救急医療体制とは?医師として救急医療に携わる方法も解説|医師の現場と働き方

救急医療体制とは?医師として救急医療に携わる方法も解説

緊急時の治療や入院などに対応する救急医療。日本の救急医療体制は、どのような仕組みで運用されているのでしょうか。本記事では、救急医療体制の仕組みをはじめ、救急指定病院の特徴や救急医療に携わる方法について詳しく紹介します。

<この記事のまとめ>

  • 救急医療体制は、患者さんの重症度によって一次(初期)、二次、三次に分かれる。
  • 二次救急以上の対応を行うのは、都道府県知事の認定を受けた救急指定病院(救急告示医療機関)
  • 救急医療に携わるには、急性期病院や救急指定病院に勤務するほか、救急科専門医の取得を目指すのも方法の一つ。
  • 専門医を取得後、サブスペシャリティ領域に進み、集中治療医や外傷外科医、熱傷専門医などを取得する道もある。

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1.救急医療体制とは

救急医療体制は、重症度に応じて、一次(初期)、二次、三次の3段階に分かれます。まずは、それぞれの特徴について紹介します。

1-1.一次(初期)救急医療機関

一次(初期)救急医療機関は、自力で通院でき、外来にて診療可能な患者さんを受け入れ対応する医療機関です。都道府県ごとに配置される「休日夜間急患センター」や、救急指定を受けている地域の病院、診療所、クリニックが該当し、その医療機関に勤務する一般の医師が、当直や当番として対応します。

対象となるのは、入院や手術の必要がなく比較的軽症で、自力での帰宅が可能な患者さんです。具体的には、急な発熱やじんましん、腹痛、軽度の外傷といった症状で、救急外来として対応できる範囲で処置を行います。担当した医師にとって専門外となる領域の場合には、別の専門医につなぐまでの初期的な処置を行うのが一般的です。救急車での搬送が必要なほど緊急性が高いと判断する場合には、二次救急医療機関、もしくは三次救急医療機関に紹介、転送されます。

1-2.二次救急医療機関

二次救急医療機関は、救急車で搬送される患者さんの受け入れを行う医療機関です。基本的に24時間体制で対応し、多くの場合、地域の拠点病院がその役割を担っています。地域によっては、救急対応を行う医療機関が当番日を決めて輪番制で対応するか、共同利用型病院方式として、地域の拠点病院が施設の一部を開放し、当番となる地域の医師が出向いて診療を行います。

対象となるのは、緊急手術や入院を必要とする患者さんですが、対応する医療機関で対処可能な範囲で専門的な診療を行います。具体的には、単純骨折や虫垂炎、尿路結石、心筋梗塞など。あくまで、その医療機関で対応可能な救急患者さんへの診療や応急処置を担うもので、より高度な医療が必要な場合には、三次救急医療機関に転送されます。

1-3.三次救急医療機関

三次救急医療機関は、一次救急医療機関や二次救急医療機関では対応できない患者さんや、複数の診療科領域にわたる重篤な救急患者さんの受け入れを行う医療機関です。「救命救急センター」や「高度救命救急センター」が該当します。

対象となるのは、より緊急性が高く、専門性の高い治療が必要な状態にある重篤な患者さんで、具体的には、脳卒中やくも膜下出血、脳挫傷、肺挫傷、急性大動脈解離などの他、交通事故によるけがが全身に及んでいるようなケースが挙げられます。ERなどに所属する医師が対応し、救急専門医を中心に他領域の専門医がチームになって対応に当たるケースが多いでしょう。地域の救急医療体制として重要な機関であると同時に、医療従事者が救急医療を実践的に学ぶ教育機関としての役割も担っています。

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2.救急指定病院とは

上述したとおり、救急対応をする医療機関は3つに分かれますが、そのうち、二次救急以上の対応を行うのが、救急指定病院(救急告示医療機関)です。具体的には「消防隊により搬送されて入院を要する状態の患者さんの医療を担う医療機関」を指します。

