確定申告が必要なのはフリーランス医だけだと思っていませんか? 実は税制についてよくわかっていない、でも今さら聞けない……という医師のために、勤務医でも注意すべき確定申告の基本について分かりやすく解説します。
そもそも確定申告とは?

確定申告とは、1年間の所得にかかる税金額を計算して支払うための手続きのことです。実際に支払わなければならない所得税額(および復興特別所得税額)は、1年間の収入から経費、そして医療費や生命保険料などの各種控除額を差し引いて算出します。
サラリーマンの場合は、所得に応じた税額が毎月の給料から天引きされ、その上で年末に扶養控除や生命保険控除などを計算して正しい税額を確定し、天引き額を調整する「年末調整」が行われます。
これにより、サラリーマンは確定申告をしなくても勤務先が正しい税額を税務署に納めてくれるので、税金の払い忘れや払いすぎといったトラブルは基本的には起こりません。医師も例外ではなく、勤務医の場合は勤務先の病院等が正しく納税してくれるので安心です。
勤務医でも確定申告が必要な場合

前項で見てきたように、勤務医はいわばサラリーマンであるため、原則的には確定申告をする必要はありません。しかし、例外的に、以下の条件に当てはまる場合などは、たとえ勤務医であっても確定申告をする必要があります。
・2カ所以上の事業者から給与を受け取っていて、主たる給与以外の所得の合計が20万円を超える場合
・給与や退職金以外の所得の合計が20万円を超える場合
・医療費控除を受ける場合
・住宅ローン控除を初めて受ける場合
・ふるさと納税の納付先自治体が6カ所以上の場合
・年間の給与収入金額が2000万円を超える場合
医師は主たる勤務先とは他の医療機関でアルバイトをしていることも多いため、「2カ所以上の事業者から給与を受け取っていて、主たる給与以外の所得の合計が20万円を超える場合」の条件に当てはまる人が少なくありません。
勤務医だからと油断せず、確定申告をする必要がないかしっかりと確認するようにしましょう。うっかり確定申告を忘れてしまうと、後々になって痛い目を見る可能性もあるからです。
しないと科されるペナルティー

確定申告の目的は、「正しい税額を計算して所定期間内にその額を納税すること」です。すでに源泉徴収などで納めていた金額が正しい税額よりも少なければ、不足分を納税します。逆に、正しい税額より多い金額をすでに納めていた場合は、差額が還付されるという仕組みになっています。
1.還付を受けられるケース
各種控除により税金が還付される場合は、確定申告が遅れても罰則などはなく、後からでも還付を受けることが可能です。ただし、還付申告できる期間は無期限ではなく、その年の翌年1月1日から5年間なので注意しましょう。
2.追加の納税が必要なケース
うっかり確定申告を忘れてしまったとき、問題となるのがこのケースです。期限である3月15日までに申告・納税しなかった場合、税金を「滞納した」とみなされてペナルティーが科されることになります。
具体的には、無申告加算税や延滞税が課されるばかりか、悪質とみなされた場合は重加算税が適用され、納付すべき税額の40%を追加で支払わなければならないこともあります。
ただし、申告期限後でも、一定の条件を満たせば無申告加算税を課されなかったり、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告すれば減額されたりする制度もあります。もちろん、早く納付すればするほど延滞税も少額で済みます。確定申告を忘れてしまっても、それを「なかったこと」にするのではなく、できるだけ早期に正規の手続きを行うことが大切です。
確定申告の期間と手順

確定申告の対象期間は毎年1月1日~12月31日まで1年ごとの区切りです。申告期間は翌年の2月中旬から1カ月程度。2018年分の確定申告を行う場合は、2019年2月18日(月)~3月15日(金)の間に確定申告書を税務署へ提出し、必要に応じて納税する必要があります。
確定申告の必要書類は国税局などのウェブサイトからダウンロードできるほか、税務署でも一式を配布しています。主たる職場とアルバイト先から発行された源泉徴収票などを準備し、合計所得やすでに納税した額、各種控除額などを考慮の上、正しい納税額を算出して記入します。
確定申告は複雑そうに見える作業ですが、国税局の「確定申告書等作成コーナー」で、必要な数字を入力すると自動的に税額が計算されるプログラムを利用すれば簡単です。
税務署への提出方法はインターネット(e-Tax)、郵送、持参から選べますが、書類の記載事項に疑問や不安がある場合は、税務署で相談するために持参すると安心です。納税の期限も3月15日(金)までですから、申告書を提出した後も「うっかり」忘れないよう注意しましょう。
文:ナレッジリング
<参考>
国税庁ホームページ