JMATとは?活動内容や医師に求められる役割、参画方法などについて紹介|医師の現場と働き方

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JMATとは?活動内容や医師に求められる役割、参画方法などについて紹介

JMAT(日本医師会災害医療チーム)をご存じでしょうか? 国内では、地震や大雨による土砂崩れなど、毎年のようにさまざまな自然災害が起きています。そうした中、災害時に活動する医療従事者として、日本医師会が組織するのがJMATです。今回は、JMATの活動内容をはじめ、その中で医師が期待される役割や、参画方法などについて解説します。

〈この記事のまとめ〉

  • JMAT(日本医師会災害医療チーム)とは、日本医師会が組織する災害医療チーム。
  • 被災者の生命や健康を守り、被災地の公衆衛生を回復し、地域医療や地域包括ケアシステムの再生・復興を支援する役割がある。
  • 主な活動は、慢性疾患を抱える患者さんの対応を中心とした、被災地の医療支援や健康管理、公衆衛生支援など。
  • JMATに参画したい場合は、所属する医師会が募集するJMATに登録しておくことに加えて、日本医師会が定期的に開催しているJMAT研修に参加するとよい。

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1.JMAT(日本医師会災害医療チーム)とは?

そもそもJMAT(日本医師会災害医療チーム)とは、どのような組織なのでしょうか。また、JMATと似ているDMAT(災害派遣医療チーム)との違いについても解説します。

1-1.JMAT(日本医師会災害医療チーム)の趣旨

JMAT(日本医師会災害医療チーム)とは、「Japan Medical Association Team」の頭文字を取ったもので、日本医師会が組織する災害医療チームのことです。

JMAT要綱によると、JMATとは「被災者の生命及び健康を守り、被災地の公衆衛生を回復し、地域医療や地域包括ケアシステムの再生・復興を支援することを目的とする災害医療チームである」と説明されています。

JMATには、被災地の医師会による「被災地JMAT」と、被災地外の医師会が派遣する「支援JMAT」などがあり、全国の医師会が協働して展開されるのが特徴です。災害発生前(平常時)からの登録は不要で、災害の発生時にはその都度の編成となり、救急医療に従事する人だけでなく、勤務先を問わず参画できます。

また、JMATへの参加は、「医師としてのプロフェッショナル・オートノミー(※)によるものであり、医師会活動への参画である。また、医師以外の各職種についてもそれぞれの使命感に基づく」として、医療従事者それぞれの自律的な活動が前提となっています。

※プロフェッショナル・オートノミー
プロフェッション(医師などの専門職)とオートノミー(自律)を組み合わせたもので、職業的自律を意味する。専門職の集団が、行政などの介入を待たず、また、外部の第三者ないし個人からの不当な影響を受けることなく、自律的に専門的判断を自由に行使するプロセスを指す。

1-2. JMATの役割

JMATによる災害支援の最終目標は、「被災地に地域医療を取り戻す」ことです。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、医療支援のために医療医師会は岩手、宮城、福島、千葉、茨城の各県にJMATを派遣しています。その後の7月15日までに全国の医師会から1,398チーム、延べ6,054名の医師が参画し、さらに2016年3月21日までに1,365チーム、延べ6,574名の医師が参画し、長期にわたる医療支援が行われました。

JMATの役割は、「災害急性期以降における避難所・救護所等での医療や健康管理(災害前からの医療の継続)」から「被災地の医療機関への円滑な引き継ぎ」に至るまで、多様かつ広範囲な分野に及びます。具体的には、以下のとおりです。

1.医療支援と健康管理
2.公衆衛生支援
3.被災地医師会支援
4.被災地行政支援
5.検視・検案支援(可能な場合)
6.現地の情報の収集・把握、及び派遣元都道府県医師会等への連絡
7.その他、被災地のニーズに合わせた支援

1-3.DMATとの違い

JMATと似たような活動をする組織として、DMAT(災害派遣医療チーム)があります。DMAT(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)は、阪神淡路大震災をきっかけに設立されたもので、厚生労働省や都道府県が主体となって組織されるものです。

DMATは救命救急センターや災害拠点病院に勤務する医師が中心となる点が、JMATとは異なります。また、DMATは専門的トレーニングを受けた機動性の高い医療チームで、災害現場での急性期医療を担います。DMATの撤退後に、主に急性期以降や慢性期医療に携わるのが、JMATです。つまり、災害時において、主にトリアージなどの初動の急性期対応を行う専門チームがDMAT、その後も継続して地域医療再生までに携わるのがJMATと考えるとよいでしょう。

それぞれの特徴と違いについては、以下のとおりです。

JMAT
(日本医師会災害医療チーム)
DMAT
(災害派遣医療チーム)
管轄 日本医師会 厚生労働省または都道府県
活動開始時期(各災害の種類や規模により変化あり) ・被災地JMATは災害発生直後から活動開始
・支援JMATはDMATの後を引き継ぐ形で現地活動開始
・災害発生後48時間以内に現場対応
災害発生前(平常時)からの訓練・研修 必要あり 必要あり
災害発生前(平常時)からの登録 必要なし 必要あり
チームへの参画方法 管轄下の都道府県医師会から日本医師会へ申し込む ※1 DMAT養成研修の受講と試験合格
災害発生前(平常時)の勤務先 規制なし(どこでも可) 救命救急センター
災害拠点病院(災害拠点病院には、DMATの配置が義務づけられている)

※1 ただし、災害時は、事前登録や医師会員資格の有無にかかわらず、全国の医師等がプロフェッショナル・オートノミーに基づいて参集することが期待されるため、事前登録の有無はJMATの参加要件としない。

参考:公益社団法人 日本医師会「JMAT要綱」

2.JMAT(日本医師会災害医療チーム)はどんな活動をしている?

