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産業医になるには? 転職に必要な資格・スキルと転職するメリット

産業医は、事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師であり、労働者の健康と安全を守る重要な役割を担います。産業医は、高い専門性を求められますが、宿直勤務やオンコールなどの対応が不要であるため、ワークライフバランスの維持を希望する医師に注目されている働き方の一つです。今回は、産業医になるために必要なスキル・経験や転職するメリットについて解説します。

<この記事のまとめ>

  • 産業医になるには、医師資格に加えて所定の研修受講などによる産業医資格の取得が必須。
  • 上記に加え、臨床経験や幅広い症例に対応できる専門医資格を持っていると転職で有利。
  • 事業場に所属して「専属産業医」として働く勤務形態と、医療機関に所属しながら事業場と契約を交わし「嘱託産業医」として月に数回巡回する勤務形態がある。
  • 産業医は時間外労働、宿直、オンコールがないため、ワークライフバランスを重視する医師に適している。

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1.産業医になるには?4つの資格取得方法

産業医とは、事業場における労働者の健康管理などについて、専門的な見地から指導や助言を行う医師のことです。労働安全衛生法では、事業場の規模に応じて厚生労働省令に従い産業医の選任が義務付けられています。

厚生労働省発表の資料によると、具体的には、常時労働者数50人以上の事業場は1人以上、常時労働者数3,001人以上の事業場は2人以上の産業医を選任する必要があります。また、常時労働者数1,000人以上の事業場と、特に健康を害しやすい環境や化学物質などを使用する事業場で常時500人以上の労働者がいる場合は、「専属」の産業医を選任する必要があります。

労働者に健康で安全に長く働き続けてもらうために産業医の役割が再認識されています。

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産業医になるための要件は「医師であることに加え、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない」と労働安全衛生法第13条第2項に定められています。

まずは、13条で示している一定の要件を確認するために、労働安全衛生規則第14条第2項で定められている規定を確認しておきましょう。

<産業医になるための要件>

  1. ①労働者の健康管理などを行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行うものを修了した者
  2. ②産業医の養成などを行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学やその他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  3. ③労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生である者
  4. ④大学において労働衛生に関する科目(公衆衛生学など)を担当する教授、准教授、常勤講師である者、またはこれらの経験者

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医について~その役割を知ってもらうために~」、産業医学振興財団「産業医になるには」を基に要約

上記、4つの要件をもとに、産業医になる方法について詳しくみていきます。

1-1.指定の研修を修了した者

産業医になるための研修を受け、単位を満たすことで認定されます。一般的には、この方法で産業医を目指す場合が多いでしょう。ここで指す研修とは、日本医師会の産業医学基礎研修と、② 産業医科大学の産業医学基本講座が該当します。

研修については、日本医師会雑誌、日本医師会ホームページ、都道府県医師会報、都道府県医師会ホームページなどに開催情報が掲載されています。開催日時や会場等を確認した上で、必要な単位を満たしましょう。

1-2.産業医の養成などを行う大学が定める実習を履修した者

主に、産業医科大学の医学部を卒業し、医師免許を取得した人が該当します。産業医科大学では、一般的な医学部教育に加え、産業医として選任されるために必要な産業医学教育を受けています。そのため、医師になってから別途、研修などを受ける必要がなく、大学卒業後、医師免許取得と同時に、産業医として活動できる資格を有しています。

また、他の大学医学部を卒業後も、産業医科大学が実施する産業医学基本講座を受講する方法もあります。約2カ月の講座になっており、より深い学びを得たい人や、集中して効果的に学びたい場合におすすめです。

1-3.労働衛生コンサルタント試験に合格した者(保健衛生)

労働衛生コンサルタントは、国家資格の一つで、事業場の労働衛生に関する診断や、指導を行う専門家として認定される資格です。医師免許があれば、受験資格を得ることができ、試験に合格すれば産業医として認定されます。

ただし、労働衛生コンサルタントは、労働者の健康を守るだけでなく、職場全体の衛生管理や診断、指導などを行う役割があり、幅広い知識が求められます。令和4年度の合格率は、24.4% で、例年3割前後で推移していることから難易度が高い資格です。

1-4.大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤の講師の職を担う者または経験者

大学で労働衛生に関する科目を担当する講師(常勤)以上の経験者が該当します。先に紹介した産業医科大学に限らず、同様の科目を担当している講師以上であれば、該当します。ただし、もともと労働衛生を専門として講師以上になった人が対象となるものであり、すでに医師として働いている場合、キャリアを大きく変えて労働衛生の講師以上を目指す必要があるため、一般的なルートとはいえないでしょう。

