研修期間中の給料は、生活の基盤となる大切なものであり、「一人暮らしが継続できるのか」「奨学金の返済に余裕があるか」といった現実的な悩みに直結するものです。本記事では、研修医の平均年収、研修医と専攻医の給与の比較、研修医の給料の内訳、将来につながるキャリア形成の取り組み方について、それぞれ解説します。
こんな方におすすめの記事です!
- 研修医の平均年収を知りたい
- 勤務先や地域によって、研修医の年収にどのような差があるのか知りたい
- 専攻医との給与差や、研修期間後に収入がどう変わるのか理解したい
目次
研修医の平均年収はいくら?

医師免許取得後、臨床医として働くには、まず2年間の初期研修を受ける必要があります。主治医としての業務はないものの、医師としての経験を積み、スキルを高める期間です。そうしたなかで、研修医はどのくらいの給与を得らえるのでしょうか。まずは、研修医の平均年収を見てみましょう。
所属別、研修医の平均年収目安
研修医の平均年収を調査したデータとして、厚生労働省が平成23年に発表した「臨床病院における研修医の処遇」があります。古いデータではありますが、研修医のみを対象とした直近の公的調査であり、目安として紹介します。
| 大学病院 (114施設) | 臨床研修病院 (924施設) | 合計の平均 (1038施設) | |
|---|---|---|---|
| 1年次 | 3,074,172円 | 4,510,339円 | 4,352,610円 |
| 2年次 | 3,123,132円 | 5,021,376円 | 4,812,899円 |
参照:平成23年度 臨床病院における研修医の処遇|厚生労働省
資料によると、平成23年時点の研修医の年収平均は、1年次が約440万円、2年次が約480万円でした。年次が上がるにつれて年収も増加していますが、同じ医療機関に継続勤務していることが前提となっています。なお、大学病院よりも、臨床研修病院の方が年収は高い傾向にありました。
都道府県別、研修医の平均年収の差
勤務地によっても、研修医の平均年収に差がみられます。特に、医師不足の地域では研修医の平均年収も高い傾向にありました。
なお、都道府県別の平均年収のデータは以下のとおりです。

参照:平成23年度 臨床病院における研修医の処遇|厚生労働省
同資料によると、東京都、大阪府、神奈川県、千葉県などの都心部よりも、秋田県、青森県、山形県などの地方エリアが、平均年収は高い傾向にありました。こちらも平成23年度のデータであり、あくまで目安として参考にしてください。
専攻医との給与の違い

