AIホスピタルとは? AIホスピタル実現のメリットや課題を紹介|医師の現場と働き方

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AIホスピタルとは? AIホスピタル実現のメリットや課題を紹介

近年、医療現場での活用が推進・検討されているAI。超高齢社会を迎え、内閣府が掲げる「AIホスピタル」が注目を集めています。「AIホスピタル」の推進により、医療現場にはどのような変化が期待できるのでしょうか。今回は、AIホスピタル構想の背景や実現後のメリットなどについて詳しく解説します。

<この記事のまとめ>

  • AIホスピタルは、IoTやビッグデータなどを活用し、医療の効率化や質の確保、国際的競争力の向上を目指すプロジェクト。
  • 超高齢社会を迎えた日本において、医療に関するさまざまな課題を解決する可能性があるとして、国が主体となって進められている。
  • 病院にとっては、医療従事者の負担軽減や人的ミスの回避、より高度な医療提供につながり、患者さんにとってもより治療が受けやすい環境になることが期待されている。
  • ただし、責任の所在についての懸念や、汎用化を目指すうえでの医療用語の統一といった課題もあり、慎重に検討が進められている。

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1.AIホスピタルとは

そもそも、「AIホスピタル」とは、何を指すのでしょうか。概要に加え、関連の深いSPIについて解説します。

1-1.AIホスピタルとは

「AIホスピタル」とは、AI(人工知能)やIoT、ビッグデータなどを活用し、医療の効率化や質の確保、国際的競争力の向上を目指すプロジェクトを指します。大量の医療情報を集めたビッグデータを治療に有効活用することで、患者さん個々の遺伝的、身体的、生活的特性などの多様性を考慮した治療計画が立てやすくなるとされています。加えて、医療従事者の負担軽減が期待されます。

1-2.AIホスピタル実現によって、何ができるのか?

AIホスピタルでは、多岐にわたる分野でさまざまなプロジェクトが進められています。具体的には、どのような取り組みになるのでしょうか。AIホスピタルでできることとして、以下のようなものがあります。

・診療・治療支援システム
自動問診システムや、診療時の各種記録を支援するシステム、ビッグデータを活用した診断サポートシステムなどが挙げられます。多忙な医師にとって、判断材料となる情報の収集が容易になるというメリットがあるでしょう。また、画像診断システムにより、医師の負担軽減が期待されます。
・IoTによる看護、在宅医療支援
看護時に欠かせない、排尿管理や体温測定などが自動化される機器や、薬の飲み忘れ等の服薬エラーがあった場合に警告を出す機器、転倒などが起きた場合に医療機関や家族に通知が送られる機器などの開発も、AIホスピタルの一部といえます。

・新薬開発支援AI
新薬開発に必要な標的(創薬ターゲット)を見つけ出し、新薬の開発を促進する仕組みです。AIを活用することで、世界中にある膨大な科学論文や遺伝子情報などを解析し、創薬ターゲットを推定できるようになりました。検証から開発にかかるコストが大幅に減少されることが期待されています。

そのほか、医療施設内において、高齢者や要介護者の移動をサポートする自動運転車椅子システムや、検査案内補助として人工知能ロボットを活用するなど、幅広い分野での開発が進められています。

2.AIホスピタルの構想の背景

超高齢社会を迎えた日本において「医療の質の確保」と「医療費の増加抑制」は喫緊の課題です。そうした中で、AI、IoT、ビッグデータの技術を活用した「AIホスピタルシステム」の開発・構築は、高度化・先進化した医療サービスの提供をはじめ、医療の効率化や医療従事者の負担軽減につながるでしょう。加えて、積極的な取り組みにより、医療分野における国際的競争力の向上に寄与するものと期待されています。

AIホスピタルの背景として、理解しておきたいのが、「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム/Strategic Innovation Promotion Program)」です。内閣府を主体として創設されたもので、さらなる科学技術イノベーション実現のために、府省・分野を超えた横断的な取り組みを行うプロジェクトを指します。

