近年、オンライン診療の普及が進んでいます。そうしたなかで、自由診療としてオンライン診療を提供したいと考える医師もいるのではないでしょうか。今回は、オンライン診療における自由診療の扱いと、提供するために必要な事項について解説します。
- オンライン診療で自由診療を提供するために必要な事項を知りたい
- オンライン診療で多く実施されている自由診療の具体例を知りたい
- 導入するメリットや注意点を把握したい
目次
オンライン診療は、自由診療としても提供できる

オンライン診療は、保険診療、自由診療を問わず、提供できます。
厚生労働省の資料「オンライン診療の適切な実施に関する指針に関するQ&A」のなかで、「保険診療に限らず自由診療におけるオンライン診療についても適用される」と明記されています。
参照:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A|厚生労働省
ただし、自由診療においても、保険診療と同じようにオンライン診療の指針に沿って提供する必要があります。
オンライン診療とは、「スマートフォンやタブレット、パソコンなどを使って、自宅等にいながら医師の診察や薬の処方を受けることができる診療」のことです。インターネットを接続できる環境であれば、場所を選ばずに利用できるのが患者さんにとってのメリットです。一方で、予約制となるオンライン診療は、医師にとっては効率よく働けるといった利点もあります。
しかし、対面による診療と比較すると、オンラインでは得られる情報が限られてしまうといったデメリットもあります。そのため、厚生労働省は、トラブルを防ぎながら、安全かつ質の高い診療を提供するため、指針に沿って対応するように定めています。
オンライン診療と、自由診療は相性が良い
自由診療とは、『保険診療』に該当しない治療や検査のことで、保険外診療とも呼ばれます。治療として必要な国の承認を受けるための全段階を満たしていないものの、特定の患者さんに有効だと医師が判断し提供される診療や治療、美容目的の医療提供が多く見られます。
医療機関が、料金を自由に設定できるのが大きな特徴で、治療内容や料金の決め方に制限がないため、選択肢が広がります。特に、もともと対面でも自由診療だった疾患については、オンライン診療が導入しやすく、患者さんの在住地を問わず提供できるようになるでしょう。なかでも、美容医療や慢性期疾患のサポートなどについては、処方を中心とするオンライン診療との相性が良いと考えられます。
自由診療は、患者さん側は全額自己負担となるものの、通院の負担軽減などに魅力を感じる患者さんも少なくありません。診療を受けていることを隠したい場合や、遠方の医療機関を利用したい場合など、オンラインでの自由診療は患者さんにとってのメリットは大きいでしょう。
一部を除き、保険診療と自由診療を同時に提供することはできませんが、保険診療は対面で、自由診療はオンラインでという対応も可能でしょう。なお、保険診療内で行われる治療を自由診療と組み合わせた場合には、そのすべてが自由診療と見なされます。
オンライン診療で自由診療を提供するために必要な事項

自由診療としてオンライン診療を提供する際、前述の資料「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って、必要な研修を受講しなければいけません。また、導入の際には、地方厚生局への届出が必要です。それぞれの概要を解説します。
オンライン診療研修の受講
オンライン診療を提供するには、保険診療か自由診療かに関わらず、特定の研修を受講するように義務付けられています。
動画視聴によるe-learning形式の研修で、費用は無料です。研修内容は、オンライン診療の指針について、機器の使用、情報セキュリティなどの知識習得を目指す内容となっています。動画による研修の受講後、各科目にそれぞれ10題の演習問題が出題され、全問正解すると修了証が発行されます。また、オンライン診療を提供する際には、修了証を医療機関の公式サイトに掲載する必要があります。
なお、オンライン診療提供に必要となる基本研修は、以下の3つがあります。
①オンライン診療を行う医師向けの研修
②緊急避妊薬の処方に関する研修
③へき地における患者さんが看護師等といる場合のオンライン診療に関する研修
そのほか、慢性頭痛の患者さんをオンライン診療するために必要な研修があり、それぞれにプログラム内容が異なります。詳細については、以下の記事をご覧ください。
地方厚生局への届出
厚生労働省による「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」に基づき、地方厚生局への申請が必要です。2023年8月以降、オンライン診療を実施する医療機関は、情報通信機器を用いた診療を提供するために、必要な施設基準を満たすことが定められました。
「情報通信機器を用いた診療」ができる施設として、基本となる施設基準は、次のとおりです。
1.情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されているものとして、以下のア~ウを満たすこと。
ア)保険医療機関外で診療を実施することがあらかじめ想定される場合においては、実施場所が厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「オンライン指針」という。)に該当しており、事後的に確認が可能であること。
イ)対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められていることを踏まえて、対面診療を提供できる体制を有すること。
ウ)患者の状況によって当該保険医療機関において対面診療を提供することが困難な場合に他の保険医療機関と連携して対応できること。
2.オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること。
参照:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 初・再診料の施設基準等 第1 情報通信機器を用いた診療(p16)」
上記の基準を満たしたうえで、必要書類を地方厚生局へ届出を提出します。その際、届出に関しては、毎年7月に、前年度のオンライン診療実施状況と、診療件数についても届け出る必要があります。厚生労働省が定める書式に従って作成し、正しく申請することが大切です。
参照:– 1 – 保医発 0304 第2号 令和4年3月4日 地方厚生(支)局医療課長 都道府県民生主管部(局 厚生労働省
オンライン診療で多く実施されている自由診療