先にもお伝えしたとおり、災害時において、DMATがトリアージや救急医療を担当するのに対し、JMATは慢性疾患を抱える患者さんの対応を中心に、被災地の医療支援や健康管理、公衆衛生支援などを行います。JMATはDMATの活動を引き継ぎ、被災地の医療を支えるケースが多いです。

その活動は、災害時にとどまらず、災害発生前から段階的な活動が行われています。具体的には以下のとおりです。

2-1.災害発生前(平常時)

JMATは事前の登録不要で参加できますが、災害発生時に迅速なチーム編成を行うため、医療従事者の事前登録も行われています。また、実際のケースを想定した研修や訓練のほか、携行品の選定やリストの作成、現場で情報共有するための手段を検討するなど、災害を想定した準備活動を行っています。

2-2.災害時

災害時には、被災地でのJMAT活動を統括する「統括JMAT」が派遣されます。災害発生直後は、統括JMATの一部として、「先遣JMAT機能」が発動され、現地の情報に基づいて、求められる機能や派遣の量などを把握・評価し、その後の活動に備えることが必要です。

その後、参加職種やチームメンバー数の決定、活動可能期間の確認など、チーム編成が行われ、被災地における医療支援活動が始まります。現地の医療関係者と連携し、交通ルートの確保や必要物資の補充、支援受け入れ窓口の設置など、さまざまな活動が行われます。

こうした幅広い取り組みを行うため、JMATチームは医師と看護師だけにとどまらず、事務員や福祉関係者などによって編成されます。チーム構成は、要員の確保や現地のニーズに応じて、その都度柔軟な対応が必要です。そのため、チームは同一の医療機関、団体で所属する医療従事者のみで構成される必要はないとされています。チームは、3日~1週間程度で交代となり、個々の活動期間は異なります。

3.JMATの医師に期待される役割

自然災害が頻発する日本では、いつ、どのような状況でJMATへの参画が求められるかわかりません。万が一に備えて、JMATの医師に期待される役割について理解しておきましょう。

3-1.医療チームのリーダーとして

JMATチームは、「必ず医師を含む」ことを前提に、他職種で構成されます。医師以外のメンバーについては、状況に合わせて、さまざまな職種でチーム編成が行わるのです。そうした突発的なチーム内で、医師はリーダーとしての役割が必要です。柔軟な判断力や決断力に加え、チームのモチベーション維持を促すようなリーダーシップが期待されるでしょう。

3-2.円滑な連携が行える

災害時には、複数のJMATチームが派遣されるため、状況に応じて、相互連携が求められます。さらに、現地では自衛隊やDMAT、災害拠点病院等において医療活動を行う関係者、行政など、さまざまな立場や役割を持った団体との連携が求められます。基本的には、保健医療調整本部等のコーディネート機能下で活動することになりますが、災害時の混乱が起きる可能性もあります。チームのリーダーとして、関係各所と円滑に連携する役割も求められるでしょう。

3-3.緊急時に対応できる医療技術

災害時の急性期対応は、基本的にDMATが担います。ただし、DMAT等が到着する前から現地入りしている場合や、DMAT等の支援が行き届かない地域においては、状態を問わず緊急対応が求められることも。また、重篤症例が多い場合には、トリアージや重篤以外の急性期対応を担うこともあるでしょう。スキルや経験によって、チーム配置も検討されますが、平時から研修、訓練を受けておくと安心です。

4.JMATに参画するにはどうすればいい?

JMATは、基本的に、事前登録をしていなくても参加できるとされています。しかし、いざ災害が発生してからでは、戸惑ってしまうかもしれません。JMATに参画する方法について確認しておきましょう。

4-1.事前登録しておく

日本医師会は、JMATの活動において、「事前登録は教育研修や迅速なチーム編成等で効率的であり、JMATを編成、派遣する都道府県医師会において、参加者を登録しておくことが望ましい」としています。積極的にJMATに参画したいという意思がある場合には、所属する医師会が募集するJMATに登録しておくとよいでしょう。登録方法については、各医師会に確認ください。また、登録の際には、有事の際にスムーズに参画できるよう、現在の職場に予め報告しておくとよいでしょう。

引用:公益社団法人 日本医師会「JMAT要綱」

4-2. 研修に参加する

日本医師会は、定期的に、JMAT研修を実施しています。災害への備えとともに、災害発生時に被災地の都道府県医師会や郡市区医師会等と協働し、医療支援活動の充実に資することを目的とした研修です。

JMAT研修は、「基本編」「統括JMAT編」「地域医師会JMATコーディネーター編」「ロジスティクス編」の4つで構成されています。日本医師会によると、受講者数は令和4年6月末時点で延べ1,493名です。まずは所属する医師会に、研修の実施の有無や料金について確認するとよいでしょう。

5.平常時からJMATの研修に参加して備えよう

日本では、いつどこで災害に遭遇するか分かりません。JMATへの参画を希望する場合は、平時から医師会に申し込みを済ませ、各医師会が主催する研修に積極的に参加しておきましょう。被災時には、スムーズに自分に課せられた役割を担うことができるように備えることが大切です。

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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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