専攻医の給与や平均年収を調査した公的なデータはありません。そこで、厚生労働省が発表した「令和6年 賃金構造基本統計調査」から、多くの専攻医が該当すると想定される「25〜29歳」の医師の平均年収を目安として紹介します。その平均年収は、約698万円でした(※)。
ただし、ここで参照したデータは、年齢別に算出されたものであり、専攻医ではない医師も含まれます。
専攻医とは、専門医資格を取得するために、3~5年間の研修プログラムに挑む医師を指します。研修医期間で学んだ基盤をもとに、医師としてさらに高めたい専門性(診療科)を選び、研修に参加するのが一般的です。2年間の臨床研修を終えた医師にとって次のステップとなり、主治医として治療にかかわりはじめることから、責任も大きくなり、業務も増える時期です。そのため、研修医と比べて、専攻医の給与は高くなる傾向にあります。
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先に紹介した研修医の平均年収とは、調査年度や算出条件が異なるため、単純な比較はできませんが、収入水準の目安として参照すると、研修医と比べて、専攻医の年収は大幅にアップする傾向にあります。
また、この平均年収には、アルバイトや時間外手当などの給与は含まれません。勤務先や働き方によって異なるものの、当直回数や業務量の増加により、実際の専攻医の年収は本データより高くなるケースも少なくあります。
※きまって支給する現金給与額×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額
参照:(表5)職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|令和6年賃金構造基本統計調査
研修医の給与例
ここまで公的な資料に基づいて平均年収の目安を紹介しましたが、続いて、実際の求人情報を参考に、研修医の給与目安をまとめました(2025年12月時点)。
A病院
| 給与(月額) | 267,500円 |
|---|---|
| 賞与 | あり |
| 各種手当 | 通勤手当、超過勤務手当 |
| 福利厚生 | 各種社会保険加入、職員寮あり |
B病院
| 給与(月額) | 1年度基本給:284,900円 2年度基本給:301,300円 |
|---|---|
| 賞与 | あり |
| 各種手当 | 時間外手当、当直手当、通勤手当、住宅手当(月額75,000円)など |
| 福利厚生 | 各種社会保険加入 |
C病院
| 給与(月額) | 1年次:年収約600万円 2年次:年収約700万円 |
|---|---|
| 賞与 | 年収に含む |
| 各種手当 | 年収に含む |
| 福利厚生 | 各種社会保険加入 |
求人情報には、給与や各種手当、社会保険、福利厚生などの情報が記載されています。雇用条件は医療機関ごとに異なり、上記B病院のように、1年時と2年時で基本給の変動が明確になっているところもあれば、C病院のように、各種手当を含めた年収ベースで記載されている場合、月々の基本給がわかりにくいケースもあります。
特に、奨学金の返済等で固定の出費がある場合、基本給をしっかり把握しておくことが大切です。ただし、比較検討する際には、額面だけではなく、福利厚生や手当等の細かい内訳もチェックしておきましょう。
なお、手取り額は、上記、B病院(1年度基本給:284,900円)の場合、社会保険料や税金を差し引いて、約22万円前後が目安です。そこに、時間外手当や当直手当、住宅手当などが加算された金額が、毎月の手取り額となります。
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研修医の給料の内訳

では、給与の内訳を確認する際、どのような点をチェックすればよいのでしょうか。研修医の給料の内訳を解説します。
基本給
各種手当や賞与などを含まない、ベースとなる賃金です。基本給の金額は医療機関ごとに異なりますが、医師の場合、経験年数・年次、能力などをベースに算出される傾向にあります。基本的には、年に1〜2回の昇給を重ねていくことで、ベースの金額が徐々に上がります。
基本給に加えて、当直手当や時間外手当、住宅手当、通勤手当などの諸々を含めた賃金を、給与と呼びます。また、給与から各種税金や社会保険料などが引かれた総額のことを、手取り額と呼びます。
基本給は、給与のベースとなるほか、賞与・ボーナスの額にも影響します。生活に直結する部分でもあるため、基本給は事前にしっかりと確認しておきましょう。
各種手当
医療機関で勤務する場合、主には下記の手当が適応されます。
- 時間外手当:就業規則に定められている1日の労働時間を超える範囲の労働に対して、労働時間に応じて加算される手当。
- 当直手当:当直業務に対して支払われる手当。いわゆる「宿日直許可」を受けた当直の場合、労働基準法上は通常の労働とは異なる扱いとなり、一般には基本給の3分の1以上を目安とした手当が支払われるケースが多い。
- 深夜勤務手当:当直業務ではなく、深夜帯に通常業務を行ったときに支払われる手当。22時から5時の深夜帯における労働では、基本給の25%以上の割増賃金が支払われる。
- 通勤手当:自宅から職場(医療機関)までの通勤にかかる交通費。医療機関ごとに、月の上限額が定められている。
- 住宅手当:福利厚生の一環として、家賃や住宅ローンの一部を補助する制度。医療機関ごとに運用の規定は異なるが、月の上限額が定められていることが多い。
- 家族手当:扶養する家族の人数に応じて支払われる手当。福利厚生の一環であり、運用の規定や上限額などは医療機関ごとに異なる。
そのほか、医療機関が独自に運用する手当が支給されることもあります。詳しくは、求人情報や医療機関のホームページに記載されている内容を確認しましょう。
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賞与・ボーナス
毎月支払われる給与とは異なり、勤め先の業績や、労働者の成果・功績などに応じて支払われる給与のことです。必ず支払われる給与ではありませんが、支払われる場合には、年に1〜2回の支給があります。
支給額は「基本給×◯ヵ月分」という形で決まることが多いです。例えば、基本給が30万円で、その年の賞与が基本給×3ヵ月分の場合だと、「30万円×3ヵ月=90万円」が賞与として支払われます。
なお、医療機関によっては、賞与分が毎月の給与に含まれる「年棒制」を導入していることもあります。そのため、「賞与がない」からといって、年収が低いとは限りません。そのほか、基本給は低いが賞与の支給計算額が多い、あるいはその逆のパターンも存在します。
将来の収入アップにつながるキャリア形成とは

