医師として活躍するために欠かせないのが、研修医として経験を積む期間です。研修医といっても、研修内容や業務内容は多岐にわたります。今回は、研修医制度の目的や目安となる研修期間とともに、研修先を決めるフローや給料事情などについて詳しく紹介します。
- 研修医の制度や初期・後期研修の違いを理解したい方。
- 医師としてのキャリア選択や研修先の選び方を知りたい方。
- 研修医の給料や待遇事情について詳しく知りたい方。
目次
研修医とは

研修医とは、医師免許取得後、臨床医となるための研修を受けている医師のことです。医師国家試験に合格後には、臨床スキルを高めるため、国指定の基幹型臨床研修病院等において研修を受けることになります。研修期間中は、さまざまな診療科を巡回しながら、指導医や先輩からの指導のもと、外来業務や病棟業務等に従事します。
1-1.研修医制度とは
まずは、研修医制度の概要について確認しておきましょう。研修医制度とは、正式には「医師臨床研修制度」を指し、その基本理念は以下のとおりです。
出典:医師法第十六条の二第一項に規定する臨床研修に関する省令
簡易にまとめると、研修期間を通して、臨床における基本的な知識やスキルを習得することを目的に実施されるものといえます。
臨床研修制度は、以前には努力義務でしたが、医師法の一部改正により2004年より必修化されています。制度はおおむね5年ごとに見直しが行われており、2020年には「卒前卒後の一貫した医師養成」、「到達目標」「臨床研修病院の在り方」、「地域医療の安定的確保」などの観点から、研修内容が一部改定されました。時代背景、医療制度の重要性、教育の連続性などの観点から、細かな点まで見直し更新されます。
1-2.研修医と、専攻医、専修医の違い
研修医制度は、大きく初期研修と後期研修に分かれており、そのうち、初期研修中の医師を研修医と呼びます。以前には、初期・後期いずれの研修中であっても、総じて研修医とされ、それぞれ初期研修医、後期研修医と呼ばれていました。しかし、新専門医制度のスタートに伴い、呼び名が変わっています。
現在は、初期研修を受けている医師のみを「研修医」と呼び、以前の後期研修医にあたる医師は「専攻医」と呼ばれます。もともと、後期研修では、専門領域についてより深く学ぶ期間であり、以前には領域ごとの学会等に所属しながら、専門医を目指す過程にありました。
しかし、2018年に導入された新専門医制度により、後期研修は、日本専門医機構の定める専門研修プログラムへの参加に変わると同時に、後期研修医は専攻医と呼ばれるようになっています。ただし、日本専門医機構の定めるプログラムに参加せずに、診療専門分野で研修を受けている場合には、「専修医」と呼ばれます。
研修医の期間

先にもお伝えしたとおり、初期研修と後期研修があり、それぞれ研修医と専攻医として経験を積みます。それぞれの期間は以下のとおりです。
2-1.初期研修(研修医)の期間
研修医の研修期間は、原則として2年以上です。基本的には、1年以上を基幹型臨床研修病院で研修を受けることになります。ただし、地域医療等においては、「12週を上限」として、基幹型臨床研修病院での研修と同等にみなすことが可能です。なお、「地域医療等」の「等」とは、保健・医療行政や一般外来等が該当します。
研修1年目では、「内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、地域医療」が必修で、それぞれに定められた研修期間があります。
•「救急」 12 週以上
•「外科、小児科、産婦人科、精神科及び地域医療」それぞれ 4 週以上
※8 週以上の研修を行うことが望ましい
•「一般外来」4 週以上
※受け入れ状況に配慮しつつ、8 週以上の研修を行うことが望ましい
2-2.後期研修(専攻医)の期間
初期研修の期間は、原則として2年以上と定められているのに対し、専攻医の研修期間は、選択する領域やサブスペシャリティ領域に進むかどうかによって異なります。目安としては、おおむね3~5年です。また、基本領域で専門医資格を取得後、別の領域で専門医資格を目指すダブルボードが可能な領域もあり、個々の状況によって期間が異なります。
専門医取得を目指さない場合、診療専門分野を研修することを目的とした専修医となります。その研修期間は、従事する研修先によって異なります。入局を検討する際には、詳細を確認しておきましょう。
研修先の病院が決定するまでの流れ(医師臨床研修マッチング)

研修先選びは、今後のキャリアに大きく影響します。研修先が決定するまでに、活用されているのが「研修医マッチング(組み合わせ決定)」です。
「研修医マッチング(組み合わせ決定)」とは、研修を希望する医師と、研修先を一定の規則(アルゴリズム)に従って、コンピュータにより組み合わせを決定する仕組みです。研修希望者と研修病院それぞれの希望を踏まえて、マッチングが行われます。
公益財団法人医療研修推進財団の医師臨床研修マッチング協議会により運営されており、参加登録をすることで、各病院の定める選考手続きが完了します。希望する研修プログラムの希望順位表から、マッチングした研修先と医師が仮契約を結ぶという流れです。以下のような特徴があります。
•参加登録した者は必ずマッチ結果に従うこと
•コンピュータアルゴリズム(演算方法)はすでに理論的に確立されたもので、公開される
•参加者(研修希望者)と参加病院(研修病院)の希望順位表にない組み合わせは生じない(研修医の強制配置に用いられることはない)
近年では、医学部への入学者が増加していることもあり、マッチング競争が激化している傾向にあります。事前に、気になる研修先を見学に行ったり、先輩から話を聞いたりしながら、早めの対策を立てましょう。
研修先を選ぶ際のポイント

