在宅医療を担う医師の役割と仕事内容とは?やりがいや向いている人についても紹介|医師の現場と働き方

在宅医療を担う医師の役割と仕事内容とは?やりがいや向いている人についても紹介

超高齢社会を迎えた日本では、在宅医療のニーズが高まっています。そうした中、今後ますます在宅医療に従事する医師の需要も増えることでしょう。とはいえ、在宅医療を担うには、さまざまなスキルや経験が求められます。今回は、在宅医療を担う医師の役割や仕事内容、やりがいや向いている人、求められるスキルなどについて詳しく解説します。

<この記事のまとめ>

  • 在宅医療とは、通院が困難な患者さんのために、患者さんの自宅や生活の場などに医師が訪問して行われる診療を指します。
  • 在宅医療に関わる医師は、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなどの専門職の方と連携し、チームリーダーとして患者さんに適切な医療を提供できるように舵を取る重要な役割を担います。
  • 患者さんやご家族とじっくり向き合うことができる点、地域医療に貢献できる点などが在宅医療のやりがいとして挙げられます。

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1.「在宅医療」とは

在宅医療とは、通院が困難で自宅での療養を希望する患者さんのために、患者さんの生活の場である自宅や老人ホーム、高齢者住宅などに訪問して行われる診療を指します。在宅医療は、「外来医療のその先の医療」ともいわれており、外来患者さんの継続的医療として終末期まで続くものです。そのため、「患者さんの生活そのままを支える医療」とも呼ばれます。

医師は、在宅医療を受ける患者さんのお宅に訪問しながら治療を継続します。また、地域の医療機関や他職種と連携し、介護サービスの活用も視野に入れてトータルで患者さんを支えるのが特徴です。

在宅医療では、患者さんの状態に応じて看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど、他の分野の専門職との連携が欠かせません。こうした環境を得て、患者さんは生活の場にいながら、状態に応じた検査や入院なども含めた24時間体制の療養ができるようになります。医師は、外来診療と比べて、患者さんやその家族と密接に関わることになります。

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2.在宅医療のメリットとデメリット

在宅医療にはメリットとデメリットがあります。患者さんと、医師それぞれの立場から見てみましょう。

2-1.患者さんのメリットとデメリット

在宅医療を受ける最大のメリットは、患者さんが住み慣れた自宅や施設で療養生活を送れる点でしょう。一方で、在宅で実施可能な治療には限界があり、緊急時にすぐさま対応できない場合がある点がデメリットと言えます。

2-2.医師のメリットとデメリット

在宅医療の場合、複数の職種や医療機関と連携し、役割分担しながら診療できるのがメリットです。専門職の知識や経験が集約されるため、治療の選択肢を広い視点で考えられる可能性があります。一方で、患者さんがいる場所に訪問する手間や時間が必要であり、さらには、24時間体制で対応をしなければなりません。そのため、診療にあたっては複数の医師で分担するなどの工夫が必要です。

3.在宅医療での医師の役割と仕事内容

では、実際に在宅医療を担う医師は、どのような役割や仕事があるのでしょうか。

3-1.在宅医療を提供するチームのリーダー

在宅医療には、他職種との連携が不可欠です。さらに、訪問看護や訪問リハビリ、訪問介護などのさまざまなサービスを通じて、医療と介護をつなぐ必要があります。また、看護師やケアマネジャーなどの専門職だけでなく、歯科やリハビリテーション科などとの連携も必要です。医師は、さまざまな専門職による知識を集約し、患者さんに適切な医療を提供する在宅医療のチームリーダーとして、重要な役割を担います。

3-2.患者さんの在宅生活を医療で支える

患者さんがいる自宅や施設を訪問し、病状の診察や医療処置、薬の処方などを行います。かかりつけ医として、定期的な訪問診療を行うほか、近隣の病院と連携することも医師の仕事です。訪問看護が必要な場合には、「訪問看護指示書」を発行し、必要な医療処置を指示したり、理学療法士に訪問リハビリを指示したりするなど、細やかな手配が必要になります。

