放射線診断専門医は、ドクターズドクターとして臨床医の診断を支える存在です。直接、患者さんと関わる機会は少ないものの、臨床現場での正確な診断や治療方針の決定を支えています。今回は、現役放射線診断専門医の監修のもと、放射線診断専門医を目指すために必要なスキルや資格、仕事内容、給与事情などについてリアルな情報をお伝えします。
- 放射線診断専門医とは、検査画像から患者さんの病態や状況を判断する専門家。患者さんを直接診察することはほとんどなく、主治医や病院に所見を伝える。
- 放射線診断専門医になるには、まず「放射線科専門医」の資格を取得することが必須。その後研修や認定試験を経て放射線診断専門医になることができる。
- 放射線診断専門医は、専門スキルで臨床の現場に貢献できる、さまざまな診療科と連携した治療に携わることができるというやりがいがある。働き方を柔軟に選べるのも魅力。
目次
1.放射線診断専門医とは
2.放射線診断専門医になるには
3.放射線診断専門医の仕事内容
3-1.画像読影
3-2.IVR(Interventional Radiology)
3-3.適切な撮像の指示と造影剤の投与
4.放射線診断専門医に必要なスキル・資格・経験
5.放射線診断専門医のやりがい・魅力
5-1.臨床医師の診断に貢献できる
5-2.さまざまな診療科と連携した治療に携われる
5-3.患者さんごとに効果的な治療へと導くことができる
6.放射線診断専門医の働き方
6-1.病院に所属して働く場合
6-2.在宅ワーカーとして働く場合(在宅勤務/遠隔画像診断)
7.放射線診断専門医の給与事情
7-1.医師全体の平均年収よりも低い傾向
7-2.アルバイトやパートでも稼げる
7-3.年収は働き方次第で大きく変わる
8.放射線診断専門医としてのキャリアを考えるなら
1.放射線診断専門医とは

放射線診断専門医は、主治医から依頼された検査画像から、患者さんの病態や状況を判断し、その所見を提供する専門家です。患者さんを直接診断することはほとんどなく、基本的に主治医や病院から依頼を受けて、その都度、対応します。
ただし、場合によっては放射線診断専門医ががんや出血、梗塞などの患者さんに対するIVR(Interventional Radiology:画像下治療)を実施するケースもあります。
放射線科の専門医には、読影のプロである診断専門医と治療専門医の2種類があります。放射線治療専門医は、その名のとおり、放射線治療を専門とするもので、治療のなかで放射線を用いる以外は、一般の臨床医と同様に外来や病棟を受け持つケースがほとんどです。患者さんを診断し、主治医と連携しながら必要な治療を施します。どちらも放射線科の領域ではあるものの、診断専門医と治療専門医では、業務内容が大きく異なります。
2.放射線診断専門医になるには

放射線診断専門医を目指すには、まず、日本医学放射線学会の規定に沿った研修を受け、規定の症例数を経験したうえで「放射線科専門医」の資格を取得する必要があります。
放射線科専門医の受験資格は、初期研修2年後、総合修練機関または修練機関にて3年以上の放射線科研修を受けること(最低1年間は、総合修練機関において研修指導医のもとで臨床研修すること、大学院生・研究生は在学期間の一部または全部が研修期間として認められる)が求められます。また、申請時において3年以上放射線学会正会員でなければいけません。
放射線科専門医を取得したら、放射線治療専門医、もしくは放射線診断専門医いずれかを選択できます。放射線診断専門医になるには、その後2年間の診断の研修を受け、認定試験に合格しなければいけません。なお、放射線診断専門医の資格は5年毎に更新が必要です。
上記でご紹介したのは、日本医学放射線学会認定となる専門医資格ですが、もう1つ、日本専門医機構認定の放射線科専門医もあります。2018年度より、学会認定を専門医機構へ移行する手続きが開始されています。更新時期に合わせて移行の手続きを行いますが、管轄が異なるため注意が必要です。
3.放射線診断専門医の仕事内容