奨学金の返済や将来に向けての貯蓄など、収入アップを目指したい人もいるでしょう。しかし、研修医は原則、診療業務に関するアルバイトは禁止されているため、短期的に収入を増やすことは難しい立場にあります。
研修期間中は、医師としての基礎を固めながら、将来の働き方や収入を考える大切な時間として活用しましょう。医師としての今後のキャリア形成につながる取り組み例を紹介します。
キャリアパスを具体的に考える
「専門分野で国際的に活躍したい」「地元で開業したい」「家庭を大切にしながら無理なく働きたい」など、医師としてのキャリアパスを早い段階で決めておくと、今後の働き方をイメージしやすくなります。ゴールを明確にすることで、研修医期間の2年間をより有意義に過ごせるだけでなく、その後の専門医取得についても検討しやすくなるでしょう。
専門医の取得は、自身の専門性の証明になり、今後のキャリアに大きく影響します。収入アップを目的とするなら、働き方を踏まえた診療科を検討することが大切です。また、早期からゴールを考えておくことで、万が一、選んだ道が違ったと感じても、経験が浅いうちに転科などの方向転換にも対応しやすくなるでしょう。
ただし、研修医から専攻医へのキャリアパスも含め、給与額が高いだけで研修先を決めるのではなく、長期的な視点をもつことが重要です。自身が求める学びが充実しているかどうか、指導医や症例数の充実などを加味しながら、将来を踏まえた研修先を選びましょう。
さまざまな視点で情報収集を行う
職場の上級医や指導医のほか、歳の近い先輩医師や同僚など、まずは身近な人から、医師のキャリア形成や専門分野などに関する情報を収集しましょう。さまざまなキャリアの選択肢を知ることで、これからのキャリアを考える際の参考となります。
ただし、身内からの情報に偏ってしまうと、かえって選択肢が狭まる可能性もあります。院外の勉強会に参加したり、インターネットやSNSを活用したりしながら、情報収集や人脈形成を図りましょう。さらに、医師の転職を支援するサービスや、キャリア形成に特化したコンサルティングサービスなど、さまざまな媒体を活用するのもおすすめです。
ただし、研修期間は多忙になりやすく、情報収集に集中する余裕がないかもしれません。そこで活用したいのが、医師専門の転職エージェントへの登録です。転職をする意思がなくても、情報収集の手段として活用することが可能です。 どんな働き方ができるのか、どのくらいの収入アップが期待できるのかなど、「知っていること」が多ければ多いほど、将来の選択肢は広がります。これからのキャリア形成をより良いものにするためにも、なるべく多角的な情報収集を心がけ、これからのキャリアプランを検討しましょう。
研修医は学びの期間。将来の収入と働き方を見据えて土台を整えよう

研修先の基本給や、各種手当、賞与などの項目は事前に確認しておきたい項目です。また、給料が低いからといって、研修先は安易に変更できないため、後悔の少ない選択をしたいところです。
とはいえ、研修期間は学ぶ時間でもあり、収入だけで安易に所属先を決めてしまうのはおすすめできません。研修医時代は、医師としての経験を積むことに大きな意味があります。将来の収入や働き方に納得できる選択をするためにも、研修医のうちから少しずつ情報を集め、自分なりのキャリアの軸を考えてみてはいかがでしょうか。
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記事の監修者

小池 雅美(こいけ・まさみ)
小池 雅美(こいけ・まさみ)
医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。
