医師の残業時間の上限は?医師の働き方改革の要点を解説|医師の現場と働き方

医師の残業時間の上限は?医師の働き方改革の要点を解説

夜間や休日のオンコール対応が伴う医師は、残業時間が多いとされる職業のひとつです。医師は一般のサラリーマンとは異なり、労働基準法による時間外労働の上限規制が適用されていませんでした。法律の規定に従えば、病院側は無制限に雇用する医師を働かせることも可能だったといえます。

しかし2024年4月1日から医師にも時間外労働の上限規制が設けられます。業務の特殊性を鑑み、会社員の規制とは内容が異なることに注意が必要です。

今回は医師の残業事情や、新たに始まる残業時間の上限規制について解説します。過重労働で今の働き方に疑問を抱いている医師の方は、ぜひ参考にしてください。

〈この記事のまとめ〉

  • 病院に勤める医師の26.3%が週50~60時間の労働を強いられている
  • 医師は一般の会社員と異なり、労働基準法による労働時間の制限が適用されていなかった
  • 2024年4月1日から医師に対する残業時間の上限規制が始まる

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1.医師の残業事情

一般的に医師は多忙で、労働時間が長くなりがちな仕事というイメージを持たれています。実際に労働時間はどの程度なのか気になる人もいるでしょう。まずは医師の平均労働時間や、残業時間について解説します。

1-1.医師の平均労働時間

「令和元年医師の勤務実態調査」によると、病院勤務医の26.3%が週50〜60時間の労働をしています。週70〜80時間の医師も10.4%いるため、労働時間が長い仕事と分かります。

仮に週80時間の労働を一カ月続けたとしたら、月の労働時間は300時間を超えます。厚生労働省が定める過労死ラインの目安は月80時間以上の残業です。この基準を超えた労働者が脳疾患や心臓疾患で死亡した場合、労災の支給対象とされます。

医師の中には過労死ラインをゆうに超える時間働き続ける人もいるほどです。人命救助という業務の特殊性を考慮しても、心身への負担が大きい過酷な働き方であることが見えてきます。

※参考:厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査」

1-2.医師の残業時間の上限

2023年9月現在、医師の残業時間の上限規制はありません。真摯に業務をこなした結果、200時間や300時間働いたとしても、法律上は問題がないことを意味します。一方、民間企業で働く会社員には労働基準法に基づく残業時間の上限規制が適用されています。

病院は扱う業務の性質上、24時間休みなく患者さんを受け付ける体制を整備しなくてはいけません。したがって一般のサラリーマンと同等のルールに馴染まないのです。

 

1-2-1.医師の時間外労働について

医師には時間外労働の上限規制がなく、法律上、病院側は雇用する者を何時間でも働かせることが可能です。対照的に一般企業で働くサラリーマンには、36協定に基づく週45時間・年360時間の残業時間の上限があります。

そもそも労働基準法では1日8時間・月40時間が法定労働時間です。上記を超えて従業員を働かせるには、労働基準監督署との間で36協定を締結する必要があります。

繁忙期等の理由で36協定の上限を超える可能性がある場合、例外的に月100時間未満、直近2ヵ月〜6ヵ月間の平均残業時間が80時間以内、年720時間以内の範囲で引き延ばすことが可能です。

何の規制もない医師と比較して、法的な保護を受ける会社員は心身に異常を来たす程の長時間労働は起きにくいといえます。

2.医師が残業時間が多い理由

医師の残業時間が多いのは深夜の当直が大きく関係しています。途中で休憩時間を挟むといっても、急患が運び込まれたり、入院患者に急変が生じたりしては息つく暇もありません。当直明けで一睡もせず、疲れ切った状態で翌日の診察に励む医師もいるほどです。

外科医の場合、何時間にもおよぶ手術の執刀が重なって、長時間労働が余儀なくされることもあります。医療体制は24時間365日あるのが当たり前なので、最前線に立つ医師の休日・深夜労働は避けられません。

残業時間を延ばしているもうひとつの要因は、書類作成等の事務作業です。医師の中でも、時間外労働が起きる要因として「診断書やカルテ等の書類作成」と挙げた方は少なくありません。

日中は次から次へと来院する患者さんの診察で手が回らず、人がいなくなった後で事務作業を行うしかない状況なのです。

3.2024年4月1日以降の医師の時間外労働について

近年の働き方改革の影響を受けて、ついに医師にも労働時間の上限規制が導入される運びとなりました。2024年4月以降、一般のビジネスパーソンと同様、原則的な残業時間の上限が月45時間・年360時間とされます。しかし業務の特殊性を理由に、一部に例外的な措置が設けられるのが違いです。医師の時間外労働にかかる法改正の詳しい内容をみてみましょう。