では、放射線診断専門医はどのような仕事を行っているのでしょうか。主な3つを紹介します。
3-1.画像読影
代表的な業務として、画像の読影があります。各診療科の医師から依頼されたX線写真、CT、MRI、超音波検査などを読み取り、診断結果をレポートにまとめて依頼元の医師や病院に提出します。基本的にデスクワークが中心となりますが、読影の結果が患者さんの診断や治療に大きな影響を与えるため、緊張度の高い業務といえます。
3-2.IVR(Interventional Radiology)
放射線診断専門医は、画像診断の技術を利用した低侵襲な治療の1つとしてがんや出血、梗塞などの患者さんにIVRを実施することもあります。IVRは、X線透視、X線CT、超音波などの画像診断装置を用いながら、穿刺部位から挿入したカテーテルや針をはじめとするデバイスを目的部位に誘導し、局所治療を行う方法です。局所麻酔で実施できるため、外科的手技に比べて、侵襲性が低い治療といえます。
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3-3.適切な撮像の指示と造影剤の投与
画像の読影だけでなく、撮像においてもプロフェッショナルなスキルを発揮します。CTやMRIなどの撮像時に目的部位や臓器に合わせた撮像方法を指示するほか、造影剤の投与や、副作用が発生した場合などの緊急対応、主治医のコンサルトなどの業務も担います。
4.放射線診断専門医に必要なスキル・資格・経験

放射線診断専門医として活躍するには、放射線科専門医の資格の取得が欠かせません。
また、医療施設が読影加算を得るためには常勤として、専門医の資格取得者または資格を取得していない場合では10年以上の経験が必要です。サブスペシャルティをもっているとキャリアアップや転職の際にも強みになるため、学びを深めたり、スキルアップしたりするために国外留学して上級医師のもとで経験を積むのもよいでしょう。
さらに、専門医の取得に加え、IVR専門医や肺がんCT検診認定医師、検診マンモグラフィ読影医師等の認定を受けると活躍の場が広がります。加えて、研修医の期間に外科、内科、小児科、婦人科などを経験しておくと医師が必要とする情報を理解できるため、対応がスムーズになるでしょう。
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5.放射線診断専門医のやりがい・魅力

では、放射線診断専門医のやりがいや魅力には、どのようなものがあるのでしょうか。
5-1.臨床医師の診断に貢献できる
放射線診断専門医による所見は、患者さんの治療や診断を担う主治医にとって、正確な診断を促す重要な根拠となり、その後の治療を大きく左右するものです。ドクターズドクターといわれるように、影ながら患者さんの治療に貢献できるのが大きなやりがいといえるでしょう。また、主治医が想定していなかった疾患を発見したり、より良い治療法が選択できるように導いたりすることもやりがいにつながります。
5-2.さまざまな診療科と連携した治療に携われる
放射線診断専門医は、内科、外科を問わずさまざまな診療科と関わります。また、救急医療では素早く正確に診断するスキルが求められることもあり、専門性の高さが重視されます。多くの診療科と連携して患者さんの治療に携われるのも、魅力のひとつといえるでしょう。
5-3.患者さんごとに効果的な治療へと導くことができる
放射線診断専門医は、指定された病変以外をどう読み込んでいくかが腕の見せどころです。例えば、腹部のがん手術予定の患者さんの場合では、過去の手術歴があれば癒着が多い可能性の部位を指摘したり、大動脈の石灰化が強い場合は血圧・血流のコントロールの注意喚起を促したりすることができます。
また、肺気腫の所見が認められる場合は、手術前後の呼吸器管理に必要な情報を提供することも可能です。指定された病変以外を読み込むことで偶然、違う病変を見つけることができる場合もあり、患者さんに効果的な治療へと導くことができる点も放射線診断専門医の魅力といえます。
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6.放射線診断専門医の働き方

