近年フリーランスという働き方を選択する人が増えている中で、医師の世界でもフリーランスとして活躍する医師が少しずつ増えています。しかし、身近にフリーランスの医師がいない場合「フリーランスの医師は本当にいるのか?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、フリーランスの医師の実態や定義、代表的な働き方の選択肢、勤務医との違いなどについて分かりやすく解説します。年代別の医師のキャリアプランの立て方も解説するので、キャリアの選択肢としてフリーランスを視野に入れている方は、ぜひ参考にしてみてください。
こんな方におすすめの記事です!
- フリーランスの医師の実態が知りたい方
- フリーランスの医師として働くことを検討している方
- フリーランスの医師の具体的な働き方を知りたい方
目次
フリーランスの医師は本当にいるの?

結論からいえば、フリーランスとして活躍する医師は存在します。
フリーランスの医師がどの程度いるのかについて、明確なデータは存在しません。しかし、内閣官房の新しい資本主義実現会議事務局や、厚生労働省などが実施した「令和4年度フリーランス実態調査」では、本業または副業として自分で事業などを営む個人事業主のうち、職業を「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」と回答した人が全体の0.1%を占めていました。
また2016年度に日本麻酔科学会が実施した調査では、フリーランスと考えられる医師が1.4%存在していたことも分かっています。
全体から見れば数は多くありませんが、一定数の医師がフリーランスとして働いていることは確かです。
フリーランスの医師は、常勤医と比べて自由度の高い働き方ができる傾向があり、ライフスタイルを重視した働き方が可能です。
年収は働き方によって大きく異なりますが、日給制または時給制で働く医師が多い傾向にあります。マイナビDOCTORの非常勤求人を見ると、時給1万円以上の求人が多く見られます。仮に時給1万円で、1日8時間・週5日勤務した場合、単純計算での想定年収は1,920万円です。中央社会保険医療協議会が実施した「第25回医療経済実態調査」によると、一般病院の医師の2024年度の平均年収は約1,485万円なので、フリーランスの医師の方が年収が高くなる可能性があります。
ただし、フリーランスの医師は原則として福利厚生がなく、自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。雇用保険や退職金制度も原則として対象外であり、有給休暇もありません。研修や資格取得にかかる費用が自己負担となる点にも、注意が必要です。契約先から突然契約を打ち切られたり、勤務日数を減らされたりするリスクもあるため、常勤医と比べると安定性は低いといえるでしょう。
参考:令和4年度フリーランス実態調査結果|内閣官房新しい資本主義実現会議事務局・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁
参考:非常勤麻酔担当医WEBアンケート調査:健全で継続可能な手術医療体制構築のために|公益社団法人 日本麻酔科学会
参考:第25回医療経済実態調査の概要|中央社会保険医療協議会
フリーランスの定義

昨今、フリーランスという言葉を耳にする機会は少なくありませんが、そもそもフリーランスとはどのようなものを指すのでしょうか。
2024年11月1日、フリーランスが安定して働ける環境を整えるために「フリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されました。この法律では、フリーランスを”業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの”と定義しています。
これを医師に当てはめて説明すると、フリーランスの医師とは、特定の病院やクリニックと雇用契約を結ばず、業務委託契約に基づいて、医業に従事する医師を指します。
参考:2024年11月1日にフリーランスの方のために、新しい法律がスタートしました|公正取引委員会
フリーランスの医師が取れる働き方の選択肢

フリーランスの医師には、いくつかの働き方の選択肢があります。ここからは、代表的な働き方について見ていきましょう。
スポット勤務
スポット勤務とは、いわゆる日雇いの働き方のことです。1日のみ、あるいは数時間のみといった単発の契約で勤務します。
一般的には、常勤医が病欠や学会参加、休暇取得などの理由で不在となる際に、その代替として勤務するケースが多く、即戦力として働けるスキルが求められます。そのため、後述する定期非常勤と比べると、時給が高めに設定されているケースも少なくありません。
夏季休暇や年末年始は、特にスポット勤務医のニーズが高まる傾向にあります。ただし、常に求人があるとは限らず、希望する日に必ず働けるとは限らないので、フリーランスの医師の働き方の中でも安定性は低いといえるでしょう。
定期非常勤
定期非常勤とは、特定の医療機関で、あらかじめ決められた曜日や時間帯に働く非常勤医を指します。例えば、毎週月曜と水曜の9時から13時まで勤務するといった働き方です。
一般的に、半年から1年程度の契約期間で契約を結ぶことが多く、スポット勤務と比べて雇用も収入も安定しやすい傾向にあります。子育てや介護などの理由でフルタイム勤務が難しい場合でも、無理なく医師として働き続けることが可能です。またオンコールや時間外勤務がない求人も多く見られます。
ひとつの医療機関のみで定期非常勤として働くケースもあれば、複数の医療機関で定期非常勤を掛け持ちするケースも少なくありません。
スポット勤務と定期非常勤のハイブリッド型
スポット勤務と定期非常勤を組み合わせたハイブリッド型でフリーランスとして働く医師もいます。
前述の通り、スポット勤務は時給が高い傾向にある一方で、常に求人があるとは限らず、収入や働き方が不安定になりやすいという側面があります。比較的安定性のある定期非常勤として一定の勤務枠を確保しつつ、空いている日にスポット勤務を組み合わせることで、安定した収入を維持しながら高収入を目指すことが可能です。
フリーランスと勤務医の働き方の違い

