訪問診療と往診の違いとは?【医師の勤務事情】|医師の現場と働き方

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訪問診療と往診の違いとは?【医師の勤務事情】

「高齢社会白書」(内閣府、2018年)の発表により、日本人の健康寿命の伸び率は平均寿命の伸び率を上回るペースで延伸していることが明らかになりました。また2017年度末には要介護(要支援)認定者数が640万人を超え(厚生労働省「介護保険事業状況報告」、2017年度)、在宅医療のニーズがますます高まっています。今回は在宅医療の中心を担う「訪問診療」や「往診」について医師の勤務事情を紹介します。

<この記事のまとめ>
・訪問診療と往診の違いは診療が「計画的」かどうか。訪問診療は、計画的に診療を行い合併症予防や栄養状態の管理を行う。往診は、急変時など普段とは異なる特別な診療が必要な際に行う。
・訪問診療、往診ともに他領域に比べて優遇された診療報酬が設定されている。
・都市部では在宅医療を担う医師のニーズが特に高く、高額の報酬を提示する医療機関もある。

1.訪問診療と往診の違い

訪問診療も往診も、在宅医療の中心となる重要な役割を果たしています。一般的にこの2つは似たような業務だと認識されているようですが、実は明確な違いがあるのです。

まず、訪問診療は患者さんの病状にかかわらず在宅での診療を計画的に行うことです。つまり、発熱などの症状がある時にだけ医師が出向いて診療をするのではなく、定期的に診察に訪れて患者さんの健康管理をしていく診療形態です。

訪問診療の目的は主に持病の治療ですが、栄養状態の管理や栄養状態の悪化による褥瘡の予防、肺炎などの二次的な合併症の予防、廃用症候群の予防なども含まれます。また、訪問看護や訪問リハビリテーションのスタッフと患者さんに関する情報を共有し合ったり、急変時の入院対応が可能な近隣医療機関との連携体制を整えたりすることが求められる点も特徴の一つです。

一方、往診とは患者さんの急変時など、普段と異なる特別な診療が必要な時に限定して行う在宅医療のことです。つまり、あらかじめ計画して訪問するのではなく、不定期で突発的に生じる患者さんの急変に対応するものです。往診は患者さんの急変対応が主な目的ですから、合併症を予防する観点からの医療は原則的に提供しないことが特徴です。

2.訪問診療と往診の診療報酬

訪問診療と往診の診療報酬(2019年10月の消費税率引き上げに伴う改定後)にはどのような差があるのか見てみましょう。例えば、「在宅患者訪問診療料(I)1」※ は1日当たり888点です(ただし、同一建物住居者以外の場合。同一建物住居者の場合は1日当たり213点)。一方、往診料は720点であり、訪問診療のほうが診療報酬自体は高く設定されています。

しかし、往診では夜間や深夜、休日に対応する場合などに手厚い加算が設定されています。訪問診療は計画的な診療ではあるものの、急変時は24時間を通して対応することが求められていながら、訪問時間を問わず診療報酬は一定とされています。

往診料における加算の点数は、往診を行う医師が属する医療機関の種類によっても異なります。例えば、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院の中で特に厚生労働大臣が定める医療機関(病床あり)の医師が対応する場合、緊急往診加算850点、夜間・休日往診加算1700点、深夜往診加算2700点と高額の加算が得られます。このように、訪問診療や往診に対する診療報酬は、それ以外の領域に比べてかなり優遇されているといえるでしょう。

※いわゆる従前の在宅患者訪問診療料で、在宅で療養を行っている患者さんであって通院が困難なものに対して、当該患者さんの同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合(有料老人ホームなどに併設される保険医療機関が、当該有料老人ホームなどに入居している患者さんに対して行った場合などを除く)に算定できる。

3.訪問診療と往診の年収事情

東京や大阪などの大都市では介護施設が慢性的に深刻な不足状態にあるため、訪問診療の需要が極めて高く、高額の報酬を提示して医師を集める医療機関もあります。年収2,000万円以上を得ている医師さえ、珍しいとはいえないほどです。しかし、訪問診療は24時間体制で行うため、夜間や休日を問わずオンコールを求められるなど厳しい労働環境にあることも確かです。

一方、往診に専門的に従事する医師は少なく、ほとんどが医療機関に所属して緊急の往診要請に応じている状況です。そのため、勤務時間外に往診する場合は時間外手当などがプラスされるものの、所定の勤務時間内に往診する場合は手当てが付かないケースもあります。比較的恵まれた診療報酬の設定を考慮すると、勤務時間内の往診についてもう少々優遇されても不思議ではなく、今後改善されていく可能性が考えられます。

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4.訪問診療・往診の働き方と求人ニーズ

訪問診療に従事する医師の働き方は、訪問診療を主とする医療機関に所属し、計画に沿って患者さんや施設を訪問して診療を行うものです。時間外労働や日当直は基本的に発生しませんが、勤務条件によっては24時間体制のオンコールに対応する医師もいます

訪問診療の需要は地域によって異なります。特に在宅医療資源が不足している都市部では訪問診療を担う医師の需要が高いため、高水準の給与で医師を募集する医療機関が多くみられます。また、平日の限られた曜日や時間帯のみなど、育児中の女性医師などにも働きやすい勤務条件で、なおかつ高水準の給与を保証する求人もあるので、地域を絞れば好条件の職場を見つけることができるでしょう()。

往診の場合は、前述したように、それのみを専門的に行っている医師は少ない現状です。往診に対応している医療機関に勤務しながら、必要に応じて往診する働き方が一般的となります。近年では訪問診療だけでなく往診の需要も高まっていることから、求人の段階から「往診対応可能」の条件を付けて医師を募集する医療機関もみられます。

5.訪問診療・往診に必要なスキルと資格

訪問診療、往診とも患者さんの居宅を訪れて診療を行うため、患者さんやご家族と密接に関わる機会が外来診療よりも多い点が特徴です。特に、寝たきりで自身の症状を訴えることができない患者さんの場合は、ご家族から得られる情報が診療のために重要であり、普段から良好な関係を維持しておくことが必須となります。そのため、訪問診療や往診に従事する医師は、コミュニケーションスキルの高さが求められることになるでしょう。

また、訪問診療や往診では、従事する医師の専門にかかわらず、内科的疾患から外傷、皮膚疾患まで様々な病気に対応し、迅速に正しい判断を下さなければなりません。医学的な知識はもちろんのこと、ある程度の経験や実績があることも大切です。転職を希望する場合は専門とする科の専門医資格だけでなく、日本プライマリ・ケア連合学会認定の家庭医療専門医、日本在宅医学会認定の在宅医療認定専門医といった資格も所持しておくと高く評価されるでしょう。

PROFILE

執筆/成田 亜希子(なりた・あきこ) 
 
医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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