医局の階級(役職)とは?所属するメリット・デメリットやキャリアアップについて解説|医師の現場と働き方

医局の階級(役職)とは? 所属するメリット・デメリットやキャリアアップについて解説

医師としてキャリア形成する上で、多くの医師が一度は関わりを持つのが医局です。近年は医局に入らずキャリアを構築する医師も増えつつありますが、医局に所属するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。

本記事では医局に所属すべきか迷っている方のために、医局の概要や階級、医局に所属するメリット・デメリット、医局でキャリアアップする方法などをまとめました。医局に入るか入らないかで、医師としてのキャリアや働き方は大きく変わってきます。本記事を参考にして医局のメリット・デメリットを把握し、ご自身に合った働き方を検討する材料にしてみてください。

〈この記事のまとめ〉

  • 医局とは医学部・歯学部や大学附属病院で教授を頂点として構成され、臨床・研究・教育・人事などを行う集団のこと。
  • 医局に所属すれば就業先に困る心配がなく、幅広い経験ができるなどのメリットもあるが、医局人事による異動や人間関係の複雑さなどのデメリットもある。
  • 医局に入らずにキャリア形成している医師もいるので、医局に入るか迷っているなら、他の働き方も視野に入れて検討してみると良い。

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1.医局とは?

医局とは大学医学部・歯学部とその附属病院で、研究室・診療科の教授を中心として構成される任意の団体のことを指します。

医局に明確な定義はありませんが、一般的に医学部・歯学部とその附属病院の臨床・研究・教育・人事などを行う集団を指すことが多いです。教授をトップとしたピラミッド型の組織となっており、教授が人事権を持っています。地域医療の均衡を保ち、適切な医療が提供できるように医師を適所に派遣することや、次世代の医師を育成することが医局の役割です。医師は配属された診療科で診療を行う他、医学生・研修医の教育やサポート、新たな治療方法の研究などを行います。

2.医局の階級(役職)

前述した通り医局はピラミッド型の組織で、以下のような構造となっています。

教授 主任教授

教授

特任教授

客員教授

診療教授

研究教授

教育教授

病院(院内)教授

准教授 准教授

特任准教授

客員准教授

病院(院内)准教授

講師 講師

特任講師

兼任講師

病院(院内)講師

助教授・助手・医員・専攻医 助教

特任助教

病院(院内)助教

医員

研修医 後期研修医(専攻医)

初期研修医

それぞれの階級(役職)で、どのような役割があるのかを詳しく見ていきましょう。

2-1.教授

教授は医局の頂点となる存在で、院内では病院長に続く立場になります。

一般的には准教授や講師として経験を積んだ後、50歳前後で就任するケースが多いです。人事権を持つ教授は、大学附属病院や関連病院に医局員を適切に配置します。講演会への登壇や論文執筆などを担当するため、教授になると臨床に携わる機会は少なくなるでしょう。

2-2.准教授

准教授は若手医師や研修医の教育を担当し、臨床現場を統括するのが役割です。

一般的には40〜50代の医師が准教授に就きます。准教授になると長時間労働を強いられることはなくなりますが、医局での教育と臨床を管理しながら将来の教授選に向けて論文執筆などを行い、準備を進めなければなりません。

2-3.講師

講師は診療を行いながら、医学生への講義や実習に多く携わるのが役割です。

一般的には40歳前後で助教授から昇格して講師の仕事に就きます。次世代の教育を行うのが講師の重要な役割ですが、同時に研究活動に従事するケースも多いです。診療・教育・研究と携わる業務の幅は増えますが、頻繁な日当直からは解放されるでしょう。

2-4.助教授・助手・医員・専攻医

講師の下層に当たるのが、助教授・助手・医員・専攻医です。

助教授は教授の下に就き、臨床現場と次世代教育の支援を行うのが仕事です。教授が携わる業務のアシストをしながら、研修医や若手医師のサポートも行います。助教授クラスになると、長時間労働が少しずつ改善していくケースが多いです。

助教授を目指すためには、医員や助手、専門医として業務に従事しながら、博士号の取得を目指さなくてはなりません。組織によって呼び方が異なることがありますが、一般的には2年間の初期臨床研修を終えた後、専攻医として臨床現場での診療を行いながら専門医になるための研修を受けます。

2-5.研修医

研修医は医師国家試験に合格した初期臨床研修中の医師のことです。医局の中では最も低い立場になります。

研修医は指導医の下で実務経験をしながら、医師として必要な知識・技術の習得に努めます。まだ臨床医として勤務できる段階にはなく、長時間労働が強いられるケースも多いです。

以前は医学部卒業後3年目以降の医師は、後期研修医と呼ばれていました。しかし、2018年4月から導入された新専門医制度により、3年目以降は専門研修プログラムに参加する専攻医と呼ぶようになったため、現在は初期臨床研修中の医師のみが研修医と呼ばれます。

参考:厚生労働省.「医師専門医制度ホームページ」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00011.html  ,(2024-04-06).