医師の長時間労働を是正するために、2024年4月から医師の働き方改革が施行されました。
これにより、医師のアルバイト勤務や副業に関して、これまでになかった制限が設けられています。ただし、この働き方改革は原則として勤務医を対象とした制度であり、フリーランスの医師は直接の対象とはなりません。
ここからは、フリーランスの医師と勤務医の働き方の違いについて見ていきましょう。
働き方改革による労働時間の制限がない
フリーランスの医師は勤務医と異なり、働き方改革による労働時間の制限を受けません。
医師の働き方改革の施行により、診療に従事する勤務医の時間外・休日労働時間の年間上限は、原則960時間に設定されました。この上限は、勤務している全ての医療機関での労働時間を通算して算出されるので、アルバイトや副業を行っている勤務医の中には、これまでと同じ働き方が難しくなった医師もいます。
しかし、前述の通り、働き方改革は主に勤務医を対象とした制度であり、フリーランスの医師は対象外とされています。そのため、フリーランスとして働く場合は、労働時間の上限に縛られることなく、自身の裁量で労働時間を決めることが可能です。
参考:医師の働き方改革の制度について|医師の働き方改革 C2審査・申請ナビ
宿日直許可を考慮する必要がない
フリーランスの医師は、勤務医と異なり、宿日直許可を考慮する必要がありません。
宿日直許可とは、宿日直業務について、労働基準監督署が医療機関に対して出す許可のことです。宿日直許可を得ている医療機関では、許可された範囲内において、宿日直の時間が労働基準法上の労働時間規制の対象外となります。そのため、宿日直の時間は労働時間としてカウントされず、時間外・休日労働時間の年間上限規制にも影響しません。
勤務医がアルバイトや副業を行う場合、宿日直許可を取得している医療機関を選ぶことで、労働時間にカウントされる時間を抑えつつ、収入を確保することが可能です。
しかし、すでに解説した通り、フリーランスの医師は医師の働き方改革の対象外とされています。そのため、契約する医療機関を選ぶ際に、宿日直許可の有無を考慮する必要はありません。幅広い医療機関の中から、自身の専門性を生かせる職場や、ライフスタイルに合った職場を選ぶことができます。
【年代別】医師のキャリアプランの立て方