場合によっては、夜間の訪問や、緊急時における入院等の手配も発生するでしょう。看取りをすることも多く、深夜や明け方など時間帯を問わず患者さんに寄り添い支えます。

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4.在宅医療で働く医師のやりがい

在宅医療に携わる医師は、「患者さん一人ひとりをより深く、長く診ることができる」点でやりがいを感じやすいのではないでしょうか。

疾患の治療にとどまらず、患者さんの性格や価値観、家族関係、経済状況などを加味したうえで、患者さんらしい生活が送れるよう医療で支えます。診療時間が限られる外来と比べて、患者さんに合わせて、比較的穏やかなペースでの診察が可能であり、患者さんとじっくり向き合えるのもやりがいのひとつです。かかりつけ医として患者さんや家族との信頼関係を築いていくことが求められ、笑顔や感謝の言葉を受け取る機会も多いことでしょう。患者さんや家族、地域と密接にかかわって診療を進めたい医師にとって、大きなやりがいがあります。

5.在宅医療で働く医師に求められるスキル・資格

続いて、在宅医療で働く医師に求められるスキルと取得しておくと役立つ資格を紹介します。

5-1.求められる能力

在宅医療で働く医師は、「総合的に診る」能力が求められます。そのため、数年以上の臨床経験が必要です。また、先にもお伝えしたとおり、患者さんや家族とのやりとりや他職種連携のための「コミュニケーション能力」も大切です。

加えて、在宅医療においては、地域医療との連携も欠かせません。患者さんを医師一人で24時間対応するとなると大変です。複数の医師で分担する、医療連携ができる地域の診療所があるなど、地域とのつながりや人脈なども確保しておく必要があるでしょう。

また、地域医療との連携を強化する上では、社会情勢、保険制度、地域の医療体制といった医療を取り巻く情報に対する情報収集力や、周囲を巻き込み行動する実行力も求められます。

5-2.取得しておくと役立つ資格

在宅医療を担うために取得できる専門スキルとして、日本在宅医療連合学会の「在宅医療専門医」が挙げられます。この資格は「5年以上の医師としての経験を必要」とし「1年間以上の在宅研修プログラム修了者に試験を行うことを基本」とします。また、自ら在宅医療を5年以上実践している医師は、実績に基づき専門医試験を受けることができるコース(実践者コース)が別途設けられており、自身に合った資格取得方法を選ぶことが可能です。詳細は、日本在宅医療連合学会のホームページをご参照ください。

そのほか、総合内科専門医や総合診療専門医、救急科専門医などの資格も、在宅医療で役立つ資格と言えます。

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5-3.在宅医療に向いている医師

在宅医療では、患者さんの健康管理をはじめ、基本的な検査、治療以外にも緩和ケア、看取りも担うため、総合的なスキルを持った医師は経験を生かしやすいといえるでしょう。また、他職種連携においても、スムーズな治療が行えるように、コミュニケーション力が求められます。それぞれの職種が持つ情報や専門的な意見に耳を傾けるスキルが必要であり、「人の話をよく聞いて、人とよく話すことができる人」が向いていると言えるでしょう。

6.在宅医療を担う医師を目指したい人はキャリアパスを考えよう

高齢社会を迎えた日本では、在宅医療の現場で活躍する医師は、今後ますます必要とされる存在となるでしょう。患者さん一人ひとりとしっかりと向き合いたい、地域医療に貢献したいという医師は、在宅医療で活躍するキャリアを検討してみてはいかがでしょうか?今すぐにではなく、将来的に在宅医療に携わりたい場合は、総合的に患者さんを診療できる知識・スキルを身につけたり、地域医療への学びを深めたりしておくことをおすすめします。今後のキャリアプランの立て方に迷っている方や、自分の経験をどう生かしていくか客観的なアドバイスが欲しい方は、医師専門の転職エージェントに相談してみるのも一案です。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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