東日本大震災から9年、災害時要配慮者の災害対策を考える【太田守武先生インタビュー】|スペシャルコラム

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東日本大震災から9年、災害時要配慮者の
災害対策を考える【太田守武先生インタビュー】

指定難病のひとつであるALS(筋委縮性側策硬化症)当事者でもある、NPO法人Smile and Hope理事長の太田守武先生。東日本大震災から9年を迎えたいま、被災地支援のあり方について考えます。太田先生が取り組む被災地支援の内容と、災害時要配慮者が助かる災害対策について聞いたインタビューをWeb医事新報よりお届けします。

24時間電気なしの状況も体験してみることが重要

重度障がい者や高齢者が災害時に生き延びるためには、どのような災害対策が必要ですか。

太田守武(おおた もりたけ):NPO法人Smile and Hope理事長。1971年東京都生まれ。早稲田大理工学部卒業後に医師を志し、2006年大分大医学部卒。神奈川県相模原市で訪問診療医をしていた11年にALSを発症。17年千葉県八千代市でNPO法人Smile and Hopeを設立し、難病患者や震災被災者の支援に取り組む。
太田守武(おおた もりたけ):NPO法人Smile and Hope理事長。1971年東京都生まれ。早稲田大理工学部卒業後に医師を志し、2006年大分大医学部卒。神奈川県相模原市で訪問診療医をしていた11年にALSを発症。17年千葉県八千代市でNPO法人Smile and Hopeを設立し、難病患者や震災被災者の支援に取り組む。

バリアフリーという言葉のない平等な社会を目指す
各地域で重度障がい者と地域住民が一緒に
大地震や水害時を想定した避難訓練と災害対策を

地震や水害などで避難が必要になった時、重度障がい者や高齢者など自力での避難が難しい人やその家族と支援者が、どのように避難をするのか、各地域で避難訓練をしておくことが大切です。災害時にどのような支援や備蓄が必要かは個人差が大きいので、障がい者や高齢者本人が、その状況を一度は体験してみることが何より重要になります。

昨年の台風による千葉県内の長期間の停電では、重度障がい者や高齢者の災害対策の遅れが浮き彫りになりました。私たちはこの3年間、停電対策や避難訓練などを呼び掛けてきましたが、啓発できていないことに愕然としました。

私たちのNPO法人では、人工呼吸器を装着し、四肢麻痺のある私のような重度障がい者が避難することを想定した「災害時特殊避難マニュアル」を作成しています。それに基づいた避難訓練を昨年度と今年度の2回実施し、マニュアルを改訂しました。

私たちの経験を生かして他の地域へのアドバイスもしています。避難訓練や災害対策について分からないことなどありましたら、気軽にご相談ください。一緒に考えさせていただきます。

「24時間電気なし生活」も実践してみたそうですね。

はい。大災害が起きた時には、自宅に留まったほうが良い場合がありますし、電気、水道などのライフラインのみ停止することもあります。そこで、昨年9月、停電になった時を想定して、家族とヘルパー、看護師と共に、24時間電気を全く使わずに過ごしてみました。

私が使っている人工呼吸器や吸引器には電気が欠かせません。水、発電機、食料、清潔を保つ工夫など、被災時を想像した備えをしていても、いざ電気なしの生活をしてみると、想像とは雲泥の差があると再認識し、備蓄品などを見直しました。薬7日分以上、水と食料5日分以上の備蓄は最低限必要です。

瞳の動きによる会話法開発

災害時にも役立つコミュニケーションツール「W(ダブル)アイクロストーク」を開発されたそうですね。

はい。これは、文字盤などの道具を使わずに、瞳の動きだけで言葉を伝える方法です。私自身もWアイクロストークで家族や支援者と会話しています。文字盤を用いる方法もありますが、実際に使ってみると、気持ちが伝わりにくくストレスを感じていました。

私はおでこを使ってセンサーでパソコンを操作できます。でも、災害時に文字盤やパソコンが流されたら、コミュニケーションできず命に関わります。Wアイクロストークは誰でも練習すれば習得可能です。ALSなどの当事者と支援者、医療福祉従事者に、もっと広めたいです。

震災被災者の心のケア必要

東日本大震災の被災地に対する支援の内容を教えてください。

私は、2011年の夏から東日本大震災の被災地へボランティアに行かせていただいています。現在は、毎年夏に、大学生と一緒に宮城県南三陸町や熊本地震の被災地を訪問し無料医療相談や心のケアシンポジウムを行っています。

実は、14年頃からALSの病状が進行して私自身が生きる希望を失い、半年間くらい自死することばかり考えていました。17年に、訪問診療医の勧めで講演をさせてもらったことをきっかけに、「自分にはまだできることがある」と再起し、被災地支援を再開しました。

以前のように体を動かすことはできませんが、被災地の皆さんの声を聴くことはできます。被災当時の出来事や今の暮らしについて被災者の方の話に耳を傾け、共に涙し、出会い・再会できたことを喜び合います。

東日本大震災の被災地では、仮設住宅での生活、復興住宅への引っ越しと、コミュニティーの崩壊が続き、心が疲弊している方が増えています。無料医療相談では涙を流しながら津波の話をされる方もいます。

熊本では、現地の医師が私の講演を聞いて涙を流し、「泣いてもいいんですよね」とおっしゃったことが印象深いです。この時初めて、医療福祉従事者も被災者であり、心のケアが必要だと気づきました。

東北でも熊本でもまだまだ心のケアが必要ですが、ケアする人が圧倒的に足りません。少しでも皆さんの力になりたいです。

希望は生きる力を生み出す

東京オリンピックの聖火ランナーも務められるのですか。

6月に宮城県沿岸部で聖火ランナーを務める予定です。被災された方々、病気や障がいのある方々が共に前を向いて歩む思いを持てるように、アッと驚く聖火リレーを行いますよ。内容は当日まで秘密です。

今後の活動の目標は?

NPO法人では、前述の災害時特殊避難マニュアル作成、24時間電気なし生活の実践、Wアイクロストークの普及などに加え、昨年4月に「訪問介護かぼすケア」を開業しました。福祉有償運送、喀痰吸引等第3号研修も実施中です。

今年3月には「居宅介護支援かぼすケア」、今秋には「かぼすケア訪問看護ステーション」を開業します。現状では、各職種の分業が進み過ぎて、他の職種の仕事を理解し合わずにチームができてしまっている面があります。他職種融合を実践できる新しいハイブリッド型事業所確立を目指します。そして、私も訪問診療医として復活しますよ。

ALSは個性の一つです。たとえ手足が動かず声が出せなくても、映画館で映画を観たり、旅行したり、仕事もできることを多くの人に知っていただきたい。希望は生きる力を生み出します。“バリアフリー”という言葉のない、誰もが平等な社会を目指したいです。
(聞き手・福島安紀)

出典:Web医事新報
※本記事は株式会社日本医事新報社の提供により掲載しています。

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