医療現場は慢性的な医師不足のため医師の転職市場は売り手市場とされています。そのため、一般のサラリーマンなどに比べて、転職することが多いとされる職種のひとつです。職場によって転職回数は異なりますが、民間病院などに勤務する医師の中には、5回以上転職する医師もいます。
医師の転職適齢期としては、37~38歳くらいまでが一般的とされており、一定の年齢を超えた医師は役職や加齢の問題により採用が控えられる傾向にあります。そのため、医師は若手のうちから将来の課題を把握し、キャリアプランを立てることが重要です。40代からのキャリアプランを紹介した前回に続き、今回は50代になった医師のキャリアの選択肢と課題について見ていきましょう。
現状維持で定年まで働く

50代半ばからのキャリアプランとして第一に、そのとき勤務している病院に院内規定の定年まで働くことをおすすめします。
若手の頃と同じような感覚で安易に辞めてしまうと、50代半ばからの転職先探しは非常に苦労をします。というのも、年上の部下はマネジメントしにくいので、転職先の職場で遠慮され採用されにくい傾向にあるためです。
また、勤続年数は給与に大きく影響します。もし転職に成功したとしても、それまでの勤務先と同水準の給与を転職先でも得られるとはかぎりません。指導医の資格を持つ医師や、専門性の高いスキルを持つ医師の場合は別ですが、そうでなければ現職に就いたままのほうが給与を維持できるでしょう。
多くの病院では50代半ばからおよそ10年で定年になり、退職金を得られるはずです。退職金も勤続年数に比例して額面が上がりますから、残り10年ほどを残して辞めてしまうのはもったいないことです。
体力的にラクな施設・働き方に転換する

基本的には、勤務する病院で定年まで勤め上げることが望ましいですが、とはいえ、肉体的・精神的な事情によりやむを得ず退職を選択する場合もあると思います。残業、オンコール、当直などによる長時間労働や人間関係など精神的なストレスからの脱却は十分に転職する理由となります。
前述したように、50代半ば以降は転職先の選択肢が狭くなりますから、現職と同条件の求人に採用されることは難しくなります。そこで、あえて今までとはまったく違う働き方を選択するというのもひとつの手です。
例えば、介護老人保健施設(老健)などの施設長として働くという選択です。老健の業務は体力的な負担が少なく、60代、70代になっても勤務を続けることができます。
また、近年需要が拡大している「産業医」という働き方もあります。産業医は労働者が肉体的にも精神的にも健康的な状態で働けるよう、専門的な立場から指導・助言をする仕事です。具体的には職場環境の確認や労働者の健康相談、健康診断結果のチェックなどを行います。また産業医として勤務する場合、雇用主は企業となります。
オンコールや当直はありませんし、体力的につらい業務がないため、高齢の医師でも働きやすい職場です。
そのほか、常勤医をやめてフリーランスの医師になるという選択もあります。フリーランス医は、自身の体力や都合に合わせて勤務するペースを調整できるメリットがあります。
診療科にもよりますが、健康診断やコンタクトレンズの検診の求人は時期を問わず募集していることが多く、体力的に負担の少ない業務で、日給6~8万程度が得られるので、50代以降の転職先としておすすめです。
ただし、フリーランス医の場合、年金が国民年金になることには注意しましょう。
ハイクラス求人をねらいキャリアアップ

50代半ば時点で役職に就いていれば、キャリアを高めるための転職も可能です。数は少ないものの、院長職や部長職を募集するハイクラス求人が出ることもあります。もちろん相応の臨床経験とマネジメント能力が必要になりますが、50代になってもキャリアを高め続けたい方には適した働き方でしょう。
しかし、ハイクラス求人は数が少ないうえに人気も高いため、求人が出てもすぐに枠が埋まってしまうことがあります。また、ハイクラス求人が出るかどうかは運やタイミング次第です。そのため、あらかじめ転職エージェントに登録するなどして、日ごろから求人情報にアンテナを張るなど、情報収集が不可欠となります。好条件の求人募集が開始されたら、情報をもらえるようにエージェントを活用するとよいでしょう。

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文:太田卓志(麻酔科医)