AIの登場により、世界は大きく変わろうとしています。AIが人間の仕事を代替する可能性が注目される中、自身の仕事の今後に期待と不安の両方を感じている方も多いのではないでしょうか。
医療分野でもAIの活用が進みつつあり、特に内科の診療においてどこまでAIが役割を担えるのかが議論されています。この記事では、AIによって代替される可能性のある内科医の業務と、これからの内科医に求められる力について解説します。
- AIによって仕事がなくなるのではないかと不安を抱える内科医の方
- AIによって効率化される業務を知りたい内科医の方
- AI時代を生き抜くために必要なスキルを知りたい内科医の方
目次
AIにより代替・効率化が進む内科医の仕事とは?

近年、少子高齢化の影響により労働人口が減少しており、将来的に医療従事者が不足すると予想されています。この状況を打破するために、AIを活用した業務効率化が医療界で喫緊の課題となっています。
では、AIによって代替されたり、効率化されたりする内科医の仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的には、次の業務をAIが行うようになると見られています。
•問診
•カルテや書類の作成
•診断の補助
それぞれ詳しく解説します。
なお、人口問題が医療業界に影響する2040年問題について、詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
問診
AIによって代替・効率化が進む医療分野の一つが問診です。
一般的な問診は、紙を用いて患者の情報を収集しますが、AIを活用すれば自動生成した質問に患者が答えるだけで、Web上で情報を収集できます。患者の年齢や性別、主な症状に対して適した質問を生成する他、データを基にした機械学習による診断の精度が高いのが特徴です。
AIを活用することで医師が見落としやすい病気を発見できる場合もあり、専門外の症状や病気を見落とす可能性を減らせるかもしれません。また、診察時間の短縮や電子カルテへの入力の手間が省けるため、業務負担が軽減されます。
カルテや書類の作成
医師の仕事で時間を取られやすいのが、カルテや書類の作成業務です。
AIを活用すれば、電子カルテへの記入をサポートしてくれます。また、診断書・証明書・意見書・医療情報提供書など、医療機関が患者向けに発行するさまざまな医療文書の作成・推敲の手間を大幅に省けます。
特に、患者の初見や病歴、医療内容などをまとめた退院サマリーや、紹介状・紹介返書といった記載する内容が多い文書の作成に効果的です。実際に医療書類の作成業務に対応したAIサービスも提供されており、医師の業務時間削減に成功している例もあります。
AIによって医療文書を作成できれば、医師は診察など、他の重要な業務に時間を割きやすくなるでしょう。
診断の補助
AIの活用によって、診断の補助が可能です。
特に画像診断の分野では、医師が診察する前後にAIが画像を解析することで、医師の負担を軽減し、見落としのリスクを減らす効果が期待されています。現在では、すでに多くの医療機関でAIによる画像診断支援が実用化されており、現場で活躍しています。
さらに、AIは画像診断にとどまらず、医療データ全般を活用する技術も進んでいます。患者の症状、検査結果、過去の診療歴などを総合的に分析し、考えられる疾患や必要な検査・治療法を提案することが可能です。これにより、病気のリスク予測や予防医療の質の向上にもつながっています。
今後は、さらに広い医療分野での診断補助にAIが活用されるでしょう。
なお、AIの医療への活用について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
AI時代にも残ると予想される内科医の仕事

今後、AI技術はさらに発展すると見られており、さまざまなシーンでよりAIが活用される時代がやってくるでしょう。しかし、内科医の仕事の中にはAI全盛の時代となっても残ると予想されているものがあります。具体的には、次のような仕事です。
•最終的な診断と治療方針の決定
•複雑な症例の診断
•患者さんとの信頼関係の構築
•高度な医療技術や手技
それぞれ詳しく解説します。
最終的な診断と治療方針の決定
患者に対する最終診断や治療方針の決定などは、今後も人間が行います。
なぜなら、判断の誤りや医療ミスが発生した場合に、AIは責任を取れないためです。厚生労働省も、保健医療分野AI開発加速コンソーシアムにおいて、AIを活用した診断・治療支援を行うプログラムを使って診療する場合、最終判断の責任は医師が負うとする考え方を示しています。
AIは膨大なデータから機械的に学習できるものの、医療ミスに対して真摯に原因を追究して、責任を負うことはできません。医療分野のさまざまなシーンでAIが活用されていますが、しばらくは医師の診断をサポートしたり、ルーティンワークを代替したりするツールとして使用されることが予想されます。
複雑な症例の診断
患者の複雑な症例を診断することも、AIによる代替は難しいでしょう。
AIはこれまで蓄積されたデータから判断を下すためです。また、機械学習には大量のデータが必要です。そのため、前例のない症例や病気に対して、自ら判断して治療方法を考えたり、治療方針を決定したりすることはできません。
患者の症例に合わせて、臨機応変に対応するには、医師としての経験や勘などがこれからも求められるでしょう。
患者さんとの信頼関係の構築
患者と適切なコミュニケーションを図り、信頼関係を構築するのも、AIに代替されることはありません。
AIはデータを基にした分析は得意である一方、感情を察知したり、患者に合わせて対応したりすることは、現時点ではできないためです。
同じ病気や症例でも、患者の性別や年齢、家族構成に応じて、伝え方を工夫しなければなりません。加えて、患者だけではなく、家族のケアも必要です。それぞれの状況や心情に応じた対応はAIでは難しく、機械的な対応になることから、人間の意志による対応が必要な状況が続くと予想されます。
高度な医療技術や手技
高度な医療技術や手技を駆使した治療も、AIに代替されることはないでしょう。
現在、AIロボットを活用した手術支援が行われています。AIが提案する最適な手術方法によって、患者の負担を軽減した手術が実現する可能性があります。ただし、現時点では、AIはあくまでも手術の補助や支援しかできず、実際の医療技術を駆使した治療や、手技による処置ができるまでには至っていません。
人間の医師が持つ医療技術や手技をAIが継承して、患者に対処するにはまだまだ時間が掛かると考えた方がいいでしょう。
AI時代の内科医に求められるスキル

現在では、AIがさまざまなシーンで活用されており、医療分野にもAIが進出している状況です。
そのような時代に内科医に求められるのは、次のようなスキルです。
•コミュニケーションスキル
•AIを活用して協働するスキル
•手技スキル
繰り返しになりますが、AIは人間の状況や感情に応じたコミュニケーションができません。患者の負担を少しでも和らげるようなコミュニケーションは、人間にしかできないのです。そのため、AI時代では医者にも高いコミュニケーションスキルが求められます。
またAIはサポートツールとして有能です。AIを使いこなせるようになれば、医師としての業務負担を軽減でき、他の重要な業務に時間を充てられます。AIを活用するスキルは、AI時代に欠かせないものといえるでしょう。
さらに、採血や注射、内視鏡検査など、医療分野において人間にしか対応できない業務はたくさんあります。これらのスキルを磨いていけば、医師として重宝されるはずです。
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記事の監修者

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar
【監修者コメント】
AI技術の進展により、画像診断や症例データの解析、問診情報からの鑑別診断支援など、内科医の一部業務が今後代替されていく可能性があります。特に、定型的な作業や膨大な情報を瞬時に処理する業務は、AIの得意分野とされます。しかし、診療の本質は「人」を診ることにあり、患者さんの訴えの背景にある感情や社会的文脈を読み取る力、共感的な対話力、そして個別の価値観に即した医療的判断は、AIには代替できません。これからの内科医には、AIを活用しつつも、患者中心の医療を実現するための総合的な判断力やコミュニケーション能力がより一層求められます。