3-1.月45時間超の上限がない

一般的な規制と異なり、月45時間を超える月の回数制限がありません。医師は臨時的な業務が発生する時季や頻度が予想しにくいことを考慮しての措置です。サラリーマンの場合、残業時間が月45時間を超える月は6回までの制限があります。

3-2.複数付き平均80時間以内の規制がない

直近2ヵ月〜6ヵ月で平均80時間以内の上限規制がないのも注意しましょう。医療は公共事業の一種と考えられ、年中無休でサービスを提供する必要があるといえます。残業時間の調整が難しい仕事のため、繁忙期等を考慮した例外の適用を受けられないのです。

3-3.月100時間超が許される場合もある

一般的な残業規制では、臨時的に月100時間未満の範囲での残業が認められています。いかなる場合でもこの基準を超過した労働は認められません。医師の場合、面接指導を受けることで、100時間を超えて残業することが可能になります。

3-4.年間の上限時間にA水準、B水準、C水準がある

医師に対する上限規制の大きな特徴は、残業の上限時間がレベル分けされており、A水準・B水準・C水準の3つの水準があることです。

●A水準:月100時間未満/年間960時間以下
●B水準/C水準:月100時間未満/年間1,860時間以下

すべての医療機関に勤める勤務医に適用される原則的な基準がA水準です。画一的に上記の基準を適用すると、地域差の影響や夜間時の医療体制の確保が難しくなったり、集中的な技能の習得が困難を極めたりするリスクがあります。

そこで特例水準として認められたのがB水準ならびにC水準です。B水準は地域医療暫定特例水準とも呼ばれ、救急機関や救急車の年間受け入れ台数が1,000台以上などの基準を満たした医療機関のみ対象です。

C水準は高度技能の習得や臨床研修に用いられる病院が該当します。A水準以外の適用を希望する医療機関は、都道府県に対する申し出が必要になります。

特例基準ごとに取り組むべき健康確保措置の内容が異なるのも特徴です。A水準は「連続勤務時間の上限が28時間まで」「勤務時間インターバルとして9時間の確保」「代償休息」の取得が努力義務とされます。

代償休息とはやむを得ない事情で連続勤務時間やインターバルの措置を導入できない場合、代替措置として与えられる休暇です。B水準では上記3つが努力義務ではなく義務とされ、C水準ではさらに研修医の連続勤務時間が24時間に制限されます。

4.医師も残業代を請求することができる

医師の給与体系には固定残業代制や年俸制が導入されることから、一般の企業と異なり、残業代が支給されないと考える人もいます。しかしこの認識は誤りで、労働契約で決められた業務時間を超える分は、医師でも残業代の請求が可能です。固定残業代制と年俸制における残業代について解説します。

4-1.固定残業代制

固定残業代制とは、事前に定めた残業時間分を反映した金額を毎月の給与として支給する制度です。固定残業代を超過した残業が発生した時は、超過分を別途受け取る権利が生じます。

月30時間の固定残業代で労働契約を交わした場合、実際の労働時間が40時間なら10時間分の割増賃金を請求できます。固定残業代制の導入にあたっては、通常の労働時間の賃金と、残業時間分の賃金を区別して表記しなくてはいけません。

月給70万円(ただし固定時間分30万円を含む)とあれば問題ないのですが、月給70万円(ただし固定時間分を含む)との曖昧な記載は認められません。違法な契約に基づく固定残業代は無効なので、未払いの残業代が生じている可能性も疑われます。

4-2.年俸制

事前に定めた年俸に基づき、毎月一定の報酬が支払われる場合、残業代はもらえないと思いやすいでしょう。年俸制とはいえ、時間外労働や賃金を定めた労働基準法が適用されるのは同様です。

時間外労働分の賃金を請求するのは労働者のれっきとした権利です。年俸に残業代が含まれるのが明確、基本給と残業代が区別できる場合、年俸で支給される金額の一部を時間外労働で生じた分との一括支給も認められます。

上記のケースに該当しない場合、勤務先が「年俸制だから残業代は支給しない」と主張してきた時は違法の可能性が高いです。

5.医師の残業代を計算する方法

勤務先がまっとうに給与を支払っているか確認したい場合、自分で残業代を計算してみましょう。医師の残業代は「基礎賃金÷所定労働時間×割増率×残業時間」で計算できます。月給80時間の者が月40時間残業した時(所定労働時間160時間)の計算式は「80万円÷160×1.25×40」=25万円です。