2.産業医として働くときに必要な手続き

産業医の認定を受けた後は、手続きを行う必要があります。続いて、産業医になるための手続きや、更新の手続きについて解説します。

2-1.産業医になるための手続き

産業医になる要件を満たし、新たに認定産業医の称号を申請する医師は、必要書類に記入後、審査・登録料10,000円を添えて、所属の都道府県医師会(医師会員でない医師は勤務地の都道府県医師会)に提出します。

なお、申請方法、申請受付期間は都道府県医師会によって異なるため、申請時は、各都道府県医師会に問い合わせが必要です。

<必要書類>

  1. 1.認定産業医新規申請書
  2. 2.医師免許証の写(医師会員は不要)
  3. 3.産業医学研修手帳(Ⅰ)(基礎研修50単位以上のカリキュラムを修了したことが証明されていること)、または産業医科大学産業医学基本講座修了認定書、産業医科大学産業医学基礎研修会集中講座修了認定書など

注:1.の書類は都道府県医師会に用意されています。
参照:日本医師会認定産業医制度Institution

2-2.更新に必要な研修と更新手続き

認定産業医の資格を維持するには、取得後5年ごとの更新申請が必要です。

認定産業医認定証を更新するためには、生涯研修を受講が必須であり、認定産業医の生涯研修のための研修会に出席しなければいけません。具体的には、認定証に記載されている有効期間中に以下の研修を受講し、単位を取得する必要があります。

<受講が必要な生涯研修の内容>
生涯研修の内容(20単位以上 ※ただし、1時間の研修を1単位とします)
  1. 1.更新研修(1単位以上)労働衛生関係法規と関係通達の改正点などの研修
  2. 2.実地研修(1単位以上)主に職場巡視などの実地研修、作業環境測定実習などの実務的研修
  3. 3.専門研修(1単位以上)地域特性を考慮した実務的・専門的・総合的な研修

参照:「日本医師会認定産業医」制度について|日本医師会

日本医師会が行う産業医学講習会の他、日本医師会の指定を受けて都道府県医師会、郡市区医師会、教育機関などで開催されており、一般的には休日や夜間の時間帯に、1〜数単位ずつ取得します。生涯研修会の日程等の情報は、日本医師会雑誌などに掲載される他、各医師会等のホームページで紹介されています。インターネット上で申し込みを済ませ、必要な単位を取得しましょう。

また、更新手続きは、上記の研修を受講後、次の書類に審査・登録料10,000円を添えて所属の都道府県医師会(医師会員でない医師は勤務地の都道府県医師会)に提出します。

なお、申請方法、申請受付期間は都道府県医師会によって異なるため、申請時は各都道府県医師会に確認するようにしましょう。

<必要書類>

  1. 1.認定産業医更新申請書
  2. 2.産業医学研修手帳(Ⅱ)(生涯研修20単位以上のカリキュラムを修了したことが証明されていること)など

注:1.の書類は、更新手続きが必要な時期に各都道府県医師会より直接認定産業医宛てに送付されます。
参照:「日本医師会認定産業医」制度について|日本医師会

2-3.更新時の注意点

更新を行うためには、上記の生涯研修を受ける必要がありますが、コロナ禍により、一時的に講座中止が続き、更新が厳しくなったケースがあります。WEB講義も実施されているものの、WEB受講では単位が認められず、結果的に更新できない可能性があります。

また、産業医科大学などが実施する集中講座は人気が高く、タイミングによっては受講できない可能性もあるでしょう。集中講座を受講するためには、長期間、仕事を休む必要があるため、勤務状況によっては難しいかもしれません。単位取得には余裕をもって仕事との両立が図れるように考えておくことが大切です。

3.産業医の仕事内容

産業医の仕事内容は、健康診断、その必要がある労働者への面接指導、作業環境の維持管理に対する助言や指導、健康教育や健康相談、労働者の健康障害における原因の調査と再発防止策の実施など多岐にわたります。

労働安全衛生規則によれば、産業医は最低でも月に1回は事業場を巡視し、健康障害が生じる恐れのある業務や労働環境について対策を講じなければなりません。これに必要な知識や能力を一般的な医師の養成課程で身に付けることは難しく、前述したように専門的な研修を通して知識を得ていくこととなります。

なお、産業医の仕事は「専属」か「嘱託」かにより大きく異なります。専属産業医は、その事業場のみに所属し、その事業場のみにおける産業医療を担います。企業によって違いはありますが、午前中に巡視を行い、午後は健康相談室などでの対応を行う……というケースが一般的です。また、週に1日程度、「研究日」として臨床のアルバイトなどをすることが認められるケースもあります。