3.医局に所属するメリット

医局に所属しない医師も増えている今、「医局に所属するとどのようなメリットがあるんだろう」と疑問に思っている方もいるはずです。ここからは、医局に所属して得られる5つのメリットを見ていきましょう。

3-1.就職先に困らない

医局に所属するメリットの一つは、就職先に困らないことです。

医局には大学附属病院だけでなく多くの関連病院など、さまざまな就業先があるため、働く場所に困る心配はまずありません。万が一将来、出産や介護、留学などで一時的に臨床現場を離れることになっても、医局に所属していればスムーズな復帰が見込めます。また育児や介護でフルタイム勤務が難しい場合も、医局に所属していれば時短勤務や業務量の調整などが交渉しやすいでしょう。定年してからも、これまでの経験を活かした働き口を見つけられる可能性が高いです。

3-2.研究を行える環境が整っている

研究を行える環境が整っていることも、医局に所属するメリットです。

医局には研究機関としての側面もあり、大学病院に設置されている最新機器などを使用した臨床研究も積極的に行われています。基礎研究だけでなく、希少な症例・疾患などへの治療も行われているため、研究に取り組みたいと考えている医師にとっては魅力的な環境だといえるでしょう。研究プロジェクトの一員となることで、より専門性を高めることができます。

3-3.専門資格を取得できる

専門資格を取得できることも、医局に所属するメリットの一つです。

医師がキャリアアップする上で専門医の資格は重要な要素です。専門医になるためにはいくつかの条件がありますが、医局に所属していなければ満たすことが難しい条件もあります。医局に所属すれば高い専門性を持つ優れた医師から直接指導を受けられるので、知識や技術を効率良く習得できるでしょう。医局内のつながりを活用することで、専門医試験のために必要な対策情報もスムーズに収集できます。

また医局に所属すれば、博士号の取得も目指せます。臨床現場で博士号はそれほど重視されませんが、研究や教育に携わりたいと考えている場合は、大きなメリットといえるでしょう。

3-4.派遣・留学などを体験できる

派遣や留学などを体験できることも、医局に所属するメリットです。

医局は大学附属病院だけでなく、多くの関連病院などの医療機関とも連携を取っています。医局に所属すれば、さまざまな医療機関で幅広い症例の治療に携わる機会を得られ、多くの経験を積むことが可能です。

また医局の持つ派遣機能によって、海外の医療機関で知識やスキルを磨くこともできます。医局のサポートを受けて留学できる上、前述した通り、帰国後の復職がスムーズに行えることも、医局に所属する大きなメリットといえるでしょう。

3-5.人脈作りに役立つ

医局に所属することは、人脈作りにも役立ちます。

医局には教授から研修医までさまざまなキャリアの医師が所属しているため、同年代の医師だけでなく、幅広い層の人脈作りが可能です。またさまざまな医療機関に派遣されることで、ご自身が置かれている環境とは異なる環境で働く医師ともつながりを持てるでしょう。学会に出席するなど、医局外の医師との交流も盛んに行えます。

多くの人脈を作れば、業務やキャリア、留学に関する相談や情報収集がしやすい他、将来開業する際に連携依頼をすることも可能です。人脈が多くなればなるほど視野が広がり、選択肢も増えていくでしょう。

4.医局に所属するデメリット

医局に所属すれば前述したようなメリットがありますが、その反面、デメリットも存在しています。医局に所属するべきか悩んでいるのなら、デメリットもしっかり把握しておくことが大切です。

ここからは、医局に所属する5つのデメリットをご紹介します。

4-1.医局人事次第で異動がある

医局人事次第で異動があることは、医局に所属するデメリットの一つです。

前述した通り、医局の人事は医局のトップである教授が握っています。医局人事による異動は、通常数年単位で行われることが多いです。希望を出すことはできますが、病院ごとの医師のニーズや医師自身の専門性などを踏まえて異動先が決まるため、希望通りの異動が実現するとは限りません。

異動のタイミングは予測が難しく、突然命じられることもあります。場合によっては慣れない土地に赴任しなければならないこともあり、異動に不満を抱える医師も少なくありません。特に家庭を持っている場合は、医局人事によって家族にも影響が及ぶことがあるため、負担も大きくなりがちです。

