2018年に導入された新専門医制度より、新たに「専攻医」の名称が使われるようになりました。今回は、専攻医について、制度の概要をはじめ、研修医から専攻医になるまでの流れ、進路の選び方のポイント、年収事情などについて詳しく解説します。
<この記事のまとめ>
- 新専門医制度において専門研修プログラムを受けている医師は「専攻医」と呼ばれる。
- 専攻医の研修期間はおおむね3~5年で、各領域によって研修期間が異なる。
- 認定期間は5年間で、認定の継続には更新手続きが必要。
- 応募できる研修プログラムは1つのみ。そのため、研修先を選ぶ際には自分のキャリアプランを踏まえて、研修プログラムの内容や労働環境、ロールモデルとなる先輩医師がいるかどうかについて、しっかりと確認しておくと安心。
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1.専攻医とは
専攻医とは、新専門医制度において専門研修プログラムの研修を受けている医師のことです。
医師免許取得後、最初の2年間は初期研修としてさまざまな診療科を経験しながら、臨床でのスキルを高めます。その後、専門医取得を目指し、専門医プログラム過程に進むのが一般的です。この過程にある「3年目以降の医師」が専攻医と呼ばれます。
以前には、初期研修後、引き続き研修期間にある医師として「後期研修医」と呼ばれていました。しかし、2018年にスタートした新専門医制度により、後期研修医という名称が廃止され、研修医とは初期研修中の医師のみを指すようになっています。
2.新専門医制度とは
専攻医の立場を把握する上で、理解しておきたいのが新専門医制度です。以前の専門医取得過程と比べ、どのような違いがあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
2-1.新専門医制度が導入された背景
新専門医制度がスタートするまで、専門医の認定は、各診療科・領域の学会が「それぞれ独自の基準」で行っていました。しかし、その基準にばらつきがあり、分野によって医師の質に大きな差があることが課題視されていたのです。その解決策として導入されたのが、新専門医制度です。
これまで各学会が行ってきた専門医取得の過程を、第三者機関である一般社団法人日本専門医機構が運用し、プログラムを標準化することで、医師の質を担保するための取り組みとして導入されました。領域ごとに基準となるプログラムが設定され、認定された医療機関で専門医プログラムが実施されます。
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2-2.新専門医制度の概要
新専門医制度は、19の基本領域と24のスペシャルティ領域(2023年5月末時点)の2段階で構成されています。初期研修後、専門医取得を目指す場合には、まず、基本領域にあるいずれかの専攻医として3年以上の研修を受けることが必要です。基本領域で専門医を取得後、さらに上位の専門医取得を目指す場合には、スペシャルティ領域専門医過程に進みます。
また、専門医取得後は、基本的に5年に1回の更新が必要です。
2-3.専攻医の研修期間
専攻医の研修期間は、おおむね3~5年です。サブスペシャルティ領域に進むかどうかによっても異なり、ダブルボード(※)が可能な領域もあります。
一部の領域では、基本領域とサブスペシャルティ領域の両方について、一定期間、並行して研修プログラムを受けられる「連動研修」を行っているところもあり、各領域によって専攻医の期間が異なります。
3.専攻医登録から採用までの流れ
専攻医になるには、まず、日本専門医機構の公式サイトにおいて専攻医登録を行います。その後、専門医資格を取得し、採用となるまでの流れをまとめました。
3-1.専攻医登録から、応募まで
専攻医登録後には、希望する専門研修プログラムに登録し、一次募集を行っている「基幹施設等を選択」して応募します。基本的にはプログラム制での選択となりますが、地域枠医師(※1)やダブルボードを希望する場合などはカリキュラム制(※2)の選択が可能です。
応募できる研修プログラムは1つのみで、重複応募はできません。日本専門医機構では、初期研修のようなマッチングを行っていないため、自身で応募先を決める必要があります。応募後は、プログラムごとに面接等があり、採用となった場合にのみ、研修に進むことができます。
不合格の場合は、二次募集に応募することになります。
※2:カリキュラム制……「プログラム制」による研修が難しい場合に選択できる研修プログラム。領域によって条件が異なる。例えば、産婦人科領域の場合、「義務年限を有する医科大学卒業生、地域医療従事者(地域枠医師等)」、「出産、育児、介護、療養等のライフイベントにより、休職・離職を選択する者」、「海外・国内留学する者」などが対象。
3-2:専門医認定と更新
専攻医としての研修期間を経て、各領域学会によって申請資格書類審査や、専門医認定試験の一次審査が行われます。合格者は二次審査に進み、最終合格者には認定通知が発行されます。合格者は、機構専門医認定料11,000円(税込)を一般社団法人日本専門医機構に納付し、その受領をもって認定証が発行されます(2023年6月時点)。
認定期間は5年間で、その後も継続する場合には更新手続きが必要です。更新の申請手続きは各領域学会が実施し、領域によって細かい条件が異なります。一般社団法人日本専門医機構が提示する条件としては、以下のような項目があります。
①勤務実態の自己申告
②診療実績の証明
③共通講習
④領域講習
⑤学術業績・診療以外の活動実績
⑥単位(クレジット)取得
⑦更新審査
⑧多様な地域における診療実績
更新時に不備がないように、事前の情報収集を怠らないようにしましょう。
参考:整備指針(第三版 2020 年 2 月版)における「専門医の認定・更新」に関する補足説明|一般社団法人日本専門医機構
4.専攻医としての研修先を選ぶ際のポイント
