デジタルヘルスとは?デジタル技術の進歩が医療にもたらす4つの変化を解説|医師の現場と働き方

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デジタルヘルスとは?デジタル技術の進歩が医療にもたらす4つの変化を解説

少子高齢化が進み、高齢化社会を迎えた日本において、医療の需要は増加する一方です。医療現場では人手不足が続くうえ、医療費の増大や地域格差などが大きな問題となっています。その解決策として、注目されているのが「デジタルヘルス」の活用です。この記事では、デジタルヘルスの概要や医療業界にもたらす4つの変化、医師の働き方への影響について解説します。

〈本記事のまとめ〉

  • デジタルヘルスとは、「病気の管理や健康増進を意味するヘルスケアの分野においてデジタル技術を活用すること」を指す。
  • 医療費の増大への対応、地域間での医療格差の解消、医師の働き方改革の推進、医療データの集約による日本版FHIRの実現といった観点から医療業界で注目されている。
  • デジタルヘルスの導入で、患者さんのデータ共有や業務効率化、オンライン診療の実現による患者満足度の向上が期待される。
  • 一方で、収集したデータの信頼性を高める必要がある点や、データのフォーマットが統一されていない点が課題。

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1.デジタルヘルスとは

デジタルヘルスとは、「病気の管理や健康増進を意味するヘルスケアの分野においてデジタル技術を活用すること」を指します。デジタルヘルスは、以下の3つに分類されます。

デジタルヘルス(広義)分類 概要
デジタルヘルス(狭義) ライフスタイルや健康に関連する非医療機器
例)消費者向けアプリやスマートウォッチ
デジタルメディスン 健康に役立てるための測定や介入を行うソフトウェアやハードウェアの製品
例)デジタル診断、デジタルバイオマーカー
デジタル治療 医学的障害や病気の予防、管理するために治療的な介入を提供するもの
例)病気の予防や診断、治療を支援するソフトウェア

出典:デジタルヘルスの現状と課題- 製薬企業が取り組むにあたって -|日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会

AIやIoT、ビッグデータ解析などを取り入れたデジタル技術を医療業界で活用し、ヘルスケアの効果を高めることを目的として推進されるものです。医療機関で利用できるもののほか、個人が健康管理のために使用するツールまでさまざまあります。具体的には、現状において以下のようなシステムが開発されています。

  • 心拍数を管理するスマートウォッチ
  • 診療記録を支援するシステム
  • 診断をサポートするシステム
  •  

今後の技術発展に伴い、医療の質を向上させ、医師の業務を効率化させるために、より高精度なデジタルヘルスの開発が進められると考えられます。

2.医療業界でデジタルヘルスが注目される背景

今、なぜデジタルヘルスが注目されているのでしょうか。その背景として、以下のような点が考えられます。

2-1.医療費の増大への対応

超高齢社会を迎えた日本では、医療費の増大が大きな課題となっています。厚生労働省が公開している「令和4年度医療費の動向」によると、令和4年度の概算医療費は46.0兆円。令和元年と比較して5.5%の増加となりました。

デジタルヘルスの活用を通して、国民のヘルスリテラシーが向上し、治療機会の減少による医療費削減が期待されます。

2-2.地域間での医療格差の解消

医療業界の人手不足が続くなか、特に深刻な状況にある地方があります。厚生労働省の資料「医師偏在対策について」によると、2008年からの6年間で人口10万人対医療施設従事医師数の全体を見ると10%増加しましたが、過疎地域医療圏に限定すると24%減少しています。

デジタルヘルスの活用により、オンライン診療が普及したり、オンライン手術などが実施できたりするようになれば、医療過疎とされる地域であっても医療がスムーズに継続でき、医療格差の改善につながると考えられます。

2-3.医師の働き方改革の推進

厚生労働省の資料「医師の勤務実態について」によると、2019年時点で、週の労働時間が80時間を超える医師は、全体の10%に該当すると報告されています。医師が長時間労働になりやすい要因として、業務量の多さや当直等による拘束時間の長さなどが挙げられます。

診療記録を支援するシステムや診断サポートシステムといったデジタルヘルスの開発は、医療現場の業務効率向上につながります。労働時間の軽減により医師の働き方改革の実現に寄与するでしょう。

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2-4.医療データの集約による日本版FHIRの実現

日本版FHIRとは、患者さんの過去の診療歴や処方せんのデータを複数の医療機関で共有するシステムで、医療情報交換の仕組みを指します。

日本版FHIRは、医療の質向上につながるものですが、実現するためには、まず医療情報を集約する必要があります。そのために役立つのがデジタルヘルスです。デジタルヘルスツールを利用して、患者さん個々が自発的に情報を入力すれば、情報の蓄積速度は上がるでしょう。

さらに、医療情報の蓄積はAIホスピタル構想への基盤となり、PHR(個人健康情報記録)の整備にもつながります。

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3.デジタルヘルスの導入で医療業界はどう変わる?