救急指定病院として機能するには、都道府県知事の認定が必要で、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二条第九項の規定に基づき定められます。指定を受けるための条件は以下のとおりです。

  1. 1.救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。
  2. 2.エックス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること。
  3. 3.救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。
  4. 4.救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために優先的に使用される病床を有すること。

参照:昭和三十九年厚生省令第八号 救急病院等を定める省令

また、この省令では「前項の認定は、当該認定の日から起算して三年を経過した日に、その効力を失う」として、認定後の有効期間も明記されています。

3.医師として救急医療に携わるには?

医師であれば、業務のなかで救急医療に携わる機会があるでしょう。しかし、救急現場でより経験を高めたい場合や、より高度な救急医療に関わりたい、救急医療の専門医として活躍したいといった場合には、どのような働き方を目指せばよいのでしょうか。救急医療に携わる方法について紹介します。

3-1.地域の救急医療に積極的に関わる

一次救急、二次救急を担う急性期病院や救急指定病院に勤務することで、救急医療に携わる機会が増えます。通常は、外来や入院を担当している場合でも、自身が専門とする領域において緊急性の高い患者さんへの対応を求められたり、判断を求められたりする可能性があります。当直時に、救急科のフォローに入るといった可能性もあるでしょう。また、休日・夜間診療の当番、当直を積極的に担当することで、経験を積むことが可能です。ただし、あくまで一次、二次救急の範囲であり、より高度な医療を提供する三次救急を目指す場合には、さらなるステップアップが求められます。

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3-2.三次救急で活躍したいなら、救急科専門医資格を取得する

三次救急で活躍したい場合には、救急科専門医の取得を目指すのがおすすめです。初期研修後、新専門医制度の基本領域として、救急科専門医取得が可能です。救急指定病院や救命救急センターなどでの研修を受けることで、現場に携わることができます。さらに、専門医取得後は、集中治療医や外傷外科医、熱傷専門医といったサブスペシャリティ領域に進む道もあります。さまざまな救急医療機関への入局が可能となり、第一線で携わることになるでしょう。

3-3.一次救急対応を行うクリニックや在宅医療分野での開業

地域のかかりつけ医として、一次救急対応を行うクリニックを開業し、救急医療に携わることも可能です。また、救急病院の機能を果たすには、慢性期医療施設や在宅医療が充実していることも重要です。救急医療を受けた患者さんのフォロー体制として、在宅医療に携わるのもキャリアの一つといえるでしょう。

4.救急医療体制における課題

近年、救急医療機関の機能と役割を明確にするため、現状把握に必要な指標の見直し等が行われています。2020年(令和2年)に行われた「第7次医療計画中間見直し」では、以下の点が検討されました。

4-1.受け入れ態勢の円滑化

救急医療において、円滑な受け入れ態勢の整備は大きな課題です。超高齢社会を迎え、高齢者や高齢者施設などを利用する患者さんへの救急搬送体制の整備が求められるようになりました。救急搬送や受け入れ態勢の確保に向けて、医療機関と介護施設などの連携が推進されています。

4-2.救急領域での過重労働

救急現場では、医師も看護師も過重労働が続き、負荷が大きくなっています。そうした課題の解決に向けて、法改正を含めた救急救命士へのタスクシフティングが検討されています。また、救急専門医への負荷が懸念されており、救急以外の専門医との協力関係の強化が求められる他、救急医療は全ての医師で対応すべきではないかという議論も上がっています。

5.救急医療の分野で活躍を目指す場合はキャリアプランをしっかりと考えよう!

救急医療の分野で活躍を目指したい場合は、効率的に必要な知識や技術を身に付けられるようキャリアプランを立ててみましょう。専門性を高めるために転職を検討する場合、キャリアプランに合った職場選びが大切です。迷ったときには、医師専門のエージェントに相談してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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