経外科医としてのキャリアは短いって本当?

脳神経外科医を目指す際に把握しておきたいのは、キャリアのピーク期間が短い傾向にある点です。高度な手術を担う業務の性質上、何年にも及ぶ下積み期間が伴います。
現場で独り立ちする頃には40歳近くの年齢になるケースも珍しくありません。働き始めが遅い傾向にあるほか、手先の器用さ、目の良さが業務に不可欠なことも第一線で働く期間が短くなる要因です。
年齢を重ねて体力や視力が悪化すると、つられるように医師の技能も衰える傾向があります。脳神経外科医では、ピークの期間が短いという事情から、キャリアチェンジを選択する人が多くいます。
視力の衰えで精密機器を上手く扱えなくなる事態を想定して、早い段階から別の進路を考える脳神経外科医は決して少なくありません。第一線を退いた後のよくある選択肢は次の通りです。
- 一般の病院やクリニックからの依頼に応え、緊急性が高い案件の診察・治療を行うコンサルタントとして働く
- 病院のリハビリテーション科に勤務する
- 療養型病院で病棟を管理するポジションに就く
- 内科をはじめ他の診療科に転科する
脳神経外科医はメスを握れなくなってからでも、さまざまな働き方が可能な職業です。上記以外にも、脳ドックを行う医療機関で予防医療に携わったり、IoT化で普及しつつある遠隔手術のサポート役として機能したりする道もあります。
超高齢化社会の到来もあって、脳疾患を発症した患者さんのリハビリテーションを担う役割も期待されます。
脳神経外科医の平均年収は?
キャリアの方向性を見極めるうえで軽んじられない要素が年収です。脳神経外科医は高度な専門性や繊細な技術が求められ、緊急時の施術も多いことから、高年収の職業で平均年収は約1,500万円だといわれています。
参考:勤務医の就労実態と意識に関する調査|労働政策研究・研修機構
人手不足が顕著な地方の求人であれば、2,000万円以上の条件を提示する求人も見つかるでしょう。一方で長時間労働が常態化しやすく、オンコールの回数も多い傾向にあります。しかし、ハードワークによる残業の多さも、収入の面から判断すれば有利に働く事情です。
ワークライフバランスよりも医師としてのキャリアややりがい、高い年収を希望する人には適した働き方です。脳神経外科医の詳しい年収事情や、詳細な働き方・給与の労働条件を知りたい人は次の記事をご覧ください。
脳神経外科医はキャリアアップできる? マイナビDOCTORの転職事例

なかには他の道へ進むのではなく、脳神経外科医で長年働き続けたいと希望する人もいます。ピークの期間が短い職業ですが、40代や50代になっても最前線で施術を担うことはできるのでしょうか。
脳神経外科でさまざまな手術経験を積もうとした場合、勤務先は大学病院やその提携の病院に限られるのが一般的です。 医局に所属し、 大学病院の中で昇進するキャリアパスを歩むのが一般的ですが、転職してより良い条件の労働環境を得られる場合もあります。
マイナビDOCTORで実際に転職を支援した成功例を紹介します。
大学病院の脳神経外科に勤める39歳の男性のケースで、転職の結果400万円年収がアップしました。キャリアパートナーとの面談を通じて医師になった理由を共に考えた結果、外科医に重要な手業を現場で磨きたいという希望があることに気付きました。
勤務先の大学病院ではヨーロッパへの留学の話も出ていましたが、承諾すると臨床から離れざるを得なくなります。本人の希望を重視した結果、転職活動を進めて、最終的には脳神経外科がある国内の病院への就職が決まりました。
転職から時間を置いた後でも「あの選択に後悔はない」と胸をはり、「面談で医師になった原点に立ち返って良かった」とも述べています。
必ずしも転職が正しい決断とは限りません。しかし、キャリアパートナーとの面談を通じて、一人では見えていない新たなキャリアの可能性に気付かされる場合もあります。
上記の転職事例については次の記事で詳細を閲覧できます。今後の方向性に悩んでいる人はぜひご覧ください。
脳神経外科医でキャリアアップを目指すならエージェントに相談しよう
脳神経外科医は患者さんの命を救う役割を担いながら、高年収も期待できる魅力的な働き方ができる仕事です。マイナビドクターでは条件が良い求人が豊富で、脳神経外科でネックになる残業やオンコール対応が少ない案件も見つかります。まずはお話だけでも良いので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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