2025年2月に「医療法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。そもそも医療法とはどのような法律で、今回の閣議決定により、どのような点が変更となるのでしょうか。
本記事では、医療法の主な内容や2025年医療法等の一部改正の全体像、主な改正概要を詳しくかつ分かりやすく解説します。医療法は、医療を受ける患者さんの利益を保護し、適切で質の高い医療を提供するために定められている法律です。医師にも大きく関係する法律なので、本記事を参考に医療法を改めて理解し、今後の変更点を把握しておきましょう。
こんな方におすすめの記事です!
- 医療法について詳しく知りたい方
- 医療法の一部改正がいつから施行になるのかを知りたい方
- 医療法の一部改正による主な変更点を知りたい方
目次
医療法の主な内容

医療法とは、医療を受ける人の利益を守り、適正で質の高い医療を実現することを目的として、医療機関の設置や管理、運営に関する事項を定めた法律です。1948年に制定されました。
主に、以下のような内容が定められています。
| 広告の規制 | ●患者さんが誤った認識を持ったり、不利益を受けたりすることがないよう、次のような内容の掲載を禁止する ・他の医療機関より優れていると読み取れる表現実際よりもよく見せる誇張表現 ・わいせつ性のある画像の使用など公序良俗に反する内容 ・患者さん個人の感想・口コミをそのまま反映させた広告 ・治療に関する詳細を記載していない治療前後の写真のみの広告 |
| 医療の安全確保 | ●国や都道府県、保健所を設置している市区町村は、患者さんやその家族に対して、医療の安全に関連する情報提供を行い、医療従事者に向けて研修を行う必要がある ●医療機関の管理者は、医療事故発生時に「医療事故調査・支援センター」へ届け出る必要がある |
| 病院・診療所・助産所の設立・運営 | ●医師、歯科医師、助産師が病院・診療所・助産所を新規開設したり、休止・廃止したりする際には、所在地の都道府県へ届出を行い、許可を得る必要がある ●開設後、患者さんから見える箇所に管理者の氏名などの情報を掲示することを義務付ける ●運営に必要な設備・人員を確保し、その旨を記録する |
| 安全な医療提供体制を整備・確保 | ●医療機関は適切な医療を効率良く提供するために、基本方針と連携体制などを含めた医療計画を整備する必要がある ●地域で外来診療を行う場合、医療機関の管理者が必要事項を都道府県に報告しなければならない ●災害時や感染症拡大時に備え、一定条件を満たした人材を厚生労働大臣が「災害・感染症医療業務従事者」として登録できる |
| 医療法人の設立・運営 | ●医療法人には、医療の質を高めることと、運営の透明性を確保することが求められる ●法人設立に当たっては、施設名や、役員構成・理事会運営に関する規定などを定め、都道府県知事から認可を受ける必要がある |
医療法の対象となっている医療機関は、以下の通りです。
●病院
●診療所・クリニック
●歯科
●助産所
●介護老人保健施設
●介護医療院
●調剤薬局
●居宅訪問系事業所(訪問看護ステーションなど)
なお、医療法と似た名前の法律に「医師法」があります。こちらは、医師免許や研修、業務に関する事項を定め、医師個人を規制する法律です。一方、医療法は前述の通り、医療機関を対象としています。
参考:医療法|e-GOV
2025年医療法等の一部改正の全体像

1948年の制定以来、医療法は何度も改正が行われてきました。そして2025年2月、新たに医療法の一部改正を行うことが政府の閣議決定により決定しました。
ここからは、今回の改正の背景や施行スケジュールについて見ていきましょう。
参考:医療法|e-GOV
参考:医療法等の一部を改正する法律案|内閣法制局
改正の背景
医療法一部改正の背景には、高齢化が進んでいることと人口減少があります。
現在の日本は高齢化が進み、かつてとは医療に求められるものが変化しています。また人口が減少する地域も増えており、住む場所にかかわらず質の高い医療体制を整備することは、現在の日本が抱える重要な課題です。
このような状況に対応するため、地域ごとの医療体制の見直しや、医師の配置の偏りの改善に加え、それらを支える医療DXの推進が求められています。今回の改正は、これらの課題に取り組むために決定されたものです。
施行スケジュール
今回の改正は、2026年4月から2027年にかけて段階的に行われる予定です。
改正の概要は、以下の3つの軸で構成されています。
●地域医療構想の見直し
●医師の偏在を改善するための対策
●医療DXの推進
それぞれ3つの段階に分けて整備され、順次施行される予定となっています。次の章からは、各概要について詳しく見ていきましょう。
参考:医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について|厚生労働省医政局
【改正概要①】地域医療構想の見直し