放射線診断専門医は、病院に所属して働く場合と、フリーランスとして複数の医療機関を掛け持ちしたり、在宅で読影業務を行ったりする場合があります。雇用先との契約次第で、フレキシブルな働き方ができるのが特徴です。
6-1.病院に所属して働く場合
医療施設の勤務医として、放射線科に所属し、主治医の指示に合わせて画像診断やIVRなどに対応します。日勤では各科のカンファレンスに参加するほか、救急外来があれば至急の読影を依頼されます。当直の有無については施設によって異なりますが、緊急IVRや病棟管理を担当するケースもあるでしょう。常勤だけでなく、パートとして自分の都合のよい時間帯に出勤してノルマをこなすケースもあります。
6-2.在宅ワーカーとして働く場合(在宅勤務/遠隔画像診断)
放射線診断専門医は、患者情報と画像データがあれば、場所を選ばずに仕事ができるのが特徴です。Webが使える環境と画像を表示できるレベルのモニターがあれば遠隔診断ができます。電子カルテと読影システムを自宅に設置すれば、産前産後や育児中、留学中、自身が療養中などの状況下でも、キャリアを途切れさせることなく、ワークライフバランスを重視した働き方ができます。
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在宅の場合、フリーランスとして各病院と契約するか、医療施設と放射線診断専門医をつなぐ遠隔読影専門の会社を通じて依頼を受けるといった方法があります。また、診断専門医が複数人集まってチームを作り、読影を請け負う形の開業も見られます。
7.放射線診断専門医の給与事情

放射線診断専門医の給与事情について見てみましょう。
7-1.医師全体の平均年収よりも低い傾向
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、全国の放射線科医の平均年収は1,103.3万円。これは、調査対象である全診療科の医師の平均年収1,261.1万円よりも150万円以上も低い結果です。
放射線診断専門医は、他の診療科のように当直を一定量こなす必要や手術ごとの報酬アップなどがなく、残業も少ない傾向にあるのが影響しているのでしょう。
実際のところ、放射線診断専門医は、常勤と在宅作業、単発のアルバイトなどを組み合わせて勤務する場合も多いため、どのような働き方をするかによって年収は変わってくると考えられます。
7-2.アルバイトやパートでも稼げる
放射線診断専門医の働き方として、IVRの対応や読影などをアルバイトやパートで行うケースも少なくありません。IVRができる医師は時給や単価が高い傾向にあり、単発で依頼を受ける場合には、時給もしくは1件単位の報酬です。IVRに自信がなければ、読影件数をこなして収入アップを目指す方法もあります。
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常勤とアルバイトを組み合わせる場合は、常勤終了後にアルバイト先に立ち寄ってノルマをこなす働き方や、在宅で対応する働き方があります。現在は、遠隔読影に対応する施設も増えており、自宅で育児、介護、家事などを行いながら読影を行うという働き方もできます。
7-3.年収は働き方次第で大きく変わる
放射線診断専門医は、年収を重視するか、ワークライフバランスを重視するかによって働き方を選択できるのも魅力です。前述の平均年収は比較的低めの水準ですが、常勤に加えてアルバイトを行うなどしているので、基本的には生活に困ることはありません。一方で、パートやアルバイトのみの勤務をする場合は、ノルマさえ終われば早く帰れるため、プライベートな時間を確保しやすい傾向にあります。
年収を上げるという目的の場合にも働き方の選択肢があります。あまり多くの件数をこなせない場合は時給で働き、ハイスピードで読影できるなら単価で請け負ってさっと業務を終わらせるなど、スキルに合わせて収入も上げる方法を工夫できます。
8.放射線診断専門医としてのキャリアを考えるなら

放射線診断専門医は、常勤だけでなく在宅ワークの選択が可能で、ワークライフバランスを重視した働き方ができるのが魅力です。育児や介護、自身の療養などを経験してもキャリアを中断することなく働き続けられます。放射線診断専門医の資格取得を検討中の方や放射線科への転科に興味がある方は、キャリアを実現できる職場について医師専門の転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。自分に合った働き方を考えてみましょう。
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