オンライン診療で多く実施されている自由診療は、主に処方が中心となっています。具体的なケースとして一部例を紹介します。
診療科 | 診療内容 | 疾患・症状・受診目的など |
---|---|---|
婦人科 泌尿器科 |
避妊、月経移動 | 避妊などに対する低用量ピルや月経移動(中用量ピル)・アフターピルの処方など |
ED・早漏防止 | 内服薬や漢方薬の処方や、サプリメント等の提供など | |
皮膚科 美容医療 |
ニキビ跡 | ニキビ跡の緩和、解消に対する漢方薬・内服薬・外用薬の処方など |
美容処方 (皮膚・AGA) |
シミ、くすみなどの肌悩みに対し、美白内服、まつげ用外用薬、漢方薬などの処方 または、AGA(抜け毛・薄毛)などに対する内服薬や外用薬、サプリメントなどの処方 |
|
ダイエット | 肥満症治療として内服薬・注射薬・漢方などの処方 | |
内科 | 生活習慣病 | 高血圧、脂質異常症、高尿酸血症など慢性疾患に対する処方 |
その他 | 総合診療 | せきやむくみ、便秘などの診療と漢方薬や内服薬の処方 |
禁煙治療 | 保険診療の条件を満たさない場合の禁煙治療として、内服薬・貼付薬の取り扱い | |
トラベル診療 | 旅行時に伴う病気・症状として、アレルギー対策、マラリア予防、スタンバイ治療・高山病予防などへのアドバイスや処方 |
自由診療でオンライン診療を導入するメリット
オンライン診療は、来院が難しい患者さんや、遠方の患者さんにも必要な医療を提供できるという大きなメリットがあります。加えて、自由診療としてオンライン診療を提供すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ポイントを解説します。
医療施設の利益向上
新型コロナウイルス感染症の流行後、インターネットの活用がさらに進みました。そうしたなかで、通院の手間が省けるオンライン診療は、感染防止やプライバシーを考慮する患者さんからのニーズが高まり、利用者が増加しています。
厚生労働省の資料によると、2020年4月時点で1,142件だったオンライン診療が、2023年3月には7,313件に増加しています。自由診療は、保険診療と比べて料金や診療内容を独自に設定できることから、患者さんの細やかな要望にも対応しやすく、ニーズに合わせて収益を上げやすいのが利点です。医療施設の経営安定に寄与することで、医師としての職場確保につながります。
患者さんが来院に抵抗を感じやすい診療科の受診を促せる
オンラインでの自由診療として、美容診療や避妊治療、ED治療、AGA治療などでも活用されています。こうした診療内容は、患者さんが受診を希望していても、直接来院することに抵抗を感じる場合も少なくありません。患者さんのプライバシーを保護できるオンライン診療で自由診療として提供することで、患者さんの受診を促すのに役立ちます。
診療の幅が広がる
従来、保険診療を中心に提供していた医療施設であっても、自由診療としてオンラインの活用ができれば、診療の幅が広がります。個々のニーズに沿った個別相談など、付加価値の高い診療を提供することも可能です。保険診療ではカバーされない治療であっても、医師法や医療法に則ったオンライン診療を行うことで、オーダーメイドの診療を提供するのが容易になります。
業務負担の軽減
オンライン診療の導入により、通院にかかる患者さんの負担が軽減されます。同時に、医師も自由診療として、診療時間や診療内容を自由に設定することで、ライフスタイルに合わせた働き方が可能になるでしょう。対面診療による肉体的な負担が軽減され、効率よく業務がこなせるようになります。
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オンラインで自由診療を行う際の注意点

オンラインで自由診療を導入する際には、保険診療と同様のルールに従わなければいけません。特に注意したいのが、自由診療であっても「原則、初診は対面が基本」であるという点です。
ただし、「オンライン診療を適切に実施するための指針」改定において、「医学的情報が十分に把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも、オンライン診療を実施できる」とされ、その場合、「診療前相談」を行うこととされています。初診から、自由診療としてオンライン診療を行う際には、「診療前相談」の時間を設ける必要があります。
また、同指針において、「急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと」とされています。オンラインの場合、急変が起こりにくい疾患や症状を対象として自由診療を提供するケースが多い傾向にあります。しかし、万が一の可能性を考えて、提供する医療サービスにおいて、急変の対応ができるかどうかを考慮しておく必要があるでしょう。
効果的にオンライン診療における自由診療を導入しよう
オンライン診療と、自由診療は相性が良い医療サービスといえます。上手に導入・運用できれば、利用者の増加や利益アップにもつながることでしょう。ただし、オンライン診療の導入にはルールがあり、保険診療と同様に、自由診療でも事前の準備が必要です。導入の際には、研修受講や申請など、手続きに漏れがないように進めましょう。

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