ひとつ目の改正ポイントは、「地域医療構想の見直し」です。
現行の医療法は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて整備されました。今回の改正では、さらに先の2040年頃に向け、超高齢社会に対応した適切な医療・介護体制へと移行することを目的としています。
参考:医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について|厚生労働省医政局
医療機関機能報告制度の創設
医療機関機能報告制度の創設は、今回の改正の柱となっているもののひとつです。
この制度では、地域の医療機関を以下の5つの機能に分類し、それぞれの医療機関が地域でどのような役割を担っているかを都道府県へ報告することが義務付けられます。
●高齢者救急・地域急性期機能
●在宅医療等連携機能
●急性期拠点機能
●専門等機能
●医育および広域診療機能
医療機関から集められた報告情報を基に、医療資源の配置や医療機関同士の連携体制の見直しなどが行われる予定です。
オンライン診療の推進
新型コロナウイルスの拡大を受け、オンライン診療は急速に広まりました。しかし、これまで法的な整備は十分でなく、実際の現場では厚生労働省が示す指針に基づいて、柔軟な解釈で対応してきました。
今回の改正では、オンライン診療の法的な位置づけを明確にし、現在の運用を踏まえつつ、明確な規定を設けることが目指されています。厚生労働大臣がオンライン診療に関する基準を策定し、改正後はその基準に従って診療を行わなければなりません。
またオンライン診療を実施する医療機関は都道府県への届出が必要となり、施設管理者は基準遵守のための体制整備など、適切な対応を取る義務があります。
加えて、オンライン診療を受ける専用の施設として、「オンライン診療受診施設」が創設される予定です。
【改正概要②】医師の偏在を改善するための対策

改正ポイントのふたつ目は、医師の偏在を改善するための対策です。
今後、生産年齢人口はほぼ全ての地域で減少すると予測されています。一方で、高齢人口は過疎地域では減少するものの、大都市圏では増加し、地方都市でも増える地域と減る地域が混在する状況になる見込みです。
生産人口の減少に加え、医師数の偏在が顕著になりつつある中で、これを是正するための対策が求められています。
重点区域制度など新たな仕組み
地域ごとの医師数の偏りを是正するため、「重点区域制度」を含む新たな仕組みが導入される予定です。
この重点区域制度では、人口の定住は一定程度見込まれるものの、人口減少のスピードよりも医療機関の縮小が速いと予測される地域を「重点医師偏在対策支援区域」として位置づけ、優先的かつ重点的に対策を講じます。
また医師確保計画の一環として、地域医療対策協議会や保険者協議会と連携し、重点区域や支援対象医療機関、必要とされる医師数、実施する取り組みなどを盛り込んだ「医師偏在是正プラン」を策定します。
経済的インセンティブ
また医師の偏在改善策として「経済的インセンティブ」も進められる予定です。
これは、重点区域において診療所の承継・開業・地域定着を支援する他、医師への手当の増額、勤務環境や生活環境の改善、さらに派遣元医療機関への支援などを行うものです。
2025年11月21日の衆議院厚生労働委員会では、「重点医師偏在対策支援区域」で勤務する医師に対し、国家公務員の「特地勤務手当」(月平均4.3万円)を上回る額の手当を支給する方針が示されました。
【改正概要③】医療DXの推進

医療DXの推進も、今回の改正ポイントです。
医療従事者の確保がより難しくなる中、働き方改革と同時に医療DXを推進していくことが求められています。
電子カルテ共有・仮名加工データの新制度
今回の改正により、全国の医療機関で電子カルテ情報を共有・閲覧できる仕組みが整備される予定です。患者さん自身も、マイナポータルを通じて健診結果報告書に加え、傷病名や検査内容などを含む6つの医療情報を閲覧できるようになります。
また収集した医療情報については、個人が特定されないよう仮名加工を施す仕組みも導入されます。
参考:医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について|厚生労働省医政局
公的DBの仮名化情報の利用
これまで、公的な医療情報データベースでは、匿名加工された情報のみの利用・提供が基本とされてきました。しかし、完全匿名化された情報では、詳細な分析や長期間にわたる追跡が難しいという課題がありました。
今後は、個人が特定されないよう配慮した上で、仮名加工された情報を研究や発表などに活用できるようになります。
社会保険診療報酬支払基金の組織体制の見直し
膨大な医療データを扱う「社会保険診療報酬支払基金」は、診療報酬の審査・支払業務に加えて医療DXの推進も担うこととなり、今回の改正により新たに「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」へと再編される予定です。
加えて、厚生労働大臣が医療DXに関する基本的な方針を策定する他、現在の理事会に代わる組織として「運営会議」が設けられ、医療DX業務を専門に担当する常勤理事も新たに配置されます。取り扱う医療情報を適切に守るため、セキュリティ体制の強化も併せて進められます。
公費負担医療等の効率化
公費負担医療や自治体独自の医療費助成の効率化については、すでに183の自治体で先行導入されています。
この効率化から得られるメリットを拡大するため、参加自治体を順次増やし、2026年度中に全国規模にすることを目指しています。また安定した運用を実現するために、2027年度以降は支払基金または国民健康保険団体連合会がシステムの管理・運用などを担う体制を構築する予定です。
参考:医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について|厚生労働省医政局
まとめ
高齢化に伴う医療ニーズの変化や、医師の偏在による影響は、すでに現場でも現れているのではないでしょうか。労働環境や働き方に不安や悩みを感じている場合、転職を検討するのもひとつの選択肢です。業務と両立しながら、自分に合った転職を成功させたい方は、医師求人専門サービス「マイナビDOCTOR」へご相談ください。
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