一方、嘱託産業医は、事業場と契約を結んで月に数回の巡視を行います。基本的には医療機関に所属して勤務しながら、月に1~2日、数時間のみ契約先の事業場へ赴くことが一般的です。

4.産業医に転職するために必要なスキル・経験

医師が産業医として転職するためには、まずは産業医資格を取得しておくことが大前提となります。近年、専属産業医の確保が難しい企業では、「産業医としての就職」を希望する医師を募集し、企業の援助によって医師に産業医資格を取得させるケースもあります。

また、産業医は労働環境に関する医学的な指導や助言を主な業務とするものの、健康相談などでは臨床医と変わらない医学知識が必要になることもあります。そのため、転職においては、一定の臨床経験(5年以上など)を前提とされることもあります。その他、総合内科専門医など幅広い疾患に対応できる専門医資格を保持していると有利になるでしょう。

5.産業医として働くメリット

産業医は働く人の健康を守る大切な役割があります。では、産業医として働く上で、どのようなメリットがあるのでしょうか。

5-1.ワークライフバランスを維持しやすい

専属産業医になった場合、基本的に休日出勤やオンコール業務が不要なため、ワークライフバランスを維持しやすい働き方ができるのがメリットです。嘱託として雇用されるケースが多く、残業なしで定時に仕事を終えられる他、専属医でも週3日から4日勤務の案件が多く見られます。企業に所属することになるため、福利厚生が充実していたり、有給休暇が無理なく取得できたりするといった利点もあります。

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5-2.臨床と両立した働き方も可能

嘱託で産業医として働く場合、フレキシブルに働くことが可能な案件も多く、臨床と兼任して働くことが可能です。時間単価が高価な案件も多く、兼任することで安定した収入を得ることもできます。

5-3.専門職としてのやりがいを実感できる

産業医の職場は、医療現場とは大きく異なる一般の企業や事業場です。そのため、オフィスだけでなく、食品工場や機器工場といった現場の他、危険を伴う業種に触れながら、さまざまな課題に対処することになります。産業医として初めて現場に足を踏み入れる際には、戸惑うこともあるでしょう。しかし、そうした現場の声を聞き、労働者の健康を守ることが産業医の使命であり、醍醐味です。結果として、労働者の笑顔につながる働きは、大きなやりがいとなるでしょう。

6.産業医として働くデメリット

一方で、産業医として働くデメリットには以下のようなものがあります。

6-1.就職が難しい

事業場の規模に合わせて産業医の選任が義務付けられているものの、実際の求人はそれほど多くありません。特に専属産業医の採用は狭き門となっています。嘱託であっても、1人の産業医が複数の事業場を兼任しているケースもあり、入り込む余地がない場合も考えられます。公募の案件では倍率が高く、未経験では採用されることが難しい傾向にあります。

6-2.臨床とは異なる知識を身に付ける必要がある

産業医は、労働衛生ならではの視点が必要であり、働く人の健康を守るだけでなく、労働環境などを踏まえた指導など、幅広い視点が求められます。臨床医としての経験とは異なる知識や技術を身に付ける必要があるでしょう。働く環境は年々変化があり、その都度、必要な対処が求められます。産業医として世情も加味した情報収集が必要です。

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7.産業医の求人ニーズ

厚生労働省が公表している「産業保健の現状と課題に関する参考資料(令和4年10月17付)」によると、産業医の選任状況は、事業場規模1000人以上では99.4%、500人~999人では99.3%、300人~499人では97.0%、100人~299人では95.3%となっており、事業所の規模が小さくなるほど産業医の選出の割合が低くなっています。

先にもお伝えしたとおり、本来、常時 50 人以上の労働者を使用する事業所において、労働者の健康管理を行うために産業医の選任が義務付けられています。しかし、実際には100%に満たない結果となっており、就職・転職できる可能性はあります。とはいえ、潜在的なニーズはあるものの、専任産業医の求人は非常に少なく、採用は狭き門であるのも事実です。

産業医の資格を取得しているものの、実際に活動していない医師も少なくありません。厚生労働省によると日本医師会認定産業医の取得者数は、70,208人(令和4年10月27日現在、有効人数)で、活動している割合は48.7%と報告されています。資格を生かして働きたい場合には、求人情報をこまめにチェックする他、非公開の求人情報などを得ている転職エージェントに相談するのがおすすめです。より希望に合った職場を見つけるためには勤務エリアの対象を広げて求人を探してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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