では、デジタルヘルスが導入されることで、医療業界にはどのような変化があるのでしょうか。代表的な3つの例を紹介します。

3‐1.患者さんのデータがスムーズに共有されるようになる

心拍数や血圧などを測定できるスマート機器が普及し、多くの人が利用を始めています。こうしたデータを集約することは、上述したように日本版FHIRの実現につながり、早期治療の実現や、医療機関同士の連携の強化が見込めます。

3‐2.医療従事者の業務効率化

医療従事者の業務を一部AIやシステムにゆだねることで、業務の効率化を図れます。AIを活用した診療記録やインフォームドコンセントなどの書類作成、患者さんに合わせた治療の選択などの支援により、医師の業務負担が軽減できるでしょう。デジタル化された情報は共有しやすい形になるため、タスクシフティングが進めやすい環境になると考えられます。

3‐3.スムーズな医療提供による患者満足度の向上

デジタルヘルスの一環であるオンライン診療が一般に定着すれば、患者さんは移動の負担がなく受診できるようになります。疾患によっては難しい場合もありますが、待ち時間や移動時間が減ることで、患者満足度の向上につながるでしょう。医師にとっても、オンライン診療は予約が前提となるため、スケジュール管理しやすくなるといった利点があります。

4.デジタルヘルスの活用による課題

デジタルヘルスの導入はメリットがある一方で、まだまだ課題も残ります。代表的なものを2つ解説します。

4‐1.データの信頼性の構築

デジタルヘルスが普及すれば、多くの医療データを収集できるようになります。その一方で、集まった情報に確実性がない可能性があります。というのも、消費者が利用するデバイスには品質にばらつきがあり、加えて、個々の基礎データが必ずしも入力されているとは限らないからです。

また、抱える疾患や体調などの正確なデータがなければ、解析結果に偏りが出てしまいます。医療で活用するには、データの信用性を高める必要があるでしょう。

4‐2.取得するデータの標準化が難しい

異なるデバイスやアプリなどから収集したデータは、フォーマットが統一されておらず、現状では、データを統合することすら難しい状況にあります。

また、同じ疾患名でも医療機関や個人によって表現や表記が異なるケースもあるため、データを標準化するための基準を決めなければいけません。しかし、データの標準化を進めるためにも、多くのデータが必要であり、開発までに時間がかかる可能性があります。

5.デジタルヘルスの導入事例

続いて、実際のデジタルヘルスの導入事例を見てみましょう。具体的なサービス例を挙げて紹介します。

5‐1.説明業務支援サービス「DICTOR®」

凸版印刷と北海道大学病院が共同開発した「DICTOR®」は、医師のデジタルクローンを生成し、患者さんやその家族に医療行為などの説明を行う動画を自動生成するシステムです。デジタルクローンとは、特定の人物をデジタル化したもので、いわゆる「アバター(デジタル上での分身のような存在)」といえます。

「DICTOR®」は、あらかじめ登録された医師の動きや声を活用し、テキスト入力された内容を説明動画に変換してくれます。一度登録すれば、テキスト内容を変えるだけで、簡単に説明動画が作れるようになるため、患者さんや症状に合わせた個別の対応が可能です。これまで医療従事者が担ってきた説明業務を、デジタルで支援してくれるツールといえます。

参照:凸版印刷と北海道大学病院、デジタルクローン生成技術を活用した医療従事者の説明業務支援サービス「DICTOR™」を開発|TOPPAN

5‐2.インフルエンザ検査機器「nodoca」

アイリス株式会社は、AIによる画像診断技術を活用して、咽頭画像と体温などからインフルエンザを見分けられる機器を開発しています。インフルエンザ検査機器「nodoca」を使えば、咽頭の画像と問診情報のAI解析から、診断を補助してくれます。

従来、インフルエンザの診断には、検査キットに加え、咽頭の診察が行われていますが、「nodoca」を使えば、医療関係者との接触が最低限に抑えられ、感染リスクを軽減できる可能性があるでしょう。なお「nodoca」を用いた診断は、2022年12月1日から保険適用となっています。

参照:日本初のAI新医療機器nodoca|アイリス株式会社

6.より質の高い医療の提供に向けて、デジタルヘルスを活用しよう

デジタルヘルスは、デジタル技術を活かし、病気の予防や重症化を防ぎながら、医療の質向上を目指すものです。医療費削減や地域の医療格差など、日本が抱える問題の解決も期待されるほか、医療データの収集による診断サポートで医療現場の業務負担軽減につながると考えられます。今後、新たなデジタルヘルスが開発され、身近で活用していくことも増えるかもしれません。最新情報をチェックしながら、デジタルヘルスの導入に備えましょう。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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