専門医取得は、今後のキャリアを大きく左右するものです。そのため、専門分野や研修先の選択は非常に重要です。ここからは専門医を選ぶ際のポイントについて見てみましょう。
4-1.将来のキャリアプランを見越して決定する
どのような分野で、どんな医師として活躍したいのかという将来のキャリアプランを考えることが大切です。希望する領域がある場合、経験を高めたい疾患や症例に携われるか、スキルを得たい術式などの症例数が多いかどうかなど、研修先の特徴を把握したうえで応募先を選びましょう。
また、研修先にてロールモデルとなる先輩医師がいるかどうか、研修後にどのような施設へ就職しているかなども併せて確認しておくとよいでしょう。ロールモデルとなる先輩医師がいる施設では、日々の研修に加え、今後のキャリアなどについても相談できる環境となり得ます。
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4-2.労働環境についても確認しておく
医師の働き方改革が進められるなか、各施設においてワークライフバランスを重視した働き方が検討されています。しかし、全ての施設において十分に働き方方改革が進められているとは限りません。研修先を選ぶ際には労働環境についても、十分に情報収集しておくとよいでしょう。具体的には、研修先にどのくらいの人数の医師がいるのか、当直回数やオンコール対応の頻度などを確認するのがおすすめです。
加えて、年収がどれくらいになるのかもしっかり確認しておきましょう。アルバイトや副業をするのかどうかも含め、生活基盤となる収入がどれくらいになるのかも考えておくと安心です。時短勤務をしたい、当直をできるだけ減らしたいなど、働き方にこだわりたい点がある場合は、その点を重視できる研修先を探してみるのもよいでしょう。
4-3.説明会や病院見学に参加し、実際の環境や雰囲気を確認しておく
前述のとおり、専門研修プログラムは各段階で1つしか応募できません。また、応募後の変更はできず、応募後の面接・採用検討期間は10日前後と短いものです。研修先の情報収集をするといっても、十分に時間が取れなかったり、内情を把握しづらかったりすることもあるでしょう。
事前の説明会や施設見学、面談などに参加し、プログラムを運営する施設を確認し、指導医や先輩医師と関係を築いておくと安心です。
5.専攻医の年収
専攻医の年収目安として、厚生労働省が発表している令和4年賃金構造基本統計調査から算出してみましょう。
専攻医は、初期研修後となるため、現役最短となる26歳以上が該当します。資料によると、25~29歳の医師(男女計)の平均年収は696.17万円(平均年齢27.8歳)、30~34歳で969.17万円(平均年齢32.2歳)でした。
ただし、35歳以上で専攻医になる人もいるため、あくまで目安です。また、研修先や地域によって年収が異なります。加えて、上記の金額は、外部アルバイト等を含みません。収入アップを目指す場合は、副業を検討するのもよいでしょう。
6.専攻医のアルバイト事情
専攻医の研修中は、一般的な医師の給与体系とは異なるケースもあり、医師としては年収相場が低い傾向にあります。また、専攻医として働きながら奨学金を返済しているケースも少なくないでしょう。そのため、アルバイトや副業を始めたいと考える人も多いかもしれません。施設によって許可の有無が異なるため、まずは研修先の就業規則を確認しましょう。
専攻医のアルバイトや副業には、スポットと定期非常勤があります。スポットとは、指定の日や時間が決まった単発のアルバイトです。スポット案件は書類選考のみで採用されるケースも多く、手軽に応募できるのが特徴と言えます。当直や健診、往診・訪問診療など、無理なく働ける環境を探してみましょう。ただし、施設によって、給与相場や業務内容が異なります。同じ当直のスポットでも救急当直(二次救急指定病院)は、高時給になるものの、他の当直よりも過酷な業務内容になりがちです。
一方で、定期非常勤は、週に数時間~数日など定期的に、同じ施設に従事します。スケジュールが立てやすく、安定して副収入を得られるのがメリットです。数ヶ月から1年単位の契約となるため、長期にわたりスキルアップと収入の確保が可能でしょう。また、同じ施設で働くため、環境に慣れながら、さまざまな症例を経験できます。
専攻医として初めてアルバイトに挑戦する際には、自分の予定を調整しやすいスポット案件から始めるのがおすすめです。本分である研修に支障が出ないように進めるとよいでしょう。
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7.事前の情報収集で、キャリアに合った専門医を目指そう
専攻医は、専門医資格を取得するための大切な時期です。今後のキャリアプランを左右するため、しっかりと検討し、自身が希望する分野を選択しましょう。とはいえ、応募状況などにより、希望する病院で採用されない場合もあります。二次募集などの情報もしっかりチェックし、活躍したい分野での専門医取得を目指しましょう。
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参考URL
専攻医登録・応募について|一般社団法人日本専門医機構
サブスペシャルティ領域について|日本専門医機構
整備指針(第三版2020年2月版)における「専門医の認定・更新」に関する補足説明|日本専門医機構
日本専門医機構 JMSB Online System+ 操作マニュアル|日本専門医機構
新専門医制度下のリハビリテーション科領域カリキュラム制(単位制)による研修制度|日本専門医機構
専門研修カリキュラム制(単位制)整備基準(2022年10月21日改訂版)|日本産科婦人科学会
専攻医募集要項|千葉大学病院 総合医療教育研修センター
募集要項|熊本大学病院 総合臨床研修センター
後期医師臨床研修 募集要項|東京医科大学病院 卒後臨床研修センター
専攻医研修 募集要項(内科・外科)|虎の門病院 医学教育部