後進の育成とは?医師の人材育成の難しさや育成方法のポイントを解説|医師の現場と働き方

後進の育成とは?医師の人材育成の難しさや育成方法のポイントを解説

医師としての経験を積むなかで、後進の育成にかかわることがあります。自身の業務と並行して、後進の育成を担うのは大変です。近年の医療現場では、業務が複雑化しているだけでなく、働き方の多様化が進んだことから、世代間の認識の違いなどから指導の難しさを感じることもあるでしょう。
本記事では、医師として後進の育成を担う難しさや、育成方法のポイントについて解説します。

<この記事のまとめ>

  • 医師の後進育成は、医療全体の質向上や次世代の人材確保に重要。
  • テクニカルスキル(診断や治療技術)だけでなく、ノンテクニカルスキル(コミュニケーションやタイムマネジメント)も重視した長期的な支援が必要。
  • 具体的には、コーチングやフィードバックを用い、後進が目標を自ら達成できるよう促したり、現場でのOJTを通じて実践的な指導を行っていくとよい。

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1.後進の育成とは

後進の育成とは、後輩となる人材を育て上げるという意味があります。医療現場における後進の育成は、テクニカルスキルにとどまらず、接遇やタイムマネジメントといったノンテクニカルスキルにも配慮が必要です。同時に、患者さんにとって適切で、安全な治療が行えるような環境を維持しなければいけません。加えて、診療科ごとにさまざまな症例や条件下に応じた指導や育成が必要なため、育成する立場の経験やスキル、人間性が求められます。

上級医は、自らも責任のある業務を遂行しながら、後進の育成にかかわることになるため、業務が増える以上の精神的な負担が高まる傾向にあります。

1-1.指導と育成の違い

指導と育成という言葉は、同じような場面で使われることが多いものの、実際には意味合いが少し異なります。指導とは、仕事に必要なスキルや技術を身につけられるように、その方法や考え方を具体的に示すのに対し、育成とは成長を促し、人間力を高めるための支援を長期的なスパンで取り組むものです。後輩にあたる医師が自ら考え、人としての成長につながるような取り組みといえるでしょう。

2.後進の育成方法とポイント

医師として後進の育成を担当することは、医療全体の質の維持・向上を促すものであり、次世代の医療を支える人材を確保するために重要な業務といえます。とはいえ、具体的にはどのような行動をとればよいのでしょうか。ここからは、具体的に実践できる育成方法とポイントについて解説します。

2-1.ノンテクニカルスキルの向上に取り組む

ノンテクニカルスキルとは、医療現場に必要なコミュニケーションスキルやリーダーシップなどのスキルを指すものです。専門知識や技術を指すテクニカルスキルと同様に、医師に必要なスキルといわれており、診療を円滑に進めるため、チームワークを強化する際にも有効とされています。
後進の育成というと、具体的な診断法や治療法、手技といったテクニカルスキルが重視されがちです。しかし、コミュニケーション力が乏しいと周囲との関係がうまくいかず、チーム連携に不安が生じたり、スムーズに治療が進まなかったりすることもあり得ます。患者さんにとって安全で安心できる医療を提供するためにも、ノンテクニカルスキルの向上が欠かせません。育成において、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルの両面で成長を促してみましょう。

ノンテクニカルスキルとして以下のような点が挙げられます。

ヒューマンスキル 他者と円滑にコミュニケーションを取るためのもの
コミュニケーションスキル、ヒアリングスキル、プレゼンテーションスキルなどが含まれる
ロジカルシンキング 論理的思考を用いて、問題を分析し、解決するためのもの
物事の原因、根拠、結果を整理する
マネジメントスキル ヒト・モノ・カネ・情報を効率的に運用し、目標達成に向けて実践するもの
業務量や資源を管理する、ストレスや疲労の管理も含まれる

医療事故を含むインシデントの多くは、コミュニケーションを始めとするノンテクニカルスキル不足が原因で発生することも少なくありません。これらをトレーニングするためには、チームで取り組んでいくことが重要です。ノンテクニカルスキルを高めるように後進を育成することで、安全な医療の提供にもつながるでしょう。

2-2. コーチングで目標達成を促す

後進の育成では、後輩自らが考え、主体性を持って行動できる人材に成長できるよう促す必要があります。指導とは異なり、テクニックを伝えて練習や復習を提案するというだけでなく、自ら目標達成に向けて行動するための考え方を身につけられるような声掛けが求められます。

その際、役立つのがコーチングの考え方です。コーチングとは、目標を達成するための現状把握や不足要素を明確にして、行動につなげるにはどうすればよいのかを後輩自身に考えてもらう手法です。コミュニケーションをとりながら、気づきを得られるような質問を繰り返し、本来持っている可能性を最大限に引き出すような働きかけを行います。

コーチングを実践する際に必要なスキルとして以下の点が挙げられます。

傾聴 相手に関心を持ち、表情や話し方にも注目する
質問 はい・いいえで回答できる「クローズドクエスチョン」と、5W1H(いつWhen、どこWhere、誰Who、何What、なぜWhy、どのようにHow)を用いた「オープンクエスチョン」を使い分ける
承認 相手の長所に注目して褒める