4-2.民間病院よりも給与が低い

民間病院よりも給与が低いことも、医局に所属するデメリットです。

文部科学省が実施した大学病院における医師の働き方に関する調査によると、大学病院で働く医師の給与は、一般医療機関や国立病院機構よりも年収500万〜700万円ほど低いとされています。十分な収入が得られず、兼業や副業で補っている医師も少なくありません。また医局人事による異動によって、給与が下がってしまうこともあります。

若いうちは経験を積むためと割り切れたとしても、年齢を重ねたり家庭を持ったりすると、給与面に対する不満を感じてしまう可能性があるでしょう。

※参考:一般社団法人 全国医学部長病院長会議. 「大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書 令和5年2月」.https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_igaku-000029031_1.pdf ,(2024-04-06).

4-3.人間関係が複雑な場合がある

人間関係が複雑な場合があることも、医局のデメリットといえます。

医局に入ると派閥争いや医師同士の競争に巻き込まれてしまうことも多いです。人脈が作れるのは医局に入る大きなメリットですが、人間関係が悪化している医局であれば、ストレスになってしまうでしょう。

医局内の序列や派閥は医局の人間関係を悪化させる要因となっていることも多く、うまく人間関係を作れなければ、理不尽な目に遭ってしまうケースも少なくありません。臨床や研究に集中したくても、人間関係に煩わされてしまった結果、医局を離れる医師がいるのも事実です。

もちろん全ての医局でこういった人間関係があるわけではありませんが、場合によっては業務以外の部分で思わぬストレスがあることも理解しておくと良いでしょう。

4-4.長時間労働になりやすい

医局に所属するデメリットの一つとして、長時間労働になりやすいことも挙げられます。

医局に所属すると、勤務先での診療に加え、研究や教育のサポートに携わったり、論文執筆を行ったりしなければなりません。また派遣先で非常勤として診療を行わなければならないこともあります。さまざまな経験を積めることは医局に所属するメリットですが、その分膨大な業務に追われることになってしまい、体力的にきついと感じる医師も少なくありません。

その上、前述した通り給与が低い傾向にあるので、給与に見合わない業務量に心身ともに疲弊してしまう医師も多いです。

4-5.症例数があまりない

症例数があまりないことも、医局に所属するデメリットといえるでしょう。

医局に所属すれば、希少症例や高い専門性が求められる症例の治療・研究に携わる機会がありますが、民間病院と比較すると全体的な症例数がそもそも多くありません。医局にはたくさんの医師が所属しているため、症例があったとしても自分に回ってこないケースもあります。

できるだけ多くの症例を診て経験を積みたいと考えているのなら、医局よりも民間病院を選んだ方が向いているかもしれません。

5.医局でキャリアアップするには?

医局でキャリアアップするためには、診療や手術を行うための知識や技術だけでなく、研究を行う知識や技術、論文執筆能力なども欠かせません。

どれだけ診療や手術の腕が認められた医師であっても、論文のインパクトファクター(影響力)が高くなければ、准教授以上のキャリアアップは難しいでしょう。また一つの医局には多くの医師が所属しているため、准教授以上に進める医師はわずかです。教授を目指すためには、教授会に認められなければならないので、キャリアアップするには優れた人格や統率力、政治力なども求められます。

6.医局に所属しない医師も増えてきている

近年は医局に所属しない医師も増えてきています。

厚生労働省が実施した「令和2年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」によると、臨床研修終了後の勤務先として、医局に入局予定と回答した医師は76.9%でした(※1 )。「平成31年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」では、医局に入局予定と回答した医師は79.3%となっているため、少しずつではありますが医局に所属しない医師が増えていることが分かります(※2)。

一概にはいえませんが、診療科や地域によって、医局に所属しなくても専門資格が取得できるようになっていることが、医局に所属しない医師の増加を後押ししている一つの要因といえるでしょう。

※1 参考:厚生労働省.「令和2年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」. https://www.mhlw.go.jp/content/001000358.pdf ,(2024-04-06).

※2 参考:厚生労働省. 「平成31年臨床研修修了者アンケート調査結果概要」. https://www.mhlw.go.jp/content/000744938.pdf ,(2024-04-06).

7.医局に所属するか迷う場合は他の働き方も視野に入れて考えよう

医局に入らなくても医師としてのキャリアを成功させている医師もいるため、医局に所属するか迷っている場合は、ご自身がどのようなキャリアを形成したいのか考えて、他の働き方も視野に入れてみましょう。医療求人専門のマイナビドクターでは、医局に所属しない働き方も含めて、その方に最適な転職先をご提案しています。

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