社会的課題や日本経済再生等に関わる10の課題解決を目的とするもので、その1つとして医療現場に関わる革新的技術の開発が進行中です。

3.AIホスピタル実現によるメリット

AIホスピタルの実現により、医療機関と、国、国民それぞれにメリットがあるとされています。詳しく見てみましょう。

3-1 病院のメリット

病院のメリットは主に以下4点が挙げられます。

1.医療従事者の負担軽減
医療従事者が抱える業務の一部をAI等に委ねることで、医療従事者の負担軽減が期待されます。AIを活用した診療記録やインフォームドコンセントなどの書類の作成、患者さんに応じた合わせた適切な治療選択の支援などにより、実質的な業務の効率化が可能です。超高齢社会を背景とする、昨今の医師の負担増大も、AIによるサポートで緩和されることが見込まれています。
2.本質的な業務へのリソース投下
医療従事者が抱える業務の一部をAIに委ねることで、時間的な余裕を作り「人間にしかできない、より高度な仕事に専念できる」と期待されています。医療従事者が担う、より本質的な業務に集中できる環境づくりに役立つでしょう。また、AIホスピタルの実現に伴い、これまで病院単位で保有していた医療情報の一元化が期待されています。専門家と医療関係者間・医療関係者と患者さん、家族間の知識ギャップを埋めることで、より納得のいく治療計画が実現可能です。
3.人的ミスの回避
AIによるモニタリングや監査により、投薬ミスといった人的ミスの回避に役立つとされています。データの蓄積により、複雑な状況下でのミス回避や予防につながるでしょう
4.高度な医療の質提供
AIが得意とする情報収集・データ解析力により、データに基づいた医療の提供や、より患者さんに寄り添った選択肢を増やすことが可能です。また、汎用化されることで、将来的に高度で先進的な医療サービスが、場所や時間を問わず、広く提供される可能性が高まります。

3-2.国のメリット

国が主体となって行っているのは、以下のようなメリットがあるからです。

1.医療費の抑制
複数の医療機関を利用していた患者さんにとっては、医療機関での情報共有により、より合理的かつ、効率の良い選択が可能になることで、医療費の抑制が見込まれています。
2.労働人口の確保
AIホスピタルを活用することで、より適切で効果的な治療が選択しやすくなります。結果として、健康寿命の延伸や、療養期間の短縮による労働人口の確保に貢献可能です。
3.国際的競争力の向上
AIホスピタルでは、医師・医療機関、プラットフォーム、医療 AI サービス提供者が一体となった連携体制を目指した技術開発が進められています。これは世界でも類を見ない試みであり、発展の過程で得られる新技術は、医療分野における国際的競争力の向上にもつながるとの見通しです。

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3-3.国民のメリット

国民のメリットとしては以下の点が挙げられます。

1.医療費軽減と療養期間の短縮
患者さんにとっては、効率的な医療が提供されることで、治療にかかる療養期間の短縮や医療費の軽減が期待できます。早期の社会復帰につながるのもメリットです。
2.場所を問わず、医療の継続が可能
過去の診療履歴など、複数の医療機関で情報共有が行われることで、治療がスムーズに継続できると考えられます。引っ越しによる移転や出張中の受診といったシーンでも、従来の治療計画に則った医療を受けることができるでしょう。
3.最適な治療を受けやすい環境になる
AI等の活用が汎用化され、広く導入されることで、場所や医療機関の規模を問わず、最適な治療を受けやすい環境になるでしょう。高度で先進的、かつ最適化された医療サービスが、均一に提供されることで、医療の質格差の解消につながります。

4.AIホスピタルの構築による事例

では実際に、AIホスピタルにより、どのような取り組みが行われているのでしょうか。2つの事例を紹介します。

4-1. 人工知能を有する統合がん診療支援システム

統合がん臨床データベースの開発により、患者さん個々への最適な治療予測モデルの構築が進められています。治療歴や外来入退院歴などの医療情報の収集・分析により、AIによる病理診断業務支援が可能になる仕組みです。

公益財団法人がん研究会有明病院が2022年に発表した資料によると、2022年時点で14万7,000人のがん患者さんから、14万1,000件の手術情報、49万5,000件の薬物療法、4万5,000件の放射線治療に関する情報が登録されています。また、デジタル化された病理組織検体12万6,900件という膨大な病理標本とレポートデータを融合させてAI教材としています。