研修先にはさまざまな施設があり、規模や専門性、指導体制などがそれぞれ異なります。多くの候補の中から、自身の状況やキャリア等に合わせて選択することが大切です。研修先を選ぶ際のポイントについて考えてみましょう。
4-1.研修プログラム内容
研修医が研修を受けるうえで考えておきたいのが、将来的なキャリアの方向性です。どの領域に進みたいのか、どのような専門性を身につけたいのかによって、研修先選びが変わります。
研修プログラムの詳細は、研修先によって異なります。幅広い診療科や部門でバランスよく経験を積みたいのか、研修プログラムが充実しているところがよいのかなど、事前に自身が進みたい方向性を決めておくことが大切です。また、希望したプログラムであっても、指導医の質に差がある場合もあります。施設選びの際には、指導医についても事前に情報収集しておきましょう。
4-2.周辺環境
研修先として人気が集まりやすいのは、都市部です。特に都心に近い施設は人気が集中し、競争率が高くなります。一方で、地方は選択肢が多いため、地方病院での研修を希望する人も多いかもしれません。
特に地方の研修先を選ぶ際にチェックしておきたいのが、研修先施設の周辺環境です。宿舎の有無や近隣施設の充実度、交通の利便性なども事前に確認しておきましょう。実家の医療機関を継承する予定であれば、地域で人脈を作りやすい環境を選ぶのも一案です。また、プライベートの時間を充実させるために趣味を楽しめる地域を選ぶ人もいます。自身が働きやすい周辺環境かどうかも、選ぶポイントとして考えてみましょう。
4-3.待遇(給与、労働環境等)
初期研修中は、アルバイトや副業が禁止されているケースがほとんどです。研修医としての給与額を事前にしっかり確認しておきましょう。また、業務内容(外来、病棟業務および手技など具体的な内容と通常の週間スケジュール)や、当直回数等といった待遇を踏まえて、検討することが大切です。
給与額は生活に直結するものです。研修内容重視で選んだものの、給与額が低く、生活に困ってしまうといったケースも考えられます。とはいえ、給与額だけで研修先を探してしまうと、自身のキャリア形成が難しくなることも。総合的なバランスを考えて、検討することをおすすめします。
後期研修医(専攻医)になると、アルバイトや副業が認められるところが多いようです。ただし、アルバイトや副業が認められていない施設もあり、事前の確認不足で副業を始めてしまうと、就業規則違反として処分の対象となる可能性があります。そうした労働条件も、事前に確認しておきましょう。
研修医の給料事情

実際に、研修医はどの程度の収入を得ているのでしょうか。厚生労働省が行った「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、20~24歳の医師(男女計)の平均年収は509.65万円(平均年齢24.5歳)、25~29歳で696.17万円(平均年齢27.5歳)でした。ただし、20~24歳の平均年収については、年齢的に医師1年目に該当するため、初期研修医1年目のみが該当します。加えて、25~29歳の平均年収は、すでに初期研修を終えている医師も含むため、いずれもあくまで目安です。
また、厚生労働省が公表する資料「臨床病院における研修医の処遇」によると、2011年度(平成23年度)採用予定となった1年目の研修医の推定平均年収は、大学病院で約307万円、臨床研修病院で約450万円と大きな差がありました。この資料は、新専門医制度が始まる前のものですが、こうした傾向は今もなお続いています。
病院のHPで公開されている初期臨床研修プログラムの募集要項を比較したところ、ある大規模民間病院では、卒後1年次の年収として720万円(月給30万円+賞与)を提示している一方で、ある国立大学病院では月給約24万円でした(2023年5月末時点)。研修先によって給与に大きな差があることを理解しておきましょう。
事前の情報収集で、自分に合った研修先を選ぼう
初期研修は、医師として活躍するために欠かせないものです。実際に臨床の現場に立ち会うことで業務のイメージが具体的になり、学生時代に考えていた方向性とは異なる道を選ぶこともあるでしょう。初期研修終了後は、さらに専門的な学びを深めていくことになります。どの診療科に行きたいのか悩んでいる場合には、より幅広い診療科が経験できるような研修先を選ぶのも一案です。一方で、固い決意で専門を決めている場合には、症例を多く経験できたり、専門性の高い指導医のいる研修先を選んだりすることになるでしょう。
自身に合った研修先が選べるよう、事前にしっかり情報収集したうえで準備を進めましょう。