2022年4月から開始された不妊治療保険適用とは?背景とメリット、今後の課題を解説|医師の現場と働き方

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2022年4月から開始された不妊治療保険適用とは?背景とメリット、今後の課題を解説

2022年4月からの不妊治療保険適用について、その背景や医療機関への影響はご存じでしょうか。今回は、不妊治療保険適用について、メリットをはじめ、今後の課題などについて詳しく解説します。

<この記事のまとめ>
・2022年4月から、従来自由診療の対象だった不妊治療の一部が保険適用に変更された。
・保険適用になる基本治療は「一般不妊治療」「生殖補助医療」が挙げられ、「生殖補助医療」の場合は年齢・回数制限、施設基準などの条件がある。
・不妊治療の保険適用のメリットとして、患者さんの経済的負担の軽減や、医療機関がさまざまな治療の選択肢を提案しやすくなったことが挙げられる。

1.不妊治療が保険適用となった背景

2022年4月から開始された不妊治療の保険適用。その背景として、不妊治療にかかる治療費が、患者さんにとっては大きな経済的負担になっていたことが挙げられます。高額な不妊治療費が原因で、子どもをもつこと自体を諦めてしまうケースもあります。

厚生労働省の資料によると、1973年の約209 万人が出生数のピークで、この前後数年は「第2次ベビーブーム」といわれています。しかし、その後1980年には出生数は約157万人、2000年には約119万人、2019年には約86万人と減少を続け、少子化の進行が顕著です。

少子化対策が喫緊の課題となるなか、2020年に政府は安心して子どもを生み育てられる社会保障を構築する方針を固めました。その中で、子どもをもつことを希望する人の不妊治療にかかる経済的負担の軽減を目的として、不妊治療の保険適用が決定しました。

不妊治療は、ライフスタイルにも大きく影響するものです。不妊治療が保険適用されることで「不妊は、他の疾患同様に治療を必要とする症状である」という認識を社会に広め、不妊治療に取り組みやすくなるような効果もあると考えられます。

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2.不妊治療の保険適用となる範囲

2022年3月以前の不妊治療の保険適用範囲は、不妊の原因を特定するための検査や原因となる疾患への治療のみでした。人工受精をはじめとする不妊治療や生殖補助医療は、保険適用の対象外であったため、自由診療として患者さんが治療費を全額負担する必要がありました(ただし、一部の治療は「特定不妊治療」として助成金の対象となっていました)。

これに対して、2022年4月からは、これまで自由診療の対象となっていた不妊治療の一部が保険適用となったのが大きな変更点です。以下に保険適用の範囲をまとめます。なお、不妊治療保険適用の対象は、事実婚の場合も含まれます厚生労働省リーフレットより)。

2-1.保険適用の基本治療の種類

保険適用になる基本治療として、「一般不妊治療」「生殖補助医療(年齢・回数制限、施設基準あり)」が挙げられます。

1)一般不妊治療 
・タイミング法
・人工授精

2)生殖補助医療(年齢・回数制限、施設基準あり)
・採卵、採精
・体外受精
・顕微授精
・受精卵・胚培養
・胚凍結保存
・胚移植

生殖補助医療のうち、上記に加えて実施されることのある「オプション治療」については、保険適用されるもの(例:卵子活性化など)と、先進医療として保険診療と併用できるもの(例:IMSI※やPICSI※※など)があります。

(※)IMSI……超高倍率の光学顕微鏡を用いて精子の形態を観察し、成熟した精子を選択する方法。
(※※)PICSI……HA-ICSIとも呼ばれる。精子を事前にヒアルロン酸で処理し、成熟した精子を選択する方法。

2-2.年齢・回数の要件(体外受精)

体外受精の保険適用においては、年齢制限や回数制限が設けられています。

年齢制限は、治療開始時において、女性の年齢が43歳未満であることとされています。また初めての治療開始時点の女性の年齢が、40歳未満の場合は「通算6回まで(1子ごとに)」、40歳以上43歳未満では「通算3回まで(1子ごとに)」と回数上限が設定されています。

3.保険適用となった不妊治療の診療報酬点数

不妊治療の保険適用による診療報酬の算定点数は以下のとおりです。2022年8月1日時点の情報もとに解説しましょう。

3-1.一般不妊治療

一般不妊治療における算定点数は次のとおりです。
タイミング法 一般不妊治療管理料250点(3月に1回)
人工授精 人工授精 1,820点

3-2.生殖補助医療(年齢・回数制限、施設基準あり)

生殖補助医療管理料(月に1回)として、相談対応の専任者を配置する場合は300点、それ以外の場合は250点を算定できます。不妊治療の診療の流れに沿って、保険適用の算定点数をまとめました。

1.採卵

採卵術 3,200点+2,400点~7,200点(採卵数に応じ加算)
抗ミュラー管ホルモン(AMH) 600点(6月に1回)