傾聴するためは、まず相手に興味を持つことが大切です。相手がどんな意見を持っていても、まずは受け入れ、反論せずに聞いてみましょう。世代の違う後輩に対して「自分たちが若かった頃はもっと大変だった」と思う場面もあるかもしれません。価値観の違いに戸惑うこともあるでしょう。しかし、まずは「聞く」という姿勢を保つことが重要です。そのなかで、相手の良い部分を引き出し、目標設定を促します。
効果的に質問するために、5W1Hのうち、「どのように(How)」に注目するのがポイントです。
「なぜできないの?(Why)」→「どのようにすればよいか(How)」というように過去を責める問いかけではなく、今後の展開を考えさせるような質問が有効です。承認は、具体的で一貫性のある態度で実施するようにしましょう。

2-3.相手に伝わるフィードバックを意識する

フィードバックとは、相手の行動に対しての評価を伝え、改善を促すことです。しかし、具体的なポイントが伝わっていなかったり、次の行動につながらなかったりすれば、結果に反映されません。後輩個々に性格や立場、環境が異なり、同じフィードバック方法で伝わるとも限らないため、相手に合った方法を探ることが大切です。

フィードバックにはさまざまな方法があり、相手を評価するポジティブフィードバックと、相手に修正を促すネガティブフィードバックなどがあります。代表的な手法を3つご紹介します。

サンドイッチ型 ネガティブな内容をポジティブなフィードバックで挟む手法
手順
●ポジティブフィードバック(褒める)
●ネガティブフィードバック(改善点などを指摘)
●ポジティブフィードバック(褒める)
SBI型 「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の頭文字を取ったもの
手順
●状況を具体的に説明
●事実に基づいた行動を説明
●その結果、どのような影響があったのかを伝える
ペンドルトン型 相手とコミュニケーションを取りながら、相手自身が、自分の行動について考えるもの
手順
●何を話すのか確認する
●良かった点
●改善する点
●今後の行動計画
●おさらい

フィードバックでは、原則、具体的に事実を伝えます。特にネガティブフィードバックの場合は、回りくどい言い方を避け、相手が受け入れられるように伝えましょう。
その際、“私の考えでは…”、“私はこう感じているが…”のように“私”を主語にする「I(アイ)メッセージ」として伝えることが重要です。また、褒める際には、結果だけではなく、プロセスも褒めるようにしましょう。なお、伝え方によっては、パワハラと受け止められることもあるため、相手の思いに寄り添いながら実施することが大切です。

2-4.テクニカル面においてOJTを適切に実践する

OJTとは、On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を略した言葉で、業務を遂行できるスキルを向上させるため、現場で実践的に指導を行うものです。具体的には、以下の4つのステップを繰り返します。

Show:やってみせる 上級医が実際に業務を見せる
Tell:教える 内容を説明し、全体像をイメージさせ、ポイントを解説する
Do:やらせてみる 実際に施行してもらう。危険がない限り、できるだけやってもらう
Check:評価・指導する 適切なフィードバックを行い、次回に活かす

後輩の医師は、先輩医師の行動を見て学びます。上級医の医療技術や、患者さんとのコミュニケーション方法などの実践を見ることは、教科書やe-ラーニングでは学べない貴重なものです。

3.後進育成の難しさとは

後進の育成方法や必要なスキル、考え方を理解していても、実際にはさまざまな面で難しさがあります。難しさの要因を踏まえたうえで、取り組める方法について解説します。

3-1.後輩と価値観の違い

世代ごとの価値観の違いは、いつの時代にも生じるものです。とはいえ、近年の働き方や環境は著しく変化し、スピードをあげて多様化しています。こうしたなかで、仕事への向き合い方ややりがいが異なる後輩を理解するのが難しいと感じることもあるでしょう。医師の働き方改革も進み、働く環境の変化を理解しながら後進の育成に携わるには、広い視野を持ち、柔軟に対応する必要があります。
価値観の違いを前提として、相手を変えようと思うのではなく、自分の経験を通して何を伝えられるのかを考えることが大切です。

3-2.安全性との両立

後進の育成には、安全を最優先で取り組まなければなりません。たくさんの経験を積めるように働きかけながらも、医療ミスで患者さんに危険が及んだり、信頼を失ったりするよう状況はできるだけ避けなければいけません。
患者さんの診療や治療を行う際、上級医は状況を適切に判断したうえで、後輩に権限を委譲する必要があります。その際、指導する側が一人で抱え込んでしまうと、負担が大きくなってしまいます。可能であれば、チームとして問題を共有しておくとよいでしょう。また、チェックリストの活用やデジタルツールを用いるなど、医療事故を防止する工夫も取り入れましょう。

3-3.時間がない

自らも患者さんの主治医となって働きながら、後輩の指導にあたることになるため、多忙を極めます。そのため、自分の業務に支障をきたす場合もあるでしょう。効率よく業務をこなしながら、後輩医師に携わる時間を確保する方法を検討してみましょう。カンファレンスの時間を有効活用して指導にあたる、コミュニケーションツールを使って個別の相談に乗るなど、後進の育成においても効率化を図ることが大切です。
また、テクニカルスキルを指導する医師と、ノンテクニカルスキルを中心に指導する医師、メンターとなる医師など、それぞれの担当分野を決め、複数人でサポートする方法もあります。
自身がオーバーワークになってしまわないように、負担軽減の工夫を考えてみましょう。

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4.効果的な方法で後進の育成を進めよう

立場も価値観も違う後輩の医師を育成するのは、心身ともに大きな負担を感じるものです。多忙を極める臨床現場において、時間を確保すること自体が難しいかもしれません。価値観の合わない相手と、どう話せばよいのか悩むこともあるでしょう。それでも、先輩医師として、これまでの経験を活かし、次世代を担う若手医師を育成する必要があります。相手に寄り添いつつも、できるだけ効率よく、効果的な手法を取り入れ、後進の育成に携わってみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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