参照:人工知能を有する統合がん診療支援システム(公益財団法人がん研究会 有明病院)|SIP AIホスピタルによる高度診療・治療システムシンポジウム

4-2. 診療記録を用いた医師支援 AI の研究開発

医師の業務負担軽減に向けたシステム開発が進められています。Drアバターによる支援システムとして、どの患者さんにも共通して説明する内容を、主治医のアバターが動画で説明し、さらに動画を見た患者さんの反応を主治医にフィードバックするシステムもその1つです。さらに、外来等での医師や看護師の声を認識し、カルテの項目に合わせてテキストを分類、記録するシステムの開発など、臨床での効率化を進める仕組みとなっています。

参照:AIホスピタルシンポジウムプロジェクト発表(BIPROGY株式会社)|SIP AIホスピタルによる高度診療・治療システムシンポジウム

5.AIホスピタルの課題

AIホスピタルには、さまざまなメリットがありますが、一方で懸念される課題も残されています。

5-1.責任の所在

AIを活用した画像・病理診断システムの開発が進められるものの、導入された場合の責任の所在が懸念されています。現在の制度では、診断の最終的な責任は医師にあります。しかし、AIの見落とし等による責任を医師が負うとなれば、リスクが大きく、普及が難しいでしょう。AI診断の精度を評価した上で、承認する制度が必要だとされています。

5-2.医療用語の統一化

システムの汎用化を目指す上で、医療用語の統一化が欠かせません。上述した、音声カルテ入力システムを活用するとしても、病院ごとに表現が異なっていたり、方言による会話があったりすると、正確に記録されない可能性があります。同じ疾患でも、複数の読み方、表現の仕方があるケースもあり、標準化する、もしくは、同じ疾患であることを関連付けて記録するような仕組みが必要です。医療用語集の拡充と、用語間の関連性を加味した辞書の構築が課題とされています。

5-3.AIプラットフォームの運用

2021年4月には、AIホスピタルに参画している民間企業5社と日本医師会による「医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)」が設立され、「日本医師会AIホスピタル推進センター」の試行運用がスタートしています。AIホスピタルの実装には、医療AIの開発や医療機関への普及が前提です。しかし、医療機関とAI開発事業者をマッチングする場の整備が十分ではない状況とされています。

6.AIホスピタルに関する情報収集を進めよう

AIホスピタルの開発が進み、今後、各地での運用が進められます。例えば、以前は紙ベースだったカルテが、院内スタッフ全員に共有できる電子カルテに変わったように、それが国内レベルに変化していくような発展がイメージしやすいかもしれません。

新しい時代に対応できるよう、国の取り組みだけでなく、勤務先の動向などにも注目し、情報収集を続けることが大切です。今後のキャリアプランに大きく影響する可能性もあるため、早い段階から変化に備えましょう。

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参考URL
医療分野におけるAIとIotの活用②AI・IoT技術の活用事例とリスク|JBサービス
AIホスピタルとは|日本医師会
AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム|医薬基盤・健康・栄養研究所
世界の高齢化率(高齢者人口比率)国別ランキング・推移|GLOBAL ONLINE
SIP「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」|情報通信総合研究所
SIPとは | SIP 戦略的イノベーション創造プログラム|内閣府
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)|内閣府
保健医療分野におけるAI開発の方向性について|厚生労働省
SIP AIホスピタルによる高度診断・治療システムシンポジウム|がん研究会 有明病院
AIホスピタルを実装化するための医療AIプラットフォームの構築に必要な美術に関する研究開発|内閣府
AIホスピタルの社会実装と普及を目指し医療AIプラットフォームの試行運用を開始|日本医師会
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)概要|内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局
「内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」 第2期において 「AI ホスピタルによよる高度診断・治療システム」 社会実装に向けたプロジェクトを開始|内閣府
AIホスピタルシステムの構築と課題|厚生労働省
令和4年度 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期 最終成果報告書 課題名:AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム 2023 年 3 月 9 日|内閣府

PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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