2.採精

Y染色体微小欠失検査 3,770点(患者につき1回)
精巣内精子採取術 1:単純なもの 12,400点
2:顕微鏡を用いたもの 24,600点

3.体外受精・顕微授精

体外受精 体外受精・顕微授精管理料
体外受精 4,200点
顕微授精 体外受精・顕微授精管理料
顕微授精 4,800~12,800点 (個数に応じ評価)
+採取精子調整加算 5,000点(精巣内精子採取術により採取された精子を用いる場合)
+卵子調整加算 1,000点(卵子活性化処理を実施した場合)

4.受精卵・胚培養

受精卵・胚培養 受精卵・胚培養管理料
4,500点~10,500点(個数に応じ評価)
+胚盤胞に向けた管理 1,500点~3,000点(個数に応じ加算)

5.胚凍結保存

胚凍結保存 胚凍結保存管理料(導入時)
5,000~13,000点(個数に応じ評価)
胚凍結保存維持 胚凍結保存維持管理料
3,500点(年に1回)

6.胚移植

胚移植術 1:新鮮胚移植 7,500点
2:凍結・融解胚移植 12,000点
+アシステッドハッチング 1,000点(胚移植術において、アシステッドハッチングを実施した場合)
+高濃度ヒアルロン酸含有培養液 1,000点(胚移植術において、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を用いた前処置を実施した場合)

(厚生労働省「不妊治療に関する支援について」「①一般不妊治療に係る評価の新設」を参考に作成)

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4.不妊治療の保険適用によるメリット

不妊治療の保険適用による医療機関側、患者さん側それぞれのメリットについて見てみましょう。

4-1.医療機関側のメリット

保険適用により、不妊治療へのハードルが下がったことで、患者さんにさまざまな治療の選択肢を提案しやすくなったことが挙げられます。治療にかかる費用面で不安に感じている患者さんの場合、保険適用の範囲内で進めるのか、自由診療の範囲も含めるのかなど、ある程度の判断基準を提示できるのも利点と言えるでしょう。

4-2.患者さんのメリット

患者さんの治療方法によっては経済的負担を軽減できる点が大きなメリットと言えます。ただし、生殖補助医療において「先進医療」として位置づけられた一部のオプション治療を除き、保険診療と自由診療の治療は併用できないため、患者さんの治療方法によっては治療費の負担が大きくなってしまう場合もあります(NHK首都圏ナビより)。すべての患者さんにとって経済的負担が軽減されるわけではない点に注意が必要です。

4-3.医療機関と患者さん両者のメリット

社会における妊娠や不妊治療に対する理解促進につながることが期待されます。2021年8月に日本医療政策機構が、全国25歳から49歳の男女1万人を対象に実施した「現代日本における子どもをもつことに関する世論調査」の結果では、約8割が「不妊治療を受けた女性が妊娠することができる年齢を40歳以上と回答」したことが報告されており、加齢によって妊娠する確率が下がるという事実が、正しく認識されていない点が浮き彫りになっています。

不妊治療が保険適用になり、治療の対象となる年齢が明示されたことにより、不妊治療で効果を得るためには、年齢も重要な要素の1つであることを周知できる点もメリットといえるでしょう。

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5.不妊治療の保険適用による課題と、医師が押さえておくべきポイント

さまざまなメリットがある不妊治療の保険適用ですが、課題も残っています。

5-1.新たな治療法の研究が停滞する可能性

不妊治療の保険適用によって懸念される課題は、治療法の研究が停滞する可能性がある点です。これまで不妊治療は自由診療であったため、最新の知見や治療法を取り入れた不妊治療が実践されてきました。しかし、不妊治療の保険適用が開始されると、患者さんの経済的負担を考慮して自由診療の選択肢が取りづらくなることも懸念され、最先端の設備や技術への投資や、新たな治療法の研究が停滞してしまう可能もあります。

5-2.自由診療と併用できない場合が多い

前述の通り、不妊治療の保険適用は、一部の先進医療を除いて自由診療との併用ができません。一般的な治療で成果を得られる患者さんにとっては、保険適用による経済的なメリットは大きいでしょう。

しかし、保険適用外の治療を選択する必要がある患者さんは、従来通り、全額患者さんの自己負担となります。助成金制度も廃止されるため、経済的負担がこれまでよりも大きくなってしまうケースも考えられます。主治医は、患者さんの経済的負担と適切な治療法の選択においてより慎重な判断が必要になるでしょう。

不妊治療は日進月歩ですが、発展途上の部分も多くあります。そのため、患者さんの治療の成果を高めるためには、最新技術や医療機器を状況に応じて組み合わせて用いる環境を作ることが重要です。

保険適用と自由診療を併用できる制度の方が、治療法の選択肢も増えるため有利といえますが、十分な治療成果が得られるかわからない治療に対して、保険適用することへの懸念もあります。

6.不妊治療の保険適用について最新の情報を確認しよう

不妊治療の保険適用が開始されましたが、実際にはまだ解決すべき課題も多く残っているため、今後も定期的に見直され、改訂される可能性があります。そのため、常に新たな情報を確認し、患者さんの経済的負担にも配慮しながら、適切な治療に活かせるようにしましょう。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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