フリーランスとして働く場合でも、勤務医や開業医として働く場合でも、自分に合った働き方を実現するためには、キャリアプランを立てることが重要です。医師にはさまざまなキャリアパスがあるからこそ、自分なりのキャリアプランを早い段階から考えておくことが欠かせません。
ここからは、年代別に医師のキャリアプランの立て方について解説していきます。
20代
20代は、将来理想とするキャリアを実現するために、医師としての基礎を固める重要な期間です。
自分がどのような道に進みたいのかを考えながら研鑽を重ね、医師として必要なスキルや知識、専門性を身に付けていきます。この時期に多くの経験や能力を身に付けておくことで、将来の選択肢を広げることにもつながるでしょう。
実際に働く中で、当初思い描いていたキャリアとは異なる分野に興味を持ったり、自分に合った方向性が見つかったりするケースもあるはずです。また結婚や出産、育児といったライフステージの変化をきっかけに、キャリアを見直す医師も少なくありません。
こうした背景から、20代で転科を選択する医師も一定数存在します。ただし、後期研修の期間中に転科や転職を行うと、その後のキャリアに大きな影響を及ぼす可能性もあるため、慎重に検討することが大切です。
30代
30代は、20代で身に付けた専門性をさらに極める期間です。専門医・認定医資格を取得し、中には指導に携わる医師も出てくるでしょう。
同時に、30代後半に差し掛かると転職市場での需要も高まり、今後のキャリアを見直すタイミングでもあります。この時期に、フリーランスとして働くことを選択する医師も少なくありません。
また長期的にフリーランスとして働くことを想定していない場合でも、結婚や出産、育児などのライフステージの変化をきっかけに、働き方を見直す必要が生じる医師もいるはずです。常勤勤務が難しい場合には、スポット勤務や定期非常勤といった働き方を選ぶことで、キャリアを中断することなく、無理のない範囲で医師として働き続けることができるでしょう。
40代
十分な能力と経験を備えた40代は、引き続き転職市場での評価が高い時期です。診療業務に加えて、マネジメントや組織運営など、病院経営の視点を求められることも増え、多忙な日々を送る医師も少なくありません。
30代まで勤務医としてキャリアを積んできた医師の中にも、40代を迎える頃から転職を検討する人が出てきます。現在の医療機関で昇進や役職を目指すのか、より高待遇な医療機関へ転職するのかといった選択に加え、生涯にわたって現場の医師として診療を続けるのか、若手を育成する指導医としての道を進むのかを考える時期でもあります。
また開業を目標としてきた医師は、40代で開業を実現させるケースが多いです。医師として培ってきた知識や経験を生かして起業したり、メディカルライターなど医療分野に関連する異業種で活躍したりする医師も増えています。
50代
50代は、これまでに培ってきた経験を生かし、残りの医師人生をどのように過ごすかを考える重要な時期といえます。
現在勤務している医療機関で定年まで働くことを選択する医師もいれば、体力的な負担を軽減するため、より無理のない働き方ができる職場へ転職する医師もいるでしょう。また50代でフリーランスの医師へ転身し、体力やライフスタイルを考慮した働き方を実現する医師もいます。
生涯現役を目指すのであれば、この段階で自身の体力や価値観に合った、無理なく続けられる働き方を検討することが大切です。
フリーランスの医師を目指す時に考えるべきポイント

フリーランスの医師として自分の理想とする働き方を実現するためには、これから紹介するふたつのポイントについてあらかじめ考えておくことが大切です。
収入が不安定になる可能性に注意する
まず頭に入れておきたいのが、収入が安定しない可能性が出てくることです。
雇用契約を結ぶ常勤医と比べると、業務委託契約で働くフリーランスの医師は雇用の安定性が低い傾向にあります。契約先の医療機関から突然契約終了を告げられる可能性もあり、状況によっては収入が大きく減少してしまうかもしれません。
万が一、急に収入が落ちた場合に備えて、生活費の確保や貯蓄を意識しておくことが重要です。
働き方の軸を持つ
医師としてどのように働くのか、自分の中で軸を持っておくことも、フリーランスの医師として働き続けるためには欠かせません。
フリーランスの医師は、働く時間も場所も自由に決めることができます。ただし、裁量が大きいからこそ「なんとなく楽そうだから」といった理由だけでフリーランスを選択すると、方向性を見失い、思い描いていたキャリアからかけ離れてしまう可能性があります。
どのような分野で、どの程度の収入を得たいのか、ワークライフバランスをどのように重視するのかなど、自分なりの軸をしっかり持つことで、ブレのない働き方を実現しやすくなるでしょう。
まとめ
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【監修者コメント】
フリーランスで働かれている医師は私の周りにも多くいらっしゃいます。自由度というメリットがありますが様々な保障を受けにくいデメリットも存在します。場合によっては将来が安定しない懸念もあります。医師の働き方改革にて当直や宿日直が自院での人員配置が困難となったり、特に地方では各科の医師の確保が困難になるなど様々な問題がありますので、そういった病院にとっては救世主となることもあります。専門医免許や実力があれば、時代に合わせ様々な働き方が選択できるのは医師のメリットかもしれません。
記事の監修者

後平 泰信(ごひら やすのぶ)
後平 泰信(ごひら やすのぶ)
経歴
2009年4月 札幌東徳洲会病院 初期研修医
2010年4月 同院循環器内科 後期研修医
2014年4月 札幌徳洲会病院循環器内科
2018年4月 札幌東徳洲会病院循環器内科 医長
2021年4月 同院循環器内科 部長
2023年4月 同院 睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長
2024年4月 医療法人徳洲会札幌外科記念病院 病院長
2025年10月 医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院(名称変更) 病院長 現職