基礎賃金には基本給が該当し、家族手当や通勤手当、住宅手当などの各種手当は除外します。また1ヵ月を超える期間ごとに支払われた賃金および臨時に支払われた賃金も同様です。

割増率とは法定労働時間である月8時間・週40時間を超えて働いた場合、超過分の賃金の算出時に乗じる割合です。給与明細と通帳の支給額を見比べて、計算結果と実際の支給額が異なるなら勤務先に確認を入れましょう。残業代の消滅時効は2年です。支給を受けてから2年以内であれば、過去に働いた残業代を取り戻せます。

6.医師の宿直に残業代は出るのか

宿直に従事する時間は通常の残業時間と違い、残業代は支給されないので注意しましょう。実際には働いていても、監視または断続的労働に該当し、かつ労働基準監督署長から許可を受けている場合、労働時間には含まれません。

宿直中は割増賃金が支給されないほか、通常の賃金も未支給です。宿直手当は受け取れるので完全に無給での労働ではありませんが、残業時との扱いは違います。

宿直手当の支給額は、対象の労働者が受け取る1日当たりの平均給与額の1/3を超えるべきとのルールがあります。宿直中は残業代が出ないとはいえ、著しく低い報酬で労働を強いられるわけではないといえます。

7.医師の残業を減らすには?

「医師は残業が多い仕事だから長時間労働は仕方ないだろう」と諦めていませんか。業務の性質上ある程度の残業は受容すべきかもしれませんが、常軌を逸するほどの労働時間を強いられているなら改善の働きかけが必要です。

方針は今の勤務先に待遇改善を申し出るか、残業が少ない病院に転職するかのいずれかです。医師が残業を減らして健康的に働くための方法を解説します。

7-1.病院に業務改善を依頼する

勤務先に対して業務改善要求を出すのがひとつの手です。業務時間の短縮を希望しても要望が通る可能性は低いため、合わせて業務効率化の提案までできると良いでしょう。マニュアルの作成、不要なコストの削減、地域の病院との連携などの案が考えられるでしょう。

細かなオペレーションのマニュアルがあれば、患者さんの要望や不測の事態への画一的な対応が実現します。経験が浅い医師や看護師もマニュアルに沿って業務に取り組めば良いので、指導や質問に応える人的リソースを節約できます。

地域内のクリニック間で患者情報の共有に努めるのも有効です。同じ検査を何度も繰り返す無駄を減らす効果を期待できます。

病院には応答義務があるため、患者さんからの要求には応えなければならないのが原則です。病院側も残業は当たり前との姿勢で日頃の業務にまい進していることでしょう。しかし、医師や看護師の健康が確保されてこその万全な医療体制です。

疲れ切った状態で働くと医療ミスにつながるので、医療スタッフから業務効率化の提言ができると良いでしょう。

7-2.地方公務員として勤務する

労働時間の上限規制が厳しい地方公務員の医師に転職するのもおすすめです。国家公務員の勤務時間は1日7時間45分、1週間当たり38時間45分が基本です。時間外労働に関しても月100時間、年720時間の上限規制が存在します。

地方公務員の労働時間は自治体や条例ごとに異なりますが、おおむね国家公務員と同等の水準です。地方公務員医師の勤務先は都道府県立病院や市立病院のほか、警察医として県警で働く道もあります。

7-3.残業の少ない病院に転職する

科目や規模などを考慮して、残業が少ない病院を見つけるのも有効です。一般的に緊急外来がある、または病床が多い医療機関は労働時間が延びる傾向にあります。

宿直をはじめ、夜間・時間外のオンコール対応が常態化しているためです。とくに手術を伴う外科は医療の花形であるものの、激務は避けられないでしょう。

残業が少ない診療科目は病院の受付時間内の応対が基本の皮膚科や精神科などです。機能回復に向けた介助・看護を行う回復期リハビリテーション病棟や、突発的な急患が入りにくい慢性期病棟も、長時間労働は少ない傾向にあります。

8.医師の残業について理解を深めよう

残業時間の上限規制が開始されるとはいえ、医師はハードな働き方を強いられる職業です。ご自身の心身の健康を維持し、適切な対価を得ながら職務にあたるためにも、残業時間について理解を深めておくことは大切です。

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